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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 症候群

ネフリティック症候群

Nephritic syndrome

臓器系
腎・泌尿器
科目
Internal MedicinePathologyPediatrics
トピック
内科学 S-19:急性・急速進行性・慢性糸球体腎炎病理学 C/59:腎炎症候群(ネフリティック)病理学 C/61:急速進行性糸球体腎炎(RPGN)内科学 N-01:糸球体疾患小児科 3-24:小児糸球体疾患
鑑別疾患
ネフローゼ症候群
続発疾患
慢性腎臓病
関連疾患
溶連菌感染後糸球体腎炎
治療薬
プレドニゾロンメチルプレドニゾロンシクロホスファミドリツキシマブアザチオプリンミコフェノール酸モフェチルブデソニドエナラプリルダパグリフロジンフロセミド
原因微生物
化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)
症状
関節痛眼瞼浮腫血尿呼吸困難出血皮疹浮腫乏尿無尿喀血
検査値
活動性尿沈渣アルブミンクレアチニン血算尿沈渣補体C4補体C1q
組織像
急速進行性糸球体腎炎半月体形成性糸球体腎炎の形態
原因となる疾患
IgA血管炎(ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)IgA腎症アルポート症候群感染性心内膜炎急性扁桃炎・扁桃周囲膿瘍抗糸球体基底膜病(グッドパスチャー症候群)全身性エリテマトーデス膜性増殖性糸球体腎炎

🧠 全体像は「糸球体の炎症による破綻」が単一の起点となり、を伴う血尿、GFR低下による乏尿・、Na・による高血圧・浮腫を同時に引き起こす症候群である。(IF)パターンで線状)・(免疫複合体)・陰性(pauci-immune/ANCA)の3型に整理すると、原因診断と治療の道筋が一本化できる。数日〜週で腎機能が悪化する(RPGN)はを伴う腎の緊急事態であり、血清学的検査と腎生検を急ぎながら治療開始を遅らせないことが最大のポイントになる。

病態

炎症から血尿・乏尿・高血圧・浮腫まで

免疫複合体の糸球体沈着、の直接結合、あるいはANCA関連血管炎による細胞傷害のいずれかが引き金となり、壁で内皮・の増殖とを伴う炎症が起こる。これがの破綻とGFR低下を同時にもたらし、に特徴的な所見群を形成する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune complex deposition'>免疫複合体沈着</span>/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-GBM antibody'>抗GBM抗体</span>結合/ANCA関連細胞傷害"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerular capillary loop'>糸球体係蹄</span>壁の炎症(内皮・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mesangium'>メサンギウム</span>増殖+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophil infiltration'>好中球浸潤</span>)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='capillary wall'>毛細血管壁</span>の破綻"]
    C --> D["赤血球が糸球体を通過→変形・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fragmentation'>断片化</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerular hematuria'>糸球体性血尿</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysmorphic RBCs'>変形赤血球</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='RBC casts'>赤血球円柱</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cola-colored urine'>コーラ色尿</span>)"]
    B --> F["濾過面積・GFRの低下"]
    F --> G["乏尿・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Azotemia'>高窒素血症</span>"]
    F --> H["Na・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='water excretion'>水排泄</span>低下"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluid retention'>体液貯留</span>"]
    I --> J["高血圧"]
    I --> K["浮腫(眼瞼・下腿、重症では肺水腫)"]
    B --> L["重度の傷害ではフィブリノゲンが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Bowman&#39;s space'>Bowman腔</span>へ漏出"]
    L --> M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='parietal epithelial cell'>壁側上皮細胞</span>・マクロファージの増殖→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crescent formation'>半月体形成</span>"]
    M --> N["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='RPGN'>急速進行性糸球体腎炎</span>"]

💡 が「透過性亢進による蛋白の量的漏出」を核とするのに対し、は「炎症による血管壁の構造的破綻」を核とする。同じ糸球体疾患でも、この違いが尿所見(血尿主体か蛋白尿主体か)との考え方を分ける。

