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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

マラリア

Malaria

臓器系
感染症
科目
Medical MicrobiologyInternal Medicine
トピック
微生物学 4/18:マラリア原虫内科学 S-59:原虫感染症―ジアルジア症・トキソプラズマ症・アメーバ症・マラリア
鑑別疾患
アフリカ睡眠病バベシア症レプトスピラ症
関連疾患
バーキットリンパ腫
治療薬
プリマキンメフロキンドキシサイクリンアルテメテルルメファントリンヒドロキシクロロキンアルテスネート
原因微生物
Plasmodium falciparumPlasmodium vivaxPlasmodium ovalePlasmodium malariaePlasmodium knowlesi
症状
悪寒黄疸発熱肝腫大
適応薬
アルテスネートヒドロキシクロロキン

🧠 全体像:マラリアは「肝臓期(無症状の増殖)→(の原因)→蚊内期(伝播)」という3幕構成の生活環で読む。はが破裂する瞬間に一致し、その周期が原虫種を見分けるになる。P. vivax・P. ovaleだけが持つ肝臓内のは治療後何ヶ月〜何年も経ってからの再発の原因になり、P. falciparumは最も致死率が高くも広範——この2点さえ押さえれば、診断(塗抹の役割分担)と治療(病期別・耐性状況別の薬剤選択)の理屈が一気につながる。

病原体と生活環

蚊(、Anopheles属)を媒介動物・終宿主とし、ヒトを中間宿主とする血球症。輸血・でも伝播しうる。

flowchart TD
  A["蚊の刺咬<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sporozoites'>スポロゾイト</span>注入"] --> B["肝細胞に感染(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Exo-erythrocytic cycle'>肝外赤血球期</span>)"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic schizont'>肝シゾント</span>形成→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='merozoite'>メロゾイト</span>放出"]
  B -.->|"P. vivax/ovaleのみ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypnozoite'>休眠体</span>として<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='in the hepatocyte'>肝細胞内</span>に長期潜伏"]
  C --> E["赤血球に感染"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ring form'>輪状体</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mature trophozoite'>成熟栄養型</span>"]
  F --> G["赤血球破裂<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='febrile attack'>発熱発作</span>)"]
  G --> E
  G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gametogenesis'>配偶子形成</span>"]
  H --> I["蚊が吸血し配偶子を摂取→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='zygote'>接合子</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oocyst'>オーシスト</span>"]
  I --> A
  D -.->|"数か月〜数年後に再活性化"| C

💡 P. vivaxとP. ovaleだけがにを残す。 治療でを一掃してもは生き残るため、一見治癒したように見えて数か月〜数年後に再発する——これを叩けるのは(またはタフェノキン)のみという臨床的帰結を生む。

種の比較

P. vivax P. ovale P. malariae P. falciparum
疾患名 (最重症)
の周期 48時間 48時間 72時間 48時間
の 12〜17日 9〜18日 18〜29日(4種で最長)1 6〜14日(最短)
あり(再発の原因) あり(再発の原因) なし なし
パプアニューギニア・インドネシアで高頻度、他地域では的な報告 広範な耐性の証拠なし 広範な耐性の証拠なし(の症例報告はある) 世界的に広範——第一選択にならない

⭐ 潜伏期はほとんどの場合7〜30日に収まり、短い側はP. falciparum、長い側はP. malariaeに最も多い2。マラリアの潜伏期は株による幅が大きく、蚊による伝播実験では寄生虫がに初めて現れるまでの期間が16〜59日(報告値の多くは23〜37日)、症状発現までは18〜29日と報告されている1。⚠️ のをしていた渡航者では発症が数週〜数か月遅れることがあり、流行地を離れてからの発熱でも疑いを下げてはならない——過去12か月の渡航歴を必ず確認する2。

⭐ 東南アジアを中心に、サルをとする人獣共通感染症としてP. knowlesi(5番目の種)のヒト感染例も報告されている。

臨床像

赤血球が破裂するとが起こる(感染後約2週間で発症)。約15分間の悪寒・戦慄の後に高熱が続き、発作は6〜10時間持続、48〜72時間ごとに反復する。ただし周期的発熱がなくても否定できない。

