外科学

外科学 · B/21

痔核・肛門瘻孔/裂肛・肛門直腸膿瘍

Hemorrhoids, anal fistula and fissure, anorectal abscess

前提:正常
骨盤・会陰:会陰骨盤・会陰:血管とリンパ管
疾患
良性肛門疾患(痔核・裂肛・痔瘻・肛門周囲膿瘍)
症状
直腸脱排便痛便失禁
画像所見
肛門超音波

ポッドキャスト

🧠 本トピックの4疾患(まとめて)は肛門部の異なる構造が舞台になる:は「静脈叢のクッション」、は「粘膜・皮膚の裂け目」、膿瘍・瘻孔は「化膿の急性期と慢性期」という表裏一体の関係。 痛みの有無が最初の鑑別軸——は原則無痛(血栓性・嵌頓時のみ痛む)、は排便時に鋭い、膿瘍は炎症性の疼痛を伴う。とは「同じ疾患の異なる病期」(膿瘍=急性の膿貯留、瘻孔=その慢性化・形成)という理解が鍵で、どちらも括約筋間腔の(陰窩腺)の感染から始まる。⭐ 治療側を貫く第2の軸が「をどれだけ切るか」である——・・のいずれでも、治癒率の高い術式ほど括約筋を大きく切り、の代償が大きくなる。また分類の定義(の度数、の型)は資料によって書き方が違うので、どの資料の分類かを断ってから使う。

1. 痔核

の血管・結合組織からなる(直腸海綿体とも呼ばれる)がして腫大・したもの。1

💡 「肛門と下部直腸の腫れた静脈で、に似たもの」という古典的な言い方も広く使われる。 ただしこの言い方だけだと、がもともと誰にでもある正常構造()が症候化したものである点が落ちる。現在の病態理解は、の破綻と、および内括約筋の攣縮を中心に置く1。「異常な血管ができた」のではなく「正常な血管クッションが下がってきた」と捉えると、指導やの話が繋がる。

分類

分類 位置
より上方
より下方(腫大するとに突出する)
混合 の上下両方

⚠️ も腫れて肛門外に見えることはあるが、次の度数分類でいう「脱出」はがから出てくることを指す。 の突出を度数に読み替えない。

内痔核のゴリガー分類

⚠️ この度数分類は「どの資料の定義か」を確かめてから使う。 以下は日本大腸肛門病学会の診療ガイドラインが CQ-6 で採用している(推奨度B)の定義である1。度数分類はの脱出の程度を測る物差しであって、には適用しない。

度 ガイドラインの定義1 併せて記述される臨床的特徴
I度 で確認でき内腔に膨隆するが、より下方へは脱出しない 脱出しない(内に突出するのみ)。より上方、可逆性、しばしば出血する
II度 排便・で外へ脱出するが、自然にする 時に脱出するが、安静時には自然にする
III度 排便・で脱出し、にする必要がある 時に脱出し、にのみ可能
IV度 で、絞扼しうる な脱出。絞扼・しすることもある

💡 2つの書き方は矛盾しない。 右列の「より上方」「可逆性」「しばしば出血」は一般の性質をI度の欄にまとめて書いたもので、度数そのものを決める条件ではない。I〜IV度を分けているのは「脱出するか」「自力で戻るか」「手で戻せるか」の3つの問いだけである。 実際、陽性率と度数のあいだに正の相関は無いと同ガイドラインは述べており、症状の強さで度数を決めない1。

病因

過度の(慢性便秘、妊娠、頻回の排便、、重量物挙上)、静脈還流不全、の異常、、括約筋攣縮の増強、不足(西欧型食)。

臨床像

  • 腫脹
  • → 出、便による汚染
  • 軽度の、肛門周囲皮膚の刺激
  • 出血 → 便の表面につく
  • 疼痛 → 原則なし! 肛門周囲血栓や嵌頓を伴う場合のみ生じる

⭐ 「は痛くない」が原則——痛みを伴うのはや嵌頓時のみ。 肛門部の疼痛を訴える患者では、まずや膿瘍など他疾患を積極的に疑うべき。

診断

  • : 肛門周囲をし・脱出したを確認、他疾患(肛門皮膚垂・ポリープなど)を除外。で腫瘤・圧痛・出血の有無を確認
  • : 肛門・遠位直腸の評価に有用、を疑うがが非決定的な場合に有用
  • 軟性S状結腸鏡、、注腸 → 悪性腫瘍の除外

