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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

良性肛門疾患(痔核・裂肛・痔瘻・肛門周囲膿瘍)

Benign anorectal disorders (hemorrhoids, fissure, fistula, abscess)

臓器系
消化器
科目
Surgery
トピック
外科学 B/21:痔核・肛門瘻孔/裂肛・肛門直腸膿瘍外科学 S-22:良性肛門疾患(痔核・裂肛・痔瘻・肛門周囲膿瘍)
鑑別疾患
大腸癌
治療薬
ジルチアゼムニフェジピンニトログリセリンボツリヌス毒素
原因微生物
Escherichia coliBacteroides fragilis
症状
圧痛腫脹掻痒便失禁疼痛
画像所見
肛門超音波
原因となる疾患
クローン病

🧠 全体像:肛門部の4大良性疾患は、痛みの有無で最初に大きく分かれる。は原則無痛性の出血・脱出(・嵌頓時のみ痛む)、は排便時の急性で鋭い痛み、膿瘍は急な持続痛を伴う炎症、は間欠的な排膿が手掛かりになる。さらにとは「同一疾患の異なる病期」(膿瘍=急性の膿貯留、=その慢性化・形成)であり、治療全体を通じてを温存しを避けるという一貫した目標がある。

痔核

内の拡張した血管・結合組織のクッション(正常な)が異常に腫大・脱出したもので、静脈瘤に類似した病態である。出血を安易にへ帰属させず、年齢、貧血、便通変化、家族歴に応じて大腸癌など大腸病変を除外する。

分類

型 との位置 典型像
上方 無痛性の、脱出、粘液漏出、
下方 通常は腫脹・不快感。急性で強い痛みを伴う
混合 の上下両方 内外両方の特徴を併せ持つ

内痔核のゴリガー分類

⚠️ 度数分類は「どの資料の定義か」を断ってから使う。 以下は日本大腸肛門病学会の診療ガイドラインがCQ-6で採用している(推奨度B)の定義である1。の脱出の程度だけを測る物差しであって、には適用しない。

度 ガイドラインの定義1 併せて記述される臨床的特徴
I度 で確認でき内腔に膨隆するが、より下方へは脱出しない 脱出せず、しばしば出血する
II度 排便・で外へ脱出するが、自然にする 安静時には自然に戻る
III度 排便・で脱出し、にする必要がある 用手を要する
IV度 で、絞扼しうる 常時脱出したままになり、絞扼・しすることもある

💡 I〜IV度を分けているのは「脱出するか」「自力で戻るか」「手で戻せるか」の3つの問いだけである。 「出血するか」「常時脱出か」といった症状の強さは度数を決める条件ではない。I度の「出血しやすい」「可逆性」は一般の性質の記述であって、度数の定義ではない。

病因

過度の(慢性便秘、妊娠、頻回の排便、、重量物挙上)、静脈還流不全、の異常、、括約筋攣縮の増強、不足などが関与する。

臨床像

腫脹、、出、便による汚染、軽度の失禁、肛門周囲皮膚の刺激、便表面につくを来す。

⭐ 「は痛くない」が原則——痛みを伴うのはや嵌頓時のみである。肛門部の疼痛を訴える患者では、まずや膿瘍など他疾患を積極的に疑う。

診断

で・脱出したを確認し、他疾患(肛門皮膚垂・ポリープなど)を除外する。で腫瘤・圧痛・出血の有無を確認し、は肛門・遠位直腸の評価に有用である。軟性S状結腸鏡・は悪性腫瘍の除外に用いる。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal'>内痔核</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Goligher classification'>ゴリガー分類</span>"] --> B["全例で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-fiber diet'>高繊維食</span>・水分摂取・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='straining (at defecation)'>怒責</span>回避を指導"]
    B --> C["I〜II度<br>保存的治療"]
    B --> D["III度<br>外来処置と手術が重なる帯"]
    B --> E["IV度<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular/surgical intervention'>外科的治療</span>"]
    C --> C1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Lifestyle measures'>生活習慣改善</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stool softener'>便軟化薬</span>・外用薬"]
    D --> D1["ゴム輪<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligation'>結紮術</span><br>(III度まで・推奨度B)"]
    D --> D2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclerotherapy'>硬化療法</span>(推奨度B)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='infrared coagulation'>赤外線凝固</span>法"]
    D --> D3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemorrhoidectomy'>結紮切除術</span><br>(III度・IV度・推奨度A)"]
    E --> D3
  1. 全例で、水分摂取、排便時の過度な・長時間座位の回避を指導する(保存的治療の土台)。
  2. 外来処置はゴム輪・・法で、ゴム輪はのIII度までに用いる(推奨度B)1。
  3. (Ferguson法/Milligan-Morgan法)はIII度・IV度のおよびに用いる(推奨度A。CQ-8が挙げる5つの術式のうち唯一のA)1。大きなや内の併存もこちらに入る。
  4. はIII度のに有効だが成分を治療できず、長期予後が不良で再発率が高く、腟瘻・直腸穿孔といった重篤な合併症の懸念があるため推奨度Cにとどまり、第一選択として一律に用いない1。

