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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 症候群

ネフローゼ症候群

Nephrotic syndrome

臓器系
腎・泌尿器
科目
Internal MedicinePathologyPediatrics
トピック
内科学 S-20:ネフローゼ症候群と蛋白尿性疾患病理学 C/60:ネフローゼ症候群内科学 N-01:糸球体疾患小児科 45:小児糸球体疾患小児科 3-24:小児糸球体疾患
鑑別疾患
ネフリティック症候群蛋白漏出性胃腸症
合併症
胸水
続発疾患
慢性腎臓病深部静脈血栓症鉄欠乏性貧血
治療薬
プレドニゾロンシクロホスファミドタクロリムスリツキシマブミコフェノール酸モフェチルアザチオプリンベリムマブエナラプリルダパグリフロジンフロセミドアトルバスタチンヘパリンエノキサパリンワルファリンアピキサバン
原因薬剤
ペニシラミンヘロインプロベネシド
原因微生物
Plasmodium malariae
症状
眼瞼浮腫圧痕性浮腫腫脹浮腫体重増加
検査値
抗体価アルブミンクレアチニン血算血糖尿沈渣低ナトリウム血症アンチトロンビン
組織像
糖尿病性腎症糖尿病性腎症の病理診断
下位分類
巣状分節性糸球体硬化症微小変化型ネフローゼ症候群膜性腎症
元疾患
水銀中毒糖尿病性腎症
原因となる疾患
Denys-Drash症候群IgA腎症アミロイドーシス軽鎖沈着症全身性エリテマトーデス膜性増殖性糸球体腎炎
適応薬
シクロスポリン
禁忌薬
オキシメトロン

🧠 全体像:は「を含む障壁の透過性亢進」という単一の病態が、大量蛋白尿→→浮腫という古典的カスケードと、血栓症・易感染性・脂質異常という多彩な続発症を同時に引き起こす症候群である。小児では大部分がであるため生検なしに経験的なステロイド治療から入るのに対し、成人では全身性疾患の腎病変であることが多いため原因診断を急ぎ、腎生検と血清学的検査で病型を確定してから治療する——この診療アプローチの違いが年齢間で最大のポイントになる。

病態

蛋白尿から浮腫・続発症まで

の・の障害により、本来ほぼ通過しないはずのアルブミンなどのが大量に尿中へ漏出する。これがを介したと、腎でのNa・を同時に引き起こし、を形成する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='podocyte'>足細胞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit diaphragm'>スリット膜</span>の障害"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerular filtration'>糸球体濾過</span>障壁の透過性亢進"]
    B --> C["大量蛋白尿"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoalbuminemia'>低アルブミン血症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased oncotic pressure'>膠質浸透圧低下</span>"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='effective circulating volume'>有効循環血漿量</span>低下→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renin-angiotensin-aldosterone system'>RAAS</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sympathetic activation'>交感神経活性化</span>"]
    E --> F["尿細管でのNa・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='water reabsorption'>水再吸収</span>亢進"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='generalized edema'>全身浮腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='body cavity fluid'>体腔液</span>貯留"]
    C --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antithrombin'>アンチトロンビン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Protein S'>プロテインS</span>/C・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plasminogen'>プラスミノゲン</span>喪失"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypercoagulability'>凝固能亢進</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous thromboembolism, VTE'>静脈血栓塞栓症</span>"]
    C --> J["免疫グロブリン・補体因子B喪失"]
    J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='encapsulated bacteria'>莢膜形成菌</span>感染リスク上昇"]
    C --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transferrin'>トランスフェリン</span>・ビタミンD<span class='jp-term jp-term-diagram' title='binding protein'>結合蛋白</span>・甲状腺ホルモン<span class='jp-term jp-term-diagram' title='binding protein'>結合蛋白</span>の喪失"]
    L --> M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iron-deficiency anemia, IDA'>鉄欠乏性貧血</span>様・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypocalcemia'>低カルシウム血症</span>・甲状腺機能異常様の所見"]
    D --> N["肝でのリポ蛋白合成代償性亢進"]
    N --> O["脂質異常・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Lipiduria'>脂肪尿</span>"]

💡 浮腫の古典的説明(アルブミン低下→→血管内容量低下→代償性のNa・)は分かりやすいが、実際には腎の自体でNa輸送体(など)が一次的に活性化しているという機序(overfill説=溢流説)も関与しており、両者は排他的ではない。

一次性(原発性)と二次性

  • 一次性(原発性):糸球体そのものに原因がある腎限局性の疾患。、(FSGS)、、など。
  • 二次性:全身性疾患・感染・薬剤・悪性腫瘍に伴う。、、、やなどの感染関連腎症、・金製剤・などの薬剤性、に伴うなどが代表。

