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Disease Atlas · 消化器 · 疾患

腸重積症

Intussusception

臓器系
消化器小児
科目
PediatricsPathology
トピック
小児科 1-19:小児の血便小児科 2-14:小児急性腹症:イレウス・軸捻転・腸重積・虫垂炎・嵌頓ヘルニア・短腸症候群小児科 14:イレウス、腸重積症、腸軸捻転、嵌頓ヘルニア、虫垂炎小児科 41:IgA血管炎(Henoch–Schönlein紫斑病)病理学 C/39:結腸憩室症/腸閉塞病理学 C/42:小腸・大腸の腫瘍
鑑別疾患
ウイルス性胃腸炎ヒルシュスプルング病急性虫垂炎腸回転異常・中腸軸捻転
続発疾患
イレウス・腸閉塞腹膜炎・消化管穿孔敗血症
治療薬
セフトリアキソンメトロニダゾールピペラシリンタゾバクタム
原因微生物
Human adenovirusRotavirus A–J
症状
疝痛嘔吐血便意識障害
画像所見
腹腔内遊離ガス
元疾患
IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)メッケル憩室家族性大腸腺腫症・リンチ症候群脂肪腫
原因となる疾患
大腸癌

🧠 全体像:は、の腸管(多くは)が肛門側の腸管へ「のように」入り込み、と血流障害を同時に起こす疾患である。理解の幹は(陥入のきっかけとなる病変)の有無——乳幼児の大半は先行するウイルス感染後のリンパ組織腫大を背景とした特発性だが、2歳以降・年長児・成人ではMeckel憩室やポリープ、腫瘍などのを必ず探すという年齢による対比にある。診断は腹部超音波が中心、治療は禁忌がなければ非整復(・)が第一選択で、乳幼児の腸閉塞の原因として最も頻度が高いという位置づけがを支える。

概要・疫学

は、近位()腸管の一分節が隣接する遠位(肛門側)腸管の内腔へ陥入する疾患である。陥入した腸管とそれを受け入れる腸管、さらにその腸間膜までが一緒に引き込まれるため、単なる内腔の遮断にとどまらず腸間膜血流の障害を伴う点が、癒着やヘルニアによる腸閉塞と機序上異なる。

  • 好発年齢は生後3か月〜3歳で、生後6〜9か月にピークを持つ。男児にやや多い。
  • 乳幼児における腸閉塞の原因として最も頻度が高い。
  • 陥入部位は多様だが、がを越えて結腸へ陥入するが大半を占める。回腸同士が陥入する、盲腸を含む回結腸型などの亜型もある。

病態:先進部の有無で理解する

を理解する幹は、陥入のきっかけとなるが存在するかどうかである。

特発性(なし) (あり)
好発年齢 乳幼児(典型例の大半) 2歳以降・年長児・成人
背景 先行する・などのウイルス感染に伴う・の腫大 Meckel憩室、ポリープ、Burkitt リンパ腫などのリンパ腫、IgA血管炎による血腫、嚢胞性線維症、重複腸管
非整復が第一選択 の検索と原因に応じた個別対応が必要

⚠️ 2歳以降で発症した例、年長児、成人のでは、の検索を省略しない。 特に成人では悪性腫瘍(大腸癌など)がであることが多く、非整復ではなく原則として外科的切除が選択される——特発性が大半を占める乳幼児との対比が診療方針のになる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral side (proximal, toward the mouth)'>口側</span>腸管(多くは<span class='jp-term jp-term-diagram' title='terminal ileum'>回腸末端</span>)が肛門側腸管へ陥入"]
    A --> B["陥入部の腸間膜が一緒に引き込まれる"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='impaired venous return'>静脈還流障害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lymphatic stasis'>リンパうっ滞</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bowel wall edema'>腸管壁浮腫</span>"]
    D --> E["動脈血流障害"]
    E --> F["粘膜虚血・脱落"]
    F --> G["粘液と血液の混合<br>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='currant jelly stool'>いちごゼリー状便</span>(遅い所見)"]
    E --> H["進行すると<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transmural necrosis'>全層性壊死</span>"]
    H --> I["穿孔・腹膜炎"]

💡 陥入した腸管は腸間膜に引かれながら奥へ進むため、閉塞そのものより先に静脈・リンパのうっ滞が起こる。動脈血流が保たれている間は可逆的で、この時間の余地こそが非整復が成立する理由である。

