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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)

IgA vasculitis (Henoch-Schönlein purpura)

別名
HSPIgAVヘノッホ・シェーンライン紫斑病
臓器系
免疫・膠原病腎・泌尿器
科目
Internal MedicinePediatrics
トピック
内科学 R-07:小血管炎内科学 S-47:血管炎小児科 3-34:IgA血管炎・川崎病・MIS-C・多発血管炎性肉芽腫症小児科 41:IgA血管炎(Henoch–Schönlein紫斑病)
上位概念
血管炎
鑑別疾患
ANCA関連血管炎IgA腎症クリオグロブリン血症川崎病
合併症
腸重積症
続発疾患
ネフリティック症候群
治療薬
プレドニゾロンメチルプレドニゾロンパラセタモールエナラプリルロサルタンシクロホスファミドアザチオプリン
症状
関節痛血尿紅斑出血消化管出血肉眼的血尿浮腫腹痛嘔吐疝痛疼痛触知可能紫斑
検査値
クレアチニン血小板数尿沈渣腎生検

🧠 全体像:IgA血管炎(IgAV、旧称Henoch-Schönlein紫斑病)は、小児で最も頻度の高い全身性血管炎で、小血管壁へのIgAを背景に皮膚・関節・消化管・腎の4領域を侵す。診断の入口は血小板減少を伴わない、下肢・臀部優位の左右対称なであり、後1〜3週での発症が典型的である。腎外症状は自然軽快することが多く支持療法が中心だが、腎炎(IgAV腎炎)だけは経過を規定する例外で、紫斑が消えた後も尿検査と血圧を長期に追跡することが診療の核心となる。

概要・病態

  • IgAVは細動脈・毛細血管・という小血管を主座とする免疫複合体性血管炎であり、免疫沈着に乏しいANCA関連血管炎(GPA・MPA・EGPA)とは病理機序が対照的である。
  • 病態の中心は、欠損IgA1を含む免疫複合体が血管壁・糸球体に沈着し、とともに炎症を惹起する点で、IgA腎症と組織学的に同一のスペクトラムにある(皮膚・全身症状を伴えばIgAV、腎限局ならIgA腎症と呼び分ける)。
  • 小児(特に3〜10歳)に好発し、感染、ワクチン接種などが先行することが多い。

💡 IgAVとIgA腎症は「同じ免疫複合体病が全身性か腎限局性か」の違いに過ぎない。IgAV腎炎の組織所見・はIgA腎症に準じて評価する。

臨床像

  • 4つの中核領域を系統的に評価する。
領域 主な所見 見逃せない合併症
皮膚 血小板減少を伴わない、下肢伸側・周囲・臀部など依存部位の左右対称な。初期は紅斑・蕁麻疹様のことがあり反復出現しうる 非典型分布・壊死性病変では他疾患も再検討
関節 ・膝を中心とする関節痛/一過性関節炎 通常は変形を残さない
消化管 、嘔吐、消化管出血。腹痛が紫斑に先行することがある ・穿孔
顕微鏡的/、蛋白尿、高血圧、腎機能低下 、eGFR低下、
その他 ・疼痛、まれに肺胞出血・中枢神経病変 など緊急疾患の除外

⚠️ 強い腹痛では型に限らず小もありうる)、陰嚢痛ではという緊急疾患を必ず除外する。

flowchart TD
    A["下肢・臀部優位の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palpable purpura'>触知可能紫斑</span>"] --> B["血小板正常を確認(血小板減少なら他疾患を再検討)"]
    B --> C["関節痛・腹痛・血尿蛋白尿の有無を評価"]
    C --> D["典型像なら臨床診断"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urinalysis (dipstick / qualitative)'>尿定性</span>・尿沈渣、UPCR、血圧、腎機能を初期評価"]
    E --> F["非典型例では皮膚生検、腎所見が高度なら腎生検を検討"]

