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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

好酸球性食道炎

Eosinophilic esophagitis

別名
EoE
臓器系
消化器免疫・膠原病
科目
Internal MedicinePediatrics
トピック
内科学 G-01:食道・胃疾患小児科 3-40:食道疾患:胃食道逆流症・好酸球性食道炎・食道閉鎖・狭窄
鑑別疾患
胃食道逆流症
関連疾患
アトピー性皮膚炎アレルギー性鼻炎気管支喘息食物アレルギー
治療薬
(エソメプラゾール)ブデソニドフルチカゾンデュピルマブ
症状
腹痛嘔吐嚥下障害
適応薬
デュピルマブ

🧠 全体像は「食物・環境抗原に対するが食道だけにに起こり、繰り返す炎症が線維化・狭窄へ進む」臓器限定型のアレルギー疾患である。喘息・と背景を共有するが土台にあり、症状は年齢で姿を変える(乳幼児は哺乳・摂食拒否と、学童は腹痛・嘔吐、思春期以降は固形物嚥下障害と)。診断は「症状+生検で当たり好酸球15個以上+他原因の除外」の3点セットで、かつてPPI治療への反応性で切り分けていた(PPI-REE)は、現在はEoEという単一疾患スペクトラムの一表現型として扱われる。

疫学・危険因子

💡 EoEは「食道だけに起こる」とイメージすると理解しやすい。全身性のIgE介在アナフィラキシーとは異なり、局所での遅延型・Th2優位の慢性炎症が主体で、食物検査だけでは原因抗原を確実に同定できない。

病態

flowchart TD
    A["食物抗原・吸入抗原への曝露"] --> B["食道上皮の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='barrier function'>バリア機能</span>低下"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='TSLP'>胸腺間質性リンパ球新生因子</span>などの上皮由来サイトカイン放出"]
    C --> D["Th2細胞・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type 2 innate lymphoid cell (ILC2)'>2型自然リンパ球</span>(ILC2)の活性化"]
    D --> E["IL-4・IL-5・IL-13優位の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type 2 inflammation'>2型炎症</span>"]
    E --> F["好酸球遊走因子<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eotaxin-3'>エオタキシン-3</span>(CCL26)の上昇"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral/esophageal mucosa'>食道粘膜</span>への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eosinophilic infiltration'>好酸球浸潤</span>"]
    G --> H["慢性炎症の持続"]
    H --> I["上皮基底層過形成・線維化"]
    I --> J["食道の輪状変化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrostenosis'>線維狭窄</span>"]
  • 中心となるのはIL-5(好酸球の分化・遊走・生存を促進)とIL-13破綻、産生、を誘導)を軸としたである。
  • としてTSLPCAPN14(食道特異的に発現する遺伝子)などの関連が知られ、食道局所のに寄与する。
  • 治療されない慢性炎症が持続すると、炎症優位の病態から優位の病態へ移行し、食道ののリスクが高まる。早期治療介入は、この炎症から線維化への移行を防ぐ意味を持つ。

⚠️ 「EoE=だから皮膚アレルギー検査で原因食物を除去すればよい」と単純化しない。IgE検査・が低く、単独では除去食の対象食物を確実に決められない。

臨床像

の症状は年齢によって前面に出る訴えが大きく異なるため、年齢層ごとの典型像を押さえておくことが診断の近道になる。

年齢層 典型的な症状
乳幼児 哺乳・摂食拒否、嘔吐、体重増加不良・
学童 腹痛、嘔吐、食事に時間がかかる、水分で流し込む(食べ方の代償行動)
思春期・成人 固形物優位の嚥下障害、(救急外来受診の契機になりやすい)

⭐ 思春期・成人の(食べ物が食道に詰まる)は、EoEの初発症状として非常に頻度が高い。原因不明のを繰り返す患者では、他のと並んでEoEを必ず鑑別に挙げる。

  • 患者はに、よく噛む、水分で流し込む、柔らかい食品を選ぶ、他人よりゆっくり食べるといったな食べ方を長年続けていることが多く、で積極的に聞き出す必要がある。
  • 進行例では食道の輪状変化・線維化性狭窄により、既往の乏しい患者でも急なで発症することがある。

診断

flowchart TD
    A["食道機能障害の症状<br>(嚥下障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='food impaction'>食物嵌頓</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heartburn'>胸やけ</span>等)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper gastrointestinal endoscopy'>上部消化管内視鏡</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='EREFS (EoE Endoscopic Reference Score)'>EREFS</span>(内視鏡所見スコア)で評価<br>浮腫・輪状化・滲出物・溝・狭窄"]
    C --> D["食道近位・遠位の2か所以上から<br>計6個以上の生検"]
    D --> E{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-power field'>高倍率視野</span>当たり好酸球15個以上か?"}
    E -->|"いいえ"| F["他の食道好酸球増多の原因を検討<br>(GERD、好酸球性胃腸炎、感染、薬剤性等)"]
    E -->|"はい"| G["他の食道好酸球増多の原因を除外"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eosinophilic esophagitis, EoE'>好酸球性食道炎</span>と診断"]
    H --> I["炎症の治療と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrostenosis'>線維狭窄</span>評価を並行して開始"]
  • 内視鏡は正常に見えても必ず生検する。逆に、輪状化・・浮腫・狭窄といったでスコア化)があっても、確定診断にはが必須である。
  • 生検は食道近位・遠位の少なくとも2レベルから計6個以上採取し、を避ける。
  • 組織学的診断閾値は当たり好酸球15個以上である。
  • ⭐ 従来は「PPI治療に反応しなければEoEと確定する」という2段階診断(PPI-REEを別カテゴリーとして除外する方式)が用いられていたが、現行のACGガイドラインではPPI治療への反応性を診断過程から切り離し、PPIはEoEスペクトラムに対する肢の一つとして位置づける。PPI-REEはEoEとは別の疾患ではなく、EoEという単一スペクトラムの中でPPIに反応する表現型として理解する。
  • 診断確定後は、炎症そのものの治療と並行して、の有無を内視鏡的・症状的に評価する。

