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Lab values · Published

ハプトグロビン

Haptoglobin

別名
Hp
臓器系
血液
科目
Internal MedicineMedical Genetics and Immunology (Immunology)
トピック
内科学 H-05:溶血性貧血内科学 L-59:高再生性貧血内科学 S-44:血栓性微小血管症(TTP・HUS)免疫学 3.2:炎症と急性期反応
関連疾患
LCAT欠損症アルシン(ヒ化水素)ガス中毒バベシア症移植関連血栓性微小血管症遺伝性・後天性溶血性貧血(遺伝性球状赤血球症・G6PD欠乏症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間ヘモグロビン尿症)過剰溶血症候群寒冷凝集素症行軍ヘモグロビン尿薬剤性免疫性溶血性貧血溶血性輸血反応脾機能亢進
監視対象薬
アセトヒドロキサム酸アルテスネート
影響する薬剤
エクリズマブスチムリマブモキセツモマブ パスドトクス
スコア
PLASMICスコア

🧠 全体像:は肝臓で作られるで、のαβ二量体と非常に強固に結合し、できた複合体をマクロファージのCD163受容体へすぐ引き渡す「使い捨ての回収係」である。溶血で低下するのは産生が止まるからではなく、複合体ごと消費され尽くすから——この「消費」の速さこそが、による腎障害と消費(血管収縮)を防ぐ生理的意義そのものである。でもあるため、溶血と炎症が同時にあると値が「正常」に化けて溶血を見逃す、この検査最大の落とし穴を生む。

何を測っているか

は肝細胞で産生される糖蛋白で、血中に漏出したのαβ二量体と結合し、安定な-ヘモグロビン複合体を作る。この複合体はマクロファージ表面のCD163受容体に認識されて取り込まれ、リソソームで分解されてヘムを放出する。

flowchart TD
    A["肝臓で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='haptoglobin'>ハプトグロビン</span>を産生"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free hemoglobin'>遊離ヘモグロビン</span>のαβ二量体と結合"]
    B --> C["Hp-Hb複合体"]
    C --> D["マクロファージのCD163受容体で取り込み"]
    D --> E["複合体ごと分解・消費"]
    E --> F["血中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='haptoglobin'>ハプトグロビン</span>低下"]
    G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Acute phase reaction, APR'>急性期反応</span><br>感染・炎症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue necrosis'>組織壊死</span>・悪性腫瘍"] --> A

💡 遊離型のが数日単位であるのに対し、複合体になった途端に半減期は数分〜数十分単位まで短縮する。低下は「作れなくなった」のではなく「使われて消えた」結果であり、この違いが後述する低値の解釈の中核になる。生理的には、によると消費(血管収縮)を防ぐ役割を担う。

基準値と単位

はmg/dLで報告され、測定法・試薬・施設で異なる。の表現型によっても分子量が大きく違うため測定値そのものが変わりうる1。同一施設・同一法ので経時比較する。

⚠️ 新生児・乳児では生理的に低値〜検出感度以下であり、生後数か月までは溶血の指標として使えない。妊娠中やエストロゲン投与でも低下する方向に働くとされ、背景因子として念頭に置く。

低値の意味

機序で群にまとめると解釈しやすい。

群 代表例 低下の程度
、(TTP・HUS・DIC)、、輸血、、 ⚠️ 著明〜測定感度以下
、、 低下するがほどではない
溶血以外の低値 による産生低下(肝硬変では溶血がなくても低い)、大量輸血後、血腫の吸収 背景により様々

⭐ この低下の程度差が部位診断の手がかりになる。では測定感度以下まで落ちることが多く、では低下してもゼロには近づきにくい。

⚠️ 遺伝性無血症(Hp0対立遺伝子による遺伝子欠失、HPdel) は東アジア・東南アジア集団に特有で、頻度は約0.9〜4%とされ、他の集団にはほとんどみられない2。溶血がなくても測定感度以下になり、輸血や投与時に抗抗体によるを起こしうる——日本の臨床では必ず念頭に置く病態である2。

