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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

バベシア症

Babesiosis

別名
Babesia infection
臓器系
感染症血液
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 5/18:節足動物媒介性寄生虫感染の起因体(一覧)とその診断
鑑別疾患
マラリア
関連疾患
アナプラズマ症ライム病無脾症・脾機能低下症
治療薬
アトバコンアジスロマイシンクリンダマイシンキニーネ
原因微生物
Babesia microti
症状
発熱悪寒筋痛倦怠感黄疸脾腫肝腫大
検査値
ヘモグロビンハプトグロビンLDHビリルビン

🧠 全体像:は、マダニ(Ixodes scapularis)が媒介する赤血球内寄生原虫Babesia(米国では主にBabesia microti)による感染症で、マラリアに酷似した溶血性貧血+発熱を来す1。⭐ 臨床的な急所は「・では劇症化しうる」ことで、は重症化・再発の危険因子の筆頭に・を挙げている2。でが4個一組で並ぶ「」様の四分体は本症に特徴的な所見である1。もう一つの要点は、媒介マダニがライム病と共通するため、共同感染に遭遇しうることである。

病態

Babesia microtiのはマダニの吸血時に注入され、赤血球表面の・シアロ糖蛋白を介して赤血球へ結合する。赤血球内で(トロホゾイト)に成熟し、出芽によって4個のを産生する1。

flowchart TD
    A["Ixodes属マダニの刺咬"] --> B["Babesia<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sporozoites'>スポロゾイト</span>が赤血球に結合・侵入"]
    B --> C["赤血球内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trophozoite'>栄養体</span>へ成熟"]
    C --> D["出芽により4個の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='merozoite'>メロゾイト</span>を産生<br>(四分体=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Maltese cross'>マルタ十字</span>様所見)"]
    D --> E["赤血球の破壊・溶血性貧血"]
    D --> F["赤血球の凝集・膜硬化"]
    F --> G["重症例:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute respiratory distress syndrome, ARDS'>急性呼吸窮迫症候群</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='noncardiogenic pulmonary edema'>非心原性肺水腫</span>"]

💡 四分体(テトラッド)の形が病名を覚える鍵になる。 が4個一組で放射状に並ぶ像は「」と呼ばれ、に特徴的な所見とされる1。感染が進むと赤血球の凝集と膜の硬化が増し、重症例ではやにつながりうる1。

疫学と危険因子

⭐ ・は、原因菌種によらず重症の高リスク群である1。が挙げる重症化・再発の危険因子は、またはを筆頭に、高齢、感染、悪性腫瘍(特にB細胞リンパ腫)、(特にリツキシマブ)、その他の低下、、輸血・・マダニ刺咬によるに及ぶ2。・では脾によるろ過機能そのものが失われているため、赤血球内に隠れて増殖する本原虫を排除できないことが劇症化の背景にある。

⚠️ 感染経路はマダニ刺咬だけではない。 輸血、臓器移植、でも伝播しうる1。

臨床像

多くは無症候性か軽症だが、症候性の場合は溶血性貧血+インフルエンザ様の非特異的症状(発熱・悪寒・筋痛・脱力・倦怠感)を呈し、脾腫・・黄疸を伴うことがある2。

診断

⭐ 確定診断の柱はの鏡検である。 またはしたで、赤血球内に中心透亮を伴うが典型的に見られ、は検査室での非自動(用手法)による鏡検を推奨している12。

⭐ が4個一組で放射状に並ぶ「」様の四分体は、本症に特徴的とされる所見である1。マラリアのとの鑑別点になりうるが、いずれも見た目が似ているため、渡航歴・曝露歴(マダニ流行地か熱帯マラリア流行地か)を必ず併せて評価する。

低寄生率ではの鏡検より高感度にBabesia microti感染を検出できる1。

鑑別診断

⭐ マラリアとは、赤血球内という顕微鏡像が酷似する点が最大の落とし穴である。 は色素(ヘモゾイン)を産生しうるがBabesiaは産生しない、Babesiaでは4分体(様)を認めうる、といった形態的な手がかりに加え、渡航歴・居住歴・曝露歴(マダニ流行地かマラリア流行地か)が鑑別の出発点になる。

