外科学

外科学 · B/19

大腸腫瘍(症状・診断・治療)

Tumors of the large bowel (symptoms, diagnosis, treatment)

前提:病態
小腸・大腸の腫瘍癌のグレード分類と病期分類
症状
下血
検査値
CEA

ポッドキャスト

🧠 大腸癌は「右側()は貧血で見つかる、左側(・直腸)は閉塞で見つかる」という左右差で覚える。 予後の左右差は、全病期をまとめたでは左側が良好だが、切除された病期I〜IIIに絞った解析では病期I・IIで右側が良好・病期IIIで差が消えるという報告があり、一方向に断定しない。は局在に応じて切除範囲を決めることが多い一方、では(CRM)の確保との可能性を踏まえて術式を選ぶ。123

1. 総論・疫学

2. 臨床像 — 部位による症状の違い

腫瘍の解剖学的位置により症状が大きく異なるのが本トピックの核心。

(右側腫瘍) (左側腫瘍)
症状 、体重減少、腹痛などの非特異的症状。軟便や、消化された血液による暗色・タール様の便()を呈することもある 排便習慣の変化、閉塞、、血便()
予後 全病期をまとめた解析では左側より不良。ただし病期I〜IIに限ると右側のほうが良好という報告がある 全病期をまとめた解析では良好。病期IIIでは左右差が消える
性別 女性>男性 男性>女性
flowchart TD
  A["大腸癌の局在"]
  A --> B["右側(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal colon'>近位結腸</span>)"]
  A --> C["左側(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='distal colon'>遠位結腸</span>・直腸)"]
  B --> B1["管腔が広い・便が液状<br>→ 閉塞症状が出にくい"]
  B1 --> B2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='insidious (onset)'>潜行性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic bleeding'>慢性出血</span><br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='iron-deficiency anemia, IDA'>鉄欠乏性貧血</span>として発見"]
  B2 --> B3["発見が遅れやすい"]
  C --> C1["管腔が狭い・便が固形化<br>→ 閉塞症状が出やすい"]
  C1 --> C2["排便習慣変化・血便として早期に顕在化"]

⭐ 「右側=貧血などの非特異的症状、左側=閉塞・血便などの局所症状」という対比は有用。 一方、予後の左右差は「どの病期を、どう解析したか」で向きが変わる。

  • 66研究・1,437,846例のでは、癌の死亡リスクが有意に低く(0.82、95%CI 0.79〜0.84)、この関連は病期・人種・・研究の質から独立していた。著者らは「の左右はすべての病期で予後の基準として認識されるべきだ」としている1。
  • 一方、米国SEERの病期I〜III・91,416例をした解析では向きが逆転し、右側のほうが・癌特異的生存ともに良好だった(の0.92)。病期I・IIでは右側が良好、病期IIIでは左右差が消えた(0.99)。著者らは「癌の生存が不良だとする従来の定説に疑問を投げかける」と述べている2。

⚠️ どちらか一方だけを「正解」として覚えない。 症状の左右差は安定した所見だが、予後の左右差は対象とした病期(全病期か、な早期か)と調整の方法でが変わる論点である。

3. 診断

スクリーニング

  • ——
  • S状結腸鏡検査
  • コロノグラフィー

⚠️ 開始年齢は国・発行元で違うので、答えるときは必ずどの勧告かを添える。 米国は2021年の改訂で、平均リスクの無症状成人の50〜75歳をA推奨としたうえで、45〜49歳をB推奨(中等度の確実性で中等度の純利益)として新たに加え、76〜85歳は既受診者への選択的な提供(C推奨)とした。根拠として、新規大腸癌の10.5%が50歳未満で発生すること、40〜49歳の腺癌罹患が2000〜2002年から2014〜2016年にかけて約15%増えたことを挙げている6。

