小児科学

小児科学 · 3-41

急性膵炎・慢性膵炎

Acute and chronic pancreatitis

前提:病態
膵炎
前提:正常
消化腺:膵臓消化器系:前腸(膵芽の癒合)
疾患
急性膵炎総胆管嚢腫

🧠 全体像:小児は、典型的腹痛、上昇、画像所見の3項目中2項目で診断する1。成人と異なり、胆石・アルコールだけでなく薬剤、外傷、感染、、解剖異常、が重要である2。治療は、適切な輸液・鎮痛、原因治療が中心で、予防的抗菌薬や不要な早期を避ける。

急性膵炎

診断基準

では次のうち2項目以上を満たす1。小児のは世界的には上昇傾向にあるが地域差が大きい。Global Burden of Disease 2019の解析では1990〜2019年に小児・思春期のが世界全体で年平均0.30%ずつ上昇し、低所得地域で特に顕著だった一方3、米国の民間医療保険データ(2007〜2014年)では小児のは人口10万人あたり12.3人前後でほぼ横ばいだった4。

  1. に合う腹痛(〜上腹部、を伴うことがある)
  2. 血清またはリパーゼがの3倍以上
  3. 超音波、/、などでに合う画像所見

嘔吐、腹部膨満、低下、を伴う。乳幼児では不機嫌、、腹部を守る姿勢など非特異的なことがある。

原因

原因群 例・手掛かり
胆道・解剖 胆石、、、、
薬剤・毒物 バルプロ酸、、L-など。と時間関係を確認
外傷・医原性 、後
全身・代謝 敗血症、ショック、、高Ca血症、
感染・自己免疫 ウイルス感染、など
遺伝 PRSS1、SPINK1、CFTR、CTRCなど。再発・若年・家族歴で検討5

重症度と画像

小児分類では、一過性臓器障害または局所/全身合併症を中等症、48時間を超える持続臓器障害を重症とする。成人用を小児へそのまま用いない6。

💡 は反復・慢性例で高頻度に見つかる。 (INSPPIRE、301例)では、少なくとも1つの膵炎関連遺伝子変異がの48%・の73%で同定され、PRSS1・SPINK1変異はよりへの進展と関連していた(はそれぞれ4.20、2.30)。は反復例・若年発症・家族歴のある例で特に検討される。5

超音波を初期画像に用い、胆石・も確認する。診断が明らかな軽症例に造影CTをルーチン撮影しない。診断不明、悪化、壊死・合併症評価では/または造影CTを選び、壊死評価目的のは通常発症後少なくとも72時間待つ。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute pancreatitis'>急性膵炎</span>を診断"] --> B["循環・酸素化・尿量・臓器障害を評価"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isotonic crystalloid'>等張晶質液</span>を反復評価しながら投与<br>十分な鎮痛"]
    C --> D["耐えられれば早期経口・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enteral nutrition, EN'>経腸栄養</span>"]
    D --> E["原因検索:胆道、薬剤、外傷<br>代謝、感染、解剖、遺伝"]
    E --> F["48時間超の臓器障害/局所合併症"]
    F --> G["PICU・多職種管理<br>感染性壊死や閉塞を個別治療"]
  • 輸液は循環、尿量、、、呼吸状態を反復し、を避ける。
  • 軽症では嘔吐・痛みが許せば24〜48時間以内に通常食を再開する。経口不可でも胃管を優先し、は腸管使用不能時に限る。7
  • へ予防的抗菌薬を投与しない。胆管炎、菌血症、感染性壊死など感染が疑われる場合に用いる。
  • は胆管炎または持続する胆道閉塞などがある場合に限る。では状態安定後の同一入院中胆嚢摘出を検討する。
  • への介入は、可能ならを待ち、内視鏡・経皮・外科によるステップアップ・アプローチ(step-up approach)を選ぶ。

⚠️ 「膵臓を休ませる」ための絶食は見直されている。 かつてはで膵の安静を保つため数日間の絶食が標準とされた。米国の小児病院で成人向け早期管理指針(早期輸液・48時間以内の開始)導入前後の入院201例を比較した後方視研究では、指針導入後にを受けた群で短縮・入室減少・重症化率低下が見られた。ただし同研究はと早期輸液を組み合わせた効果を見たものであり、単独をして検証したものではない。7

