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Disease Atlas · 肝胆膵 · 疾患

急性膵炎

Acute pancreatitis

臓器系
肝胆膵
科目
Internal MedicinePathologySurgeryPediatrics
トピック
内科学 G-07:膵疾患内科学 L-53:急性膵炎病理学 C/53:膵炎外科学 S-14:急性・慢性膵炎小児科 3-41:急性膵炎・慢性膵炎
鑑別疾患
Boerhaave症候群
合併症
腹部コンパートメント症候群膵仮性嚢胞
続発疾患
敗血症急性呼吸窮迫症候群慢性膵炎
関連疾患
2型糖尿病肝硬変急性胆管炎
治療薬
モルヒネメロペネムイミペネム・シラスタチンフェノフィブラート
原因薬剤
コレセベラムデュラグルチドエクセナチドヒドロクロロチアジドリナグリプチンリラグルチドオクトレオチドセマグルチドシタグリプチンチゲサイクリンチルゼパチドバルプロ酸ビルダグリプチン
症状
悪心出血腹痛乏尿嘔吐
検査値
アミラーゼリパーゼ
画像所見
超音波内視鏡
スコア
BISAPスコア改訂Atlanta分類
組織像
膵脂肪壊死膵脂肪壊死(肉眼標本)急性膵炎急性膵炎
元疾患
CPT1A欠損症家族性高カイロミクロン血症家族性高トリグリセリド血症脂肪萎縮症消化性潰瘍全身性脂肪萎縮症多因子性カイロミクロン血症症候群流行性耳下腺炎輪状膵膵管内乳頭粘液性腫瘍
原因となる疾患
総胆管嚢腫胆石症嚢胞性線維症膵管癒合不全膵癌
禁忌薬
アシミニブアスパラギナーゼケノデオキシコール酸

🧠 全体像:は「膵内でが早期活性化し、と全身炎症を起こす急性疾患」である。診断は典型痛・酵素高値・画像所見の3項目中2項目で行い、重症度は臓器不全が48時間以内に改善するか(中等症)、48時間を超えて持続するか(重症)で決める()。初期治療の骨格は「中等度に積極的な輸液+十分な鎮痛+早期経口・」であり、への予防的抗菌薬やルーチンの早期造影CT・緊急は行わない。壊死性局所合併症は、感染を疑わない限り成熟()を待ってから低侵襲的に治療する「ステップアップ・アプローチ」が原則である。

定義と病態生理

は、原因が除かれれば正常化しうる可逆的な膵のである(不可逆的な線維化・内外分泌不全に至るとはこの点で区別される)。

、(アルコール、薬剤、外傷、虚血、ウイルス感染など)、細胞内輸送異常のいずれかを引き金に、膵内でがへ不適切に活性化されることが中心的事象である。活性化したが他の(リパーゼ、プロテアーゼ、など)を連鎖的に活性化し、膵実質のと放出を引き起こす。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='duct obstruction'>膵管閉塞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acinar cell injury'>腺房細胞傷害</span>・細胞内輸送異常"] --> B["膵内で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trypsinogen'>トリプシノゲン</span>が不適切に活性化"]
    B --> C["他の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='digestive enzyme'>消化酵素</span>も連鎖的に活性化"]
    C --> D["膵・膵周囲の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autodigestion'>自己消化</span>"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>放出"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='increased vascular permeability'>血管透過性亢進</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='third space'>サードスペース</span>への体液移行"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypovolemia'>循環血液量低下</span>・頻脈・低血圧"]
    G --> H["腎障害・呼吸不全など持続性臓器不全"]
    C --> I["リパーゼによる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fat necrosis'>脂肪壊死</span>"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free fatty acids'>遊離脂肪酸</span>とCa²⁺の結合(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='saponification'>石鹸化</span>)"]
    J --> K["低Ca血症"]
    C --> L["プロテアーゼ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elastase'>エラスターゼ</span>による血管傷害"]
    L --> M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhagic necrosis'>出血性壊死</span>・壊死感染"]

