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Microbe Atlas · 蠕虫

Trichuris trichiura

鞭虫

分類
線虫・管腔 / Nematodes (luminal)Trichuris
科目
Medical Microbiology
トピック
4/35: Ascaris lumbricoides. Trichuris trichiura4/23: General characterisation and taxonomy of helminths
原因となる疾患
腸管線虫症
作用する薬剤
イベルメクチンメベンダゾール

🧠 全体像を読む軸は「腸管を一歩も出ない」という1点である。同じ型のである回虫の幼虫が血流→肺→気道という壮大な回り道をするのに対し、の幼虫は盲腸に移行して前端を粘膜に埋め込むだけで生活環が完結する。移行しないため肺症状は一切起こらず、症状はすべて盲腸〜直腸に限局した機械的損傷・炎症に由来する——この「局所限定」という性質が、血性下痢やというに特有の臨床像を説明する。

微生物学的な特徴

鞭状の虫体を持つ線虫()で、前端3/5が細い鞭の柄のような形態、後端2/5が太い柄尻のような形態をとる。衛生状態の悪い地域・小児に感染が多い。

項目 内容
虫体 鞭状(前端が細く鞭の柄のよう、後端が太い)
虫卵 レモン形で両端にを持つ胆汁染色卵——に特徴的で鑑別が容易
最終寄生部位 盲腸(重度感染では結腸・直腸まで及ぶ)

生活環

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='embryonated egg'>感染卵</span>を経口摂取"] --> B["小腸で幼虫が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hatching'>孵化</span>"]
  B --> C["盲腸まで移行"]
  C --> D["前端を粘膜内に埋め込み成熟<br>(血流・肺への移行は起こらない)"]
  D --> E["受精雌が産卵"]
  E --> F["虫卵が糞便中に排出"]
  F --> G["土壌中で2〜4週間かけ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='embryonated egg'>感染卵</span>に成熟"]
  G --> A

⚠️ は腸管を出ないため、回虫のような肺移行症状は起こらない。 を経口摂取してから成虫になるまで、幼虫は一貫して消化管内にとどまる——この「移行なし」という一点が、回虫との臨床像の違いをすべて説明する。

病原性の仕組み

  • 成虫が前端を盲腸粘膜に埋め込むことで、局所の機械的損傷・慢性炎症を起こす。
  • 軽度感染は無症状のことが多いが、重度感染では盲腸〜直腸粘膜の広範な炎症により腹痛・血性下痢を来す。
  • 虫垂を虫体が充満させるとを呈することがある。
  • :大量寄生・慢性のが誘因となり、特にの悪い小児で起こりやすい。脱出した直腸粘膜に虫体が付着しているのが観察されることがあり、診断の手がかりになる。
  • 慢性の重度感染は消化管出血の持続によるや、小児の成長・発達障害の一因にもなりうる。

感染経路と疫学

  • の経口摂取感染)で成立する。汚染された土壌に触れた手指、生野菜・果物の摂取が典型的な感染源。
  • 回虫と同様に衛生インフラの不十分な地域に多く、しばしば回虫とする。
  • 温暖・多湿な気候で虫卵の土壌中での成熟が進みやすい。

起こす疾患

疾患・病態 特記事項
多くは無症状。重度感染で血性下痢・
虫体が虫垂を充満させることによる

診断

治療と予防

  • またはが基本だが、⭐ の中でだけが単剤で治りにくいという例外がある。 回虫・鉤虫・が単剤で高い治癒率を示すのに対し、はもともと薬剤感受性が低く、WHOはでの治癒率向上のための併用を推奨している。
  • 予防は衛生的な排泄処理、、生野菜・果物の十分な洗浄——回虫と共通の対策で足りる。

まとめ

  • は鞭状の虫体を持つ線虫で、の経口摂取後、幼虫は盲腸に直行し腸管を一歩も出ない——同じ型の回虫との最大の違い。
  • 移行がないため肺症状は起こらず、症状はすべて盲腸〜直腸に限局した機械的損傷・炎症に由来する。
  • 重度感染は血性下痢・(小児)・を来しうる。
  • 虫卵はレモン形・両端のという特徴的形態で診断が容易。
  • 治療の第一選択はだが、だけは単剤の治癒率が低くとの併用が推奨される。