病期分類

  • 分類: +生検/による組織学的解析が必要
  • 検査(胸部+腹部): 転移の評価
  • ベースライン(): 切除後のモニタリングと治療反応の追跡に使用
  • (MMR)/(MSI)検査: 下記のとおり全例で実施する
区分 腫瘍の広がり
T1 までにとどまる
T2 に達するが貫通しない
T3 を貫通し、大腸周囲組織へ及ぶ
T4a / T4b 表面に達する/隣接臓器・構造へする
N1 1〜3個
N2 4個以上
M1a / M1b / M1c 1臓器への転移/複数臓器への転移/を伴う

病期の組み立ては「I=T1〜T2でリンパ節転移なし、II=T3〜T4でリンパ節転移なし、III=リンパ節転移あり(Nの数は問わない)、IV=遠隔転移あり」という順序で覚える。⚠️ T4を落とさない——T3までしか覚えていないと、に達した病変と他臓器へ浸潤した病変を病期IIの中で区別できなくなる。

⭐ 大腸癌のT・N・M区分は、第9版になっても第8版から実質的に変わっていない。 第9版で結腸・について新たに入ったのはの定義——リンパ節・壁外・とは区別される、結腸周囲・直腸周囲脂肪内の孤立した腫瘍結節——だけである。の委員会自身が「結腸・のは現在改訂作業中で、2026年中に公表される予定」と述べており、その動機として「が高くが低い病期IIが、リンパ節転移量の少ない病期IIIより予後不良のことがある=現行のが階層的でない」ことを挙げている7。を受けた症例は接頭辞 y を付けてyT・yN・y病期と記述し、別個のは設けない7。

💡 は大腸癌そのものの診断マーカーではなく、主として切除後の再発モニタリング・治療反応の追跡に用いる。 CEA単独では感度・特異度に限界があり、単回値より推移が重要である。8

遺伝子検査 — ミスマッチ修復とマイクロサテライト不安定性

⭐ 大腸癌と診断したら(MMR)の状態を調べる。 ASCP・CAP・AMP・ASCOの合同ガイドライン(推奨3)は「大腸癌患者ではの状態を調べる検査を指示すべきである」とし、その目的を ①の高リスク者を拾い上げること、②予後の層別化の2つとして挙げている9。家族歴に頼った臨床基準だけでは拾い上げに漏れが出るため、腫瘍側の検査を入口にする。

検査 位置づけ
MMR蛋白の免疫染色/MSI検査 の拾い上げと予後の層別化(推奨3)
BRAF p.V600 かつMLH1発現消失の腫瘍で追加する。BRAF変異があれば散発性である可能性が強く支持されるが、⚠️ 変異が無いことはのリスクを否定しない(推奨2b)
(KRAS・NRASのエクソン2・3・4) 薬の適応判断(推奨1)

💡 MMR/MSIは1つの検査で「遺伝性か」「予後は」「どの薬か」の3つに答えるため、進行例に限らず診断時に組み込む。の適応を含む薬物療法の詳細は大腸癌で扱う。

4. 治療 — 外科的切除

では腫瘍の解剖学的位置が切除範囲をほぼ決める。 ただし決めているのは腸管上の距離ではなく、その部位を養う動脈とそれに沿うである。では位置に加えて、の原則、を陰性にできるか、括約筋を温存できるかで術式が決まる。

flowchart TD
  A["腫瘍の局在"]
  A --> B["盲腸・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ascending colon'>上行結腸</span>・近位<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transverse colon'>横行結腸</span><br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='right hemicolectomy'>右半結腸切除術</span>"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transverse colon'>横行結腸</span>中央<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='transverse colon'>横行結腸</span>切除術"]
  A --> D["遠位<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transverse colon'>横行結腸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='descending colon'>下行結腸</span><br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='left hemicolectomy'>左半結腸切除術</span>"]
  A --> E["S状結腸<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='sigmoid colectomy'>S状結腸切除</span>術"]
  A --> F["結腸全体に及ぶ<br>→ 結腸全摘術"]
  A --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low'>低位</span>直腸<br>→ 括約筋浸潤・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='circumferential resection margin, CRM'>環周切除断端</span>・機能温存で術式選択"]
  H["緊急の腸閉塞・穿孔"] --> I["全身状態と再建可能性で術式選択"]
腫瘍の局在 術式 一緒に切離される主な支配血管
盲腸、、近位 、、の右枝
(中央) 切除術 (との吻合を考慮)
遠位、 、第1枝
S状結腸 術 、
結腸全体の切除を要する場合(同時多発癌、など) 結腸全摘術 回結腸・右結腸・中結腸・、(まで)
直腸 腫瘍の高さだけで決めず、括約筋浸潤、(CRM)確保、機能温存可能性からと手術を選択3 (の終枝)
緊急の腸閉塞、穿孔 を含め、病変部位、全身状態、根治性、再建可能性に応じて個別に選択 —
局所限局性の (切離しない)