病理形態は(80〜90%、とが主体で死亡率は低い)と、(10〜15%だが、腺房・導管・の壊死と血管傷害を伴い死亡率が明確に高い)に大別される。局所ではによる低Ca血症、・壊死性貯留の形成が、全身では、、、、二次性(膵性)糖尿病が問題になる。

原因

胆石(40〜70%)とアルコール(25〜35%)が2大原因で、両者で大半を占める1。両者が否定的なら、、高Ca血症、薬剤、後、外傷・虚血、自己免疫・遺伝性、腫瘍・解剖異常を順に検索する。

原因群 具体例・手掛かり
胆石性 最多。胆石・、上昇、黄疸を伴うことが多い
アルコール性 大量・長期摂取歴。を背景にすることもある
特に1,000 mg/dL以上でリスクが高い。採血までの時間で値が低下しうる
薬剤性 、バルプロ酸、L-など。時間関係の確認と他原因の除外が必要
後 処置後の典型的な腹痛と上昇
高Ca血症 などの背景を検索する
外傷・虚血・医原性 (小児ではが典型)、ショック、術後
自己免疫・遺伝性 関連疾患、PRSS1・SPINK1・CFTR・CTRC関連など
腫瘍・解剖異常 膵・乳頭部腫瘍、、、など。40歳超の原因不明例や小児の反復例で特に検索する

「特発性」とする前に、既往歴の再確認、トリグリセリド・Ca値、薬剤歴、自己免疫マーカー、画像の再評価(、など)を行う。小児では成人と異なり、胆石・アルコール以外に薬剤性、外傷、(敗血症、ショック、)、解剖異常、の比重が大きい。

臨床像

  • を中心とした突然の持続性腹痛で、しばしば背部へ放散する。仰臥位や食後に増悪し、で軽減することがある。
  • 悪心・嘔吐、腹部膨満、音低下を伴う。
  • 重症例ではを伴うの様相を呈し、低血圧、頻脈、乏尿、低酸素血症など臓器不全の徴候を示す。
  • 臍周囲の、のは皮下出血によるまれな所見だが、出血性・を示唆する。
  • 乳幼児では典型的な腹痛の訴えが困難で、不機嫌、、腹部をかばう姿勢など非特異的な症状で気づかれることがある。

診断

以下の3項目のうち2項目以上を満たせばと診断する1。

  1. に典型的な持続性腹痛(〜上腹部、を伴うことがある)
  2. 血清リパーゼまたはがの3倍超
  3. 造影CT、、超音波でに一致する特徴的な画像所見
flowchart TD
    A["典型的腹痛・嘔吐・臓器障害から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute pancreatitis'>急性膵炎</span>を疑う"] --> B["血清リパーゼ/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amylase'>アミラーゼ</span>を測定"]
    A --> C["腹部超音波で胆石・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bile duct dilatation'>胆管拡張</span>を評価"]
    B --> D{"3項目中2項目を満たすか<br>(典型痛/酵素3倍超/画像所見)"}
    C --> D
    D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute pancreatitis'>急性膵炎</span>と診断"]
    D -->|"いいえ・診断不確実"| F["造影CT/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>を追加"]
    F --> E
    E --> G["最初の24〜48時間、バイタル・尿量・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood urea nitrogen'>BUN</span>・Ht・酸素化を反復評価"]
    G --> H{"48時間を超えて<br>臓器不全が持続するか"}
    H -->|"いいえ(一過性または局所/全身合併症のみ)"| I["中等症"]
    H -->|"いいえ(臓器不全・局所全身合併症なし)"| J["軽症"]
    H -->|"はい"| K["重症"]
  • 血清リパーゼはより膵特異性が高く、受診が遅れた患者でも上昇が持続しやすい。ただし酵素値の高さは重症度と相関せず、診断確定後に酵素値を追跡する意義はない1。
  • 全例で胆道系評価のため腹部超音波を行う。初回陰性でも胆石性が強く疑われれば再検する。
  • 診断が明らかで臨床的に軽快している患者に、入院直後からルーチンで造影CTを行う必要はない。診断が不確実、48〜72時間で改善しない、局所合併症が疑われる場合に施行する1(壊死の評価目的なら発症後少なくとも72時間待つのが目安)。
  • 胆管結石の例ではまたはを用い、診断だけを目的としたは避ける。
  • 小児のも成人と同じ「2項目以上」の枠組みを用いる。成人用の重症度スコア(BISAPなど)をそのまま小児へ流用しない。

