小児科学

小児科学 · 14

イレウス、腸重積症、腸軸捻転、嵌頓ヘルニア、虫垂炎

Ileus, intussusception, volvulus, incarcerated hernia, appendicitis

前提:正常
消化器系:中腸(270度回転と腸回転異常)
疾患
腸重積症
症状
乳児疝痛
画像所見
くちばし徴候コークスクリュー徴候

🧠 全体像:小児のは年齢層でおおよその鑑別が絞られる:新生児は、乳幼児は、新生児〜乳児はに伴う、年長児は虫垂炎が中心となる。いずれも「→→動脈血流低下→虚血・壊死・穿孔」という共通の悪循環をたどるため、症状の進行が早ければ早いほど緊急手術の閾値を下げる。

イレウス

は新生児の初回胎便排出障害で、嚢胞性線維症との関連が強く、その初発症状となりうる。嚢胞性線維症患者の約20%にを認める。での貯留により遠位症状(腹部膨満、胎便/便排出なし、胆汁性嘔吐)を呈する。でとを、造影でを評価する。治療は合併症のないでは造影剤、複雑例(穿孔・)では手術。1

腸重積症

腸管の近位部がに陥入し、と虚血を来す疾患。主に乳幼児に好発し、回結腸型が最多。2

  • 病態生理:のバランス異常→隣接腸管への陥入→→腸間膜→罹患腸管の虚血→落→遷延する虚血で・穿孔に至る。
  • 症状:間欠的な、嘔吐、、を呈しうる。血便(血液と粘液の混合)、右上腹部の触知+の陥凹、高調なは古典的所見だが、すべてがそろわなくても除外しない。
  • 診断:腹部超音波が第一選択で、診断後に禁忌がなければ空気/液体をに行う。、ショック、遊離ガスなど穿孔・を疑う場合は整復を行わず外科へ直結する。
    • 腹部超音波:(で陥入腸管が的状の輪に見える)、(陥入部が腎臓様に見える)
    • 造影/:陥入部での造影剤/空気の途絶
    • 腹部X線:診断の第一選択ではなく、遊離ガスや高度腸閉塞の評価に用いる
  • 治療:初期はによる減圧と。非治療(、整復)は超音波/下で施行する。整復は病的の疑い、保存的治療の失敗、壊疽/穿孔の疑い、重症患者で適応となる。2

腸軸捻転

腸管が自身の腸間膜を軸に捻転する病態で、腸閉塞の主要な原因の一つ。ほぼ常にに続発するとして生じ、新生児・乳児にも起こりうる。

  • 危険因子:(後腹壁への腸間膜固定異常)、腸管物/癒着、(、など)。
  • 病態生理:の捻転→→ループ内へのガス・便貯留→内腔圧上昇→障害→腸管絞扼・虚血・壊疽。
  • 症状:腹痛・腹部膨満を伴う胆汁性嘔吐、の徴候(血便、、低血圧、頻脈)。
  • 診断:が安定していれば、施設の経験と迅速性に応じて腹部超音波()を早期に行い、上腸間膜動静脈を巻き込むを評価する。超音波が非診断的でも疑いが残る場合は、での位置異常やを確認する。注腸のは補助所見で、を除外できない。腹部X線は正常でもを否定できず、胆汁性嘔吐があれば検査で手術相談を遅らせない。胆汁性嘔吐を欠く症例もあり、虚血が進むと代謝性アシドーシスと乳酸上昇を来す。3
  • 治療:(、、輸液、、静注)に続き、緊急のを行う。を解除し、Ladd物を切離してを広げ、将来の診断混乱を避けるため虫垂を切除する。壊死腸管は存在する場合に限って切除する。3

嵌頓ヘルニア

内容物が愛護的な用手圧迫でも腹腔内へできないヘルニア。絞扼と腸閉塞のリスクが高まる。

  • 疼痛、嘔吐、腹部膨満に加え、のした非腫瘤を認める。
  • 発赤、著明な圧痛、全身状態不良、は絞扼を示唆する。
  • 絞扼・腹膜炎が疑われる場合は無理な用手を繰り返さず、直ちに小児外科へ連絡して緊急手術を行う。絞扼所見がなく鎮痛下にできた場合も、再嵌頓予防のため早期修復を計画する。

虫垂炎

虫垂内腔の閉塞(通常は粘液・・寄生虫による)に起因する虫垂の炎症。

  • 病因:小児ではリンパ組織過形成が虫垂内腔閉塞の一因となる。
  • 小児での臨床像:症状・徴候のは成人より低い。嘔吐、痛、腹部圧痛、歩行・跳躍・咳嗽での疼痛増悪、発熱を組み合わせて評価し、単独所見だけで確定・除外しない。
  • 診断:病歴・反復診察・炎症反応を統合し、を第一選択画像とする。などは低・中・高リスクの層別化に用いるが、単独で確定・除外しない。/WBCの単一だけでは診断できず、は通常mg/L、WBCは/μLまたは× 10⁹/Lで解釈する。
  • 治療:、輸液、、鎮痛・を行い、外科評価へつなぐ。を行う場合は腸内グラム陰性菌・嫌気性菌を覆う術前抗菌薬を投与する。単純性虫垂炎では十分な後の術後抗菌薬は通常不要で、穿孔・膿瘍・腹膜炎など虫垂炎では病状とに応じて継続する。選択された画像確認済み単純性例の非抗菌薬治療は施設プロトコルとの下で検討する。4

まとめ

  • 小児のは年齢で鑑別を絞れる:新生児=、乳幼児=、新生児〜乳児=による、年長児=虫垂炎。
  • は超音波のが特徴で、禁忌がなければ空気/整復を試みる。血便などの古典的所見がそろわなくても除外しない。
  • は・(corkscrew)十二指腸・で診断し、緊急を要する。
  • 小児虫垂炎は症状、反復診察、炎症反応、リスクスコア、超音波を組み合わせて診断し、単一の/WBCに依存しない。

出典

  1. 1.Meconium ileus in Cystic Fibrosis(2017)胎便性イレウスは嚢胞性線維症の初発となりうること、嚢胞性線維症患者の約20%に生じることを確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.Current diagnosis and image-guided reduction for intussusception in children(Clinical and Experimental Pediatrics・2023)腸重積では超音波が第一選択で、単純X線は穿孔・高度閉塞の評価に用い、腹膜炎・穿孔がなければ画像誘導下浣腸整復が第一選択であることを確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Identification and treatment of intestinal malrotation with midgut volvulus in childhood: a multicenter retrospective study(2024)腸回転異常・中腸軸捻転では超音波が迅速かつ高精度の第一選択候補となり、胆汁性嘔吐を欠く症例もあることを確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.Diagnosis and treatment of acute appendicitis: 2020 update of the WSES Jerusalem guidelines(2020)小児虫垂炎では臨床スコアと画像を組み合わせ、周術期抗菌薬、単純性例の選択的非手術治療、複雑性例の感染源制御を病型に応じて行うことを確認した。閲覧 2026-08-13