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Disease Atlas · 肝胆膵 · 疾患

膵仮性嚢胞

Pancreatic pseudocyst

別名
膵偽嚢胞
臓器系
肝胆膵
科目
SurgeryInternal Medicine
トピック
外科学 B/15:急性膵炎の外科的側面(症状・診断・治療)内科学 G-07:膵疾患
上位概念
膵嚢胞性病変
鑑別疾患
膵管内乳頭粘液性腫瘍
症状
腹痛早期満腹感悪心嘔吐閉塞性黄疸
検査値
アミラーゼリパーゼ
画像所見
超音波内視鏡
スコア
改訂Atlanta分類
元疾患
急性膵炎

🧠 全体像:「仮性」という語が全ての出発点になる——は上皮に裏打ちされていない、炎症組織の壁で囲まれた液体貯留であり、上皮を持つ腫瘍性の(IPMN・MCNなど)とは病態がまったく異なる。の発症から4週間以降、壁が成熟してはじめてと呼べる(4週未満の未成熟な段階は「」と呼び分ける——の用語)。⚠️ 多くは自然に縮小・消退するため、大きさだけで介入を決めない。 症状・感染・出血(破裂)があってはじめて治療対象になり、治療の第一選択はEUS下経消化管ドレナージである。

原因・疫学:多くは膵炎の合併症

は年間10万人あたり約1例の頻度で生じ、成人に多く、・という背景疾患そのものの疫学を反映してやや男性に多い1。

背景 頻度の目安
全体の約60〜80%(アルコール消費の多い地域)
に伴う頻度 5〜16%
に伴う頻度 10〜30%(より高い)
その他 特発性、、鈍的・、術後

上記はいずれもStatPearlsの記述に基づく1。

定義:「仮性」の意味と、被包化壊死(WON)との違い

⚠️ の壁には上皮が無い。 炎症性のだけで囲まれた酵素に富む液体貯留であり、壊死組織をほとんど含まない1。このという一点が、上皮に裏打ちされる腫瘍性嚢胞(IPMN・MCNなど)との決定的な違いであり、両者を混同しない。

は、の局所合併症を膵炎のタイプと時期の2軸で整理する2。

膵炎のタイプ 4週未満(未成熟) 4週以降(成熟)
(WON)
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute pancreatitis'>急性膵炎</span>"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial edema'>間質性浮腫</span>性か壊死性か"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial edema'>間質性浮腫</span>性"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute peripancreatic fluid collection'>急性膵周囲液体貯留</span><br>(4週未満、壁が未成熟)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic pseudocyst'>膵仮性嚢胞</span><br>(4週以降、壁が成熟・液体主体)"]
    B -->|"壊死性"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute necrotic collection'>急性壊死性貯留</span><br>(4週未満、壁が未成熟)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='walled-off necrosis'>被包化壊死</span>(WON)<br>(4週以降、壁が成熟・固形壊死成分を含む)"]

⚠️ とWONの区別が治療法を分ける。 は液体主体のためドレナージのみで対応できることが多いが、WONは不均一で固形の壊死成分を含む貯留として画像上区別され、ドレナージに加えて壊死組織の除去()を要することが多い1。壁が成熟する前(4週未満)は、緊急性の高い合併症(、制御不能な出血、・穿孔など)がない限り、成熟を待ってから介入するのが原則である。

嚢胞液分析:腫瘍性嚢胞との鑑別

穿刺できる場合、の性状は腫瘍性のとの鑑別に役立つ。は膵管と交通していることが多いため、・リパーゼが液体中に漏出して高値になりやすい。一方では低値にとどまり、IPMN・MCNなどの腫瘍性嚢胞でが高値・が低値〜正常になる点と対照的である3。・リパーゼ高値かつ低値という組み合わせが、を腫瘍性嚢胞から区別する手がかりになる。

自然経過:多くは自然消退する

⭐ 無症候・非合併のの77〜84%は自然に縮小するか消退する1。このの良さが、「大きさだけで切ったり穿刺したりしない」というの根拠になる。

介入の適応

⚠️ 大きさそのものは介入の適応にならない。 現行のガイドラインが介入を推奨するのは、次のいずれかがある場合に限られる1。

適応 内容
症状 持続する腹痛、、悪心・嘔吐の持続
消化管・胆道の閉塞 の、
感染 発熱・を伴う感染兆候
出血 嚢胞内に生じたの破裂による消化管出血・貧血

💡 の合併は見逃すと致死的になりうる。 による血管壁のでが形成され、これが破裂すると・消化管出血を来す。原因不明の低下や嚢胞の急激な増大をみたら、単純なではなく形成を疑い、造影CTやでの評価を急ぐ。