💡 「どの術式か」は腸管のどこを切るかではなく、どの動脈の根部を切って、その動脈に沿うをまとめて取るかで決まっている。 だからではから近位までが、では遠位から上部直腸までがになる。下の「リンパ節郭清の範囲との距離」と合わせて理解する。

(APR)とは: 肛門から概ね8cm以内のに対し、直腸と肛門をまとめて切除し、永久(S状結腸)をする術式である。⚠️ ただし「肛門から◯cm以内なら自動的にAPR」という決め方は現在の標準ではない——への浸潤がなく断端を確保できれば、より肛門に近い腫瘍でも手術が可能である3。

悪性腫瘍による閉塞に対する: 留置を考慮すべき。

リンパ節郭清の範囲と切除断端の距離

「どこで切るか」は腫瘍からの距離ではなく、郭清すべきリンパ節の範囲で決まる。 日本の大腸癌研究会(JSCCR)ガイドライン2024は次のように定めている10。

項目 内容
郭清範囲の決め方 術前・術中所見でリンパ節転移があるか疑われればD3郭清。転移がなければで決める
別 pTis=D0(リンパ節転移がないためD0でよいが、を行うならD1も可)/pT1=D2が必要(リンパ節転移が約10%、中間リンパ節転移が約2%あるため)/cT2=少なくともD2、D3も行いうる
結腸の腸管切離線 腫瘍縁から10cmを超える腸管傍リンパ節への転移はまれ。pStage I〜IIIの2,996例の前向きコホートで、10cmを超える転移は4例(0.1%)のみだった
直腸の肛門側切離線 RS・Ra癌では腫瘍縁から3cm以上、Rb癌では2cm以上の・内の肛門側進展はまれ。この範囲を含むように切離線を決める

⚠️ この「まれ」は全例に当てはまらない。 pT4、pN2、M1(病期IV)、低では肛門側へ長く進展しやすく、上の距離をそのまま当てはめられない10。

括約筋間(ISR)の適応は次の2つをいずれも満たすこと——①・への浸潤がなくを陰性にできること、②肛門側断端をT2/T3では原則2cm以上、T1では1cm以上確保できること。低との緊張が低下した例には推奨しない10。

直腸癌の術前治療 — 日本と欧米で標準が違う

⚠️ 「局所進行には」は欧米の標準であって、世界共通ではない。 どの国の枠組みの話かを必ず添える。

地域 標準的な考え方10
日本 進行下部には自律神経温存側方リンパ節郭清を伴うTME(またはTSME)が標準。術前放射線療法は積極的には行われていない。効果や側方郭清の代替としての有効性に明確なエビデンスがなく、upfront surgery(まず手術)が標準
欧米 局所進行には術前放射線療法が標準。ただし適応は危険因子(下部直腸という局在、T3/4、リンパ節陽性、への浸潤、壁外陽性)で層別化され、欧州と米国でも同一ではない
  • JSCCRも欧米のエビデンスを参照して、局所再発リスクが高いと予測される患者には術前放射線療法を考慮すべきとしている。一方で術前放射線療法は腸管障害・障害・・のリスクを上げる。
  • 低リスク例(cT2N1、T3N0、T3N1で手術が可能)を対象としたPROSPECT試験では、術前の5年80.8%がの78.6%にだった。ただし日本の標準である upfront surgery との比較試験はなく、局所再発リスクの高い例での単独をJSCCRは弱く推奨しないとしている。
  • (TNT) は率を改善したが(RAPIDO試験28%対14%、PRODIGE23試験28%対12%)、⚠️ 率の有意な改善は報告されていない10。