⚠️ 外来処置と手術の境界は資料によってIII度の扱いが違うので、どちらの線引きの話かを断ってから使う。

線引き 外来処置の対象 手術の対象
保存・外来・手術の3段階で教える書き方 症状のあるすべての+III度 IV度
日本大腸肛門病学会ガイドラインCQ-81 ゴム輪はIII度まで(推奨度B。II度では第一に推奨され、III度でも第一に考慮しうる) はIII度・IV度(推奨度A)

💡 食い違っているのはIII度の置き場所だけである。 ガイドライン自身が「III度ではゴム輪はより効果が劣り再施行を要することがある」と認めたうえで「III度でも第一に考慮しうる」と書いており、III度は外来処置でも手術でも扱える帯である1。I〜II度=保存的治療/IV度=手術という両端は、どちらの書き方でも動かない。

⭐ 同じ「肢」でも、ガイドラインが付けている推奨度は大きく違う1。

処置 適応する病期 推奨度
III度・IV度のおよび A
ゴム輪 III度までの B
5%アーモンドオイルはIII度まで/アルミニウムカリウム硫酸塩・酸(ALTA)はII〜IV度の脱出 B
III度の(長期予後が不良で再発率が高く、腟瘻・直腸穿孔などの重篤な合併症の懸念がある) C
分離 III度・IV度の・(を要する) C

⚠️ と嵌頓は、いずれも「まず待つ」が原則である(どちらも推奨度C)1。は血栓が大きい・疼痛が強い・出血が多い場合に外科的切除を考慮し、嵌頓はして症状が改善してからとするのが第一で、急性期に疼痛が増悪するか出血が持続する場合にのみ手術を考慮する。

裂肛

肛門上皮の縦走で、典型的には後方正中に生じる。による、、局所虚血の悪循環が慢性化を招く。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hard stool'>硬便</span>・排便時外傷"] --> B["肛門上皮の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laceration'>裂創</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal sphincter spasm'>内括約筋攣縮</span>"]
    C --> D["局所血流低下"]
    D --> E["治癒遅延・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic anal fissure'>慢性裂肛</span>"]
    E --> C
急性 慢性
多くは6週未満の表在性 、、内括約筋線維の露出を伴う

正中から外れる多発では、感染症、悪性腫瘍、外傷を考える。診断は病歴とを優しく開くが中心で、強い痛みのある急性期に無理な・は行わない。

治療(目標:肛門管安静時圧の低下)

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anal fissure'>裂肛</span>"] --> B["保存的治療"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular/surgical intervention'>外科的治療</span>"]
    B --> B1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stool softener'>便軟化薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sitz bath'>座浴</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='local anesthetics'>局所麻酔薬</span>"]
    B --> B2["局所<span class='jp-term jp-term-diagram' title='calcium channel blockers'>カルシウム拮抗薬</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diltiazem'>ジルチアゼム</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nifedipine'>ニフェジピン</span>)または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glyceryl trinitrate'>ニトログリセリン</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ointment'>軟膏</span>"]
    B2 --> B3["無効例は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='botulinum toxin'>ボツリヌス毒素</span>注射"]
    C --> C1["閉鎖式外側内<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sphincterotomy'>括約筋切開</span>術"]

肛門周囲膿瘍と痔瘻

の感染が膿瘍を作り、排膿後にと皮膚を結ぶ上皮化が残るとになる。とは同一疾患の異なる病期(膿瘍=急性の膿貯留、=その慢性化)であり、の原因の約90%はで、残りは・結核・悪性腫瘍・放射線による。

病因

⭐ 大半は「陰窩腺()の感染」から始まる。 膿瘍も瘻孔も通常は括約筋間腔にあるに由来し、肛門陰窩から侵入した細菌が腺に感染して生じる。分類が括約筋との位置関係で決まるのはこのためである23。