⚠️ P. falciparumは以下の致死的合併症を来しうる。

  • :が脳毛細血管を閉塞する
  • 重度の貧血、血小板減少
  • (症):大量のによりヘモグロビンが尿中に排出され尿が黒褐色になる
  • 腎障害、肺水腫/、低血糖、肝脾腫・黄疸、ショック

診断

  • 標本(発作と発作の間に採血、6時間ごと計3回までを目安に反復)
    • :感染の有無をスクリーニング
    • :で種を同定(P. falciparumは1個の赤血球内に複数のがみられるのが特徴的)
  • ()、、血清学()も併用する。
flowchart TD
    A["流行地帰国後の発熱"] --> B["直ちに厚層・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thin smear'>薄層塗抹</span>+迅速検査"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='severe features'>重症所見</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperparasitemia'>高度寄生虫血症</span>"}
    C -->|"あり"| D["静注<span class='jp-term jp-term-diagram' title='artesunate'>アルテスネート</span>を緊急開始"]
    C -->|"なし"| E["種・地域別の有効な経口レジメン"]
    B --> F{"初回陰性でも疑いが高い"}
    F -->|"はい"| G["12〜24時間ごとに計3回まで塗抹反復"]

💡 は「感染しているか」のスクリーニング、は「どの種か」の同定——役割分担で覚える。流行地帰国後の発熱では周期性を待たず直ちにマラリア検査を行う救急疾患である。

治療

⚠️ P. falciparumに対するは世界的に広範囲へ拡大しており、もはや第一選択にならない。 はすべてのP. falciparum感染(および耐性が確認された地域のP. vivax)に併用療法(例:+)を第一選択として推奨している。

  • ():P. falciparumはACTが第一選択。P. vivax・P. ovaleは、パプアニューギニア・インドネシア以外で感染した単独感染と確認できれば(または)が推奨される。
  • ⚠️ マラリアとP. knowlesiでを選べるのは、単独感染をできればで確認できた場合に限られる。 両種はでP. falciparumと見分けにくいため、種を確認できないまま「でよい種」として扱うと、致死的になりうる熱帯熱マラリアを取りこぼす。確認できなければP. falciparumの存在を想定し、熱帯熱マラリア用のレジメン(これはマラリアにもそのまま使える)で治療する。P. knowlesiは急速に重症化しうるため、速やかな治療開始と入院下での経過確認が求められる3。
  • (肝臓内):(またはタフェノキン)のみが有効——投与前に活性を確認し、妊娠などの禁忌を除外する。
  • (意識障害、ショック、重症貧血、腎障害、、低血糖、高など):全菌種で静注(または筋注)を緊急開始し、少なくとも24時間、内服できるようになるまで続けてから、ACT 3日間で治療を完了する。4

予防

  • ワクチン:は2021年に世界初のマラリアワクチンRTS,S/AS01を、2023年に2種類目のR21/Matrix-Mを推奨した。現行の推奨は、流行地に住む小児の熱帯熱に用い、中〜高度伝播地域(熱帯熱の保有率10%超、または年間が人口1000人あたり250超が目安)を優先するもので、低伝播地域への拡大も各国の判断で検討できる。生後5か月から4回接種し、4回目は3回目の6〜18か月後に行う。4
  • :渡航先の耐性状況に応じて、ドキシサイクリンなどを用いる(感受性地域ではも選択肢)。
  • 蚊帳・防虫剤などの蚊対策。

💡 鎌状赤血球症やはマラリアに対する耐性を与える。 赤血球の性状変化により原虫が増殖しにくくなるためで、でこれらの遺伝性疾患のが高い理由の一つとされる。

まとめ

  • は蚊(終宿主)とヒト(中間宿主)を行き来する生活環を持ち、(無症状)→()→(蚊への伝播)の3段階で整理できる。
  • P. vivax・P. ovaleはにを残し数か月〜数年後の再発の原因となる——治療にはが必須(確認後)。
  • P. falciparumは最重症種で、が広範なためACTが第一選択、・・・腎障害などの致死的合併症を起こしうる。
  • 診断は(感染確認)+(種同定)が基本で、流行地帰国後の発熱は周期性を待たず直ちに検査する。
  • 重症例には菌種を問わず静注、予防には流行地の小児へのRTS,S/R21ワクチン(中〜高度伝播地域を優先)と、渡航者への渡航先別の薬を用いる。