⭐ 同じ組織パターン(例:FSGS)でも一次性か二次性かで治療がまったく異なる。二次性・遺伝性・(肥満、減少など)のFSGSにをルーチンで使ってはならない——反応せず、感染などの害だけが残る。

分類

疾患 好発 光顕(LM) (IF) (EM) ステロイド反応
(MCD) 小児(特に2〜6歳)に最多、成人にも起こる ほぼ正常 陰性 のびまん性消失 良好(成人は寛解までやや時間を要することがある)
(FSGS) 一次性は青年〜成人、二次性は・肥満・減少・遺伝性異常・などの薬物といった背景に応じ様々 一部の糸球体の一部分節に硬化・、から先行 IgM・C3(部への非特異的捕捉) 、に硝子沈着 一次性は反応不良〜遅延(抵抗性では)、二次性・遺伝性は免疫抑制無効
成人(30〜50歳)に最多、非糖尿病成人の一次性ネフローゼの第1原因 GBMのびまん性肥厚、で GBMに沿うIgG+C3 () ステロイド単独には反応しない
(MPGN/) は感染・自己免疫・、補体型()は代替補体経路の遺伝的・後天的異常 ・、() はIgG+C3、はC3優位でIgはわずか ()/緻密沈着(=など) 原因治療が中心、反応は様々

⚠️ MPGNはパターン(I/II/III型)で語られてきたが、現行の分類は所見に基づく機序別(免疫複合体性か、代替補体経路の異常によるか)を優先する。旧来の「II型MPGN=」はの一病型として理解し、も型ではなく機序(免疫複合体性か補体制御異常か)で決める。

主な二次性原因

原因 治療の方向
GBM肥厚、、結節性硬化(Kimmelstiel–変) 血糖・、RAS阻害薬、阻害薬
陽性・下で、非分岐性 病型(AL=形質細胞クローン、AA=慢性炎症)を確定して原因治療。ステロイド単独の一律投与は誤り
、クラスI〜VIで組織活動性・が変わる(下表) クラス別の免疫抑制+
感染関連 B型・C型肝炎、、梅毒、マラリアなど 原疾患の治療、免疫抑制は病型・重症度に応じ個別化
薬剤性 、、金製剤など の中止
悪性腫瘍随伴 肺癌・大腸癌・悪性黒色腫などに伴う の治療

ループス腎炎の分類(ISN/RPS)

クラス 組織像 臨床の目安
I 最小型(LM正常、IF/EMで) 尿所見正常〜軽微
II 増殖型 軽度血尿・蛋白尿
III 型(<50%の糸球体に活動性/慢性病変) 血尿、蛋白尿、腎機能低下
IV (≥50%の糸球体に病変、を伴い得る) 重い腎炎、ネフローゼ、高血圧、腎不全
V 膜性型(、) が多い
VI 進行性(≥90%の糸球体が) 進行した

活動性のIII/IV(±V)型は迅速な免疫抑制導入が必要で、Vのみでがあれば免疫抑制を追加し、VIは不可逆的硬化が主体のため免疫抑制よりもとしての管理を中心にする。

臨床像

  • 浮腫:眼瞼から始まり全身性、腹水、胸水へ進むことがある。小児では体重増加・眼瞼腫脹が初発として気づかれやすい。
  • 蛋白尿:⚠️ は国内外で違う。 日本の成人の臨床的定義は尿蛋白3.5 g/日以上の持続(の3.5 g/gCr以上に相当)で、この蛋白尿との2つが診断に不可欠の前提条件、浮腫は重要だが必須ではない、脂質異常も必須ではないと明記されている1。小児では、(2 g/g以上、または24時間尿で1000 mg/m²/日以上)にを伴えば診断とし、浮腫はアルブミン値が得られない場合の代替所見という位置づけである2。
  • :日本の成人のは3.0 g/dL以下(血清総蛋白6.0 g/dL以下も参考になる)1。小児は基準が別で、日本の小児の定義は2.5 g/dL以下1、 2025は30 g/L(3 g/dL)未満としている2。
  • ・:肝でのリポ蛋白合成代償性亢進による・上昇、尿沈渣に・(下で)。
  • :、・C、などの抗凝固蛋白のによりのリスクが上がる。特に・、ではのリスクが高い。
  • 易感染性:免疫グロブリンや補体因子Bの喪失により、肺炎球菌などのによる感染(特に小児の原発性腹膜炎)のリスクが上がる。
  • その他の:など鉄輸送蛋白の喪失によりに反応しにくい様の病態を来すことがあり、ビタミンD・甲状腺ホルモンの喪失は異常やの見かけ上の変化につながり得る。