臨床像

  • 古典的な間欠的な激しい(に膝を抱えて泣き、間欠期はぐったりする)、嘔吐、血便の三徴がそろうのは少数にとどまる。
  • ⭐ と右上腹部のは遅い所見である。 これらが出そろうのを待って診断すると、が進行した状態で発見することになる。
  • 乳児では腹痛が前面に出ず、・意識変容だけがになる非典型例があり、敗血症やとされやすい。
  • 進行すると、頻脈、循環不全などショックの徴候が出現する。

診断

  • 腹部超音波が第一選択である。
    • :陥入した腸管がの輪に見える
    • 縦断像:陥入部が腎臓のように見える
  • 単純X線は特異的所見に乏しく補助的な位置づけで、腸閉塞像やの消失を示すことがある。穿孔を疑う場合はの有無を確認する。
  • 超音波でとして腫瘤性病変が疑われれば、年齢を問わず原因の検索を進める。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intussusception'>腸重積症</span>を疑う・超音波で確定"]
    A --> B{"腹膜炎・穿孔・ショック・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Pneumoperitoneum'>気腹</span>の徴候"}
    B -->|"あり"| C["非<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical'>手術的</span>整復は禁忌<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluid resuscitation'>輸液蘇生</span>のうえ緊急手術"]
    B -->|"なし"| D["輸液・外科バックアップ確保のうえ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pneumatic reduction'>空気整復</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrostatic reduction'>水圧整復</span>"]
    D --> E{"整復成功か"}
    E -->|"成功"| F["経過観察、再発に注意"]
    E -->|"不成功・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organic (structural, as opposed to functional)'>器質的</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lead point'>先進部</span>疑い・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal necrosis'>腸管壊死</span>"| G["手術(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='manual reduction'>用手整復</span>、必要なら腸切除)"]
  • 非整復(、または・造影剤による)が第一選択である。または下で施行し、整復前にと外科バックアップの確保を済ませておく。
  • 整復成功率はの統合値で82.7%、液体(水圧・造影)整復69.6%とが優る1。個々の施設・施行者の報告値は70〜95%程度まで幅がある。⚠️ 穿孔率は0.39%・液体整復0.43%で、両者に差はなく、いずれも1%を大きく下回る——「1%前後」と語られることが多いが、統合値はその半分以下である。1
  • ⚠️ 禁忌:腹膜炎、穿孔、ショック、の徴候がある場合は非整復を行わず、直ちに外科的評価に進む。
  • 例、が疑われる例、が疑われる例では手術を行う。術式はが基本で、壊死・穿孔があれば腸切除を追加する。壊死・穿孔から腹膜炎・敗血症に進行した例では、嫌気性菌・グラム陰性桿菌を広くカバーする周術期抗菌薬(セフトリアキソン+メトロニダゾールや/など)を投与する。

ロタウイルスワクチンとの関連

は、の安全性を語るうえで避けて通れない歴史を持つ。初代のRotaShield(RRV-TV)は1998年に米国がとして勧告したが、でとの関連が判明し、導入から1年以内に市場から撤退した。初回接種に伴うリスクは接種児1万人あたり約1例、接種後3〜14日に20倍超の上昇と推定された。2 現行のワクチン(RotaTeq・Rotarix)にもごくわずかな上昇が残り、米国のデータベース研究ではRotaTeq初回接種10万回あたり過剰1.1例(接種後7日以内)〜1.5例(21日以内)、2回目・3回目では上昇なしと推定されている。3 それでも重症胃腸炎による死亡を防ぐ便益がこのリスクを大きく上回る——米国のモデル研究では、死亡に対する便益対は71対1と見積もられた。4 この教訓を踏まえ、の率が月齢とともに高まることを考慮して、初回接種は生後14週6日までに行い(15週0日以降は開始できない)、全接種は生後8か月0日までに完了するという厳格な年齢上限が設けられている。2

再発

  • 非整復後の再発率は、69研究ので造影整復12.7%、整復7.5%、下8.5%であった。⭐ 一方で48時間以内の再発はとして低く(2.7〜6.6%)——ただし原著は再発時期を詳細に報告した研究がほとんど無いと断っており、再発が早期に集中するのか後期に多いのかまでは分からない。早期再発のが低いことから、状態の良い児を長時間入院で観察し続ける根拠は乏しく、外来管理が考慮されるようになっている。5
  • 再発を繰り返す例、初回からが疑われる例では、画像・内視鏡によるの検索を進める。
  • 再発それ自体は非整復の適応を妨げない。腹膜炎・穿孔などの禁忌がなければ、再度整復を試みてよい。

