免疫学

免疫学 · 3.2

炎症と急性期反応

Inflammation and acute phase reaction

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W3Lecture / 講義
応用トピック
小児の不明熱乳幼児の発熱
疾患
クリオピリン関連周期熱症候群
検査値
C反応性蛋白(CRP)ハプトグロビン

🧠 炎症は「急性(数日で解決を目指す)」「慢性(原因を除去できず数か月〜数年続く)」「(老化に伴う低レベルの活性化=inflammaging)」という3つの時間スケールで読む。 の古典的5徴候(発赤・熱感・腫脹・疼痛・機能障害)は、白血球・・体液が部位へ動員される過程の表面的な現れであり、その転帰は治癒・線維化・膿瘍形成・慢性化のいずれかに分岐する。

急性炎症

組織を傷害する状態に対する免疫系の急速な局所応答で、を目的とする:白血球・・体液が部位へ輸送される。目的は因子・損傷組織そのものの除去。

急性炎症の古典的5徴候

ラテン語 意味
rubor 発赤
calor 熱感
tumor 腫脹
dolor 疼痛
functio laesa 機能障害
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue damage'>組織傷害</span>"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased blood flow'>血流増加</span>"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased vascular permeability'>血管透過性亢進</span> → 浮腫・滲出液(exsudate)形成"]
  A --> D["好中球の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extravasation'>血管外遊出</span>"]

急性炎症の転帰

転帰 内容
治癒 正常構造への回復
線維化 形成
局所膿瘍
進行 慢性炎症へ移行

慢性炎症

を排除できない場合(例:自己免疫疾患)、炎症は数か月〜数年持続する。

💡 慢性炎症ではが新生することがある。 サイトカインの持続的作用により、慢性炎症部位にを伴う濾胞が異所性に形成される——通常はだけにある構造が、炎症局所に「即席の免疫器官」として作られる現象。

パラ炎症と炎症性老化

=組織ストレス(例:加齢に伴う増大)に応じて観察される、低レベルの。

⭐ 「」はの一部として理解する。 高齢者では血中のレベルが高く、これが心血管疾患発症の予測因子になる。は・を産生し、M1マクロファージ・リンパ球を呼び込む。の背景には、肥満、、の変化、、などが関与する。

急性期反応

ストレス・・感染を契機に起こる、恒常性を再確立するための応答。目的はシグナルの沈静化・炎症の軽減・恒常性の再確立。局所的(局所炎症:病原体・の除去、再生誘導)と全身性(systemic APR:肝臓でのパターン変化により炎症を沈静化)の2レベルがある——炎症がある閾値を超えたときにのみ全身性APRが発動する点が、単なる「局所炎症」との違い。

⚠️ 中枢神経系もの標的——が視床下部に届く。 IL-1・IL-6・などのが視床下部に作用すると発熱・食欲低下・傾眠が引き起こされる。同時にIL-6は軸を活性化し、副腎からのグルココルチコイド分泌を促す——「炎症を起こす」サイトカインが、同じ経路で「炎症を鎮める」ホルモンの分泌も誘導するという自己制御ループ。

⭐ の司令塔はIL-6——「3つ並べて覚える」のではなく「IL-6だけが全部できる」と覚える。 肝細胞に働く単球由来サイトカインはIL-1β・・IL-6の3つだが、ヒトの炎症で見られる全スペクトラムの応答を起こせるのはIL-6のみである。IL-6は・SAA・フィブリノゲン・・α1アンチキモ・を増やし、同時にアルブミン・・を減らす。IL-1βとは正のに中等度の効果しかもたず、SAAとは誘導できない1。抗抗体(等)投与下でが感染があっても上がらなくなるのは、この関係の裏返しである。

急性期タンパクの機能分類

局所の炎症細胞(・マクロファージ)と組織細胞がサイトカインを産生し血中に放出、これに応答して肝臓が多種類のを産生する(感染・外傷時に血中濃度が劇的に増加または減少するタンパク群)。

機能 代表例
血液凝固 フィブリノゲン
CRP()、SAP、PTX3
α2(A2M、汎)、
()
C3、
その他の免疫調節因子 (マクロファージ活性化を抑制)
負の(濃度が下がる側) アルブミン、、——同じIL-6刺激で肝臓の合成配分が正のへ振り替えられる結果1

⭐ 「劇的に増加する」の幅はタンパクごとに桁が違う——ここが検査の使い分けを決める。 とSAAは最大1,000倍まで上がるのに対し、α1酸性糖タンパクとフィブリノゲンは約2〜4倍にとどまる2。SAAは限局した炎症で10〜100倍、重症細菌感染や慢性炎症性疾患ので1,000倍という幅をもち、低濃度(10〜100 ng/mL)では、高濃度(1,000 ng/mL以上)では細菌のと、濃度によって働きそのものが変わる3。の広い・SAAは「炎症があるか」の鋭敏な指標になり、レンジの狭いフィブリノゲンは指標としては鈍い。

検出法と臨床的意義

検出法 原理
フィブリノゲン濃度を反映
血清タンパク電気泳動 —
・SAA測定

⚠️ とは「同じ炎症」を別の物理量で見ている——だから乖離する。 は赤血球が沈む速さ、すなわちフィブリノゲンなど高分子タンパクの濃度と赤血球側の条件(数・形・大きさ)を間接的に反映する物理的測定である。一方は濃度そのものの直接測定で、しかも半減期19時間・分画率が濃度に依存しないため、血中濃度は合成速度だけで決まる4。つまりは肝臓が今どれだけ作っているかをほぼリアルタイムに映すが、は炎症が去っても数週間かけてゆっくり戻る。