💡 のの詳細と、による局所は大腸癌で扱う。

Hartmann手術

++肛門直腸断端の閉鎖——B/18で述べたの穿孔(Hinchey分類Stage 3-4)でも同一の術式が用いられる。⚠️ ただし穿孔性でが強く推奨されるのは重症例と併存症の多い例で、が安定し併存症のない例には切除・吻合が提案される。大腸癌の緊急手術でも同じ判断軸が働く。

💡 は「大腸癌の緊急穿孔・閉塞」と「の穿孔」の両方で使われる汎用的な緊急術式。 吻合を作らずで一時的に管理し、後日(状態が安定してから)閉鎖・再吻合を検討するという「まず安全に、後で根治的再建を」という二段階の発想が背景にある。

まとめ

  • 大腸癌は世界で3番目に多いで、癌死亡では2位。罹患・死亡は40歳を超えて著明に増加し、いずれも男性で高い。
  • 右側は貧血などの非特異的症状、左側は閉塞・血便などの局所症状を呈しやすい。予後の左右差は、全病期をまとめたでは左側が良好だが、切除された病期I〜IIIに絞った解析では病期I・IIで右側が良好、病期IIIで差が消える——対象病期と解析法で向きが変わる論点として覚える。
  • 検診の開始年齢は国・発行元で異なる。米国は2021年改訂で50〜75歳をA推奨としたうえで45〜49歳をB推奨として加えた。「どの勧告か」を添えて答える。
  • 診断のは+生検、は切除後のモニタリング・治療反応追跡に用いる。はT1〜T4b・N1/N2・M1a〜M1cで、T4(T4a=表面、T4b=隣接)を落とさない。T・N・M区分は第9版でも第8版から実質的に変わっておらず、結腸・直腸の全面改訂は作業中である。
  • 大腸癌と診断したらの状態を全例で調べる。目的はの拾い上げと予後の層別化の2つで、MLH1発現消失例ではBRAF p.V600を追加する(変異があれば散発性を支持するが、無くてもを否定しない)。
  • は局在に対応して切除範囲を決めるが、実体は「どの支配血管を根部で切り、その動脈に沿うをまとめて取るか」である。切離線は腫瘍からの距離ではなく郭清すべきリンパ節の範囲で決まり、郭清度は転移の有無とで選ぶ(転移あり・疑いならD3、pT1はD2が必要)。
  • は直腸と肛門をまとめて切除し永久をする術式で、古典的には肛門から8cm以内のに当てられてきたが、距離だけで適応を決めるのは現在の標準ではない。
  • では括約筋浸潤、、機能温存可能性から術式を選ぶ。括約筋間はを陰性にでき、かつ肛門側断端をT2/T3で2cm以上・T1で1cm以上確保できる例に限る。
  • のは日本と欧米で標準が違う。日本はupfront surgery+側方郭清、欧米は術前放射線療法が標準で、その適応も欧州と米国で同一ではない。
  • 緊急の閉塞・穿孔ではも選択肢だが、全身状態と再建可能性に応じて個別化する。