診断

  • 典型的な下肢優位のに、腹痛・状・腎所見・生検でのIgA優位沈着のいずれかを組み合わせる臨床診断が中心で、必須のはない。
  • 初期評価:CBC・(血小板減少性紫斑・DICの除外)、+尿沈渣、(UPCR)、血圧、・eGFR。
  • 強い腹痛では・腹部超音波で・虚血を評価する。
  • 皮膚生検は非典型例で検討し、腎生検はまたは腎機能低下が持続する例、あるいは中等度蛋白尿(UPCR 1〜2 mg/mg相当)が2〜4週、軽度蛋白尿(UPCR 0.2〜0.5 mg/mg相当)が4週を超えて持続する例で小児腎臓科と検討する。

治療

腎外症状

  • 軽症は安静・補液・などの支持療法が基本。
  • NSAIDsは・脱水・消化管出血がない関節痛に限り慎重に用いる(腎病変合併例では避ける)。
  • 強い腹痛、消化管出血、著しい関節・軟部組織症状ではグルココルチコイドが症状の期間を短縮しうる。ただし将来の腎炎を予防する目的で一律には投与しない——この一律非投与の方針はEULAR/PReS(SHARE initiative)の小児IgAV管理勧告でも一貫している。
  • ・穿孔・が疑われれば外科・泌尿器科へ緊急相談する。
flowchart TD
    A["IgAV診断"] --> B{"重症腎外症状(強い腹痛・消化管出血・高度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arthropathy'>関節症</span>状)"}
    B -->|"あり"| C["グルココルチコイドで症状短縮を検討"]
    B -->|"なし"| D["支持療法のみ"]
    C --> E["腎炎予防目的の一律投与はしない"]
    D --> F["尿・血圧の定期フォローへ"]
    E --> F

IgAV腎炎(IgAVN)

  • 持続蛋白尿ではACE阻害薬/ARB(など)を含む腎保護療法を検討し、血圧と腎機能を管理する。
  • 、eGFR低下、は腎生検の対象で、IgA腎症に準じた重症度評価のもと専門治療へ進む。
  • 高度・進行性のIgAV腎炎(など)では、またはを軸とした免疫を小児腎臓科主導で検討する。ステロイド抵抗例ではなどを追加する選択肢がある。

フォローアップ

  • 発症時から尿検査と血圧を反復し、腎所見がなくても少なくとも6か月は月1回を目安に観察する(腎所見は紫斑消失後に遅れて出現しうるため)。
  • 腎炎例は最初の6か月は毎月、続く6か月は3か月ごと、その後は6か月ごとを一つの目安として、尿・UPCR・eGFR・血圧を長期(少なくとも5年、重症例では生涯)に個別追跡する。
  • 家族には浮腫、赤、強い頭痛などの受診目安を説明する。

川崎病・ANCA関連血管炎との対比

  • 同じ小血管炎でも免疫複合体性かどうか、好発年齢と主要標的臓器で明確に区別できる。
IgA血管炎 ANCA関連血管炎(ANCA関連血管炎
血管径 小血管 中型血管 小血管
機序 免疫複合体性(IgA沈着) 不明(
好発年齢 学童期(3〜10歳) 乳幼児(5歳未満) 中高年に多い(小児はまれ)
主要臓器 皮膚・関節・消化管・腎 冠動脈 上気道・肺・腎
診断必須のなし なし
治療の軸 支持療法、重症腎炎に免疫抑制 IVIG+アスピリン グルココルチコイド+リツキシマブ/

まとめ

  • IgAVは小児最多の血管炎で、血小板減少を伴わない・関節痛・腹痛・腎症状の4領域を評価する免疫複合体性小血管炎である。
  • 腹痛では、陰嚢痛ではという緊急疾患を除外する。
  • グルココルチコイドは重い腎外症状を軽減しうるが、腎炎の予防目的で一律投与しない。
  • 腎炎の重症度はIgA腎症に準じて評価し、高度例はパルスステロイド+で専門治療する。
  • 紫斑が消失しても腎所見は遅れて出現するため、尿検査・血圧を最低6か月、腎炎例はより長期に追跡する。