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Microbe Atlas · 細菌

Actinomyces

分類
分枝状菌 / Branching filamentsActinomyces
性状
Gram陽性 (G+)分枝状 Branching filaments
科目
Medical Microbiology
トピック
2/33: Actinomyces and Nocardia genus, atypical and apathogenic mycobacteria5/1: Bacteria causing skin and wound infections (list) and their diagnosis5/5: Normal flora of the oral cavity. Microbes causing infections of the oral cavity (list)
自然耐性薬
ゲンタマイシントブラマイシン
原因となる疾患
根尖性歯周炎放線菌症

🧠 全体像:Actinomycesは顕微鏡だけではNocardiaと見分けがつかない「の糸状菌もどき」だが、酸素要求性との2点で明確に分かれる。Actinomycesは嫌気性(多くは、一部は)・なしの口腔・の常在菌で1、外傷や歯科処置を機に自分自身が病原体化するを起こす。これに対しNocardiaは・の菌で、免疫不全者を襲う外因性感染を起こす——生態も染色性も鑑別点もすべて対照的な菌として対で覚える。

微生物学的な特徴

項目 Actinomyces israelii Nocardia属(対比)
グラム染色 陽性 陽性(染まりが弱い)
形態 の の
酸素要求性(鑑別点) 嫌気性(多くは、A. meyeriなどは)1
生息地 ヒト・動物の口腔、 土壌・水
陰性 弱陽性(を含む細胞壁)

💡 両者を分ける最も実用的な指標は酸素要求性。 顕微鏡像だけでは真菌の菌糸とも誤認されるため、嫌気〜微好気の条件で発育しが無ければActinomyces、で発育し弱であればNocardiaと考える。

病原性の仕組み

Actinomyces自体に強力な外毒素はなく、常在部位のバリアが破れて深部組織へ押し込まれること自体が発症の引き金になる。口腔組織が外傷(顎の外傷、歯科処置など)を受けると、常在菌のまま頭頸部の深部へ広がる。

flowchart TD
    A["口腔・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='female genital tract'>女性生殖器</span>の常在菌"] --> B["外傷・歯科処置・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intrauterine device'>IUD</span>留置で<br>バリアが破れる"]
    B --> C["常在部位を越えて<br>深部組織へ侵入"]
    C --> D["硬い腫瘤形成<br>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suppurative abscess'>化膿性膿瘍</span>・肉芽腫"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='suppurative (draining)'>排膿性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fistula formation'>瘻孔形成</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulfur granules'>硫黄顆粒</span>を含む厚い黄色膿"]

⭐ は本菌に特徴的な所見。 実際には硫黄を含まず、菌塊が凝集した肉眼的な黄色顆粒で、瘻孔からの排膿中に確認できれば診断を強く示唆する。病理組織では約75%の症例で1〜3個の顆粒がみられ、・染色で好塩基性の塊と辺縁の好酸性の構造として描出される。ただしや慢性の頸顔面でもみられ、特異的ではない1。

感染経路と疫学

  • が中心:新しい菌の侵入ではなく、口腔・の常在菌がバリア破綻を機に自分自身の生息域を越えて広がる
  • 誘因:顎・口腔の外傷、などの歯科処置、腹部手術・、の長期留置(の誘因になる)

起こす疾患

疾患の総称をと呼び、侵入経路によって主に3型に分かれる。

感染部位 頻度 誘因・広がり方
最も多い病型1 口腔/顎の外傷や歯科処置後に多い。顎に沿った疼痛を伴う硬い腫瘤で始まり、「状の顎」と形容される。このに伴う像が全体の報告例の約60%を占め、単一の臨床表現として最多である1
腹部・骨盤型(泌尿生殖器を含む) 2番目に多い1 腹部手術・偶発的外傷・に起因。に伴う女性から生じることもある
3番目1 歯由来の感染性物質の誤嚥に起因。胸壁・肺、あるいは両方を侵しうる

臨床像は硬い腫瘤で始まり、慢性化するとや肉芽腫を形成する。長期化するとの瘻孔ができ、皮膚を通して感染がさらに全身へ広がる。

診断

  • 検体:瘻孔からの排膿、
  • のが有用
  • ——発育は遅く、少なくとも5日、長いと15〜20日かかる。陰性と判断するまで少なくとも10日は培養を続ける1。を依頼しないと検出できないため、疑ったら検体採取時に嫌気輸送を指定し、長期培養が必要なことを検査室へ伝える
  • ⚠️ 画像・臨床像だけでは悪性腫瘍とされやすい。 硬いという所見が癌に似るため、生検・培養での確定が重要

