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Symptoms · Published

直腸脱

Rectal prolapse

別名
完全直腸脱直腸全層脱出
臓器系
消化器小児
科目
PediatricsMedical MicrobiologySurgery
トピック
小児科 3-39:嚢胞性線維症微生物学 4/35:回虫。鞭虫外科学 B/21:痔核・肛門瘻孔/裂肛・肛門直腸膿瘍
関連疾患
腸管線虫症腸瘤嚢胞性線維症

🧠 全体像を捉える軸は2つある。1つはどの層が脱出しているか——直腸壁の全層が脱出すると、までの脱出(としての脱出)は見た目が似ていても別物であり、ひだの向きで区別できる。もう1つは二峰性の年齢分布で、小児(栄養不良・慢性のが誘因)と高齢女性(骨盤底の)とでは病因も対応もまったく異なる。この2軸を先に立てておくと、以降の鑑別との分岐が整理される。

定義と用語の整理

脱出する層 所見 代表
直腸壁の全層 の粘膜ひだ いわゆる「
脱出) まで 放射状の溝 時脱出
全層だが肛門を越えない 肛門から出ないためでは分からない で確認

のひだか放射状の溝かという所見は、脱出を鑑別する簡便な手がかりである1)は肛門を越えない点でと区別されるが、同じ骨盤底の破綻の延長線上にある病態として連続的に理解する。

💡 患者の訴える「痔が出る」は、脱出する組織の層まで区別せずに使われる。放射状の溝が触れれば由来、のひだが触れれば直腸そのものの脱出であり、対応がまったく異なるためこの区別を怠らない。

病態生理

年齢によって主因が異なる二峰性の分布を示す。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rectal prolapse'>直腸脱</span>に至る2つの道筋"] --> B["小児<br>解剖学的な未熟さ+慢性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='straining'>いきみ</span>"]
    A --> C["高齢女性<br>骨盤底支持組織の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='detrusor weakness'>脆弱化</span>"]
    B --> B1["栄養不良・慢性便秘・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic diarrhea'>慢性下痢</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Trichuriasis'>鞭虫症</span>などの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parasitic infections'>寄生虫感染</span>"]
    B --> B2["嚢胞性線維症<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pancreatic insufficiency'>膵外分泌不全</span>による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malnutrition'>低栄養</span>+慢性の咳・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='straining'>いきみ</span>"]
    C --> C1["多産・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obstetric trauma'>分娩外傷</span>"]
    C --> C2["慢性便秘による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='straining (at defecation)'>怒責</span>の反復"]
    B1 --> D["腹圧上昇の反復"]
    B2 --> D
    C1 --> E["骨盤底・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anal sphincter'>肛門括約筋</span>の支持機能低下"]
    C2 --> E
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rectal intussusception'>直腸重積</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal prolapse'>内脱出</span>)"]
    E --> F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='full-thickness rectal prolapse'>完全直腸脱</span>"]

小児では慢性便秘や下痢、栄養不良によるのような大量寄生を伴うが慢性のを引き起こす。好発は生後1年以内で、基礎疾患を伴わずに4歳を超えて発症することはまれである2。高齢女性では多産・による骨盤底の損傷に、慢性便秘によるの反復が加わり、支持組織のが進行する。いずれの群でも、として始まった脱出が反復するうちに支持組織がさらに緩み、へ進行しうる。

⚠️ 見逃してはいけないこと

⚠️ 嵌頓・絞扼。 脱出した直腸がに腫大するとが困難になり、血流障害から虚血・壊死に至りうる。括約筋の緊張が保たれた女性ほど脱出部が絞扼されやすいとされ、の脱出は外科的緊急事態として扱う1

⚠️ 小児例での嚢胞性線維症の検索。 基礎疾患のない小児のでは、嚢胞性線維症を除外する必要がある。による栄養不良と慢性の咳嗽・が誘因となる。の導入により嚢胞性線維症が早期に診断・治療されるようになってからは、この集団でのの発症率は大きく低下している2

