小児科学

小児科学 · 3-40

食道疾患:胃食道逆流症・好酸球性食道炎・食道閉鎖・狭窄

Esophageal disorders: GERD, EoE, atresia, and stenosis

前提:病態
食道の病理
前提:正常
呼吸器系:臨床(気管食道瘻)
疾患
Sandifer症候群胃食道逆流症喉頭裂好酸球性食道炎腐食性物質誤飲
症状
溢乳

🧠 全体像:食道疾患では、胃内容がこみ上げる逆流、飲み込みにくい嚥下障害、飲み込むと痛いを分ける。乳児のは生理的なことが多いが、生活や成長を妨げる症状・合併症を生じれば(GERD)である。新生児の泡沫状唾液・哺乳時チアノーゼではを疑い、経口哺乳を止める。

症状から考える

症状 意味・主な鑑別
の灼熱感。年長児・思春期のGERDで典型的
逆流 胃内容が口腔・へ上がる感覚。乳児では生理的GERも多い
嚥下障害 固形物のみなら狭窄・EoE、固形・液体ともなら運動障害も考える
、潰瘍、、EoEなど
食道炎・運動障害を考える前に緊急なを除外する

、、反復誤嚥、、胆汁性嘔吐、体重増加不良、発熱、神経症状はであり、単純なGERとして扱わない。

胃食道逆流症

の、低下、、などが逆流曝露を増やす。GERDは「逆流によって困る症状または合併症が生じる状態」であり、逆流回数だけでは定義しない。生理的な(happy spitter)は合併症のない乳児GERであり、GERDとは区別する1。

診断

  • 乳児では病歴・診察と成長評価が中心。や超音波をGERDの確認目的でルーチンに行わない。
  • 上部内視鏡は、狭窄、、EoEなど粘膜疾患・を疑うときに用いる。正常内視鏡でもGERDは否定できない。
  • 24時間は、症状と酸性・非酸性逆流との関連、治療抵抗例を評価する。
  • 年長児の典型的には期間を限定した(proton pump inhibitor:)試験を検討できるが、乳児の不機嫌・だけに診断目的で行わない12。

⚠️ 乳児の逆流症状にまずを試すという運用は転換された。 かつては乳児の不機嫌・にも経験的にが用いられたが、小児のGERDに対するの13件を対象とした系統的レビューでは、乳児を対象とした試験ではと症状改善に差がなかった一方、年長児・思春期では症状改善と内視鏡的治癒に有効だった3。生後4〜36か月の児を対象とした前向きでは、(・)投与群で・の発症が対照群より有意に増加した4。

治療

flowchart TD
    A["逆流症状"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alarm feature'>警告徴候</span>・成長・基礎疾患を評価"]
    B --> C["合併症のない乳児GER"]
    C --> D["過量哺乳を避ける<br>増粘・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cow&#39;s milk'>牛乳</span>蛋白除去を個別検討"]
    B --> E["年長児の典型症状/食道炎"]
    E --> F["生活調整+期間限定<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proton pump inhibitor'>PPI</span>"]
    B --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alarm feature'>警告徴候</span>・難治・再発"]
    G --> H["内視鏡、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pH-impedance monitoring'>pH-インピーダンス検査</span><br>解剖・EoEを評価"]
    H --> I["病因に応じ治療<br>選択例で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fundoplication'>噴門形成術</span>"]

乳児は仰向け睡眠を守り、窒息予防のため睡眠時を行わない。年長児では肥満是正、回避、就寝直前の食事を避ける。は症状緩和だけでなく酸関連食道炎を治癒しうるが、適応と期間を定めて減量・中止を再評価する。重い神経障害、反復誤嚥、薬物治療不応など選択例ではNissenを検討する。

食道閉鎖・気管食道瘻

前腸の分離異常により食道がとなり、を伴うことが多い5。最も多いGross C型は近位+遠位TEFであり、全体の約86%は遠位を伴う6。

型 解剖 腹部ガス
A 純粋 なし
B 近位TEF+遠位 通常なし
C 近位+遠位TEF あり
D 近位・遠位ともTEF あり
E H型TEF、食道は連続 あり。カテーテルが通るため診断が遅れうる

出生前は、出生後は泡沫状唾液、、咳、哺乳時チアノーゼ、胃管が進まないことが手掛かりとなる6。カテーテルを近位まで留置した単純X線で位置と腹部ガスを確認し、を含む心・腎・椎体・肛門・を検索する。

疑ったら経口哺乳を中止し、上体挙上、近位の持続吸引、呼吸循環管理を行う。手術時期・一期吻合か段階治療かは全身状態、食道間隙の長さ(long gap)、合併奇形に応じて決める。

好酸球性食道炎

は、食道機能障害症状とへの炎症を特徴とする慢性である。

  • 乳幼児:哺乳・摂食拒否、嘔吐、。
  • 学童:腹痛、嘔吐、食事に時間がかかる、水分で流し込む。
  • 思春期:固形物嚥下障害、。
  • 診断:他原因を評価したうえで、複数レベルからの食道生検で通常 15好酸球/以上7。内視鏡が正常に見えても生検する。
  • 治療:、嚥下する局所ステロイド、から患者と選択する。症状だけでなく内視鏡・を確認し、固定狭窄には炎症治療と慎重なを組み合わせる。

💡 への反応の有無はもはやに含まれない。 2018年の国際コンセンサス(AGREE会議)はを「食道機能障害症状+食道生検であたり好酸球15個以上(約60個/mm²)+他疾患の除外」で診断すると改訂し、従来診断要件だった「治療試験への反応」(反応性食道好酸球増多症という除外区分)をから外した7。