治療

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal'>内痔核</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Goligher classification'>ゴリガー分類</span>"]
  A --> B["I〜II度<br>保存的治療"]
  A --> C["症状のある<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal'>内痔核</span>とIII度<br>外来処置"]
  A --> D["IV度(および進行したIII度)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular/surgical intervention'>外科的治療</span>"]
  B --> B1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Lifestyle measures'>生活習慣改善</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-fiber diet'>高繊維食</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='stool softener'>便軟化薬</span>・外用薬"]
  C --> C1["ゴム輪<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligation'>結紮術</span><br>(III度まで・推奨度B)"]
  C --> C2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclerotherapy'>硬化療法</span><br>(推奨度B)"]
  C --> C3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infrared coagulation'>赤外線凝固</span>法"]
  D --> D1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhoids'>痔核</span>動脈<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligation'>結紮術</span>"]
  D --> D2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhoidectomy'>結紮切除術</span><br>(Ferguson法/Milligan-Morgan法・推奨度A)"]
  D --> D3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stapled hemorrhoidopexy'>吻合器痔核固定術</span><br>(Longo法など・推奨度C)"]
病期 治療
I〜II度の 保存的治療: (減量・運動・・脂肪食を控える)、排便習慣の是正(過度のを避け、排便に5分以上かけない)、・外用薬(・ステロイド)による一時的な症状緩和
多くは保存的治療。急性については下記の⚠️を参照
症状のあるとIII度 外来処置: ゴム輪、、法
IV度(および進行したIII度) : 動脈、(切除術。閉鎖法=Ferguson法/開放法=Milligan-Morgan法)、(Longo法など)

⚠️ 外来処置と手術の境界は資料によってIII度の扱いが違うので、どちらの線引きの話かを断ってから使う。

線引き 外来処置の対象 手術の対象
保存・外来・手術の3段階で教える書き方 症状のあるすべての+III度 IV度
日本大腸肛門病学会ガイドラインCQ-81 ゴム輪はIII度まで(推奨度B。II度では第一に推奨、III度でも第一選択としうる) はIII度・IV度(推奨度A)

💡 食い違っているのはIII度の置き場所だけで、向きは一致している。 III度は「外来処置でも手術でも扱える帯」であり、ガイドラインはIII度にゴム輪を使ってよいがより効果が劣り再施行を要しうると両方を認めている1。I〜II度は保存的治療、IV度は手術という両端は、どちらの書き方でも動かない。

外来処置の機序:

  • ゴム輪: 腫大した血管の基部にゴム輪をかけ、血流を遮断して・壊死させる。組織は1週間ほどで脱落し、速やかに治る浅いが残る
  • : 刺激性の薬剤(エタノールなど)をへ注入し、炎症→線維化→の閉塞を起こす。⚠️ 用いるは国によって違う——日本で承認されているのは5%アーモンドオイルとアルミニウムカリウム硫酸塩・酸(ALTA)である1
  • 法

⭐ 推奨の強さまで含めて覚える。 同じ「肢」でも、ガイドラインが付けている推奨度は大きく違う1。

処置 適応する病期 推奨度
III度・IV度のおよび A
ゴム輪 III度までの(II度では第一に推奨され、III度でも第一選択としうるがより効果が劣り再施行を要することがある) B
5%アーモンドオイルはIII度まで/アルミニウムカリウム硫酸塩・酸(ALTA)はII〜IV度の脱出 B
III度のに有効だが、長期予後が不良で再発率が高く、腟瘻・直腸穿孔などの重篤な合併症の懸念がある C
分離 III度・IV度の・(を要する) C

💡 (Longo法)はそのものを切除しない。 を拡張して肛門用カヌラを縫合固定し、専用を通してより上方に円周状のをかける。器械を挿入して縫合糸でを引き下ろすと、粘膜が円環状に器械内へ引き込まれ、器械をすると粘膜の輪が切除されて吻合ができる。つまりしたを本来の位置へ吊り上げ、同時にの血流を断ってを縮小させるのが原理である1。⚠️ その一方で成分は治療できず、再発と腟瘻・直腸穿孔といった重篤な合併症の懸念から推奨度はCにとどまる1。

⚠️ と嵌頓は、いずれも「まず待つ」が原則である(どちらも推奨度C)1。

  • :基本は保存的治療。血栓が大きい・疼痛が強い・出血が多い場合に外科的切除を考慮する
  • 嵌頓:して症状が改善してからとするのが第一で、急性期に疼痛が増悪する、または出血が持続する場合に手術を考慮する