  • 陰窩腺由来(大多数): 起因菌は由来の(E. coli、グラム陽性菌、Bacteroidesなどの嫌気性菌)
  • 肛門周囲外傷(注射、、術後の化膿、な異物の挿入)
  • 腫瘍性病変
  • ()

💡 「細菌が増えたから膿瘍ができる」のではなく、「の出口が塞がって腺が感染するから膿瘍ができる」。 培養で出る菌はそのもので、菌の種類が病型を決めるわけではない。この見方に立つと、抗菌薬だけでは治らない理由(閉じたが残る)も理解しやすい。

膿瘍の分類と臨床像

分類 よく引かれる概数 1,023例の連続症例4 深さ
約45% 42.7% 最も浅く、最多
約30% 22.7% やや深部
約20% 21.4% 深部、外表所見に乏しいことがある
約5% 7.33% 最も深部で最も稀

⚠️ どちらの列も「普遍的な定数」ではない。 右列は5年半で治療した1,023例の連続症例の実測値で、4値の合計は100%にならない。左列の概数とは母集団が別なので、置き換えずに並べてある。順位(が最多)と桁を覚え、比率そのものを暗記しない。

💡 頻度と深さはおおむねする。深部の膿瘍ほど外表所見に乏しく、画像診断(//経)への依存度が高まる。実際、とではドレナージ時にを合併している頻度が高い4。

肛門周囲の急な持続痛、圧痛、発赤、腫脹を来す。深部の膿瘍では外表所見に乏しいことがあるため、通常は診察で診断するが、深部・再発・複雑例やでは画像検査(//経)を追加する。は間欠的な腫脹・排膿・皮膚刺激を来し、、、既往を評価する。

痔瘻のパークス分類

括約筋との位置関係で4型に分ける分類で、術式選択の基盤として用いられる。⚠️ 括約筋をまったく通らない表在性瘻孔はこの4型のどれにも入らず、別枠として扱う。⚠️ また、が広く使われるのは欧米で、日本では隅越分類を用いることが多い3。

型 括約筋との関係 治療の原則
括約筋間 内外括約筋間を下行 単純瘻なら
外括約筋を貫く は切開可能、は等
上方を回る
挙筋上から直腸外を通る 原因精査と専門的再建

⚠️ は「どこを通るか」を記述するだけで、そのままでは術式を決められない。 実際に「開放してよいか」を決めるのは、かか・単純か複雑かという別の軸である。2つの軸を1つの表に混ぜない。

区分 含まれるもの
単純 の、表在性、
複雑 の、、、女性の前方、多発瘻孔

💡 女性の前方の瘻孔が「複雑」に入るのは深さのためではない。 前方では外括約筋が薄く、産科的損傷が加わっていることもあるため、同じ深さでも切開がに直結しやすい。数字でも裏づけがあり、一次瘻口が前方にあるのは女性に多く(男性12.3%に対し女性25%)3、前方膿瘍からへ進む頻度も女性88%対男性33%と大きく開く5。「複雑」はの形の話だけでなく、便を失うリスクの話でもある。

⭐ (が肛門横断線より前方ならも同じ放射状の位置に、後方ならは後方正中に開口しのを作る)は、術前にの位置を推定する古典的な手がかりである。⚠️ 例外——長い前方瘻孔では、が前方でもが長い場合に後方の瘻孔と同じように弯曲して後方正中へ向かうことがある。「前方=まっすぐ」を機械的に当てはめるとを取り残す。

治療

  • 膿瘍:早期発見であればで形成を阻止できることもあるが、それ以外は速やかな(十分な切開)が原則である。手術に進むかどうかは病歴とで判断でき、やは複雑な膿瘍・瘻孔で追加する検査という位置づけである2。蜂窩織炎、全身感染徴候、免疫抑制があれば排膿に抗菌薬を追加する3。
  • :単純瘻は(全体を開放し辺縁を切離)で治癒しうる。・複雑瘻では(に緩い輪状の糸を通して排膿路を確保しつつ段階的に管理する)、、などを解剖と便に応じて選ぶ。は成績が一定せず万能ではない。

⚠️ 抗菌薬だけで排膿を遅らせてはならない。 膿瘍が形成された時点でが原則であり、不十分な切開ではが残存して・再発につながる。ドイツのS3ガイドラインが手術の目標を「括約筋を温存しつつを十分に排膿すること」と両方書いているのは、浅く切ればが残ってし、広く切ればが残るという緊張関係があるためである2。