IgE検査だけで原因食物を確実に同定できない。全身ステロイドの長期投与は避け、難治例では年齢・承認に応じ生物学的製剤を専門管理で検討する。12歳以上を対象とした第3相無作為化試験では、週1回投与群の24週時組織学的寛解率が59〜60%(5〜6%)と有意に高かった8。1〜11歳を対象とした第3相EoE KIDS試験でも、16週時の内視鏡的評価スコア()が群でプラセボ群より有意に改善した9。

食道狭窄

先天性のほか、、GERD、、EoE、放射線、などに続発する。固形物から始まる進行性嚥下障害、を来す。で部位・長さをし、内視鏡と生検で粘膜病変を評価する。原因治療にバルーンまたは拡張を組み合わせ、難治例では局所治療や外科再建を検討する。を吐かせたり中和させたりしない。

まとめ

  • 生理的GERと、症状・合併症を伴うGERDを区別し、乳児のへを一律投与しない。
  • を疑ったら経口哺乳を止め、近位を吸引して誤嚥を防ぐ。
  • EoEは年齢で症状が変わり、複数部位生検とが重要である。
  • 固形物嚥下障害ではEoE・狭窄を考え、は緊急内視鏡評価につなげる。

出典

  1. 1.Pediatric Gastroesophageal Reflux Clinical Practice Guidelines: Joint Recommendations of the North American Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition and the European Society for Pediatric Gastroenterology, Hepatology, and Nutrition(NASPGHAN・ESPGHAN合同(Journal of Pediatric Gastroenterology and Nutrition)・2018)NASPGHAN・ESPGHANの2018年合同ガイドラインは、生後12か月未満の乳児とそれ以降の児で別のアルゴリズムを設け、GRADE法に基づき8つの臨床的疑問について推奨を提示したこと、生理的な溢乳(乳児GER)と症状・合併症を伴うGERDを区別し、警告徴候の無い乳児の不機嫌・溢乳に対して診断目的の酸分泌抑制薬投与を推奨していないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Guidelines on diagnosis and management of gastroesophageal reflux disease in infants, children and adolescents: a joint consensus from Italian pediatric societies (SIP and SIGENP) -Part II: management(イタリア小児科学会・イタリア小児消化器肝臓栄養学会合同(Italian Journal of Pediatrics)・2026)2026年のイタリア小児科学会・小児消化器肝臓栄養学会合同コンセンサス(GRADE法・Delphi法、26の推奨)は、乳児の溢乳は多くの場合治療不要で、啼泣・皮膚炎を伴う場合はまずアルギン酸塩・増粘乳・牛乳蛋白除去を検討し、経験的PPI投与は胸やけを訴える年長児または重度神経障害児に限るべきという立場を確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Proton Pump Inhibitors in Pediatric Gastroesophageal Reflux Disease: A Systematic Review of Randomized Controlled Trials(Children (Basel)・2024)2010年6月〜2023年6月に発表された小児(0〜18歳)GERDに対するPPIの無作為化比較試験13件を対象とした系統的レビューで、乳児を対象とした4件ではPPIはプラセボと比べ逆流症状の改善に差がなかった一方、年長児・思春期を対象とした試験ではPPIが症状改善と内視鏡的治癒に有効であったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Therapy with gastric acidity inhibitors increases the risk of acute gastroenteritis and community-acquired pneumonia in children(Pediatrics・2006)イタリアの小児消化器専門4施設による前向き多施設研究で、GERD症状のため胃酸分泌抑制薬(ラニチジンまたはオメプラゾール)を2か月間投与された生後4〜36か月の児91例は、健常対照95例と比べ、投与後4か月間の急性胃腸炎および市中肺炎の発症率が有意に増加したことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Anatomy and embryology of tracheo-esophageal fistula(Seminars in Pediatric Surgery・2022)食道閉鎖・気管食道瘻が前腸の前後軸パターン形成、背腹軸パターン形成、形態学的分離の破綻として理解されることを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Oesophageal atresia(Orphanet Journal of Rare Diseases・2007)食道閉鎖の約86%は遠位気管食道瘻を伴うこと(Gross C型相当)、出生前の羊水過多や出生後に経鼻胃管が近位盲端で進まない所見が診断の手掛かりとなることを確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Updated International Consensus Diagnostic Criteria for Eosinophilic Esophagitis: Proceedings of the AGREE Conference(Gastroenterology・2018)2018年の国際コンセンサス(AGREE会議)は好酸球性食道炎を「食道機能障害症状+食道生検で高倍率視野あたり好酸球15個以上(約60個/mm²)+好酸球増多を来す他疾患の包括的除外」で診断すると定め、従来診断要件だった「プロトンポンプ阻害薬治療試験への反応」(PPI反応性食道好酸球増多症という除外区分)を診断基準から外したことを確認した。閲覧 2026-08-27
  8. 8.Dupilumab in Adults and Adolescents with Eosinophilic Esophagitis(The New England Journal of Medicine・2022)12歳以上の好酸球性食道炎患者を対象とした3部構成の第3相無作為化試験で、24週時の組織学的寛解(好酸球6個/高倍率視野以下)達成率は、週1回デュピルマブ投与群でPart Aが60%(プラセボ5%)、Part Bで週1回投与59%・隔週投与60%(プラセボ6%)と、いずれもプラセボより有意に高かったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  9. 9.Dupilumab Improves Endoscopic Features in Children Aged 1-11 Years With Eosinophilic Esophagitis: EoE KIDS Study Results(The American Journal of Gastroenterology・2026)1〜11歳の好酸球性食道炎患児を対象とした第3相EoE KIDS試験(体重階層用量、デュピルマブ群37例・プラセボ群34例)の事後解析で、16週時点の内視鏡的評価スコア(EREFS)総スコアおよび炎症サブスコアがデュピルマブ群でプラセボ群より有意に改善したことを確認した。閲覧 2026-08-27