高値の意味

はであるため、感染・炎症・・悪性腫瘍で上昇する。や副腎皮質ステロイド投与でも上がる。

⚠️ 溶血と炎症が同時にあると、両者の変化がされて「正常値」に見えることがある。 これが本検査最大の落とし穴で、低下していないからといって溶血を除外しない。CRPなど他のと併せて解釈し、値が臨床像と合わなければ・など他の所見を優先する。

⚠️ 測定上の注意

  • 採血時の機械的な溶血()でも低下しうる。臨床的な溶血所見が乏しいのに低値なら採血手技を疑う。
  • の表現型(Hp1-1・Hp2-1・Hp2-2)で分子量と血中濃度が異なり、などでの測定値・に影響しうる1。
  • には定量できる範囲があり、高度な低値・高値では希釈再検が必要になることがある。
  • 検体は室温放置・を避け、速やかに測定するか適切に保存する。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["貧血+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reticulocytosis'>網赤血球増加</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lactate dehydrogenase'>LDH</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='indirect bilirubin'>間接ビリルビン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='haptoglobin'>ハプトグロビン</span>を確認"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='haptoglobin'>ハプトグロビン</span>低下"}
    C -->|"正常〜高値"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='C-reactive protein'>CRP</span>など炎症所見があるか"}
    D -->|"あり"| E["炎症でマスクされている可能性を考え他所見を優先"]
    D -->|"なし"| F["溶血以外の原因を再検討"]
    C -->|"低下"| G["尿ヘモグロビン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemosiderin'>ヘモジデリン</span>、塗抹の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='schistocyte'>破砕赤血球</span>を確認"]
    G --> H{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravascular hemolysis'>血管内溶血</span>を支持する所見"}
    H -->|"あり"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravascular hemolysis'>血管内溶血</span>として原因検索"]
    H -->|"乏しい"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extravascular hemolysis'>血管外溶血</span>として原因検索"]
    I --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='direct antiglobulin test, DAT'>直接抗グロブリン試験</span>で免疫性かを判定"]
    J --> K

LDH・・の3点セットで溶血を確認し、で骨髄の代償反応を評価する。が疑われればやを確認し、免疫性かどうかはで判定する。

経時変化とモニタリング

溶血が止まっても、は肝臓で新たに作られるまで数日を要するため、回復はやより遅れて現れることがある。急性期の単回値と、にかけての推移を分けて読む必要がある。

溶血発作を繰り返す病態の経過観察では、単回の低値そのものより、治療介入後に値がどう推移するかが治療反応の手掛かりになる。ただし炎症の重なりで値が動くため、単独の推移だけで判断せず他の溶血指標と合わせて追う。

⚠️ 終末補体では、低下は「監視項目」ではなく「副作用として記載された臨床異常」である。 の日本の電子添文は、11.2その他の副作用の臨床検査の欄に頻度不明の減少・ヘモグロビン減少を挙げる3。一方、欧州のSmPCは全文にの語を一度も含まず、投与中に測るよう求めているのはではLDH、では・血清クレアチニン・血清である4。💡 臨床で溶血のマーカーとして併せて見ることと、添付文書が要求する監視項目であることは別——3点セットの一つだからといって、文書が測れと言っているとは限らない。

⚠️ 阻害薬では、は「薬で動く値」として現れる。 に用いるの米国添付文書は、12.2 での完全な阻害による溶血抑制の証拠として、の正常化・低下・と並べての上昇を挙げる(全文でこの語が現れるのはこの1箇所だけ)5。一方、投与中断時に監視するよう5.4が名指しするのは総ビリルビン・LDHとヘモグロビンであり、ではない5。の(Annex全文)と日本の電子添文(本文全文)にはの語自体が0件である67。⭐ では「低下(副作用としての臨床異常)」3、では「上昇(薬効の指標)」5と、同じ検査が薬によって逆向きに登場する点も押さえておく。