治療と予防

  • 長期の投与が基本:静注で1日1800万〜2400万単位を2〜6週間、続いて経口のかアモキシシリンを6〜12か月続ける1
  • ・を併用する。感染組織を十分に切除できた患者では、抗菌薬の期間を約3か月へ短縮できる可能性がある1
  • ⚠️ アミノグリコシド系とメトロニダゾールは効かない。 どちらもActinomycesに対して in vitro で活性が無い1。は嫌気性菌が一般にアミノグリコシド系に耐性であるとし2、アミノグリコシド系は性の輸送で菌体内に取り込まれるため、な環境では働きにくいと説明される。ではなく、菌がもともと持つ性質である
  • にはActinomycesがしばしば定着する。症状の無い定着はとは区別し、挿入後5年以内に定期的に交換していれば抗菌薬治療は要らない1
  • 予防はの維持と、の適切な交換

まとめ

  • Actinomycesは嫌気性(多くは)・なしの口腔/常在菌で、外傷や歯科処置・留置を機に自分自身がを起こすの代表。
  • Nocardia(・弱の外因性感染)とは酸素要求性・の2点で区別する。
  • は主に・・の3型に分かれ、硬い腫瘤→膿瘍→を含む瘻孔という経過をたどる。
  • 診断にはの指定が必須で、臨床像が悪性腫瘍に似るため生検での確認が重要。
  • 治療は長期の(静注2〜6週間→経口6〜12か月)+外科的処置。アミノグリコシド系とメトロニダゾールは効かない。

出典

  1. 1.Actinomycosis: etiology, clinical features, diagnosis, treatment, and management(Infection and Drug Resistance(Valour F, et al.)・2014)PMC掲載の全文(PMC4094581)で、Actinomyces属の多くは通性嫌気性で A. meyeri など一部が偏性嫌気性であること、微好気性〜偏性嫌気性の性質のため適切な輸送と培養条件が要ること、発育は遅く少なくとも5日、長いと15〜20日かかり、陰性と判断するまで少なくとも10日の培養が要ること、硫黄顆粒は診断を強く示唆するがノカルジア症や慢性の頸顔面真菌感染症でもみられ特異的ではないこと、病理組織で約75%の症例に1〜3個の硫黄顆粒がみられヘマトキシリン・エオジン染色で好塩基性の塊と辺縁の好酸性の棍棒状構造として描出されること、逐語で「Cervicofacial actinomycosis is the most frequent clinical form of actinomycosis, and 'lumpy jaw syndrome', which is associated with odontogenic infection, is the most common clinical manifestation (see 'Case 3'), representing approximately 60% of all reported cases.」であり、約60%が掛かるのは頸顔面型そのものではなく歯性感染に伴う lumpy jaw syndrome(報告例全体に対する割合)であること、2番目については同じ総説が節ごとに「泌尿生殖器型が2番目に多い病型」「肺(胸部)型は頸顔面型と腹部骨盤型に次いで3番目」と書き分けており、腹部・骨盤(泌尿生殖器を含む)が2位・胸部が3位と読めること、治療はペニシリンG 1日1800万〜2400万単位の静注を2〜6週間、続いてペニシリンVかアモキシシリンの経口を6〜12か月が基本で、感染組織を十分に切除できた患者では約3か月へ短縮できる可能性があること、メトロニダゾールとアミノグリコシド系は Actinomyces に in vitro で活性が無いこと、IUD には Actinomyces がしばしば定着し、挿入後5年以内に定期的に交換している無症状の女性には抗菌薬治療は要らないことを確認した。Crossref で書誌(7巻183頁〜)を照合した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Expected Resistant Phenotypes, Version 1.2(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST)・2023)PDF(v1.2、2023年1月)を取得し、Table 5(嫌気性菌)の表題が「Anaerobes are usually resistant to aztreonam, aminoglycosides, polymyxin B/colistin and nalidixic acid.」と述べていることを確認した。同表の種別の行は Clostridium ramosum・C. innocuum のバンコマイシン耐性だけで、Actinomyces 属を名指しした行は文書全体に無い。閲覧 2026-09-27