⚠️ 排膿しても終わりではない。 の既往が無い急性170例のうち146例を平均99か月追跡した研究では、37%がを発症し、10%が膿瘍を再発した(追加治療なく治癒したのは50%)5。日本大腸肛門病学会のガイドラインもこの研究を引き、を受けた患者の約30%がに至るという報告と併せて紹介している3。つまり排膿後もの出現を前提に経過観察する。

⚠️ 資料によって数字が大きく違うのは、数えている量が違うからである。 ドイツのS3ガイドラインは「膿瘍の再発や続発性ののリスクは全体としては低いが、排膿が不十分な場合に生じうる」と述べ2、1,023例の連続症例では再発率がドレナージのみ3.7%・一次的1.8%(平均36か月追跡)である4。ただし後者は瘻孔が見つかれば同時にを行ったシリーズの「膿瘍再発率」であり、長期追跡での「発症率」とは別の量である。横に並べて大小を比べない。

⭐ 「瘻孔=、瘻孔=開放し」が原則——瘻孔をいきなり切開すると括約筋を大きく損傷し失禁のリスクが生じるため、で段階的に管理する。⚠️ ドイツのS3ガイドラインはこの線をさらに厳しく引き、一次的なは表在性の瘻孔に限って行うべきとし、所見が不明瞭な場合や瘻孔ではに処置するよう求めている。術後ののリスクは切離した括約筋の厚みに直接比例するため、のはすべてで治療すべきとされる2。

まとめ

  • 出血は無痛性、は排便関連の、膿瘍は急な持続痛、は間欠的な排膿が鑑別の手掛かりである。
  • は(日本大腸肛門病学会ガイドラインCQ-6、推奨度B)での脱出の程度だけを測る。治療は推奨の強さごと覚える——はIII度・IV度に推奨度A、ゴム輪はIII度までで推奨度B、はIII度に有効だが長期予後・重篤合併症の懸念から推奨度C。III度をどちらに置くかは資料で違うが、I〜II度=保存的治療/IV度=手術という両端は動かない。
  • は局所(/)を中心とした保存的治療が第一選択で、無効例にを行う。
  • は(解剖)と単純/複雑(術式の決定)という別々の2軸で捉える。女性の前方は深さによらず「複雑」に入り、には長い前方瘻孔という例外がある。
  • は速やかなが原則で、抗菌薬だけで治療を遅らせない。排膿後も37%が・10%が膿瘍再発(平均99か月追跡)という長期データがあり、排膿で終わりにしない。はと再発制御の両立を目標に、瘻孔ではなどを用いる。