⚠️ どちらも「正常なら炎症なし」とは言えない。 を受けた764例の検討では、生検陽性のに対する感度は 86.9%・ 84.1%で、生検陽性例の4%(7例)は診断時にもも正常だった5。両者を同時に測る意味はここにある——一致すれば診断確率が上がり、乖離しても片方が拾うことがある。

臨床的意義: 感染の検出、自己免疫の評価、治療のモニタリング、溶血性貧血の評価(低下を指標に)。

💡 サイトカインとAPPは「速報」と「総合診断」の関係。 の血中濃度はより速く変動する一方、は全身状態をより安定的・総合的に反映する——即時性を取るか、全体像のを取るかで使い分ける。

まとめ

  • は5徴候(発赤・熱感・腫脹・疼痛・機能障害)を呈し、白血球・・体液の動員により恒常性の回復を目指す急速な局所応答。
  • 転帰は治癒・線維化・・慢性化のいずれかに分岐し、慢性炎症では(を伴う濾胞)が異所性に形成されることがある。
  • ・は加齢に伴う低レベルで、由来サイトカイン・・変化・が背景にあり、心血管疾患リスクと関連する。
  • 全身性は→視床下部(発熱等)・軸(グルココルチコイド分泌)という経路で恒常性回復を図り、肝臓由来の(フィブリノゲン・・A2M/AAT・・C3・等)が凝固・・プロテアーゼ阻害・スカベンジング・補体・免疫調節という多彩な機能を担う。
  • ・血清タンパク電気泳動・/SAAの測定がの臨床評価に使われ、感染検出・自己免疫評価・治療モニタリングに応用される。

出典

  1. 1.Interleukin-6 is the major regulator of acute phase protein synthesis in adult human hepatocytes(FEBS Letters・1989)ヒト成人肝細胞で急性期タンパク合成を調節する単球由来サイトカインはIL-1β・TNF-α・IL-6の3つだが、ヒトの炎症状態で見られる全スペクトラムの急性期タンパク応答を誘導できるのはIL-6のみである。IL-6はCRP・血清アミロイドA・フィブリノゲン・α1アンチトリプシン・α1アンチキモトリプシン・ハプトグロビンの合成・分泌を増加させる一方、アルブミン・トランスフェリン・フィブロネクチンを減少させる。IL-1βとTNF-αは血清アミロイドAとCRPを誘導できない閲覧 2026-08-25
  2. 2.Properties of four acute phase proteins: C-reactive protein, serum amyloid A protein, alpha 1-acid glycoprotein, and fibrinogen(Seminars in Arthritis and Rheumatism・1990)正の急性期タンパクのうちCRPと血清アミロイドA(SAA)は最大1,000倍まで濃度が上昇しうるのに対し、α1酸性糖タンパクとフィブリノゲンは約2〜4倍にとどまる。いずれも主に肝臓で合成されるが肝外でも産生されうる。IL-6が急性期遺伝子発現の調節に中心的役割を果たし、IL-1・TNF-α・IFN-γもこれに関与する閲覧 2026-08-25
  3. 3.Structure and Expression of Different Serum Amyloid A (SAA) Variants and their Concentration-Dependent Functions During Host Insults(Current Medicinal Chemistry・2016)血清アミロイドA(SAA)はCRPと同じ急性期タンパクで、限局的な炎症では10〜100倍、重症細菌感染や慢性炎症性疾患の急性増悪では1,000倍まで上昇する。SAA1とSAA2は炎症性サイトカインで誘導されるがSAA4は構成的に産生される。低濃度(10〜100 ng/mL)では走化因子として働き、持続刺激下で高濃度(1,000 ng/mL以上)になると細菌のオプソニンとして直接働く閲覧 2026-08-25
  4. 4.Metabolic and scintigraphic studies of radioiodinated human C-reactive protein in health and disease(Journal of Clinical Investigation・1993)125I標識ヒトCRPの代謝回転研究で、健常者8名と関節リウマチ・SLE・感染症・腫瘍を含む入院患者35名のいずれでも血漿クリアランスはほぼ単指数関数的で同等であり、疾患による異化亢進は認めなかった。半減期は19時間で多くの血漿タンパクより速く、分画異化率は血漿CRP濃度に依存しない。したがってCRPの血中濃度を決めるのは合成速度だけであり、これが急性期反応を伴う疾患の活動性指標としてCRP測定が妥当である根拠になる閲覧 2026-08-25
  5. 5.Utility of erythrocyte sedimentation rate and C-reactive protein for the diagnosis of giant cell arteritis(Seminars in Arthritis and Rheumatism・2012)側頭動脈生検を受けた764例(うち生検陽性の巨細胞性動脈炎177例、23%)で、生検陽性に対する感度はCRP上昇86.9%・赤沈上昇84.1%であり、CRPの方がわずかに感度が高い。生検陽性例の7例(4%)は診断時に赤沈もCRPも正常だった——炎症マーカーが正常でも疾患を否定できない閲覧 2026-08-25