免疫蛍光(IF)による3つの機序型

  • 線状:GBMのNC1ドメインに対するが、GBMに沿って連続的に結合する。が代表。
  • :抗原抗体複合体が上皮下・内皮下・に斑状に沈着する。、IgA腎症、などのが該当する。
  • 陰性〜:ANCAが好中球を直接活性化し、免疫複合体やGBM抗体の目立った沈着なしに血管壁を傷害する。ANCA関連血管炎が代表。

⭐ このIF3分類はそのままRPGNの(I型=線状、II型=、III型=pauci-immune)に対応する。腎炎性所見+急速な腎機能低下をみたら、まずこの3型のどれかを血清学で絞り込む発想が診断の軸になる。

分類

疾患 好発・契機 光顕(LM) (IF) (EM) 治療の方向
咽頭炎後1〜3週、皮膚感染後3〜6週。が代表、肺炎球菌・ブドウ球菌・HBV/HCVなども原因になり得る 内皮・増殖+好中球・単球浸潤 GBM・に沿うIgG+C3 上皮下「(humps)」 +支持療法が中心、大多数(特に小児)は
IgA腎症 世界で最多の一次性GN。とほぼ同時〜数日以内の 増殖・基質拡大 (±C3、補体 沈着物 RAS阻害薬を軸とした支持療法、進行リスクに応じや条件付き免疫抑制
(Goodpasture表現型) がGBMのに結合。すれば肺胞出血を伴う 高頻度に GBMに沿う線状IgG(±C3) 特異的沈着物なし(GBM +グルココルチコイド+(緊急)
ANCA関連血管炎(RPGN III型) GPA(旧Wegener、/c-ANCA)、、好酸球性GPA(旧Churg-Strauss) 陰性〜 特異的沈着物なし グルココルチコイド+リツキシマブ(または)、は選択例のみ
(増殖性、III/IV型) SLEの活動性腎病変。免疫複合体が内皮下・に沈着 〜びまん性の管内増殖、 IgG・IgA・IgM・C3・C1qが揃う「full house」パターン 内皮下沈着物 グルココルチコイド+または
(MPGN/ は感染・自己免疫・血症、は補体の遺伝的・後天的異常 ・内皮増殖、 IgG+C3、はC3優位でIgはわずか )/緻密沈着物( 原因治療が中心、活動性が強い例で専門的に免疫抑制を検討

の「full house」IF(IgG・IgA・IgM・C3・C1qがすべて陽性)は、単一の免疫グロブリンが優位になる感染後GNやIgA腎症と鑑別する高頻度ポイントである。

RPGNの3病型と半月体

は単一疾患名ではなく、「数日〜週でクレアチニンが上昇し、腎生検で内に2層以上の細胞増殖=を認める」臨床病理学的症候群である。上記のIF3分類がそのまま病因型に対応する。

機序 IFパターン 代表疾患 肺病変
I型 線状IgG あり(肺胞出血・喀血)
II型 免疫複合体 IgG/C3 感染後GN、、IgA腎症、MPGN
III型 Pauci-immune(ANCA) 陰性〜微量 、GPA、好酸球性GPA よくある(GPA、好酸球性GPA)

⚠️ は「重度の糸球体傷害」を示す組織学的マーカーであって病因を特定しない。同じ性GNでも、I〜III型で血清学と治療がまったく異なるため、IF・血清学抜きに治療を一律化してはならない。

ループス腎炎の分類(ISN/RPS)

クラス 組織像 臨床の目安
I 最小型(LM正常、IF/EMで 尿所見正常〜軽微
II 増殖型 軽度血尿・蛋白尿
III 型(<50%の糸球体に活動性/慢性病変) 血尿、蛋白尿、腎機能低下——ネフリティック像の中心
IV (≥50%の糸球体に病変、を伴い得る) 重い腎炎、高血圧、腎不全——最も強い免疫抑制を要する
V 膜性型( が多い
VI 進行性(≥90%の糸球体が 進行した