⚠️ 成人発症例での直腸腫瘍。 高齢者で新規に発症したでは、やポリープが脱出のになっていることがあり、内視鏡で除外してからを決める。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='straining (at defecation)'>怒責</span>させて肛<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hilum'>門部</span>を観察"] --> B{"脱出するか"}
    B -->|"しない"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rectal intussusception'>直腸重積</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal prolapse'>内脱出</span>)を疑う<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='defecography'>排便造影</span>で評価"]
    B -->|"する"| D{"ひだの向きは"}
    D -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='concentric'>同心円状</span>"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='full-thickness rectal prolapse'>完全直腸脱</span>"]
    D -->|"放射状の溝"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucosal prolapse'>粘膜脱</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal'>内痔核</span>脱出を疑う"]
    E --> G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reduction'>還納</span>できるか"}
    G -->|"できない・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='boggy'>浮腫状</span>"| H["嵌頓・絞扼を疑う<br>緊急手術を検討"]
    G -->|"できる"| I["内視鏡で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lead point'>先進部</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organic (structural, as opposed to functional)'>器質的</span>病変を除外"]
    I --> J["排便機能(便秘・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fecal incontinence'>便失禁</span>)を評価し<br>術式を選択"]
    F --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='benign anorectal disorders'>良性肛門疾患</span>として精査"]

診断は病歴と身体所見で下すのが原則で、のひだが確認できればと診断できる。⚠️ が陰性でも脱出を否定できない——身体所見でが確認された患者のうち、でも脱出を再現できたのは64%にとどまる1。脱出が疑われるのに診察室で再現しないときは、排便を模したを繰り返させるか、で動的に評価する。や便秘の併存は術式選択に影響するため、脱出の有無だけでなく必ず排便機能を併せて評価する。

対症療法の考え方

  • 小児:多くは保存的治療で軽快する。の是正、便秘・下痢の管理、、嚢胞性線維症が背景にあればその治療を優先する。⚠️ ただし4歳を超えて発症した小児では、保存的治療に反応しないまたはの基礎疾患が隠れている可能性が高くなるため、早期に外科へ紹介する2
  • 成人は非治療では治癒しないため、手術が原則となる。全身状態が良く若年であればを第一選択とし、全身状態不良・高齢で経腹手術のリスクが高い患者には、などのを選ぶ。は低侵襲だが再発率はアプローチより高く、術式選択は再発率とのどちらを優先するかという全身状態に応じた判断になる3

まとめ

  • は「どの層が脱出しているか」(=全層・のひだ/脱出=まで・放射状の溝)と「二峰性の年齢分布」(小児/高齢女性)の2軸で整理する。
  • 小児は栄養不良・慢性のなどのが誘因で、基礎疾患のない特発例では嚢胞性線維症を除外する。多くは原因の是正で自然軽快する。
  • 高齢女性は骨盤底支持組織の(多産・慢性便秘)が主因で、からの連続として進行しうる。
  • の脱出は嵌頓・絞扼の外科的緊急事態、成人発症例では直腸腫瘍がになっていないか内視鏡で除外する。
  • 成人の治療は手術が原則。全身状態の良い患者には、虚弱・高齢者には)を選ぶ。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guidelines for the Treatment of Rectal Prolapse(American Society of Colon and Rectal Surgeons・2017)経会陰的アプローチと経腹的アプローチの選択は依然として議論があり併存疾患を慎重に考慮して決めるべきとされること、および術式ごとの再発率(経腹3〜9%・Altemeier法16〜30%はいずれも2年時点、Delorme法10〜15%は時点の明記なし)を確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Evaluation, Diagnosis, and Medical Management of Rectal Prolapse(Clinics in Colon and Rectal Surgery・2017)完全直腸脱は同心円状のひだ、粘膜脱・痔核脱出は放射状の溝として視診で鑑別できること、浮腫状の大きな脱出は嵌頓しやすく外科的緊急事態になりうること、排便造影による脱出の検出感度が限定的(64%)であることを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.Pediatric Rectal Prolapse: A Case Report(Cureus・2024)小児直腸脱は生後1年以内が好発で基礎疾患なく4歳を超えて生じることはまれであること、原因(急性下痢・慢性便秘、栄養不良、寄生虫感染)と特発例での嚢胞性線維症除外の必要性、4歳未満は保存的治療が中心で4歳以上は神経学的欠陥を疑い手術介入が推奨されることを確認した閲覧 2026-08-04