画像診断:CT/MRI/EUSでの見え方

⭐ 造影CTが第一選択の画像検査である。 感度82〜100%と報告され、嚢胞の大きさ・部位・壁の厚さ・壊死組織や石灰化の有無を評価できる1。典型的には境界明瞭なの域として描出され、腫瘍性嚢胞でみられる隔壁やを欠く。(併用)は、所見が判然としない場合や内容液が複雑(出血・壊死成分を含む)な場合に有用である1。

⚠️ EUSで腫瘍性嚢胞を疑う所見は、壁厚3 mm超、隔壁の存在、、の拡張である。これらを認めたらではなく腫瘍性のを再考する1。

治療:EUS下経消化管ドレナージが第一選択

flowchart TD
    A["症候性・合併症を伴う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic pseudocyst'>膵仮性嚢胞</span>"] --> B["壁の成熟(発症4週以降)を確認"]
    B --> C{"内視鏡的アプローチが可能か"}
    C -->|"可能"| D["EUS下経消化管ドレナージ<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transgastric'>経胃</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transduodenal'>経十二指腸</span>)"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plastic stent'>プラスチックステント</span>または<br>lumen-apposing metal stent(LAMS)を留置"]
    C -->|"不可能・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='(treatment) response'>奏効</span>しない"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='percutaneous drainage'>経皮的ドレナージ</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical drainage'>外科的ドレナージ</span>"]

⭐ EUS下経消化管ドレナージが現在の第一選択治療である。 非EUSアプローチに比べ率が高く(約95%)、越しに嚢胞へ直接アプローチできる1。留置するはダブルピッグテール型とLAMSのいずれも用いられ、現時点でどちらが優れるかは確立していない1。や(など)は、内視鏡的アプローチが技術的に困難、あるいはしない場合に位置づけられる。

まとめ

  • は上皮に裏打ちされていない液体貯留であり、上皮を持つ腫瘍性の(IPMN・MCNなど)とは病態が異なる。
  • では、発症4週以降に成熟した貯留を()またはWON()と呼び分け、⚠️ 両者の鑑別が治療法(ドレナージのみかを要するか)を左右する。
  • 多くは自然消退するため、⚠️ 大きさだけで介入しない。 症状・消化管や胆道の閉塞・感染・出血(破裂)が介入の適応になる。
  • 治療の第一選択はEUS下経消化管ドレナージで、が困難・無効な場合に経皮的・へ進む。

出典

  1. 1.Pancreatic Pseudocyst(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)膵仮性嚢胞が「炎症組織からなる非上皮性の壁に囲まれ、壊死成分をほとんど含まない酵素に富む液体の被包化貯留」と定義され、この非上皮性という点が真の嚢胞と区別する根拠であること、被包化壊死(WON)は非液体成分を含む不均一な貯留として画像上区別されること、成熟した壁の形成に発症から4〜6週間を要し介入前にこの成熟を待つのが通常であること、無症候・非合併例では77〜84%が自然に縮小・消退すること、大きさのみを介入の適応にせず持続する疼痛・早期満腹感・感染・出血・消化管や胆道の閉塞を適応とすること、内視鏡的ドレナージが現在の第一選択治療でありEUS下経消化管ドレナージの技術的成功率が約95%と非EUSアプローチより高いこと、ドレナージにはダブルピッグテール型プラスチックステントとlumen-apposing metal stent(LAMS)のいずれも用いられ優劣は確立していないこと、経皮的・外科的アプローチは内視鏡治療が奏効しない場合や実施困難な場合に限られることを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Classification of acute pancreatitis--2012: revision of the Atlanta classification and definitions by international consensus(Gut・2013)改訂Atlanta分類が急性膵炎の局所合併症を、間質性浮腫性膵炎に伴う急性膵周囲液体貯留(4週未満)とその成熟形である膵仮性嚢胞(4週以降)、壊死性膵炎に伴う急性壊死性貯留(4週未満)とその成熟形である被包化壊死(WON、4週以降)に整理していることを確認した。閲覧 2026-08-19
  3. 3.Cyst fluid analysis in the differential diagnosis of pancreatic cystic lesions: a pooled analysis(Gastrointestinal Endoscopy・2005)嚢胞液のアミラーゼ・CEA・CA19-9・細胞診を用いた膵嚢胞性病変(粘液性嚢胞腺腫・粘液性嚢胞腺癌・膵仮性嚢胞・漿液性嚢胞腺腫)の鑑別診断能を評価したプール解析であり、仮性嚢胞は膵管との交通を反映してアミラーゼが高値になりやすく、CEAは低値にとどまる一方、粘液性腫瘍性嚢胞はCEA高値・アミラーゼ低値〜正常になりやすいという対照的なパターンを確認した。閲覧 2026-08-19