大腸の関連トピック:B/18: ・・(腫瘍の)、B/20: (大腸癌のリスク因子としての)。

出典

  1. 1.Prognostic Survival Associated With Left-Sided vs Right-Sided Colon Cancer: A Systematic Review and Meta-analysis(JAMA Oncology・2017)66研究・1,437,846例(追跡期間中央値65か月)の系統的レビューとメタアナリシス。左側結腸癌は右側結腸癌に比べ死亡リスクが有意に低く(ハザード比0.82、95%CI 0.79〜0.84、P<0.001)、この関連は病期、人種、補助化学療法、発表年、参加者数、研究の質から独立していた。結論は「結腸癌の左右はすべての病期で予後を決める基準として認識されるべきである」というもの閲覧 2026-09-21
  2. 2.Better survival in right-sided versus left-sided stage I - III colon cancer patients(BMC Cancer・2016)米国SEERデータベース(2004〜2012年)から切除された病期I〜IIIの結腸癌91,416例(右側51,937例・左側39,479例、追跡期間中央値38か月)を抽出し傾向スコアマッチングを行った解析。単変量解析では右側の全生存(ハザード比1.32)・癌特異的生存(1.26)が不良だったが、傾向スコアマッチング後は逆に右側の予後が良好であった(全生存のハザード比0.92、95%CI 0.89〜0.94/癌特異的生存0.90、95%CI 0.87〜0.93)。病期IとIIでは右側が良好、病期IIIでは両者が同等(全生存のハザード比0.99)。著者は「右側結腸癌の生存が不良だとする従来の定説に疑問を投げかける」と結論している閲覧 2026-09-21
  3. 3.Abdominoperineal Resection for Rectal Cancer in the Twenty-First Century: Indications, Techniques, and Outcomes(Journal of Gastrointestinal Surgery・2018)低位直腸癌のAPR適応は腫瘍高だけでなく括約筋・CRM・機能温存可能性で判断すること閲覧 2026-08-09
  4. 4.Global burden of colorectal cancer in 2020 and 2040: incidence and mortality estimates from GLOBOCAN(Gut・2023)抄録のObjective冒頭が逐語で「Colorectal cancer (CRC) is the third most common cancer worldwide.」であり、大腸癌が世界で3番目に多い癌であること。GLOBOCAN 2020では190万例超の新規罹患と93万人の死亡が推計され、2040年には320万例・160万人へ増えると予測されていること。⚠️ 本抄録は癌死亡の順位そのものには触れていない閲覧 2026-09-21
  5. 5.Global burden of colorectal cancer in 2022 and projections to 2050: incidence and mortality estimates from GLOBOCAN(BMC Cancer・2025)抄録の冒頭が逐語で大腸癌を「the second leading cause of cancer — related deaths」と述べていること。GLOBOCAN 2022では世界で1,926,425例の新規罹患と904,019人の死亡が推計され、年齢調整罹患率・死亡率はいずれの地域でも女性より男性で高かったこと。罹患数・死亡数はいずれも40歳を超えると著明に増加すること。⚠️ 抄録に「発症のピークは50〜70歳」という記述は無い閲覧 2026-09-21
  6. 6.Screening for Colorectal Cancer: US Preventive Services Task Force Recommendation Statement(JAMA(US Preventive Services Task Force)・2021)抄録の逐語で、平均リスクの無症状成人について50〜75歳の大腸癌検診をA推奨、45〜49歳をB推奨(中等度の確実性で中等度の純利益)、76〜85歳は既受診者に選択的に提供するC推奨としたこと。背景として、米国では大腸癌の診断が65〜74歳で最も多いこと、新規大腸癌の10.5%が50歳未満で発生すること、40〜49歳の腺癌罹患が2000〜2002年から2014〜2016年にかけて約15%増えたことを挙げている閲覧 2026-09-21
  7. 7.The 9th Edition of the UICC TNM Classification of Malignant Tumours: Updates and Rationale for Change(Union for International Cancer Control (UICC)・2026)全文(PMC13432304)を確認した。第9版の「4.1 Colon and Rectum」で大腸癌について変更されたのは腫瘍堆積の定義だけで、「結腸・直腸癌の病期分類は現在改訂作業中であり、2026年中に公表される予定である」と明記していること。改訂の動機として、T因子が高くN因子が低い病期IIの患者が、リンパ節転移量の少ない病期IIIより予後不良なことがあり現行のTNMが階層的でないと認識されていることを挙げている。術前治療を受けた患者には接頭辞yを用いてyT・yN・y病期を記述し、別個の病期分類は設けないこと閲覧 2026-09-21
