外科学

外科学 · B/18

大腸ポリープ・ポリポーシス症候群・憩室症の外科的側面

Surgical aspects of colorectal polyps, polyposis syndromes, diverticulosis

前提:病態
小腸・大腸の腫瘍結腸憩室症・腸閉塞腫瘍抑制遺伝子の抑制機構
疾患
McKittrick-Wheelock症候群家族性大腸腺腫症・リンチ症候群脂肪腫大腸腺腫
症状
血便

ポッドキャスト

🧠 本トピックは3層構造で覚える:①個々のポリープ(組織型・大きさ・異形成で悪性度が決まる)②(遺伝性に多発するポリープ+随伴病変)③(ポリープとはの「壁の袋状突出」)。 ポリープの悪性化リスクは茎の有無だけでは決まらず、「か非腫瘍性か」「大きさ」「異形成の程度」「浸潤所見」を統合して決まる——のなかでも絨毛成分が多いものが最もハイリスクである。はAPC遺伝子変異による(FAP・)とのによる(・)に分かれる。は「壁の+」でS状結腸に好発する後天性のが主体で、その合併症である急性は非かかで治療がまったく変わる。

1. 大腸ポリープ

定義: 内へ突出する腫瘤。多くは良性だが、一部は悪性化する。

形態による分類

形態 特徴 古典的な位置づけ
茎を有する 相対的に安全とされる
茎を有さない 「悪性化しやすい」と教えられる
平坦・ 評価・切除が難しい病変を含む 「浸潤の深さの点で最も危険」と教えられる

⚠️ 上の「古典的な位置づけ」は覚え方であって、茎の有無だけで悪性化リスクは決まらない。 大きさ、表面構造、組織型、異形成、浸潤所見を統合して評価する1。⭐ 内視鏡的に切除された5,786個の腺腫を解析した古典的な研究でも、1cm未満のポリープからも浸潤癌が見つかっている——大きさも単独の決め手にはならない2。平坦・病変が「危険」とされるのは、同じ大きさでも浸潤を起こしやすく、内視鏡的に一括完全切除しにくいためだと理解しておくとよい。

組織学的分類と悪性化ポテンシャル

組織型 亜型 特徴
炎症性() — ()、特にでみられる、・再生に続発、多発性の良性ポリープ 低
— 良性(臨床的意義なし)、多くは5mm未満、正常粘膜に類似 低
性 — 良性、が最多亜型 低
— 非腫瘍性ポリープのうち最も多い。多くは5mm未満で()に多い。病変群の一型だが、・とは別カテゴリー 低
— 消化管のどこにでも発生しうる。発生部位(例:大腸)本来の組織で構成されるが構築が無秩序 は低いが、症候群に伴う場合は大腸・大腸外悪性腫瘍のリスク上昇
5mm超の病変、()に多い、に類似した形態 中
に多い、組織像:異形成を伴う構築 中
頻度65〜80%、大腸のどこにでも発生、組織像:構造を形成する増殖性細胞 高
頻度10〜25%、+絨毛の混合組織像 高
頻度5〜15%と腺腫のなかでは少ないが、絨毛成分が多いほど悪性化リスクが高い。他の腺腫より大きく()、のことが多く、直腸に好発するとされる 高

⭐ (・絨毛・絨毛)はが高い群として一括りにできる。 その中でが最もリスクが高いのは「だから」ではなく、絨毛成分が多いこと自体が高リスクの指標だからである。は結果として大型・になりやすいが、危険度を決めているのは組織型・大きさ・異形成の側である。(10mm以上、絨毛型・絨毛型の組織型、のいずれか1つ以上)という一線も、この3要素で引かれている3。

💡 組織型は形態とも癌化率とも連動する。 はのことが多く異型度も相対的に低い。はのことが多く・異形成を伴いやすい——同じ病変の2つの顔なので、「だから危険」ではなく「絨毛成分が多いからにも高リスクにもなる」と理解する。古典的には、癌化リスクは1cm未満ので5%未満、2cmを超える大型ので最大50%、はその中間(22%)とされる。⚠️ ただし、大きさと組織型を危険因子として同定できなかった研究もあるので、この数字はな階層ではない。という語はと同義であり、異形成の程度は通常、絨毛成分の多さとポリープの大きさに相関する4。