2. 肛門瘻孔

  • の慢性型=瘻孔。
  • 膿瘍と・肛門周囲皮膚とを結ぶの交通——直腸周囲の化膿性感染の慢性像。
  • 病因: の合併症(90%)、Crohn病・結核・悪性腫瘍・放射線(10%)。Crohn病ではのが20年で50%に達する2。

パークス分類(解剖の軸)

括約筋との位置関係で4型に分ける分類で、術式選択の基盤として今も用いられる2。

型(番号) 内訳
内外括約筋間を走行
内外括約筋を貫通
上方を回って下降
外括約筋・の外側を走行

⚠️ 括約筋をまったく通らない「表在性瘻孔」は、この4型のどれにも入らない。 番号を振れるのは上の4つだけで、表在性瘻孔は別枠として扱う。「4型のどれか」に無理に当てはめると、開放してよい瘻孔とそうでない瘻孔の線引きが崩れる。

単純/複雑の軸(術式を決める軸)

⚠️ は「どこを通るか」を記述するだけで、そのままでは術式を決められない。 実際に「開放してよいか」を決めるのは、かか・単純か複雑かという別の軸である。この2つの軸を1つの表に混ぜない。

区分 含まれるもの
単純 の、表在性、
複雑 の、、、女性の前方、多発瘻孔

💡 女性の前方の瘻孔が「複雑」に入るのは深さのためではない。 前方では外括約筋が薄く、産科的損傷が加わっていることもあるため、同じ深さでも切開がに直結しやすいと説明される。「複雑」はの形の話だけでなく、便を失うリスクの話でもある。

Goodsallの法則

  • が肛門を横切る仮想の横断線より前方にある場合 → は同じ放射状の位置に開口する(はまっすぐへ向かう)
  • が横断線より後方にある場合 → は後方上に開口し、のを形成する
  • ⚠️ 例外——長い前方瘻孔: が前方でもが長い場合は、後方の瘻孔と同じように弯曲して後方正中へ向かうことがある。「前方=まっすぐ」を機械的に当てはめるとを取り残す

⭐ は「前方は直進、後方は正中に集まる()」という古典的な手がかりで、あくまで診察での当たりの付け方である。 だけでを正しく分類できるのは約61%にとどまり、では最大90%まで上がる(一次の同定はが感度87%・特異度69%、が感度87%・特異度43%)。このためが画像評価のとされる2。

臨床像

肛門周囲での間欠的な粘液/膿の排出——しばしば便を伴う。

診断

  • → ・を伴う腫瘤、圧痛
  • は複雑瘻孔・の評価で第一選択で、も有用。は補助的に用いる
  • さらなる瘻孔同定 → 内視鏡、、瘻孔プローブ

治療

  • +切除: で全体を開放し、瘻孔の全長にわたり辺縁を切離する
  • 留置: に糸を通して肛門から出し、緩い輪を作って留置する。これにより膿の排出路が確保され、膿瘍の再形成が長期間起こらなくなった時点でをするとが閉鎖しうる。実際には排膿の維持、段階的な瘻孔切開、への橋渡しと用途が複数あり、瘻孔の解剖との必要性から適応を決める

⚠️ 開放してよいのは表在性の瘻孔だけである。 ドイツのS3ガイドラインは、一次的なを表在性の瘻孔に限って行うべきとし、所見が不明瞭な場合や瘻孔ではに処置するよう求めている。術後ののリスクは切離した括約筋の厚みに直接比例するため、のはすべてで治療すべきとされる3。数字で見ると、の治癒率は単純瘻で92〜97%と高い一方、複雑瘻に用いると最大45%にが生じうる2。

⭐ 単純瘻孔ではが選ばれることが多い。 ・複雑瘻孔では、(LIFT法)、術などからを重視して選ぶ。LIFT法の治癒率は40〜95%と幅があるが便への影響は小さい2。形成外科的(・括約筋修復・LIFT法)の成績はおおむね同等で、による閉鎖は治癒率が低い3。

💡 「治癒率が高い術式」と「安全な術式」が一致しないのがの要点である。 は最も治りやすいが、切る括約筋が厚いほどの代償が大きくなる。だから解剖(どこを通るか・どれだけ括約筋を巻き込むか)を術前に確定させることに、これだけの手間をかける。