改訂Atlanta分類(重症度)

重症度 定義
軽症 臓器不全なし、局所・全身合併症なし
中等症 48時間以内に改善する、または局所・全身合併症を伴う
重症 48時間を超えて(単臓器または多臓器)2

入院時の1点だけのスコアに頼らず、最初の24〜48時間に、尿量、、、Cr、酸素化、の有無を反復評価する。の上昇・非低下、高値、肥満、胸水、意識変容、の持続は重症化を示唆する。BISAPやAPACHE IIは補助的に用いるが、単一スコアより臨床経過の推移を重視する。

局所合併症(発症時期・組織による分類)

病型 4週未満 4週以降()

・はいずれも上皮の裏打ちを欠く貯留である2。「」は液体成分のみのと固形壊死成分を含むを区別しない曖昧な旧称であり、現在は用いない。発熱やだけで感染性壊死と判断せず、敗血症の徴候、貯留内ガス像、などを総合して判断する。

治療

初期治療の骨格

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute pancreatitis'>急性膵炎</span>と診断"] --> B["循環・呼吸・腎機能・尿量を反復評価"]
    B --> C["中等度に積極的な輸液<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='American College of Gastroenterology'>ACG</span>は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lactated Ringer&#39;s solution'>乳酸リンゲル液</span>を優先。条件付き推奨)"]
    C --> D["数時間ごとにバイタル・尿量・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood urea nitrogen'>BUN</span>・Htで補液を調整"]
    B --> E["オピオイドを含む十分な鎮痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiemesis'>制吐</span>"]
    B --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tolerability'>忍容</span>できるか"}
    F -->|"はい"| G["24〜48時間以内に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-fat meal'>低脂肪食</span>で経口摂取再開"]
    F -->|"いいえ(中等症・重症)"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enteral nutrition, EN'>経腸栄養</span>を優先<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasogastric tube (NG tube)'>経鼻胃管</span>でも可"]
    A --> I{"胆管炎または<br>持続する胆道閉塞か"}
    I -->|"あり"| J["24時間以内を目安に早期<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endoscopic retrograde cholangiopancreatography'>ERCP</span>"]
    I -->|"なし"| K["ルーチンの緊急<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endoscopic retrograde cholangiopancreatography'>ERCP</span>は行わない"]
    A --> L{"軽症<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gallstone pancreatitis'>胆石性膵炎</span>か"}
    L -->|"はい"| M["同一入院中に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cholecystectomy'>胆嚢摘出術</span>"]
    A --> N{"感染性壊死を疑うか"}
    N -->|"いいえ(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aseptic necrosis'>無菌性壊死</span>)"| O["予防的抗菌薬は投与しない"]
    N -->|"はい"| P["抗菌薬開始+成熟を待ったステップアップ・アプローチ"]
領域 現在の推奨・要点
輸液 中等度に積極的な(moderately aggressive)輸液を行い、の所見があれば追加を入れる。液種はがをより優先することを提案している(推奨4。ただし条件付き推奨・エビデンスの質は低いであって強い推奨ではない)。⚠️ は「」という呼び方を明示的に退け、「目標を外さない(do not miss the goal)治療」と考えるべきだとしている。画一的な大量(aggressive bolus resuscitation)は、心・腎疾患や高齢者に限らず容量過剰のリスクを増やすだけで臨床転帰を改善しないため避け、バイタル、尿量、、で数時間ごとに再評価・調整する31
鎮痛 オピオイドを含め十分な鎮痛を行う。特定のだけを機械的に避ける必要はない
栄養 軽症では悪心・嘔吐やイレウスがなければ24〜48時間以内に低脂肪固形食を開始し、透明液から段階的に上げる必要はない。経口不能な中等症・重症例ではよりを優先し、はとほぼ同等に使用できる14
抗菌薬 への予防的抗菌薬は投与しない。胆管炎、感染性壊死、肺炎など感染が明確に疑われる場合に限り、膵の良いを中心に治療する14
胆管炎を伴う場合は原則24時間以内に行う。胆管炎も持続性胆道閉塞もないへ緊急をルーチン施行しない1
胆嚢摘出 軽症では再発予防のため同一入院中(できれば退院前)にを行う1。や大きな貯留を伴う例は時期を個別化する

