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Microbe Atlas · 細菌

Lactobacillus reuteri

分類
G+ 桿菌・非芽胞 / Gram+ rods (non-spore)Lactobacillus
性状
Gram陽性 (G+)桿菌 Bacilli
科目
Medical Microbiology
トピック
2/28: Listeria monocytogenes. Erysipelothrix rhusiopathiae, Lactobacillus and Bifidobacterium genus. Pre- and probiotics
自然耐性薬
バンコマイシン

🧠 全体像Lactobacillus reuteriLactobacillus属の中でも、病原体としてではなく製剤として臨床の場に登場する代表種である。ヒトの腸管・口腔に出生直後から定着し、母乳を介して乳児へ伝わる常在菌でもある。臨床上の焦点は病原性ではなく、に対する症状軽減効果のエビデンス(完全母乳栄養児に限れば示唆的、人工栄養児では不十分)と、その根拠が特定の株(DSM 17938)に紐づく点にある——「だから効く」ではなく「どの株の、どのエビデンスか」を区別して読む菌である。

微生物学的な特徴

グラム陽性の桿菌で、、非。糖からとL-乳酸の両方を産生するヘテロ発酵性ので、腸管・口腔・母乳という複数の生息部位を持つ点がLactobacillus属の中でも特徴的である。

項目 内容
生息部位 ヒト・動物の腸管、口腔、母乳(授乳を介して乳児の腸管へ伝播する)
乳酸に加え、reuterin(3-ヒドロキシプロピオンアルデヒド)という広域抗菌物質を産生する——同属他種にはあまりみられない性質1
代表株 DSM 17938製剤・で最も広く使われる株)

💡 なぜ「ATCC 55730」ではなく「DSM 17938」が使われるのか。 もとの商業株ATCC 55730は、遺伝子tet(W)・耐性遺伝子lnu(A)を担う2つのプラスミドを保有しており、腸内の他の細菌への伝達性耐性遺伝子のが懸念された。遺伝子組換えを伴わない方法でこの2プラスミドを除去して作られた娘株がDSM 17938で、としての性質を保ったまま安全性を高めた株として現在の・製剤の主流になっている2

共生の仕組み:機序

  • reuterin産生による広域で、病原菌の増殖を局所的に抑制する1
  • からの(IL-8、IL-1β、TNF-αなど)産生を低下させる抗炎症・免疫調節作用が報告されている1
  • 乳酸産生による腸内pHの低下も、Lactobacillus属に共通する定着阻害の一因となる

⚠️ だから整腸作用がある」と一括りにしない。 効果の根拠は個々の研究で使われた株(多くはDSM 17938)に紐づいており、Lactobacillus reuteriという種名だけでは臨を保証しない。

定着経路とプロバイオティクスとしての利用

  • 出生後まもなくヒトの腸管に定着し、母乳を介して母から子へ伝播することが知られる常在菌である
  • 製剤(滴剤・チュル錠など)としてされ、以下のような状況でが検討されている。
適応 エビデンスの要点
完全母乳栄養児に限りNNT 2.6で有効性が示されるが、人工栄養児ではできるデータが不十分3。Cochraneのサブグループ解析でも時間短縮が示されたが、研究間のが大きくエビデンスの確実性は低い(I²最大93%)4
急性胃腸炎 下痢期間の短縮が報告されている1
逆流症・機能性便秘・機能性腹痛 症状軽減が報告されているが、ほど確立したエビデンスではない1

起こす疾患(まれな日和見感染)

Lactobacillus reuteri自体の病原性は極めて低く、健常人に感染症を起こすことはまれである。Lactobacillus属全般と同様、高度免疫抑制状態や患者での製剤由来の菌血症など、まれな感染が報告される程度にとどまる。

診断

血液培養などから検出された場合は、他のLactobacillus属と同様に製剤の摂取歴を確認し、製剤由来の一過性の検出と真の菌血症を区別する。

治療と安全性

  • 真の感染症としての治療を要する場面はまれで、必要な場合はに基づきなどバンコマイシン以外の薬剤を選択する(Lactobacillus属と同じくバンコマイシンには
  • としての使用は非免疫抑制者において有害事象の報告がなく、早産児を含めて安全性が確認されている1
  • への使用を検討する際は、完全母乳栄養児であるかどうかでエビデンスの強さが変わる点を踏まえて説明する

まとめ

  • Lactobacillus reuteriは病原体ではなく、腸管・口腔・母乳に定着しとして応用されるLactobacillus属の代表種である。
  • reuterin産生による広域と、低下による免疫調節作用が主な機序である。
  • 商業株は伝達性耐性遺伝子プラスミドを除去したDSM 17938が主流で、種名だけでなく株の違いを意識する必要がある。
  • へのエビデンスは完全母乳栄養児に限り示唆的(NNT 2.6)で、人工栄養児では確立していない。
  • 病原性は極めて低く、真の感染症はまれな感染にとどまる。Lactobacillus属と同じくバンコマイシンにはを持つ。

出典

  1. 1.Removal of Antibiotic Resistance Gene-Carrying Plasmids from Lactobacillus reuteri ATCC 55730 and Characterization of the Resulting Daughter Strain, L. reuteri DSM 17938(Applied and Environmental Microbiology・2008)商業的に利用されていたATCC 55730株が伝達性のテトラサイクリン耐性遺伝子tet(W)・リンコサミド耐性遺伝子lnu(A)を担うプラスミドを保有していたこと、遺伝子組換えを伴わない方法でこれらを除去して作成した娘株がDSM 17938であることを確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.The efficacy of Lactobacillus reuteri DSM 17938 in infants and children: a review of the current evidence(European Journal of Pediatrics・2014)reuterin産生による広域抗菌作用や炎症性サイトカイン低下などの免疫調節作用という機序、乳児疝痛以外に急性胃腸炎・逆流症・機能性便秘・機能性腹痛への応用が検討されていること、有害事象の報告がなく早産児を含めて安全性が確認されていることを確認した。閲覧 2026-08-10
  3. 3.Lactobacillus reuteri to Treat Infant Colic: A Meta-analysis(Pediatrics (American Academy of Pediatrics)・2018)個別患者データメタ解析でLactobacillus reuteri DSM 17938が完全母乳栄養児に限って有効(NNT 2.6)で、人工栄養児では効果を結論できるデータが不十分であることを確認した。閲覧 2026-08-10
  4. 4.Probiotics to prevent infantile colic(Cochrane Database of Systematic Reviews・2019)Lactobacillus reuteriのサブグループ解析で啼泣時間短縮が示されたが、エビデンスの確実性は低く研究間の異質性が大きい(I²最大93%)ことを確認した。閲覧 2026-08-10