3. 裂肛

の粘膜・皮膚の。典型的には後方正中に生じる。

  • 病因: 、、肛門への異物挿入(フィスティング)、。
  • 臨床像: 排便時の急性疼痛+。便秘、下痢、肛門周囲外傷、Crohn病との関連。
  • 診断: 病歴と肛門部のを中心に行う。排便時の鋭い痛みとという病歴だけでほぼ診断がつくのがの特徴で、自体はで見えないこともあり、急性期のは激痛のため実施できないことが多い。

⚠️ 正中から外れた、多発するは「ただの」ではない。 後方正中(次いで前方正中)という好発部位から外れるでは、Crohn病、感染症、悪性腫瘍、外傷を疑って原因を探す。が評価しているのも・癌・肛門感染症に伴うなを除外した集団であり、これから述べる薬物療法の成績はそのまま非典型例には当てはまらない4。

治療

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anal fissure'>裂肛</span>の治療 — 目標:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anal resting pressure'>肛門管安静時圧</span>の低下"]
  A --> B["まず保存的治療<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fecal incontinence'>便失禁</span>のリスクが無い"]
  A --> C["無効なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular/surgical intervention'>外科的治療</span><br>治癒率は高いが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fecal incontinence'>便失禁</span>のリスクがある"]
  B --> B1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stool softener'>便軟化薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='local anesthetics'>局所麻酔薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sitz bath'>座浴</span>"]
  B --> B2["局所<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcium channel blockers'>カルシウム拮抗薬</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diltiazem'>ジルチアゼム</span>)<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glyceryl trinitrate'>ニトログリセリン</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ointment'>軟膏</span>"]
  B --> B3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='botulinum toxin'>ボツリヌス毒素</span>注射"]
  C --> C1["外側内<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sphincterotomy'>括約筋切開</span>術"]
  C --> C2["既存の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fecal incontinence'>便失禁</span>・括約筋損傷・産科的損傷の既往<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory bowel disease, IBD'>炎症性腸疾患</span>・肛門手術の既往があれば<br>括約筋を切らない方法を優先"]

薬物療法どうしの比較(75件・5,031例の)4:

比較 結果
対 治癒率48.9%対35.5%(p<0.0009)。統計学的には有意だが差はわずかで、初期治癒例の約半数が後に再発した
・(/) 対 治癒効果は同等で、有害事象は少ない
すべての薬物療法 対 外科的術 いずれの薬物療法も術の有効性には遠く及ばない

⚠️ それでも薬物療法から始めるのは、外科的術にのリスクがあるからである。 上のレビューでは、薬物療法群でのリスクは観察されなかった。つまり「効くが失禁しうる手術」と「効きは劣るが失禁しない薬」のあいだの選択であって、薬が手術より優れているという話ではない。著者ら自身のも「成人のではすべての薬物療法が手術よりはるかに効果が低い」である4。

💡 術を選ぶときは、失禁のリスクを持ち込む患者かどうかを先に見る。 既存の、括約筋損傷、の既往、、肛門手術の既往があれば、括約筋を切らない方法を優先する。

4. 肛門直腸膿瘍

とは同一疾患の異なる病期——肛門・直腸周囲における膿の貯留。

病因

⭐ 大半は「陰窩腺()の感染」から始まる。 膿瘍も瘻孔も通常、括約筋間腔にあるに由来し、そこから各腔へ広がる。分類が括約筋との位置関係で決まるのはこのためである3。

  • 陰窩腺由来(大多数): 括約筋間腔のの感染。起因菌は由来の(Escherichia coli、グラム陽性菌、Bacteroides fragilisなどの嫌気性菌)
  • 肛門周囲外傷の結果(注射、、術後の化膿、な異物のへの挿入)
  • 腫瘍性
  • (Crohn病)

💡 「細菌が増えたから膿瘍ができる」のではなく、「の出口が塞がって腺が感染するから膿瘍ができる」。 培養で出る菌はそのもので、菌の種類が病型を決めるわけではない。この見方に立つと、抗菌薬だけでは治らない理由(閉じたが残る)も理解しやすい。

分類

分類 よく引かれる概数 1,023例の連続症例5 深さ
約45% 42.7% 最も浅い
約30% 22.7% やや深部
(・膿瘍とも呼ばれる) 約20% 21.4% 深部、外表所見に乏しいことがある
約5% 7.33% 最も深部で最も稀