⚠️ 「PPIが効いたのだからEoEではない(=だった)」という古いは現行の理解と一致しない。PPI反応性はEoEを否定する根拠にならない。

治療

flowchart TD
    A["EoE確定診断"] --> B["患者と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shared decision-making'>共有意思決定</span>で第一選択を選ぶ"]
    B --> C["薬物療法:PPIまたは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='swallowed topical corticosteroid'>嚥下型局所ステロイド</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='budesonide'>ブデソニド</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluticasone'>フルチカゾン</span>)"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dietary therapy'>食事療法</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='empiric elimination diet'>経験的除去食</span><br>(1食品または2食品除去から開始)"]
    C --> E["8~12週後に内視鏡+生検で組織学的反応を再評価"]
    D --> E
    E --> F{"寛解が得られたか?"}
    F -->|"はい"| G["同じ治療を維持療法として継続"]
    F -->|"いいえ"| H["治療強化・薬剤変更、または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dietary therapy'>食事療法</span>へ切替"]
    H --> I{"複数治療に不応・不耐か?"}
    I -->|"はい"| J["生物学的製剤(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dupilumab'>デュピルマブ</span>)を検討"]
    A --> K{"固定狭窄・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='food impaction'>食物嵌頓</span>歴があるか?"}
    K -->|"はい"| L["炎症治療に加え内視鏡的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='esophageal dilation'>食道拡張術</span>を検討"]

第一選択(PPI・局所ステロイド・食事療法)

治療 要点
PPI(等) 抗炎症作用も持つ第一選択の一つ。診断の必須条件ではなく肢として位置づけられる
または嚥下してさせる(吸入ではない)。米国では(2024年FDA承認、11歳以上・12週投与)が専用製剤として利用可能で、欧州・カナダ・豪州ではが用いられる
1食品または2食品除去(乳製品・小麦が代表的原因抗原)から開始し、栄養士と共同で管理する。より広範な4食品・6食品除去やは反応不良例で検討する

⭐ 現行のACGガイドラインは、PPI・いずれを第一選択にしてもよいという(shared decision making)の枠組みを推奨しており、一律の治療順序を定めていない。

💡 除去食は皮膚アレルギー検査の結果だけで対象食物を決めない。乳製品・小麦・大豆・卵・ナッツ類・魚介類が古典的な6大原因食物だが、まず乳製品・小麦を対象とした1~2食品除去から始め、反応を生検で確認しながら段階的に対象を広げる方式が現実的である。

生物学的製剤・難治例

治療 要点
IL-4受容体αを阻害しIL-4・IL-13シグナルを遮断する生物学的製剤。2022年に12歳以上・体重40kg以上のEoEへFDA承認、2024年に1~11歳・体重15kg以上へ。PPI・局所ステロイド・に不応または不耐の患者、強いを伴う患者などで検討する
固定したによる嚥下障害を機械的に改善するが、炎症治療を併用しないと・再嵌頓を繰り返す。炎症を治療せず拡張だけを繰り返すことは避ける

⚠️ 全身性ステロイドの長期投与はEoEの標準治療ではない。局所(嚥下型)ステロイドで管理できない重症例でも、全身性ステロイドは時などの限定的な位置づけにとどめる。

治療反応の評価

  • 症状の改善だけでは組織学的寛解と相関しないため、治療後は症状・内視鏡所見()・生検所見を統合して寛解を確認する。
  • 寛解が得られた治療は、予防のため維持療法として継続する。
  • 小児では成長・も治療効果判定に含める。

まとめ

  • EoEは食道に限局した慢性性疾患で、喘息・を共有する。
  • 症状は年齢で異なり、乳幼児は哺乳・摂食拒否と、学童は腹痛・嘔吐、思春期以降は固形物嚥下障害とが典型である。
  • 診断は症状+生検で当たり好酸球15個以上+他原因の除外の3点セットで、PPI-REEは別疾患ではなくEoEスペクトラムの一表現型として扱う。
  • 第一選択はPPI・)・のいずれかで、で選ぶ。
  • 複数治療に不応・不耐の患者にはを検討し、固定狭窄には炎症治療とを併用する。
  • 治療効果は症状だけでなく内視鏡・組織所見を統合して判定し、寛解が得られた治療は維持療法として継続する。