⚠️ 媒介マダニがライム病と共通するため、共同感染を疑う。 他の病原体、特にBorrelia burgdorferi(ライム病)やAnaplasma phagocytophilumとの共同感染は症例の約20%に生じ、臨床像を複雑化させてより遷延性・重症の経過につながりうるため、共同感染が疑われる病原体それぞれの治療を要する1。単一の熱性疾患として片づけず、マダニ刺咬歴があれば複数病原体の可能性を残す。

治療

⭐ 第一選択は経口+経口アジスロマイシンの7〜10日間併用である21。

  • 重症例:高用量アジスロマイシン(経口または静注)にクリンダマイシンを併用し、症状が消失するまで継続する1。とクリンダマイシンの併用も用いられる。
  • 寄生率10%以上かつ高度な溶血性貧血を呈する患者には、部分的または完全な赤血球が適応となる1。
  • 共同感染が確認・強く疑われる場合は、ライム病・それぞれに応じた抗菌薬治療を追加する1。

まとめ

  • はIxodes属マダニが媒介する赤血球内寄生原虫(主にBabesia microti)による感染症で、マラリア様の溶血性貧血+発熱を呈する。
  • ・は原因菌種によらず重症化・再発の主要な危険因子であり、輸血・でも伝播しうる。
  • 診断の柱は(Wright/)の鏡検で、中心透亮を伴うと、が4個一組で並ぶ「」様の四分体が特徴的である。低寄生率にはがより高感度である。
  • マラリアとは顕微鏡像が酷似するため曝露歴(マダニ流行地かマラリア流行地か)で鑑別し、ライム病とは媒介マダニが共通するため共同感染(約20%)を常に念頭に置く。
  • 治療は経口+アジスロマイシン7〜10日間が第一選択。重症例・高寄生率例では高用量アジスロマイシン+クリンダマイシンや赤血球を要する。

出典

  1. 1.Babesiosis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)Babesia microtiが世界的にヒト感染の大部分を占め、Ixodes scapularisマダニにより媒介されること、スポロゾイトが赤血球表面のグリコサミノグリカン・シアロ糖蛋白を介して赤血球に結合し赤血球内で栄養体に成熟して出芽により4つのメロゾイトを産生すること、感染により赤血球の凝集と膜の硬化が増し急性呼吸窮迫症候群・非心原性肺水腫などの合併症につながりうること、無脾症患者はBabesia種によらず重症バベシアの高リスクであり他にHIV感染者・免疫抑制療法を受けている患者・新生児・50歳超の成人が挙げられること、Wright染色またはGiemsa染色した末梢血塗抹で中心透亮を伴う赤血球内輪状体(ring form)が典型的に見られること、メロゾイトが4分体(テトラッド)を形成する所見が「Maltese cross」と呼ばれ病的意義を持つ特徴的所見とされていること、リアルタイムPCR法が血液塗抹の鏡検より高感度に低寄生率のBabesia microti感染を検出できること、第一選択治療が経口アトバコンと経口アジスロマイシンの7〜10日間併用であり重症例では高用量アジスロマイシン(経口・静注)にクリンダマイシンを症状消失まで併用すること、寄生率10%以上かつ高度溶血性貧血を呈する患者には部分的または完全な赤血球交換輸血が適応となること、他の マダニ媒介病原体(特にBorrelia burgdorferiとAnaplasma phagocytophilum)との共同感染が症例の約20%に生じ臨床像を複雑化させ、より遷延性・重症の経過につながりうるためこれら他疾患の治療も要することを確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Clinical Overview of Babesiosis(Centers for Disease Control and Prevention・2024)米国でヒトに感染する主要な種がBabesia microtiであること、重症化・再発の危険因子として無脾症または脾機能低下症・高齢・HIV感染・悪性腫瘍(特にB細胞リンパ腫)・免疫抑制薬(特にリツキシマブ)・その他の免疫機能低下・うっ血性心不全・輸血や経胎盤感染・マダニ刺咬による新生児感染が挙げられていること、臨床像が溶血性貧血とインフルエンザ様の非特異的症状(発熱・悪寒・全身痛・脱力・倦怠感)であり脾腫・肝腫大・黄疸を伴いうること、診断に末梢血塗抹の非自動(用手法)鏡検を用いること、標準治療がアトバコンとアジスロマイシンの経口併用7〜10日間であることを、ページ本文(2024年2月13日更新)で確認した閲覧 2026-09-06