鎮痛にはモルヒネなどのオピオイドを用いる。感染性壊死が確認・強く疑われる場合の抗菌薬は、膵組織へのが良い(、)を中心に選択する。

⚠️ かつて教えられていた画一的な大量急速輸液(例:数時間で大量)は、WATERFALL試験でを増やすだけで中等症以上への進展を減らさないことが示され3、現行の()ガイドラインは中等度に積極的な(moderately aggressive)輸液を提案し、の所見があるときに追加を行うとしている(推奨3、条件付き推奨・エビデンスの質は低い)1。⚠️ 液種の優劣は「決着済み」ではない。 同じの推奨4は「をより優先すること」を条件付き推奨・エビデンスの質は低いとして提案しているにとどまり、 2019は液種を特定せず「が推奨される」(1B)と書く14。ガイドラインも早期の自体は支持しつつ、が有害であることを理由に血行動態の頻回な再評価で投与量を調整するよう求めており、早期型治療の価値そのものは不明としている4。同様に、長期絶食やへの予防的抗菌薬投与も現在は推奨されない14。

壊死・局所合併症への介入

は原則保存的に管理し、抗菌薬もも行わない。感染性壊死でも患者が血行動態的に安定していれば、抗菌薬で介入を遅らせ、貯留の壁が成熟する約4週後を目標にする(も「安定した壊死例では介入をできれば4週間遅らせる」としている)14。経皮的または内視鏡的ドレナージから開始し、改善しなければ低侵襲的な、それでも不十分なら開腹手術へ進む「ステップアップ・アプローチ」が基本である5。

⭐ 経皮的・内視鏡的ドレナージの適応は「感染したかどうか」のではなく、発症からの時期で3段に分かれる(WSES 2019、いずれも grade 1C)4。

時期 適応
時期を問わない 感染性の徴候または強い疑いを伴う臨床的な増悪(ただし抗菌薬のみで軽快する患者が一定数いる)
発症4週以降 ① 感染性壊死の徴候が無いまま
② 大きなによる路・胆道・腸管の閉塞の持続
③ の(壊死でが途中で切れ、遠位に残った生存膵から膵液が漏れ続ける状態)
④ 症状のある、または増大する
発症8週以降 持続する疼痛・不快感

⚠️ 「感染したら介入、それ以外は4週待つ」と2分して覚えない。4週の段は4項目あり、閉塞・の・増大するは臓器不全が無くても適応になる。逆に疼痛だけを理由に介入するのは8週以降である。

、制御不能な出血、・穿孔がある場合は、成熟を待たず緊急に介入する。やは大きさだけで処置を決めず、感染、疼痛、出血、閉塞、増大などの症状・合併症の有無で内視鏡的ドレナージなどを検討する。

併存症・長期合併症

  • 重症例で循環不全や感染性壊死がや敗血症様の病態に進展した場合は、敗血症に準じた臓器支持とを行う。
  • 反復するやへの進展はインスリン・グルカゴン双方の低下によるを来し、低血糖を起こしやすい点で2型糖尿病の管理とは異なる注意が必要である。は2型糖尿病のコントロール不良と合併しやすく、両者を同時に管理する。
  • はアルコール性肝硬変と共通の背景(長期・大量飲酒)を持つことが多く、支援と肝機能評価を並行して行う。