⚠️ 上の頻度は分母が揃っていない。 「65〜80%」は切除された全ポリープを分母とする値、「5〜10%」は腫瘍性ポリープを分母とする値として述べられている4。横に並べて足し算しない。

⚠️ 「=直腸」という覚え方は部位の当て推量には使えない。 内視鏡的に切除された5,786個の腺腫の解析では、・絨毛・絨毛のいずれの型でもS状結腸が最も多く、次いでであった。どの部位でもが最多でが最少であり、異形成から・浸潤癌への変化はS状結腸で最も多く、かつどの部位でも絨毛成分が増えるほど頻度が上がった2。「絨毛成分が多いほど危険」は部位によらず成り立つが、「直腸に多い」は部位分布の主要因ではない。

病因

喫煙、飲酒、肥満、運動不足。赤身肉・脂肪の多い食事、・葉酸の少ない食事。

症状

💡 とはに特徴的な組み合わせである。 大型のは電解質を含む粘液を大量に分泌しうるため、とカリウム喪失を招く。

診断

  • ——、確定検査
  • S状結腸鏡検査

治療 — ポリープ切除術

ポリープの性状 治療法
ポリープ 下で・()により切除。これが標準
非での病変 大きさに応じて内視鏡切除。3〜20mmではコールド、20mm以上では(EMR)を考慮。EMRではに液体を注入して病変を挙上してからで切除する。⚠️ 平坦・大型・多発の病変へのEMRは穿孔リスクが高い
浸潤を示す内視鏡所見がある病変 外科的切除へ紹介する。一部の症例では高度な(など)も選択肢となる1

⚠️ 「2cmを超えたら外科的切除」という古い線引きに注意。 20mm以上でもであればまずEMRの適応を検討し、外科へ回すのは浸潤を示す内視鏡所見があるか、内視鏡で完全切除できない場合である1。「大きさだけで外科へ送る」と、内視鏡で治せる病変に開腹・を課すことになる。

切除後のサーベイランス

後の次視鏡の間隔は発行元によって区分の切り方が違うので、⚠️ 「何年後か」を答えるときは必ずどの勧告に基づくかを添える。

基準内視鏡の所見 欧州 ESGE 20205 米国 US Multi-Society Task Force 20203
10mm未満・の腺腫1〜2個 不要で検診へ戻す(検診制度が無ければ10年後) 7〜10年後(強い推奨、中等度の質)
10mm未満・の腺腫3〜4個 同上(絨毛成分の有無を問わず1〜4個は一律に検診へ戻す) 3〜5年後(弱い推奨、非常に低い質)
10mm以上の腺腫、、5個以上の腺腫 3年後(強い推奨、中等度の質) 3年後(強い推奨)
20mm以上を 3〜6か月後に早期再検し、その12か月後に初回 —

💡 欧州と米国で割れているのは「1〜4個の小さな腺腫を追うかどうか」である。 ESGEは絨毛成分の有無を問わず検診へ戻すのに対し、USMSTFは絨毛型・絨毛型の組織型をとして3年後に回す。間隔表の全体はS-16:とで扱う。

2. ポリポーシス症候群

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Polyposis syndromes'>ポリポーシス症候群</span>"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenomatous polyposis'>腺腫性ポリポーシス</span>症候群<br>(APC遺伝子変異)"]
  A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hamartomatous polyposis'>過誤腫性ポリポーシス</span>症候群<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor suppressor genes'>腫瘍抑制遺伝子</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='germline mutation'>胚細胞変異</span>)"]
  B --> B1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='familial adenomatous polyposis, FAP'>家族性大腸腺腫症</span>(FAP)"]
  B --> B2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Gardner syndrome'>Gardner症候群</span><br>(FAP+SOD:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sebaceous cysts'>皮脂嚢胞</span>・骨腫・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Dermoid tumors'>類皮腫</span>)"]
  C --> C1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Peutz-Jeghers syndrome'>Peutz-Jeghers症候群</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hamartomatous polyp'>過誤腫性ポリープ</span>+色素沈着)"]
  C --> C2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='juvenile polyposis syndrome'>若年性ポリポーシス症候群</span>"]

腺腫性ポリポーシス症候群

:

  • 、悪性化リスクを伴う。
  • APC遺伝子変異により未治療では大腸癌リスクが極めて高い。重症型では成人までに数千個の大腸腺腫を生じ、未治療のまま経過した場合の大腸癌発症の平均年齢は35歳である4。したがって予防的大腸切除が標準となる。
  • 術式はの程度で決まる。
    • が軽度 → 結腸全摘+を選択しうる
    • が高度 → ・+を検討する
    • は一部症例で適応となる6
  • 癌化するまでは多くが無症状——排便習慣の変化、血便、腹痛として顕在化する。

予防的手術の時期と適応:

⚠️ 「何歳で手術する」という一律の答えは無い。 FAPとのの正確な時期について学会間の合意は成立しておらず、発行元ごとに書き方が違う6。

発行元 示している線引き
()2015 手術年齢は明示しない。即時の大腸切除の適応は「癌の確定または疑い」と「強い症状」。相対的適応は6mmを超える多発腺腫、間の腺腫数の著明な増加、十分なが行えないこと
国際消化管遺伝性腫瘍学会(InSIGHT)2016 ポリープ負荷で4段階にし、stage 3・4では3か月〜1年以内に結腸全摘またはを推奨(切除を遅らせる明確な理由がある場合にのみ短間隔の内視鏡再検を考慮)
米国結腸直腸外科学会(ASCRS)2017 直腸腺腫20個未満なら結腸全摘+、20個超なら+。ただし時期は個別化する
その他の各国指針 18歳未満の予防的は原則として推奨しない(この年齢より前の癌は非常にまれなため)。ただし高度の、若年発症の家族歴、重症のがあれば18歳未満でも広範切除を考慮する。で非20個未満なら21歳以降まで待てる

⭐ ポリープ負荷の目安として「100個を超える、または1cmを超えるポリープが多数」をの根拠に挙げる覚え方が広く用いられる。 これは上表の考え方と矛盾しない——の相対的適応(6mmを超える多発腺腫、間の腺腫数の著明な増加、十分なが行えないこと)も、InSIGHTのも、「内視鏡で制御できるポリープ負荷かどうか」を判断軸にしているからである。

💡 FAPでの予防的大腸切除は20〜25歳に行われるのが通例とされてきた。一方、は年1回の内視鏡とで安全に管理でき、手術を遅らせる(場合によっては生涯不要な)ことがある6。⚠️ は「補助的な1ピース」であって、時期と切除範囲を単独で決める材料にはならない。

:

  • FAPと同様にAPC遺伝子変異による。
  • 消化管ポリープに加え「SOD」(覚え方:“a gardener plants sod”=庭師は芝を植える)を伴う:
    • 骨腫

⭐ FAPとはどちらもAPC遺伝子変異だが、は消化管外病変(SOD)を伴う点が鑑別点。 「同じ遺伝子変異でも表現型のスペクトラムが違う」という好例。

過誤腫性ポリポーシス症候群

:

  • 19p上の STK11(セリン/キナーゼをコードする)のによる性腫瘍症候群。
  • 臨床像:
    • 消化管の(結合組織と平滑筋からなり過形成上皮に覆われる)。消化管全体に生じるが小腸に散在するものが多い
    • 口唇・・手掌・足底・性器・肛門周囲の色素沈着(のものは暗青色を帯びる)。出生時から存在し思春期にはむしろ淡くなる点が、小児期になって現れる通常のと異なる
    • 消化管出血やによる腸閉塞が典型的な初発様式
  • 癌リスクは多臓器にわたる。 消化管のほか、乳房、卵巣、子宮頸部、卵管、甲状腺、肺、胆嚢、胆管、膵、精巣の癌リスクが上昇する。419例の集積では85例に96癌が発生し、最も多かったのは大腸癌17例・乳癌16例・9例であった。何らかの癌を発症するは20歳2%・30歳5%・40歳17%・50歳31%・60歳60%・70歳85%と報告されている4。
  • したがって継続的を要する。消化管は20歳から・上部内視鏡・を2年ごと、これに加えて乳房(25歳から年1回の診察と)、子宮頸部・卵巣、精巣の定期評価を行う4。
  • 手術は消化管全長が侵されうるため限定的で、閉塞・出血などの症状や癌の診断があるときに行う。

:

  • な。SMAD4(10q)の変異が最大50%を占め、BMPR1Aも原因となる。いずれもシグナル経路の分子である。
  • 発症は人生最初の10年以内で、と貧血が典型的な初発症状。大きなポリープやによる腸閉塞、自然脱落したポリープの排出、もみられる。
  • (次のいずれか1つを満たす):
    1. 大腸にが3〜5個以上ある
    2. 消化管全体にわたって多発するがある
    3. の家族歴があり、が個数を問わず存在する
  • ⚠️ 「消化管全体に10個を超える」という数え方も広く流布しているが、提唱されている基準は上の3つで、大腸だけなら3〜5個以上から診断を考える。10個という閾値で覚えると、家族歴のある少数ポリープ例を取りこぼす。
  • : 無症状なら15歳から(症状があればより早く)開始し、ポリープがあれば毎年、なければ2〜3年ごとに繰り返す4。
  • 予後: 悪性化は主として大腸・直腸に起こり、大腸癌の生涯リスクは最大39%と報告されている。胃・十二指腸・膵の癌リスクも上昇する。FAPと同様、予防的手術が治療の柱となり、術式はの程度で決める。

⚠️ SMAD4変異例の一部は遺伝性出血性症(HHT)を合併する。 この場合は消化管・肺のからの出血が問題になるため、と診断したらHHTとしてのスクリーニングも定期的に行う。(、水頭症、、Meckel憩室、腸間膜)が20%に併存する点も押さえる4。

💡 自体は組織学的に良性だが、症候群の一部として発生する場合は大腸・大腸外悪性腫瘍のリスクが上昇する。 これは「の=低リスク」という組織型の表の原則の例外にあたる——症候群の文脈があるかどうかでリスク評価が変わる。

3. 憩室症

憩室: の外方への突出で、通常は血管が壁を貫通する部位(の進入部)に生じる。

分類 壁構造 特徴 代表例
の全層(筋層を含む)が突出 稀。典型的には先天性で、多くは盲腸に発生 Meckel憩室、正常な虫垂
粘膜+のみが筋層を貫いて突出 消化管憩室の最多型。典型的には後天性 一般的な大腸憩室、(食道)

💡 正常な虫垂が「」の例に挙がるのは、盲腸壁の全層が袋状に突出した構造そのものだからである。 か仮性かは「筋層を含むか」の一点で決まる。

: 多発性の憩室が存在する状態。

病因

の摂取不足、結合組織疾患(例:)、肥満、喫煙、加齢、の低下。

憩室形成は:

  • 圧の上昇(例:慢性便秘による)
  • 腸壁の(結合組織の弾性低下、生理的な間隙)
  • 特にS状結腸に好発

臨床像

排便習慣の変化、排便で軽快する左側の疝痛、悪心、。

診断

急性の診断・重症度評価は腹部造影CTを中心に行う。は急性穿孔・高度炎症の評価目的には第一選択ではない。

憩室症そのものの治療

既存の憩室の増大を元に戻す治療法はない——目標は進行の予防:食事内容の改善、減量、、禁煙、の治療。

急性憩室炎の初期治療 — 抗菌薬は全例に要るわけではない

⭐ 「=抗菌薬」は現在の推奨ではない。 世界緊急外科学会()の2020年改訂版は、免疫正常・非・全身炎症の徴候なしという3条件がそろう患者に対し、抗菌薬を投与しないことを強い推奨(高い質のエビデンス、1A)としている7。非は自然軽快しうる病態で、局所の生体防御だけで炎症を制御できると理解されている。

病態 2020 の方針7
非・免疫正常・全身炎症の徴候なし 抗菌薬を投与しない(強い推奨、高い質のエビデンス)
非だが全身性の感染徴候あり、または免疫抑制・高齢・併存症をもつ高リスク例 グラム陰性桿菌と嫌気性菌を覆う抗菌薬を投与する
抗菌薬を要する場合の 可能なかぎり経口(強い推奨、中等度の質のエビデンス)。静注から経口への早期切り替えはを短縮しうる
径4〜5cm未満の小膿瘍 まず抗菌薬単独で保存的治療を試みる
大きな膿瘍 +抗菌薬。ドレナージが不能・不可能なら抗菌薬単独、あるいは手術

⚠️ 3条件のどれか1つでも欠ければ、この「投与しない」という強い推奨は掛からない。 免疫抑制患者は非治療に失敗しやすく、高リスク群として扱う7。詳しい内科的管理は・で扱う。

手術(重症度別)