⚠️ どちらの列も「普遍的な定数」ではない。 右列は1件の連続症例の内訳で、4値の合計は100%にならない。施設・時代によって分布はかなり動くため、順位(が最多)と桁を覚え、比率そのものを暗記しない。

💡 頻度と深さはおおむねする。 深部の膿瘍ほど外表所見に乏しく、画像診断(経・骨盤)への依存度が高まる。実際、とではドレナージ時にを合併している頻度が高い5。

臨床像

肛門周囲の腫脹、紅斑、。肛門周囲の不快感、疼痛。

診断

患者診察、、/直腸鏡検査、経、骨盤。

⭐ 手術に進むかどうかの判断には、病歴とで足りる。 やは、複雑な膿瘍・瘻孔で追加すべき検査という位置づけである3。画像が撮れるまで排膿を待つ構図にしない。

治療

  • 外科手術の目標は、括約筋を温存しつつを十分に排膿することである3
  • ごく早期に見つかればで膿瘍形成を食い止められることがあるが、それ以外はすべてを要する
  • ドレナージと同時にが確認できることがある。1,023例の連続症例では34.7%でドレナージ時にが同定された5

⚠️ 抗菌薬だけで治療しようとする姿勢は禁物——膿瘍が形成された時点でが原則。 「十分な切開でのドレナージ」が強調される理由は明快で、膿瘍の再発や続発性ののリスクは全体としては低いものの、それが起こるのは排膿が不十分だった場合だからである3。

💡 ただし「十分に切る」と「括約筋を切らない」は同時に満たす必要がある。 排膿を優先して括約筋を広く切開すればが残り、括約筋を守って浅く切開すればが残ってする。ガイドラインが目標を「下の十分なドレナージ」と両方書いているのは、この緊張関係があるためである3。

まとめ

  • はを基準に//混合に分類する。度数分類(、日本大腸肛門病学会ガイドラインCQ-6)はの脱出だけを測る物差しで、には適用しない。
  • の治療は推奨の強さごと覚える——はIII〜IV度に推奨度A、ゴム輪はIII度までで推奨度B、はIII度に有効だが長期予後・重篤合併症の懸念から推奨度C。と嵌頓はいずれも「まず保存的に」(推奨度C)。III度をどちらに置くかは資料で違うが、I〜II度=保存的治療/IV度=手術という両端は動かない。
  • は(解剖)と単純/複雑(術式の決定)という別々の2軸で捉える。開放してよいのは表在性の瘻孔だけで、瘻孔はすべて。のリスクは切離した括約筋の厚みに比例する。
  • は診察での当たりの付け方にすぎず、だけの分類は約61%しか当たらない。複雑瘻孔では(最大90%)を用いる。
  • は排便時の急性疼痛が特徴で、典型的には後方正中に生じる。正中から外れる・多発ではCrohn病・感染症・悪性腫瘍・外傷を疑う。
  • の薬物療法(・・)はよりわずかに優れる程度で、外側内術には遠く及ばない。それでも薬から始めるのは、手術にだけのリスクがあるためである。
  • はと表裏一体で、大半が括約筋間腔の(陰窩腺)に由来する。手術の目標は括約筋を温存しつつ十分に排膿することで、排膿が不十分なときに再発・が起こる。