出典

  1. 1.Japanese Practice Guidelines for Anal Disorders I. Hemorrhoids(日本大腸肛門病学会・2017)全文(PMC6768674)で確認した。CQ-6 はゴリガー分類を4段階で定義する(推奨度B)——I度は肛門鏡で確認でき内腔に膨隆するが歯状線より下方へは脱出しない、II度は排便・怒責で肛門管外へ脱出するが自然に還納する、III度は用手的な還納を要する、IV度は還納不能で絞扼しうる。CQ-8 の推奨は、結紮切除術がIII度・IV度の内痔核および外痔核に有効(推奨度A)、ゴム輪結紮術はIII度までの内痔核に用いる(推奨度B)、硬化療法は5%フェノールアーモンドオイルがIII度まで・アルミニウムカリウム硫酸塩・タンニン酸(ALTA)はII〜IV度の脱出に有効(推奨度B)、吻合器痔核固定術はIII度の内痔核に有効だが長期予後が不良で再発率が高く腟瘻・直腸穿孔などの重篤な合併症の懸念がある(推奨度C)、分離結紮はIII度・IV度に有効だが局所麻酔を要する(推奨度C)である。本文の考察は「III度ではゴム輪結紮術は結紮切除術より効果が劣り再施行を要することがある」としたうえで「II度では第一に推奨され、III度でも第一に考慮しうる」と述べる。CQ-9 は血栓性外痔核・嵌頓痔核とも保存的治療を基本とする(いずれも推奨度C)。閲覧 2026-09-21
  2. 2.German S3 guidelines: anal abscess and fistula (second revised version)(Deutsche Gesellschaft für Allgemein- und Viszeralchirurgie・2017)出版社の本文は取得できず抄録のみを閲覧した。抄録の逐語で、これが2011年に初版が公表されたドイツS3ガイドラインの改訂版であること、陰窩腺由来の膿瘍と瘻孔は通常は括約筋間腔の肛門腺に由来し分類は肛門括約筋との位置関係で決まること、手術適応の判断には病歴と身体診察で足り複雑な膿瘍・瘻孔では超音波内視鏡やMRIを追加すべきこと、膿瘍手術の目標は括約筋を温存しつつ感染巣を十分に排膿することであること、「膿瘍の再発や続発性の瘻孔形成のリスクは全体としては低いが、排膿が不十分な場合に生じうる」こと、一次的な瘻孔切開術は表在性の瘻孔に限って行うべきで所見が不明瞭な場合や高位瘻孔では二期的に処置すること、術後の便失禁のリスクは切離された括約筋の厚みに直接関係し高位の痔瘻はすべて括約筋温存術で治療すべきこと、形成外科的再建術(皮弁・括約筋修復・LIFT法)の成績はおおむね同等で生体材料による閉鎖は治癒率が低いことを確認した。閲覧 2026-09-21
  3. 3.Japanese Practice Guidelines for Anal Disorders II. Anal fistula(日本大腸肛門病学会・2018)全文(PMC6752149)で確認した。痔瘻は括約筋間腔の肛門腺が肛門陰窩から侵入した細菌に感染して生じ(陰窩腺感染)、男性に2〜6倍多く30〜40歳代に最も多い。一次瘻口が前方にあるのは女性に多い(男性12.3%、女性25%)。肛門周囲膿瘍に対する切開排膿を受けた患者の約30%が痔瘻に至ると報告されており、146例を追跡した研究では50%が追加治療なく治癒し、10%が膿瘍を再発し、37%が痔瘻を発症したと本文が引いている。⚠️ ただし同じ段落は「男性のほうが痔瘻を発症しやすい」と書いており、引用元の原著(Hämäläinen 1998)の抄録が女性50%対男性31%と女性で高いとしているのと食い違う。パークス分類は欧米で広く用いられるが日本では隅越分類を用いることが多い。肛門周囲膿瘍では、周囲に蜂窩織炎を伴う場合、全身疾患を併存する場合、切開排膿で改善しない場合に抗菌薬を投与する。切開の部位と大きさは膿瘍の型と局在で決まり、括約筋を損傷しないよう、また将来の痔瘻手術を見越して置く。閲覧 2026-09-21
  4. 4.Perianal abscesses and fistulas. A study of 1023 patients(Diseases of the Colon and Rectum・1984)抄録で確認した。5年半で治療した肛門直腸膿瘍・痔瘻1,023例の連続症例で、膿瘍の型別頻度は肛門周囲42.7%、坐骨直腸窩22.7%、括約筋間21.4%、挙筋上7.33%だった(合計は100%にならない)。膿瘍ドレナージの時点で内瘻口が確認できたのは355例(34.7%)で、挙筋上膿瘍と括約筋間膿瘍では痔瘻の合併頻度が高かった。⚠️ このシリーズは低位瘻孔が同定されれば同時に一次的瘻孔切開術を行う方針で、再発率はドレナージのみの群で3.7%、一次的瘻孔切開術を併施した群で1.8%、平均追跡36か月である。したがってこの値は「膿瘍の再発率」であって、長期追跡での「痔瘻発症率」とは別の量である。閲覧 2026-09-21
  5. 5.Incidence of fistulas after drainage of acute anorectal abscesses(Diseases of the Colon and Rectum・1998)抄録で確認した。痔瘻の既往が無い急性陰窩腺性肛門直腸膿瘍170例のうち146例を平均99か月(範囲22〜187か月)追跡し、54例(37%)が痔瘻を発症、15例(10%)が膿瘍を再発した。痔瘻の発生率は男性31%に対し女性50%と女性で高く(P=0.0403)、とくに前方の膿瘍では女性88%対男性33%だった。大腸菌が分離された膿瘍は他菌より痔瘻を作りやすかった(46%対27%、P=0.0368)。著者らの結論は「この方針なら半数を超える患者で不要な一次的瘻孔切開術を避けられるので、急性肛門直腸膿瘍には切開排膿単独を勧める」であり、女性の表在性前方膿瘍に限って一次的瘻孔切開術を考慮しうるとする。閲覧 2026-09-21