病期 病態 手術の要否
Stage 1 結腸周囲/腸間膜膿瘍 手術を要することは稀
Stage 2 膿瘍/ 手術なしで軽快することがある
Stage 3 びまん性の膿性腹膜炎 多くは緊急手術の適応。術式は全身状態と施設経験に応じて判断
Stage 4 びまん性の便性腹膜炎 緊急手術の適応。術式は全身状態と患者背景に応じて判断

⭐ この4段階分類はHinchey分類である。 Hinchey らは膿瘍と腹膜炎という手術所見に基づいて急性の重症度を、I=結腸周囲膿瘍、II=骨盤・腹腔内・後腹膜膿瘍、III=膿性腹膜炎、IV=糞便性腹膜炎の4段階に分けた。過去30年で国際的に最もよく使われてきた分類である。⚠️ ただし 2020は、どの分類法も転帰予測で優れていると証明されておらず特定の分類を推奨することはできないと明記している。の普及後はHinchey分類の所見版(Neff 1989、Ambrosetti 2002など)が複数提案されている7。

穿孔性の術式選択:

患者の状態 2020 の推奨7
重症または併存症が多い (強い推奨)
が安定し併存症がない 切除・吻合(の有無を問わない。弱い推奨)
に対する・ドレナージ 第一選択とはみなさず、ごく限られた症例にのみ行う

💡 この序列は比較試験のデータと一致している。 Hinchey Ib〜IVを対象とした7件(患者595例、うちHinchey III 76.3%・IV 12.1%)の個別患者データでは、は院内・30日死亡率が・切除吻合のいずれよりも高く、切除吻合はより1年後の率が低かった(1000人あたり539人少ない)。⚠️ いずれもエビデンスの確実性は「低い」と評価されているので、個々の患者では・腹膜炎の程度・併存症で判断する8。

合併症:

まとめ

  • の悪性リスクは形態だけでなく、大きさ・表面所見・組織型・異形成・浸潤所見を統合して判断する。診断と治療の中心は。
  • 切除後の間隔は発行元で異なる。1〜4個・10mm未満・の腺腫を、欧州ESGEは検診へ戻し、米国USMSTFは1〜2個で7〜10年・3〜4個で3〜5年としている。答えるときはどちらの勧告かを添える。
  • は(APC遺伝子変異:FAP・)と(の:・)に大別される。重症型FAPでは未治療の場合の大腸癌発症の平均年齢が35歳で、予防的大腸切除が標準となる。手術の正確な時期に学会間の合意はなく、ポリープ負荷・・・リスクで個別化する(では通例20〜25歳、18歳未満の予防的は原則として推奨しない)。
  • の癌リスクは大腸・乳房・膵を筆頭に多臓器へ及び、何らかの癌のは70歳で85%に達する。はSMAD4/BMPR1A変異により生じ、大腸癌の生涯リスクは最大39%、SMAD4例では遺伝性出血性症の合併を確認する。
  • はS状結腸に好発する後天性のが主体で、壁のとが病因。既存憩室を治す治療法はなく、進行予防が目標。
  • 免疫正常・非・全身炎症の徴候なしの急性には、抗菌薬を投与しないことが強く推奨される。高リスク例や全身性の感染徴候がある例では投与する。
  • の重症度はHinchey分類(膿瘍と腹膜炎の手術所見に基づく4段階)で表すが、転帰予測で優れた分類は確立していない。Stage 3-4では多くが緊急手術の対象となり、重症例・併存症の多い例は、安定して併存症のない例は切除・吻合を選ぶ。

