小児科学

小児科学 · 3-39

嚢胞性線維症

Cystic fibrosis

前提:正常
イオンチャネルとCFTR Cl⁻チャネル常染色体劣性遺伝(AR II)
疾患
嚢胞性線維症
症状
直腸脱

🧠 全体像:嚢胞性線維症はCFTR機能障害により、気道・膵胆道系の分泌液が粘稠化し、汗から塩分を失う疾患である。診断はだけで確定せず、と遺伝学的・機能的評価を統合する。治療は、感染管理、栄養・補充、遺伝子型に適合するを組み合わせる。

病態

flowchart TD
    A["CFTR遺伝子の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biallelic pathogenic variant'>両アレル病的バリアント</span>"] --> B["上皮のCl⁻・HCO₃⁻輸送障害"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway surface liquid'>気道表面液</span>低下・粘液粘稠化"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucociliary clearance'>粘液線毛クリアランス</span>低下"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='recurrent infection'>反復感染</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophilic inflammation'>好中球性炎症</span>"]
    E --> F["気管支拡張・呼吸不全"]
    B --> G["膵管・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bile-duct obstruction'>胆管閉塞</span>"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic insufficiency'>膵外分泌不全</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fat malabsorption'>脂肪吸収不良</span>"]
    B --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sweat duct'>汗管</span>でNaCl再吸収低下"]
    I --> J["高Cl⁻汗・塩分喪失"]

多臓器の臨床像

系統 主な所見
呼吸器 、、気管支拡張、、喀血、気胸、・副鼻腔炎、、、呼吸不全
消化器・栄養 1、、、体重増加不良、膵炎、A・D・E・K欠乏、
肝胆道 新生児、胆石、、胆汁性肝障害、門脈圧亢進
内分泌・電解質 CF関連糖尿病2、高温・発熱時の塩分喪失、低Na/Cl血症、
生殖 男性の、女性の、

診断

ではを測定し、地域により再IRTまたはCFTR遺伝学的検査へ進む。陽性は確定診断ではない。

  • によるが標準検査。
  • 汗中Cl⁻ 60 mmol/L以上はCFに合致、30 mmol/L未満はCFらしくなく、30〜59 mmol/Lは中間域として再検・拡張・専門施設のCFTRを検討する3。
  • 陽性スクリーニング児は在胎36週以上・体重2 kg超なら生後10日以降、可能なら生後4週までにを行う3。
  • 2つのCF原因バリアントが検出されなくてもCFを完全には否定できない。

呼吸機能評価

は協力可能な児のとを評価するが、乳幼児では実施困難で初期病変に鈍感なことがある。

(multiple-breath washout:MBW)から得る(lung clearance index:LCI)は換気不均等を反映する。CFではの排出が遷延しLCIが上昇するため、で測れる幼児やの経時評価に有用である。💡 ただしLCIは万能の代替指標ではない。 測定法・による差があり専門的なを要するため、症状・培養・画像・を置き換える単独指標としては位置づけられていない4。

治療

目標 主な介入
毎日の・運動、必要に応じ・。は個別適応
感染管理 定期的な気道培養、新規緑膿菌5の除菌、増悪時は既往培養・感受性・重症度に応じ抗菌薬
栄養 、への補充5、、塩分補給、成長モニタリング
病態修飾 CFTR増強薬・の単剤/併用を遺伝子型、年齢、承認、相互作用、肝機能に合わせて使用
進行例 酸素・、合併症治療、評価

は「遺伝子治療」ではなく、残存するCFTR蛋白の機能や成熟を改善する薬である。適格変異を遺伝学的検査で確認し、全患者へ同じ薬を投与しない。

⚠️ CFTR増強薬・の3剤併用が肺機能とを大きく改善するという報告がある。 F508delアレルを1つと機能欠失アレルを1つ有する12歳以上403例ので、・・併用はに比べ予測を4週時点で13.8ポイント、24週時点で14.3ポイント改善し、を41.8 mmol/L低下させ、肺増悪率を63%減らした6。米国では2歳以上の患者の約90%がこの種の3剤併用の適応となりうるが、全遺伝子型が対象ではなく、・感染管理・栄養療法という対症療法中心の管理は適格でない患者や併用中の患者にも引き続き必要である7。