出典

  1. 1.Plasmodium malariae: parasite and disease(Clinical Microbiology Reviews(Collins WE, Jeffery GM)・2007)PMC2176047 の全文で確認した。蚊によって伝播した P. malariae で寄生虫が厚層塗抹に初めて現れるまでの期間(prepatent period)が16〜59日と幅広く、報告値の多くが23〜37日に集まること、症状発現までの潜伏期として報告されているのは18〜19日(VS株)と23日・29日であること。四日熱マラリア腎症の本質的な病理所見が糸球体基底膜の肥厚と毛細血管内の細胞増殖であること。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Clinical Features of Malaria(Centers for Disease Control and Prevention・2024)Wayback Machine の2026年9月20日保存版(2026-09-27取得。cdc.gov 本体は403)で本文を確認した。「潜伏期はほとんどの場合7〜30日である。短い側は P. falciparum に、長い側は P. malariae に最も多くみられる」と述べていること、渡航者の抗マラリア薬予防内服が発症を数週〜数か月遅らせることがあり、特に休眠肝内型を作る P. vivax・P. ovale で起こると述べていること、米国での重症マラリアの基準が寄生虫寄生率5%以上・意識障害・痙攣・循環不全/ショック・肺水腫またはARDS・アシドーシス・急性腎障害・異常出血またはDIC・黄疸(他の徴候を1つ以上伴う場合)・重症貧血(Hb 7 g/dL未満)のいずれか1つ以上であること。休眠体と再発を持つ種として挙げられているのは P. vivax と P. ovale だけであること。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Treatment of Uncomplicated Malaria(Centers for Disease Control and Prevention・2026)Wayback Machine の2026年7月26日保存版(2026-09-27取得。cdc.gov 本体は403)で本文を確認した。「P. malariae の単独感染が、できればPCRで確認された場合には、クロロキン(またはヒドロキシクロロキン)を用いることができる。加えて、クロロキン耐性熱帯熱マラリアに対して上に挙げた任意のレジメンを P. malariae 感染の治療に用いてよい」とすること、四日熱マラリアは血液塗抹で熱帯熱マラリア原虫と区別しにくく P. knowlesi とは区別できないこともあるため種の確認をPCRか熟練した検査者の塗抹再読で行うべきとし、「感染種に少しでも不確実さがあれば熱帯熱マラリア原虫が存在しうると想定する」と述べていること。三日熱・卵形マラリアはパプアニューギニア・インドネシア以外で感染した単独感染と確認できればクロロキン(またはヒドロキシクロロキン)が推奨され、同2国での感染やクロロキンが使えない場合はクロロキン耐性用のレジメンを用いること。P. knowlesi は重症化のおそれがあるため速やかな治療開始と入院が必要とされること(P. malariae には入院の要件が書かれていないこと)。P. malariae・P. knowlesi・P. ovale には広範な耐性の証拠が無く、P. vivax はパプアニューギニア・インドネシアでクロロキン耐性が高頻度、他地域では散発的な報告にとどまること。休眠体に対する再発予防(プリマキン・タフェノキン)が必要な種として挙げられているのは P. vivax と P. ovale だけであること。閲覧 2026-09-27
  4. 4.WHO Guidelines for malaria(World Health Organization・2025)2025年8月13日版の全文PDFで、マラリアワクチンの推奨(2023年)が流行地に住む小児の熱帯熱マラリア予防に用い、中〜高度伝播地域(熱帯熱マラリア原虫保有率10%超または年間発生率が人口1000人あたり250超を目安)を優先し、低伝播地域への拡大は各国が判断できるとすること、生後5か月から4回接種し、接種間隔は最短4週、4回目は3回目の6〜18か月後とすること、重症マラリアは成人・小児・妊婦・授乳婦とも静注または筋注アルテスネートを少なくとも24時間、内服可能になるまで投与し、その後ACT 3日間で治療を完了することを確認した閲覧 2026-09-27