鑑別

疾患 鑑別のポイント
腹痛が臍周囲からへ移動する経過が中心で、疝痛のような間欠性に乏しい
胆汁性嘔吐が主体で、新生児・乳児期に多い
水様性下痢が主体で血便は目立たず、疝痛のような間欠性がない
からの胎便排泄遅延・慢性便秘が主体で、間欠的疝痛は目立たない

まとめ

  • は腸管が肛門側腸管へ陥入する疾患で、が最多、乳幼児の腸閉塞の原因として最も頻度が高い。
  • 理解の幹はの有無——乳幼児は先行するウイルス感染を背景とした特発性が大半だが、2歳以降・年長児・成人では(Meckel憩室、ポリープ、リンパ腫、IgA血管炎の血腫など、成人では悪性腫瘍が多い)を必ず探す。
  • (疝痛・嘔吐・血便)がそろうのは少数で、とは遅い所見。乳児では意識変容だけが前面に出ることがある。
  • 診断は腹部超音波(・)が第一選択、治療は禁忌がなければ・が第一選択で、腹膜炎・穿孔・ショック・があれば禁忌として手術へ進む。成功率はが高く(統合値82.7%対69.6%)、穿孔率は両者とも0.4%程度である。1
  • は初代の販売中止という歴史を持つが、現行ワクチンはわずかなを上回る便益から、年齢制限つきで推奨されている。

出典

  1. 1.Meta-analysis of Air Versus Liquid Enema for Intussusception Reduction in Children(American Journal of Roentgenology・2015)小児32,451例を含む102論文のメタ解析で、整復成功率は空気整復82.7%(95%信頼区間79.9〜85.6%、44研究16,187例)、液体(水圧・造影)整復69.6%(65.0〜74.1%、52研究13,081例)と空気整復が優る一方、穿孔率は空気整復0.39%(0.23〜0.55%)・液体整復0.43%(0.24〜0.62%)と差が無かったことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04
  2. 2.Prevention of Rotavirus Gastroenteritis Among Infants and Children: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)(Centers for Disease Control and Prevention・2009)米国ACIP勧告本文で、初回接種の年齢上限が The maximum age for dose 1 is 14 weeks and 6 days、全接種の年齢上限が All doses should be administered by age 8 months and 0 days であること、1998年にACIPがRotaShield(RRV-TV)を定期接種として勧告したが RRV-TV was withdrawn from the U.S. market within 1 year of its introduction because of its association with intussusception であること、RotaShieldの初回接種に伴う腸重積リスクが approximately one case per 10,000 vaccine recipients と推定され、初回接種後3〜14日に20倍超の上昇があったことを確認した。閲覧 2026-09-04
  3. 3.Intussusception risk after rotavirus vaccination in U.S. infants(The New England Journal of Medicine・2014)米国Mini-Sentinelの3保険集団(RotaTeq初回507,874回・Rotarix初回53,638回)を用いた自己対照リスク期間解析で、RotaTeq初回接種10万回あたりの腸重積の過剰発生が接種後7日窓で1.1例(95%信頼区間0.3〜2.7)、21日窓で1.5例(0.2〜3.2)と有意に上昇した一方、2回目・3回目では上昇を認めなかったこと、Rotarixの主解析は検出力不足で有意でなかったことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04
  4. 4.Potential intussusception risk versus benefits of rotavirus vaccination in the United States(The Pediatric Infectious Disease Journal・2013)米国出生コホート430万人のモデルで、ロタウイルスワクチン接種後1週間以内の腸重積相対リスク5.3を仮定しても、ワクチン関連腸重積による死亡は最大0.3人・入院86件にとどまる一方、ワクチンはロタウイルス関連死亡14人・入院53,444件を予防すると推定され、死亡に対する便益対リスク比は71対1であることを確認した。閲覧 2026-09-04
  5. 5.Recurrence rates after intussusception enema reduction: a meta-analysis(Pediatrics・2014)69研究を統合したメタ解析で、浣腸整復後の全体の再発率は造影整復12.7%(95%信頼区間11.1〜14.4%)、超音波ガイド下非造影整復7.5%(5.7〜9.8%)、透視下空気整復8.5%(6.9〜10.4%)であったこと、24時間以内の再発は2.2〜3.9%、48時間以内でも2.7〜6.6%と早期再発は少なく、状態の良い児は外来管理を考慮しうると結論していることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-04