大腸病変の腫瘍側面はB/19: 、炎症性疾患としての側面はB/20: で扱う。

出典

  1. 1.Colon polyps: updates in classification and management(Current Opinion in Gastroenterology・2024)抄録の逐語で、有茎性ポリープの切除には通電スネアが今もゴールドスタンダードであること、非有茎性で非浸潤性の病変は微小なら大型鉗子でも切除できるが3〜20mmでは冷スネアが望ましいこと、20mm以上の病変には内視鏡的粘膜切除術が必要であること、粘膜下浸潤を示す内視鏡所見をもつポリープは外科へ紹介するか選択例では高度な内視鏡的切除を行うことを確認した。⚠️ 出版社サイトが取得できず全文は未閲覧のため、悪性度評価を大きさ・表面構造・組織型・異形成・浸潤所見の統合で行うという記述の全文上の位置づけは確認できていない閲覧 2026-09-21
  2. 2.Morphology, anatomic distribution and cancer potential of colonic polyps(Annals of Surgery・1979)抄録の逐語で、7,000個を超える内視鏡的に切除されたポリープのうち5,786個の腺腫を解析した結果、管状・管状絨毛・絨毛のいずれの型でも最も多く認められたのはS状結腸で、次いで下行結腸であったこと。どの部位でも管状腺腫が最多で絨毛腺腫が最少であったこと。異形成から上皮内癌・浸潤癌への細胞変化はS状結腸で最も多く、かつどの部位でも絨毛成分が増えるほど頻度が上がったこと。ポリープの大きさは悪性化と重要な関連をもつが、径1cm未満のポリープからも浸潤癌が見つかったこと閲覧 2026-09-21
  3. 3.Recommendations for Follow-Up After Colonoscopy and Polypectomy: A Consensus Update by the US Multi-Society Task Force on Colorectal Cancer(Gastroenterology(US Multi-Society Task Force on Colorectal Cancer)・2020)本文とTable 4で、正常内視鏡は10年(強い推奨、高い質)、10mm未満の管状腺腫1〜2個は7〜10年(強い推奨、中等度の質)、10mm未満の管状腺腫3〜4個は3〜5年(弱い推奨、非常に低い質)、10mm未満の管状腺腫5〜10個は3年(強い推奨、中等度の質)、10mm以上の腺腫は3年(強い推奨、高い質)、管状絨毛型・絨毛型の腺腫と高度異形成を伴う腺腫はいずれも3年(強い推奨、中等度の質)としている。Table 3は進行腺腫(advanced adenoma)を「10mm以上、管状絨毛型/絨毛型の組織型、高度異形成のいずれか1つ以上を満たす腺腫」と定義し、低リスク腺腫を「10mm未満の非進行腺腫1〜2個」と定義している閲覧 2026-09-21
  4. 4.Colorectal polyps and polyposis syndromes(Gastroenterology Report・2014)全文(オープンアクセス、PMC3920990)を確認した。家族性大腸腺腫症の重症型では成人までに数千個の大腸腺腫を生じ、未治療の場合の大腸癌発症の平均年齢が35歳であること。Peutz-Jeghers症候群は19p上のSTK11の胚細胞変異による常染色体優性疾患で、過誤腫性ポリープは小腸に散在するものが多く、色素斑は出生時から存在し思春期には淡くなる点が通常の雀卵斑と異なること。癌リスクは消化管・乳房・卵巣・子宮頸部・卵管・甲状腺・肺・胆嚢・胆管・膵・精巣に及び、419例の集積では85例に96癌が発生し最も多かったのは大腸17例・乳房16例・膵9例であり、何らかの癌の累積リスクは20歳2%・30歳5%・40歳17%・50歳31%・60歳60%・70歳85%であること。サーベイランスは20歳から大腸内視鏡・上部内視鏡・小腸造影を2年ごと、乳房は25歳から年1回の診察とマンモグラフィで行うこと。若年性ポリポーシス症候群はSMAD4(10q、最大50%)とBMPR1Aの変異によりいずれもTGF-βシグナル経路に属すること、診断は「大腸に若年性ポリープが3〜5個以上」「消化管全体に多発する若年性ポリープ」「若年性ポリポーシスの家族歴があり個数を問わず若年性ポリープがある」のいずれかで考えること、サーベイランスは無症状なら15歳から開始しポリープがあれば毎年・なければ2〜3年ごとに繰り返すこと、大腸癌の生涯リスクは最大39%とされ胃・十二指腸・膵の癌リスクも上昇すること、SMAD4変異の一部は遺伝性出血性末梢血管拡張症を合併するため消化管・肺の動静脈奇形のスクリーニングを要すること、先天異常が20%に併存し腸回転異常・水頭症・心奇形・Meckel憩室・腸間膜リンパ管腫を含むこと閲覧 2026-09-21