まとめ

  • は肝産生ので、と結合した複合体ごとCD163経由で消費されて低下する。
  • は著明〜測定感度以下、はそれより緩やかな低下という程度差が部位診断の手掛かりになる。
  • 遺伝性無血症(HPdel)は東アジアに多く、輸血時アナフィラキシーと関連するため念頭に置く。
  • 炎症合併時は上昇方向へ引っ張られ「正常値」に化けるため、など他のと併せて解釈する。
  • 新生児・乳児では生理的低値で指標にならず、回復は・より遅れる。

出典

  1. 1.ハプトグロビン(型判定)(株式会社エルエスアイメディエンス)ハプトグロビン表現型(Hp1-1・Hp2-1・Hp2-2)は日本人でおよそ7%・35%・58%の頻度で分布し、それぞれ平均分子量が約10万・20万・40万と異なるため、免疫比濁法などでの測定値・基準範囲は表現型で違いうる。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Identification and Diagnosis of Complete Haptoglobin Gene Deletion, One of the Genes Responsible for Adverse Posttransfusion Reactions(Biomedicines(MDPI)・2024)ハプトグロビン遺伝子完全欠失(HPdel、Hp0対立遺伝子)は東アジア・東南アジア集団にみられ頻度は約0.9〜4%で、他の集団にはほとんどみられない。ホモ接合体は先天性無ハプトグロビン血症となり、輸血・血漿製剤投与時に抗ハプトグロビン抗体によるアナフィラキシーショックを起こしうる(日本人・韓国人・中国人での報告あり)。Hp-Hb複合体はマクロファージのCD163受容体で速やかに処理・分解される。閲覧 2026-08-03
  3. 3.ソリリス点滴静注300mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構・2025)2025年4月改訂(第8版)。11.2その他の副作用の表は10%以上・5〜10%未満・5%未満・頻度不明の4欄からなり、臨床検査の行の頻度不明欄にヘモグロビン減少とハプトグロビン減少が挙がる。8.2はaHUSで血小板数等の定期モニタリングを求めるが、ハプトグロビンを監視項目として挙げてはいない閲覧 2026-09-08
  4. 4.Soliris 300 mg concentrate for solution for infusion — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency・2025)EMAが公開する全60頁のPDF(Annex I〜IIIB全体)を取得して全文検索し、haptoglobinの語が0件であることを確認した。4.4が投与中に測るよう求めるのはPNHで血清LDH、aHUSで血小板数・血清LDH・血清クレアチニンである閲覧 2026-09-08
  5. 5.ENJAYMO (sutimlimab-jome) injection — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed。Labeler は Recordati Rare Diseases, Inc.)・2024)本文の改訂表示が "Revised: 11/2024" の添付文書で、12.2が古典経路の完全阻害による溶血抑制の証拠として "normalization of bilirubin, decrease in LDH, increase in haptoglobin, and decrease in reticulocytes" を挙げること(全文でhaptoglobinが現れるのはこの1箇所のみ)、5.4が投与中断時に監視するよう求めるのは "elevated levels of total bilirubin or lactate dehydrogenase (LDH) accompanied by a decrease in hemoglobin" などであってハプトグロビンではないことを確認した閲覧 2026-09-16
  6. 6.Enjaymo 50 mg/mL solution for infusion — Summary of Product Characteristics (Annex I)(European Medicines Agency(EPAR product information。販売承認取得者 Recordati Rare Diseases)・2025)EMAが公開するEnjaymoの製品情報PDF(Annex全体)を取得して全文検索し、haptoglobinの語が0件であることを確認した。4.4は投与終了後に「溶血の徴候・症状」の監視を求めるのみで検査項目を名指ししていない。EPARのRevision 8、PDF作成日2025年7月10日閲覧 2026-09-16
  7. 7.エジャイモ点滴静注1.1g 電子添文(医薬品医療機器総合機構(製造販売元:レコルダティ・レア・ディジーズ・ジャパン株式会社)・2025)2025年6月改訂(第6版)の電子添文の本文(HTML全文)を取得して検索し、ハプトグロビン・ビリルビン・LDHの語がいずれも0件であること、投与中止後の監視を定めた項が無いことを確認した閲覧 2026-09-16