肛門部の炎症性疾患としてB/20: (Crohn病は・瘻孔の背景因子になりうる)、大腸病変全般としてはB/18・B/19と併せて大腸・肛門として理解するとよい。

出典

  1. 1.Japanese Practice Guidelines for Anal Disorders I. Hemorrhoids(日本大腸肛門病学会・2017)全文(PMC6768674)で確認した。CQ-6はゴリガー分類を4段階で定義する——I度は肛門鏡で見え内腔に膨隆するが歯状線より下方へは脱出しない、II度は排便・怒責で肛門管外へ脱出するが自然還納する、III度は用手還納を要する、IV度は還納不能で絞扼しうる(推奨度B)。CQ-8の推奨は、結紮切除術がIII度・IV度の内痔核および外痔核に有効(推奨度A)、ゴム輪結紮術はIII度までの内痔核に用いる(推奨度B)、硬化療法は5%フェノールアーモンドオイルがIII度まで、アルミニウムカリウム硫酸塩・タンニン酸はII〜IV度の脱出に有効(推奨度B)、吻合器痔核固定術はIII度に有効だが長期予後が不良で再発率が高く腟瘻・直腸穿孔などの重篤な合併症の懸念がある(推奨度C)、分離結紮はIII度・IV度に有効だが局所麻酔を要する(推奨度C)である。CQ-9は、血栓性外痔核の基本は保存的治療で、血栓が大きい・疼痛が強い・出血が多い場合に外科的切除を考慮する(推奨度C)、嵌頓痔核は待機して症状改善後の待機手術を第一とするが急性期に疼痛が増悪または出血が持続すれば手術を考慮する(推奨度C)とする。閲覧 2026-09-21
  2. 2.Understanding the anatomical basis of anorectal fistulas and their surgical management: exploring different types for enhanced precision and safety(Surgery Today・2025)全文(PMC11928366)で確認した。パークス分類は括約筋間型・経括約筋型・括約筋上型・括約筋外型の4型で、術式選択の基盤として今も用いられる。臨床所見だけで痔瘻を正しく分類できるのは約61%にとどまり、MRIは分類の正確度が最大90%でゴールドスタンダードとされる。一次瘻管の同定ではMRIが感度87%・特異度69%、肛門超音波が感度87%・特異度43%である。瘻孔切開術は単純瘻の治癒率が92〜97%だが、複雑瘻では最大45%に便失禁のリスクがある。括約筋間瘻管結紮術(LIFT法)の治癒率は40〜95%で便禁制への影響は小さい。Crohn病では痔瘻の累積発生率が20年で50%に達する。なお、この総説の全文にGoodsallの語は一度も現れない。閲覧 2026-09-21
  3. 3.German S3 guidelines: anal abscess and fistula (second revised version)(Deutsche Gesellschaft für Allgemein- und Viszeralchirurgie・2017)出版社の本文は取得できず抄録のみを閲覧した。抄録の逐語によれば、これは2011年に初版が公表されたドイツS3ガイドラインの改訂版である。陰窩腺由来の膿瘍と瘻孔は通常、括約筋間腔の肛門腺に由来し、分類は肛門括約筋との位置関係で決まる。手術適応の判断には病歴と身体診察で足り、複雑な膿瘍や瘻孔では超音波内視鏡やMRIを追加すべきとする。膿瘍手術の目標は括約筋を温存しつつ感染巣を十分に排膿することで、膿瘍の再発や続発性の瘻孔形成のリスクは全体として低いが、排膿が不十分な場合に生じうる。一次的な瘻孔切開術は表在性の瘻孔に限って行うべきで、所見が不明瞭な場合や高位瘻孔では二期的に処置する。術後の便失禁のリスクは切離された括約筋の厚みに直接関係し、高位の痔瘻はすべて括約筋温存術で治療すべきとする。形成外科的再建術(皮弁・括約筋修復・LIFT法)の成績はおおむね同等で、生体材料による閉鎖は治癒率が低い。閲覧 2026-09-21
  4. 4.Non surgical therapy for anal fissure(Cochrane Database of Systematic Reviews・2012)抄録で確認した。無作為化比較試験75件・5,031例を対象とし、炎症性腸疾患・癌・肛門感染症に伴う非典型的な裂肛は除外されている。局所ニトログリセリンはプラセボより治癒率が高いが差はわずかで(48.9%対35.5%、p<0.0009)、初期治癒例の約半数で後に再発した。ボツリヌス毒素とカルシウム拮抗薬(ジルチアゼム・ニフェジピン)はニトログリセリンと同等の治癒効果を有害事象の少なさとともに示した。いずれの薬物療法も外科的括約筋切開術の有効性には遠く及ばないが、これらの試験では薬物療法に便失禁のリスクは伴わなかった。著者らの結論は、成人の慢性裂肛ではすべての薬物療法が手術よりはるかに効果が低い、というものである。閲覧 2026-09-21
  5. 5.Perianal abscesses and fistulas. A study of 1023 patients(Diseases of the Colon and Rectum・1984)抄録で確認した。5年半で治療した肛門直腸膿瘍・痔瘻1,023例の連続症例で、膿瘍の型別頻度は肛門周囲42.7%、坐骨直腸窩22.7%、括約筋間21.4%、挙筋上7.33%だった(合計は100%にならない)。膿瘍ドレナージの時点で内瘻口が確認できたのは355例(34.7%)で、挙筋上膿瘍と括約筋間膿瘍では痔瘻の合併頻度が高かった。再発率はドレナージのみの群で3.7%、ドレナージと同時に一次的瘻孔切開術を行った群で1.8%、平均追跡36か月である。閲覧 2026-09-21