  5. 5.Post-polypectomy colonoscopy surveillance: European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE) Guideline - Update 2020(European Society of Gastrointestinal Endoscopy(Endoscopy誌)・2020)高品質な基準内視鏡で完全切除された場合、低異型度の1〜4個・10mm未満の腺腫(絨毛成分の有無を問わない)または異形成を伴わない10mm未満の鋸歯状病変は内視鏡サーベイランスを要さず検診へ戻すことを強い推奨(中等度の質)とし、組織化された検診が無ければ10年後の再検を強い推奨(中等度の質)とする。10mm以上の腺腫・高度異形成・5個以上の腺腫・10mm以上または異形成を伴う鋸歯状病変は3年後のサーベイランスを強い推奨(中等度の質)、20mm以上の分割切除では3〜6か月後の早期再検とその12か月後の初回サーベイランスを推奨する閲覧 2026-09-21
  6. 6.Surgical Decision-Making in Familial Adenomatous Polyposis(Clinics in Colon and Rectal Surgery・2024)全文(PMC11007598)を確認した。家族性大腸腺腫症の大腸に対する術式は結腸全摘+回腸直腸吻合、大腸全摘+回腸嚢肛門吻合、大腸全摘+終末回腸瘻の3つで、患者側・疾患側の因子で選ぶこと。予防的切除の正確な時期については学会間の合意が無いと明記し、4団体の線引きを並べている——米国消化器病学会2015は年齢を示さず即時の大腸切除の絶対的適応を癌の確定/疑いと強い症状、相対的適応を6mmを超える多発腺腫・サーベイランス間の腺腫数の著明な増加・十分なサーベイランスが行えないことと定める。InSIGHT 2016はポリープ負荷で4段階に分類しstage 3・4では3か月から1年以内の結腸全摘または大腸全摘を推奨する。ASCRS 2017は直腸腺腫20個未満なら結腸全摘+回腸直腸吻合、20個超なら大腸全摘+回腸嚢肛門吻合とし時期は個別化するとした。その他の各国指針は18歳未満の予防的大腸全摘を原則として推奨しないが、高度のポリポーシス・若年発症の家族歴・重症の遺伝型があれば考慮し、減弱型FAPで非進行腺腫20個未満なら21歳以降まで待てるとする。古典型FAPの予防的大腸切除は通常20〜25歳に行われるとする報告を引き、遺伝型は補助的な1要素であって時期と切除範囲を単独で決める材料ではないと述べていること閲覧 2026-09-21
  7. 7.2020 update of the WSES guidelines for the management of acute colonic diverticulitis in the emergency setting(World Journal of Emergency Surgery(World Society of Emergency Surgery)・2020)Hinchey分類は膿瘍と腹膜炎という手術所見に基づいて急性憩室炎の重症度をI(結腸周囲膿瘍)・II(骨盤・腹腔内・後腹膜膿瘍)・III(汎発性膿性腹膜炎)・IV(汎発性糞便性腹膜炎)の4段階に分けたもので、過去30年で国際的に最もよく使われてきたが、どの分類法も転帰予測で優れていると証明されておらず特定の分類を推奨することはできないとしている。全身炎症の徴候を伴わない免疫正常の非複雑性憩室炎には抗菌薬を投与しないことを強い推奨(高い質のエビデンス、1A)とし、全身性の感染徴候を伴う例や免疫抑制・高齢・併存症をもつ高リスク例にはグラム陰性桿菌と嫌気性菌を覆う抗菌薬を提案している。抗菌薬を要する場合は可能なかぎり経口投与を強い推奨(中等度の質、1B)とする。径4〜5cm未満の小膿瘍は抗菌薬単独、大きな膿瘍は経皮ドレナージと抗菌薬の併用を提案する。汎発性腹膜炎では重症例と併存症の多い例にHartmann手術を強い推奨、安定して併存症のない例には一次切除吻合(ストーマ造設の有無を問わない)を弱い推奨とし、腹腔鏡下腹腔洗浄・ドレナージは第一選択とみなさずごく限られた例にのみ行うべきとしている閲覧 2026-09-21
  8. 8.Surgical management of complicated diverticulitis: systematic review and individual patient data network meta-analysis(Surgical Endoscopy・2025)Hinchey分類Ib〜IVを対象とした無作為化比較試験7件(患者595例、Hinchey III 76.3%・IV 12.1%)の個別患者データネットワークメタ解析。腹腔鏡下腹腔洗浄は院内・30日死亡率がHartmann手術および一次切除吻合より高く(いずれも中等度の効果、確実性は低い)、一次切除吻合は腹腔鏡下腹腔洗浄より1年後のストーマ率が低かった(1000人あたり539人少ない、大きな効果、確実性は低い)。結論は「一次切除吻合はHartmann手術より1年後のストーマ率が低い可能性が高い一方、30日・院内死亡率に差はないかもしれない」というもの閲覧 2026-09-21