まとめ

  • は典型的腹痛、3倍超、画像所見の3項目中2項目で診断する。
  • 原因は胆石とアルコールが最多。(特に1,000 mg/dL以上)、高Ca血症、薬剤、後、自己免疫・遺伝性、腫瘍・解剖異常も検索する。
  • では、48時間以内に改善するを中等症、48時間を超える持続性臓器不全を重症とする。
  • 初期治療は中等度に積極的な輸液(があれば追加)、十分な鎮痛、24〜48時間以内の早期経口・が骨格であり、への予防的抗菌薬とルーチンの早期造影CT・緊急は避ける。液種はがをより優先することを条件付き推奨・エビデンスの質は低いとして提案している段階で、は「」としか書いていない。
  • 胆管炎合併時のみ早期を行い、軽症は同一入院中にを行う。
  • 感染性壊死は可能な限り貯留の成熟(約4週)を待ち、ドレナージから始めるステップアップ・アプローチで治療する。ドレナージの適応は時期で3段に分かれ、感染を疑う増悪はいつでも、4週以降は・閉塞・の・症状のある/増大する、8週以降は持続する疼痛である(いずれも1C)。
  • 小児は胆石・アルコール以外の原因(薬剤、外傷、、解剖異常、)の比重が大きく、成人用の重症度スコアをそのまま流用しない。

