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Symptoms · Published

乳児疝痛

Infantile colic

別名
乳児コリックinfantile colic
臓器系
小児消化器
科目
Pediatrics
トピック
小児科 14:イレウス、腸重積症、腸軸捻転、嵌頓ヘルニア、虫垂炎小児科 54:腹部疾患の警告徴候

🧠 全体像:「疝痛」という訳語に引きずられてはいけない。が管腔臓器の閉塞による内臓痛であるのに対し、単一の原因を持たない機能性の症候群であり、診断は除外と経過の型で成り立つ。柱になるのは「生後2週ごろに始まり、6週ごろ最強、3〜4か月で自然消退する」というな経過そのもので、これを知っているかどうかが、の検索を打ち切れるかと、養育者に見通しを示せるかの両方を左右する。

定義と用語の整理

は版によって変遷してきた。かつての Wessel の「rule of three」(週3日以上・1日3時間以上・3週間以上の)は研究用に厳密化された定義として作られたが、「3週間」という要件が恣意的とされ、はこれを臨床診断からは外している1

Rome IVの定義(生後5か月未満で発症・消失し、明らかな誘因なく反復・遷延するぐずり・・不機嫌があり、養育者がなだめても予防しても解消できず、体重増加不良・発熱・疾病の所見を伴わない)が現行の臨床定義である1。Rome IIIの生後4か月未満・週内の頻度規定という枠組みより対象年齢が広く、時間基準が緩い点がRome IIIとの違いになる。

病態生理

単一の原因は無く、複数の機序が重なり合うと考えるのが現行の理解である。

内容
の未熟さ 生後早期のはまだ定着途上にあり、組成の偏りが症状に寄与するという報告がある
腸管運動 の不均衡による腸管の過運動が想定されている
蛋白への一過性の反応 母親の食事やに含まれる蛋白への反応が症状を悪化させうるという報告があり、とのを示唆する
養育者側の要因 親子の相互作用と養育者の・不安がを増幅し、悪循環を作る

💡 「腸のガス」説を機序として前面に出さない。 )が広く使われてきた背景にはこの説があるが、根拠は薄く、効果自体も示されていない(対応の考え方を参照)。

⚠️ 見逃してはいけないもの

に受診した乳児では、危険度の高い順にを除外する。

  • ⚠️ ・嵌頓した:いずれも進行すると虚血・壊死に至る外科的緊急疾患で、間欠的なという点でと紛らわしい。
  • ⚠️ 虐待(骨折・を含む):あやしても泣き止まない乳児という状況そのものが虐待の背景因子であり、外傷所見を能動的に探す。
  • ⚠️ 尿路感染症:発熱を伴わないこともあり見逃されやすい。
  • ⚠️ :便性状の変化・血便・成長への影響を伴えば積極的に疑う。
  • ⚠️ 緑内障・:頻度は低いが一つで見つかる。緑内障が手掛かりになる。

体重増加不良・血便・嘔吐・発熱のいずれかがあれば、と呼んではならない。 これらはRome IV定義そのものが除外している所見であり、見られた時点で診断はではなくの検索に切り替わる。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["生後5か月未満の反復・遷延する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crying (infant cry, clinical sign)'>啼泣</span>"] --> B{"体重増加不良・血便・嘔吐・発熱があるか"}
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infantile colic'>乳児疝痛</span>とは呼ばない<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='organic disease (as opposed to functional)'>器質疾患</span>の検索を優先"]
    B -->|"なし"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='physical examination'>身体診察</span>で外傷・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='groin'>鼠径部</span>腫瘤・<br>陰嚢/眼/皮膚の異常所見があるか"}
    D -->|"あり"| E["虐待・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complicated/incarcerated'>嵌頓ヘルニア</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='testicular torsion'>精巣捻転</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hair tourniquet syndrome'>毛髪絞扼症候群</span>等を個別に評価"]
    D -->|"なし"| F{"生後2週ごろ発症、経過が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='predictable'>予測可能</span>なパターンに合うか"}
    F -->|"合わない・進行性"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intussusception'>腸重積</span>・尿路感染症などを<br>追加で除外"]
    F -->|"合う"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infantile colic'>乳児疝痛</span>として養育者支援へ"]

対応の考え方

診断がついたあとの中心は治療薬ではなく、養育者への説明と支援である。

  • な経過(6週最強、3〜4か月で消退)を示して見通しを伝えることが、それ自体で養育者の不安を減らす。
  • ⚠️ 泣き止まない乳児を揺さぶって危害を加えるのリスクを必ず伝える。 対応に行き詰まったら乳児を安全な場所に置いて数分離れるよう具体的に助言する1
  • はコクランレビューでとの有意差を示せておらず、鎮痛効果としては支持する根拠が乏しい2
  • Lactobacillus reuteri DSM 17938)は、完全母乳栄養児に限れば個別患者データが示されているが、人工栄養児ではできるデータが不十分である3。Cochraneレビューでも同株のサブグループ解析で時間の短縮が示されたものの、エビデンスの確実性は低く研究間のが大きい(I²最大93%)4
  • などの鎮静薬は使わない。 時間そのものは減ってもによるものにすぎず、呼吸抑制などのがある1

まとめ

  • は管腔臓器の閉塞によるとはの、機能性の症候群である。
  • Rome IV定義(生後5か月未満、誘因なく反復・遷延する、体重増加不良・発熱・疾病の所見なし)が現行ので、Wesselのrule of threeの「3週間」要件を外している。
  • 生後2週発症・6週ピーク・3〜4か月消退というな経過が、診断と説明の両方の柱になる。
  • の未熟さ・腸管運動・蛋白への一過性反応・養育者側の要因が絡むで、「腸のガス」説の根拠は薄い。
  • ・虐待・尿路感染症・を危険度順に除外し、体重増加不良・血便・嘔吐・発熱があればと呼ばない。
  • は無効、L. reuteri DSM 17938)は完全母乳栄養児限定で示唆的、鎮静薬は使わない。

出典

  1. 1.Infantile Colic(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Rome IVの定義文言とWesselのrule of threeとの関係、発症・ピーク・自然消退の時期、除外すべき器質的疾患のリスト、揺さぶられっ子症候群のリスク、シメティコン・鎮静薬の評価を確認した閲覧 2026-08-03
  2. 2.Pain-relieving agents for infantile colic(Cochrane Database of Systematic Reviews・2016)乳児疝痛へのシメティコンはプラセボと有意差を示す根拠がないことを確認した閲覧 2026-08-03
  3. 3.Probiotics to prevent infantile colic(Cochrane Database of Systematic Reviews・2019)Lactobacillus reuteriのサブグループ解析で啼泣時間短縮が示されたが、エビデンスの確実性は低く研究間の異質性が大きい(I²最大93%)ことを確認した閲覧 2026-08-03
  4. 4.Lactobacillus reuteri to Treat Infant Colic: A Meta-analysis(Pediatrics (American Academy of Pediatrics)・2018)個別患者データメタ解析でLactobacillus reuteri DSM17938が完全母乳栄養児に限って有効(NNT 2.6)で、人工栄養児では効果を結論できるデータが不十分であることを確認した閲覧 2026-08-03