による活動性のIII/IV型はの代表例であり、迅速な免疫抑制導入を要する。詳細な薬剤選択はノートのの項も参照。

臨床像

  • 血尿(形態異常赤血球)・を伴うが中核所見。肉眼的にはコーラ色〜紅茶色尿として気づかれることが多い。
  • 蛋白尿:一般に軽度〜中等度(非)だが、IgA腎症、、MPGNなどは血尿とを同時に示すことがある。
  • 腎機能低下:クレアチニン上昇、乏尿〜。RPGNでは数日〜週の経過で急速に進行する。
  • 高血圧・浮腫:GFR低下に伴うNa・により、、重症例では肺水腫を来す。
  • 随伴症状では喀血・呼吸困難(肺胞出血)、ANCA関連血管炎では上気道病変・紫斑・末梢神経障害、では皮疹・関節痛・など全身症状を伴い得る。

⚠️ は互いに排他的ではない。IgA腎症、、MPGNなどは血尿主体の腎炎性所見とを同時に呈する「混合型」を取り得るため、片方の所見がないことだけで他方を除外してはならない。

所見
糸球体炎症と係蹄壁破綻 糸球体透過性亢進と障害
尿所見 、血尿 大量蛋白尿、
蛋白尿 通常は非(混合型では高度) 成人では一般に3.5 g/日以上
血圧・体液 Na・による高血圧、乏尿、浮腫 とNa貯留による全身浮腫
主な合併症 、肺水腫 血栓塞栓症、感染、

診断

  • 尿沈渣での有無を確認し、を裏づける。
  • またはで蛋白量を定量する。
  • クレアチニン、eGFR、電解質、アルブミン、血算・、CRPを測定し、過去値との比較で進行速度を評価する。
  • 血清学的検索:補体(C3/C4)、ANA・抗dsDNA抗体、ANCA(PR3・MPO)、、必要に応じ抗C1q抗体を測定する。
  • 感染検索:ASO・抗体()、HBV・HCV・HIV血清学、血液培養(など)。
  • が疑われれば血清・を、肺症状があれば胸部画像を追加する。
  • 腎超音波で腎サイズ・左右差・水腎症を評価する。
  • 腎生検(光顕・)は病型確定の中心的検査であり、RPGNを疑う場合は緊急で施行する。
flowchart TD
    A["腎炎性所見+急速なクレアチニン上昇を疑う"] --> B["補体C3/C4、ANCA(PR3/MPO)、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-GBM antibody'>抗GBM抗体</span>、ANA・抗dsDNA、感染血清学を同時に提出"]
    B --> C{"血清学パターン"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-GBM antibody'>抗GBM抗体</span>陽性"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-GBM disease'>抗GBM病</span>(Goodpasture表現型)を強く疑う"]
    C -->|"ANCA陽性・補体正常"| E["ANCA関連血管炎(pauci-immune型RPGN)を疑う"]
    C -->|"補体低下・ANA/抗dsDNA陽性など"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune complex-mediated (type III)'>免疫複合体型</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lupus nephritis, LN'>ループス腎炎</span>・感染関連GN・IgA腎症・MPGN)を疑う"]
    D --> G["生検結果を待たず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-dose glucocorticoid'>高用量グルココルチコイド</span>開始を検討"]
    E --> G
    F --> H["原因検索を進めつつ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='timing'>緊急度</span>(Cr上昇速度・尿量・肺症状)を判断"]
    G --> I["可及的速やかに腎生検(LM・IF・EM)で確定"]
    H --> I
    I --> J["病型別の免疫抑制±<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic plasma exchange, TPE'>血漿交換</span>を開始"]

陽性や、透析を要する急速な腎機能低下・肺胞出血を伴うANCA陽性例では、腎生検の結果を待たずに治療を開始する。性GNは治療開始が数日遅れるだけでの機会を失い得る。