出典

  1. 1.American College of Gastroenterology Guidelines: Management of Acute Pancreatitis(The American Journal of Gastroenterology・2024)ACG 2024ガイドラインは、急性膵炎の診断を「(i)本症に一致する腹痛、(ii)血清アミラーゼおよび/またはリパーゼが基準上限の3倍超、(iii)特徴的な腹部画像所見」の3項目中2項目で確立するとし、診断確定後は酵素値を追跡する理由がない(重症度・予後・再開食や退院の判断と関係しない)と明記する。重症度判定目的の入院時ルーチンCTは行わず、診断不明例または入院後48〜72時間で臨床的に改善しない例に限るとする(Key concept 1)。原因は胆石40〜70%、アルコール25〜35%とする。推奨は、3. 中等度に積極的な(moderately aggressive)輸液蘇生を行い、循環血液量減少の所見があれば追加ボーラスを要する、4. 乳酸リンゲル液を生理食塩水より優先、5. 胆管炎を伴わない胆石性急性膵炎では早期(72時間以内)ERCPより内科的治療、8. 重症急性膵炎への予防的抗菌薬は行わない、10. 軽症例では忍容できる限り24〜48時間以内の早期経口摂取、11. 軽症例では透明流動から段階的に上げるのではなく低脂肪固形食で開始。Key concept 21として軽症胆石性膵炎は早期に、できれば退院前に胆嚢摘出(退院させた998例では18%が胆道イベントで再入院、うち8%が胆石性膵炎の再発)、Key concept 13として「胆管炎を合併した急性膵炎では、24時間以内の早期ERCPが罹病率と死亡率を低下させることが示されている」、Key concept 14として胆管炎・黄疸がない場合に総胆管結石を疑うならERCPの前にMRCPまたはEUSでスクリーニングし診断目的のERCPは避けるとする。Key concept 23として安定した膵壊死例では貯留の壁の成熟を待ち、できれば4週間、介入(外科的・放射線学的・内視鏡的)を遅らせるとする。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Classification of acute pancreatitis--2012: revision of the Atlanta classification and definitions by international consensus(Gut・2013)改訂Atlanta分類は急性膵炎を早期・後期の2相に分け、重症度を軽症(臓器不全も局所・全身合併症もなく通常1週以内に軽快)・中等症(一過性臓器不全、局所合併症、または併存疾患の増悪)・重症(持続性臓器不全、すなわち48時間を超える臓器不全)の3段階と定義する。局所合併症は膵周囲液体貯留、膵実質および膵周囲の壊死(無菌性または感染性)、仮性嚢胞、被包化壊死(無菌性または感染性)と定義される。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-05
  3. 3.Aggressive or Moderate Fluid Resuscitation in Acute Pancreatitis(New England Journal of Medicine・2022)18施設で急性膵炎患者を乳酸リンゲル液による目標指向型の積極輸液(20 mL/kgボーラス後3 mL/kg/時)と中等度輸液(循環血液量減少例のみ10 mL/kgボーラス、正常血液量例はボーラスなし、以後全例1.5 mL/kg/時)に無作為割り付けしたWATERFALL試験。中間解析の249例で主要評価項目である中等症以上への進展は積極輸液群22.1%対中等度輸液群17.3%(調整相対リスク1.30、95%CI 0.78〜2.18、P=0.32)と差がなく、安全性評価項目の体液過剰が20.5%対6.3%(調整相対リスク2.85、95%CI 1.36〜5.94、P=0.004)と積極輸液群で多かったため試験は中止された。閲覧 2026-09-05
  4. 4.2019 WSES guidelines for the management of severe acute pancreatitis(World Society of Emergency Surgery・2019)全文(PMC6567462)で確認した。WSES 2019は輸液について「早期輸液蘇生は血行動態の悪化を待たずに組織灌流目標を最適化するために適応となる。体液過剰が有害であることが知られているため、輸液投与は血行動態の頻回な再評価に導かれるべきである。等張晶質液が推奨される(1B)」とし、本文で「急性膵炎における早期目標指向型治療の価値は不明のままである」と述べる。予防的抗菌薬は死亡率・合併症率を有意に下げず全例へのルーチン投与はもはや推奨されない(1A)。感染性壊死には膵壊死へ移行する抗菌薬を用い(1B)、カルバペネムは膵組織移行性が良く嫌気性菌もカバーすると記載する。経腸栄養を推奨しTPNは避け、胃投与・空腸投与のいずれも安全に行える(1A)。外科的介入を発症から4週間を超えて遅らせると死亡率が低下する(2B)。経皮的・内視鏡的ドレナージの適応(grade 1C)は時期で3段に分かれ、逐語で "Clinical deterioration with signs or strong suspicion of infected necrotizing pancreatitis is an indication to perform intervention (percutaneous/endoscopic drainage)"、"After 4 weeks after the onset of the disease: On-going organ failure without sign of infected necrosis / On-going gastric outlet, biliary, or intestinal obstruction due to a large walled off necrotic collection / Disconnected duct syndrome / Symptomatic or growing pseudocyst"、"After 8 weeks after the onset of the disease: On-going pain and/or discomfort" の6項目である。外科的介入の適応(1C)はstep-up approachの続き・腹部コンパートメント症候群・血管内治療が奏効しない持続する出血・腸管虚血または急性壊死性胆嚢炎・膵周囲貯留へ及ぶ腸瘻の5項目。閲覧 2026-09-05
  5. 5.A Step-up Approach or Open Necrosectomy for Necrotizing Pancreatitis(The New England Journal of Medicine・2010)壊死性膵炎で感染壊死が疑われるか確認された88例を開腹壊死組織除去(45例)と、経皮ドレナージに続いて必要なら低侵襲後腹膜的壊死組織除去を行うステップアップ・アプローチ(43例)に割り付けたPANTER試験。主要複合評価項目(重大合併症または死亡)は開腹群69%対ステップアップ群40%(リスク比0.57、95%CI 0.38〜0.87、P=0.006)でステップアップ群が良好、新規多臓器不全は12%対40%(P=0.002)。ステップアップ群の35%は経皮ドレナージのみで治療が完結した。死亡率自体は19%対16%(P=0.70)で有意差はなかった。閲覧 2026-09-05