肺増悪

咳・痰、呼吸困難、倦怠感、食欲・体重、SpO₂、肺機能、新規画像所見の変化を評価する。培養、強化、栄養・水分管理と抗菌薬を組み合わせ、・単剤/併用を重症度と既往菌で決める。

まとめ

  • CFTR障害は粘稠な物、、高Cl⁻汗を一つの機序で説明する。
  • 新生児IRTはスクリーニングで、と遺伝学的・機能的評価で確定する。
  • LCIはMBWで換気不均等を捉え、幼児や早期病変の評価に有用である。
  • 治療は、培養に基づく感染管理、栄養・補充、適格例へのを統合する。
  • の普及後、CFの生存期間中央値は延びている(米国で2006年36.3歳→2021年53.1歳)7。

出典

  1. 1.Meconium ileus in Cystic Fibrosis(2017)胎便性イレウスは嚢胞性線維症と診断された患者の約20%に生じ、しばしばCFの初発症状となることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.From Pathophysiology to Treatment: Contemporary Approaches to CFRD in the Pediatric and Adolescent Population(Pediatric Diabetes・2026)嚢胞性線維症関連糖尿病(CFRD)はCFで最も頻度の高い非呼吸器合併症であり、加齢とともに頻度が上がって30歳以上の患者の約半数近くに及ぶこと、F508delホモ接合などの重症CFTR遺伝子型・膵外分泌不全・女性・CF関連肝疾患が危険因子であり、10歳から年1回の経口ブドウ糖負荷試験によるスクリーニングが推奨されることを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Diagnosis of Cystic Fibrosis: Consensus Guidelines from the Cystic Fibrosis Foundation(2017)新生児スクリーニング陽性後の確定診断における汗中クロール濃度のカットオフ(60 mmol/L以上でCFに合致、30 mmol/L未満でCFらしくない、30〜59 mmol/Lは中間域として遺伝学的・CFTR機能検査を追加する)、および在胎36週以上・体重2 kg超の陽性スクリーニング児で生後10日以降、可能なら生後4週までに汗試験を行うという実施時期を確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Utility and interpretation of multiple breath washout in children with cystic fibrosis(2025)多呼吸洗い出し法(MBW)とその主要指標である肺クリアランス指数(LCI)が小児CF肺疾患のより鋭敏な評価指標として注目されている一方、臨床応用にはまだ強み・弱みがあり単独の指標として他の評価を置き換えるものではないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Current Status of Cystic Fibrosis in Türkiye: Data from the National Registry(Thoracic Research and Practice・2025)トルコ嚢胞性線維症全国登録(2023年、34施設2,258例、年齢中央値9.1歳で成人は14.9%のみと小児が主体)で、経口膵酵素補充療法を使用していた患者が83.0%、緑膿菌の慢性定着を認めた患者が17.2%であったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Elexacaftor-Tezacaftor-Ivacaftor for Cystic Fibrosis with a Single Phe508del Allele(2019)Phe508del-minimal function遺伝子型(F508delアレルを1つと機能欠失アレルを1つ有する)の12歳以上403例を対象とした無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験で、エレクサカフトル・テザカフトル・イバカフトル併用はプラセボに比べ予測FEV1をベースラインから4週時点で13.8ポイント、24週時点で14.3ポイント改善し、汗中クロール濃度を41.8 mmol/L低下させ、肺増悪率を63%低下させたことを確認した(すべてP<0.001)。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Cystic Fibrosis: A Review(2023)嚢胞性線維症の米国内生存期間中央値が2006年の36.3歳(95%CI 35.1-37.9)から2021年には53.1歳(95%CI 51.6-54.7)に延びたこと、米国患者の約85.5%がF508del変異を有すること、CFTR調節薬(イバカフトルやエレクサカフトル・テザカフトル・イバカフトル配合)の登場と多職種診療が進行抑制に寄与し、2歳以上の患者の約90%がエレクサカフトル・テザカフトル・イバカフトル配合薬の適応となりうることを確認した。閲覧 2026-08-27