治療

RPGNは腎の緊急事態

は未治療のまま数週でに至り得るため、血清学的検査と腎生検を急ぎつつ、疑いが強ければ結果を待たずに高用量免疫抑制を開始する。

  • (抗体除去)+グルココルチコイド+(抗体産生抑制)を組み合わせるのが標準治療で、抗体陽性が判明し次第、生検確定前でも開始する。難治例・例ではリツキシマブを追加する選択肢がある。透析依存かつ回復可能性が極めて低い腎限局例では免疫治療の利益との毒性(性腺毒性など)を個別化して判断する。が陰性化するまで治療効果を追跡し、腎移植は抗体陰性期間を確保してから計画する。
  • 重症ANCA関連血管炎(RPGN III型)は全例に一律適用するものではない。透析を要する重症腎障害や低酸素を伴う肺胞出血など一部の重症例、および重複例では検討するが、PEXI試験では死亡・に対する一律の効果は示されなかった。

⚠️ 「RPGNなら全例に」という一律の適用は誤り。では標準治療の一部だが、ANCA関連血管炎では重症例に限定した選択的治療である。

感染後糸球体腎炎の管理

大多数(特に小児)が支持療法のみでするため、免疫抑制は原則として不要である。

  • 食塩制限と・浮腫・高血圧を是正する。
  • (咽頭炎・皮膚感染)があれば抗菌薬で治療するが、成立した糸球体腎炎そのものを抗菌薬で逆転させることはできない。
  • 高K血症、代謝性アシドーシス、肺水腫、症状があればを検討する。
  • C3は通常低下し、多くは6〜8週で正常化する。持続する低値はなど別疾患の可能性を再検討する契機になる。
  • 小児は大多数が完全回復する一方、成人はへの進行リスクが高く、長期の尿・血圧・腎機能フォローを要する。

IgA腎症の治療

  • 全例でRAS阻害薬(ACE阻害薬またはARB)を最大量まで用い、血圧・食塩・を含む支持療法をまず3〜6か月程度最適化する。
  • 支持療法後も持続する蛋白尿・進行リスクが高い例では、局所へ作用しを抑える)が全身性ステロイドより優先される選択肢として位置づけられている。
  • が使用できない高リスク例に限り、有害事象(易感染性、消化管出血、代謝・骨・精神神経系副作用)を十分説明したうえで減量した全身性グルココルチコイドレジメンを慎重に検討する——で高用量ステロイドの重篤な有害事象が過剰であったことを踏まえた方針である。
  • があるだけで一律に免疫抑制を追加しない。急速なeGFR低下を伴うRPGN型(性IgA腎症)はANCA関連血管炎に準じ、とステロイドで治療する。
  • 進行リスクに応じてSGLT2阻害薬を追加する。

⚠️ IgA腎症の全身性ステロイドは「蛋白尿があれば即開始」ではなく、支持療法を十分に行った後の高リスク例に限定し、可能であればを優先する——この閾値の理解が現行方針の核心である。

ANCA関連血管炎の寛解導入・維持

  • 寛解導入にリツキシマブまたはを併用する。例や陽性例(GPA)ではリツキシマブが優先されることが多い。グルココルチコイドのを減らす目的で)を併用する選択肢もある。
  • :上記のとおり全例には行わず、重症腎障害や肺胞出血などに限定する。
  • 維持療法:寛解後はリツキシマブまたはで維持し、リスクと易感染性を定期的に監視する。感染予防(など)と骨保護も並行する。
  • 肺胞出血では酸素化と気道管理を優先し、免疫抑制開始を遅らせない。

まとめ

  • は糸球体炎症による破綻を核とし、を伴う血尿、乏尿・、高血圧、浮腫を同時に来す。
  • パターン(線状=抗GBM、=免疫複合体、陰性〜微量=pauci-immune/ANCA)がRPGNのI〜III型分類と対応し、原因診断の軸になる。
  • は大多数が支持療法のみでするが、成人は慢性GNへの進行リスクが高い。IgA腎症は支持療法を最適化した上で、を全身性ステロイドより優先し、閾値を守って免疫抑制を追加する。
  • RPGNは腎の緊急事態であり、血清学と生検を急ぎつつ治療開始を遅らせない。が標準治療の一部だが、ANCA関連血管炎でのは重症例に限定した選択的治療である。
  • は排他的ではなく、IgA腎症・・MPGNなどは混合型を呈し得る。