急性反復性膵炎と慢性膵炎

は、正常化する間隔を挟んでを反復する状態である。は不可逆的な線維化・膵管変化に、疼痛または/内分泌機能障害を伴う。

領域 主な所見・評価
症状 反復する上腹部痛・、体重減少、、黄疸
形態 膵萎縮、線維化、石灰化、膵管拡張・狭窄、
外分泌 、、、栄養・成長
内分泌 血糖、、
原因評価 ±、選択例でEUS、遺伝学的検査、CF評価

管理は禁煙・飲酒回避、十分な栄養、補充、補正、糖尿病治療、段階的鎮痛を行う。固定、、、難治痛では内視鏡またはを専門施設で選ぶ。

まとめ

  • 小児は腹痛、3倍以上、画像の3項目中2項目で診断する。
  • 成人用BISAPを流用せず、48時間を超える臓器障害を重症の軸とする。
  • を優先し、無菌性膵炎・壊死への予防的抗菌薬を用いない。
  • 反復例では解剖異常・を調べ、慢性例では栄養・・を追跡する。

出典

  1. 1.Definitions of pediatric pancreatitis and survey of present clinical practices(Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition(INSPPIRE Consortium)・2012)INSPPIRE(International Study Group of Pediatric Pancreatitis)コンソーシアムは、小児急性膵炎を「急性膵炎に合う腹痛」「血清アミラーゼ/リパーゼが基準上限の3倍以上」「急性膵炎に合う画像所見」の3項目中2項目以上と定義し、急性反復性膵炎は間欠期を挟む2回以上の急性膵炎エピソード、慢性膵炎は典型的腹痛+特徴的画像所見、または外分泌/内分泌機能不全+画像所見で診断すると定めたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Acute Pancreatitis in Children: It's Not Just a Simple Attack(Gastroenterology・2025)小児急性膵炎は成人の病像とは異なる特有の課題を持ち、死亡率は成人より低いが有意な罹患と長期合併症(外分泌・栄養障害、内分泌機能障害、糖尿病、慢性疼痛、生活の質の低下)を来しうること、膵炎関連遺伝子が慢性・反復性膵炎への進展に関与することを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Global, regional, and national burden of pancreatitis in children and adolescents(United European Gastroenterology Journal(Global Burden of Disease研究)・2025)Global Burden of Disease 2019データを用いた1990〜2019年の小児・思春期(0〜19歳)における世界の膵炎罹患率の解析で、年齢調整罹患率は世界全体で年平均0.30%ずつ上昇し(95%信頼区間0.28-0.32)、低socio-demographic index地域で上昇が特に大きかった一方、年齢調整死亡率・DALY率は同期間に低下したことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 5.Risk Factors Associated With Pediatric Acute Recurrent and Chronic Pancreatitis: Lessons From INSPPIRE(JAMA Pediatrics・2016)INSPPIREコンソーシアムに登録された19歳以下の小児301例(急性反復性膵炎155例、慢性膵炎146例)の多施設横断研究で、膵炎関連遺伝子の変異が急性反復性膵炎の48%・慢性膵炎の73%で同定され(P<.001)、PRSS1変異(オッズ比4.20、95%信頼区間2.14-8.22)およびSPINK1変異(オッズ比2.30、95%信頼区間1.03-5.13)を持つ児は急性反復性膵炎より慢性膵炎として発見されやすかったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 6.Acute Pancreatitis: A Review(JAMA・2021)BISAPやAPACHE IIなどの重症度予測スコアは成人の急性膵炎コホートで開発・検証されたものであり、全ての急性膵炎に等しく有効な単一の指標は存在しないこと、成人では原因検索の結果に応じて胆嚢摘出や禁酒支援など胆石・アルコールを標的とした再発予防策を退院前後に行うべきことを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 7.Early Enteral Nutrition and Aggressive Fluid Resuscitation are Associated with Improved Clinical Outcomes in Acute Pancreatitis(The Journal of Pediatrics・2015)米国の小児病院で成人の急性膵炎管理指針(入院24時間以内の高用量輸液、48時間以内の経腸栄養開始)を導入した前後で急性膵炎入院201例を比較した後方視研究で、指針導入後に入院48時間以内に経腸栄養を受け24時間以内に維持量を超える輸液を受けた群は、絶食を継続し輸液量も少なかった群と比べ在院日数が短く、集中治療室入室・重症急性膵炎への進展が少なかったことを確認した(早期経腸栄養と早期輸液を組み合わせた効果であり、経腸栄養単独を無作為化して検証した試験ではない)。閲覧 2026-08-27