  8. 8.A Review of the Role of Carcinoembryonic Antigen in Clinical Practice(Annals of Coloproctology・2019)CEAは診断単独ではなく経時的な術後・治療反応モニタリングに用いること閲覧 2026-08-09
  9. 9.Molecular Biomarkers for the Evaluation of Colorectal Cancer: Guideline From the American Society for Clinical Pathology, College of American Pathologists, Association for Molecular Pathology, and the American Society of Clinical Oncology(Journal of Clinical Oncology・2017)併載されたJ Mol Diagn版の全文(PMC5971222)を確認した。推奨3が逐語で「Clinicians should order mismatch repair status testing in patients with colorectal cancers for the identification of patients at high risk for Lynch syndrome and/or prognostic stratification.」であり、Lynch症候群の高リスク者の拾い上げと予後の層別化の両方を目的にミスマッチ修復の状態を調べるべきだとしていること。推奨2bはミスマッチ修復欠損かつMLH1発現消失の腫瘍でBRAF p.V600変異解析を行うとし、BRAF変異があれば散発性である可能性が強く支持される一方、BRAF変異が無いことはLynch症候群のリスクを否定しないと述べていること。推奨1は抗EGFR抗体薬の選択にあたり拡張RAS(KRAS・NRASのエクソン2のコドン12・13、エクソン3の59・61、エクソン4の117・146)の変異解析を行うべきだとしていること閲覧 2026-09-21
  10. 10.Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum (JSCCR) guidelines 2024 for the treatment of colorectal cancer(International Journal of Clinical Oncology(大腸癌研究会)・2025)英語版の全文(PMC12644182)を確認した。リンパ節郭清の範囲は術前・術中所見で決め、リンパ節転移があるか疑われればD3郭清を行い、転移がなければ深達度で決める(pTisはD0、pT1はリンパ節転移が約10%・中間リンパ節転移が約2%あるためD2が必要、cT2は少なくともD2でありD3も行いうる)こと。腸管切除範囲は郭清すべき腸管傍リンパ節の範囲で決まり、結腸癌では腫瘍縁から10cmを超える腸管傍リンパ節への転移はまれで、大腸癌研究会の多施設前向きコホート(pStage I〜IIIの結腸癌2,996例)で10cmを超える転移は4例(0.1%)だけだったこと。直腸癌ではRS・Ra癌で腫瘍縁から3cm以上、Rb癌で2cm以上の壁内・直腸間膜内の肛門側進展はまれで、この範囲を含むように肛門側切離線を決めること。ただしpT4・pN2・M1・低分化癌では肛門側へ長く進展しやすいこと。括約筋間直腸切除術の適応は、外肛門括約筋・肛門挙筋への浸潤がなく環周切除断端を陰性にできること、および肛門側断端をT2/T3では原則2cm以上・T1では1cm以上確保できることの2つで、低分化癌と肛門括約筋の緊張が低下した例には推奨しないこと。CQ11では、日本では進行下部直腸癌に対して自律神経温存側方リンパ節郭清を伴うTME(またはTSME)が標準であり、欧米で標準となっている術前放射線療法は積極的には行われておらず、日本では術前放射線療法の上乗せ効果や側方郭清の代替としての有効性に明確なエビデンスがないため upfront surgery が標準であると述べていること。欧米では局所進行直腸癌に術前放射線療法が標準だが、その適応は危険因子(下部直腸という局在、T3/4、リンパ節陽性、環周切除断端への浸潤、壁外脈管侵襲陽性)で層別化され、欧州と米国で同一ではないこと。PROSPECT試験では低リスク例で術前FOLFOX群の5年無病生存率80.8%が術前化学放射線療法群78.6%に非劣性であったが、日本の標準である upfront surgery との比較試験はなく、局所再発リスクの高い例での術前化学療法単独は弱く推奨しないとしていること。全術前治療(TNT)については、病理学的完全奏効率がRAPIDO試験で28%対14%、PRODIGE23試験で28%対12%と改善した一方、R0切除率の有意な改善は報告されていないこと閲覧 2026-09-21