⚠️ は浮腫を来す一方での低下も伴うため、過度の利尿や脱水は性のや血栓症のリスクをかえって高め得る。

診断

  • ・尿沈渣(脂肪円錐・、の有無)を確認する。
  • またはで蛋白量を定量する。
  • 血算、腎機能、電解質、アルブミン、脂質、血糖・を測定する。
  • 続発性を疑う所見があれば、補体(C3/C4)、・抗dsDNA抗体、B型・C型肝炎・血清学、血清・と、などを追加する。
  • で腎サイズ・左右差・水腎症・などを評価する。
flowchart TD
    A["浮腫+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heavy proteinuria'>高度蛋白尿</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoalbuminemia'>低アルブミン血症</span>"] --> B{"小児か成人か"}
    B -->|"小児(典型的な1〜10歳、非典型所見なし)"| C["典型的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='minimal change disease'>微小変化型</span>を想定"]
    C --> D["生検なしに経口グルココルチコイドを開始"]
    D --> E{"4〜6週で寛解?"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='steroid-sensitive'>ステロイド感受性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nephrotic syndrome'>ネフローゼ症候群</span>"]
    E -->|"いいえ"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='steroid-resistant nephrotic syndrome'>ステロイド抵抗性ネフローゼ症候群</span>"]
    G --> H["腎生検+遺伝学的評価"]
    B -->|"乳児発症・非典型(血尿・高血圧・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypocomplementemia'>低補体</span>・腎機能低下など)"| H
    B -->|"成人"| I["血清学的検索(補体・自己抗体・感染・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoclonal protein'>単クローン性蛋白</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-PLA2R antibody'>抗PLA2R抗体</span>)"]
    I --> J{"典型的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='membranous nephropathy'>膜性腎症</span>+高値<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-PLA2R antibody'>抗PLA2R抗体</span>で非典型所見なし?"}
    J -->|"はい"| K["生検を省略できる場合がある"]
    J -->|"いいえ"| L["腎生検で確定診断"]

⭐ 1歳を超える小児のの大半(70〜90%)はであり3、典型例(発症年齢1歳超、・持続する高血圧・・腎機能低下などの非典型所見がない)では腎生検を行わず経口グルココルチコイドで治療を開始する。初発時に腎生検を行うのは、・低C3・によらない・持続する高血圧・関節炎・皮疹といった非典型所見がある場合に限られる2。乳児発症、非典型所見、では腎生検と遺伝学的検査を検討する——これは、原因不明の成人ネフローゼで腎生検が診断の中心となるアプローチと対照的である。

治療

小児のステロイド治療

  • 典型的な初発小児例は生検なしに経口グルココルチコイドを開始する。 2025年小児ガイドラインは、初発例の投与期間を8週(連日4週+隔日4週)または12週(連日6週+隔日6週)とすることを推奨している(推奨度1B)。標準用量は連日/60 mg/m²/日または2 mg/kg/日(最大60 mg/日)で、後半は隔日40 mg/m²または1.5 mg/kg(最大40 mg)2。
  • ⭐ 8〜12週から6か月へ延長しても、型への移行やその後の経過は変わらない。初回再発までの期間は延びうるという低確実性のエビデンスがあるものの、12週を超える投与は有害事象を増やすだけで再発リスクを下げないため、「初発を強く叩けば再発が減る」という発想はとらない。8週と12週のどちらを選ぶかを決める根拠は不十分とされ、地域の慣行・利用可能な資源・患者の希望で選ぶ2。
  • :標準用量の連日/投与開始から4週以内にが得られる状態で、小児ネフローゼの大半を占める2。
  • :標準用量の連日投与で4週以内にが得られない状態2。日本の成人の基準も「十分量のステロイドで治療開始1か月後ににも不完全寛解Iにも至らない」であり、判定の時期がおおむね1か月という点は共通している1。4週時点でにとどまる例には4〜6週の確認期間が置かれ、6週ですれば「型」、6週でもしなければとする——は腎生検・遺伝学的評価の適応となる2。
  • 型( 2025〈小児〉=初回寛解後6か月以内に2回以上、またはその後の任意の12か月間に3回以上の再発。⚠️ 定義は3通り併存する——日本の小児基準〈JSN 2020 表4〉は「初回寛解後6か月以内に2回以上、または任意の12か月以内に4回以上」、日本の成人基準〈同 表3〉は「6か月間に2回以上」)・型(ステロイド投与中——全量投与中でも中でも——、またはステロイド中止後14日以内に連続2回再発する)では2、リツキシマブがステロイド曝露を減らす選択肢として推奨されるようになっている。、、、なども再発頻度・毒性に応じて個別化する。

成人の免疫抑制

  • :経口グルココルチコイドで導入する。 2021 は1 mg/kg/日(最大80 mg/日)または隔日2 mg/kg(最大120 mg)を最低4週・最長16週、寛解後は24週以上かけてするとし、寛解率は80〜90%である4。⚠️ 日本のガイドラインは0.8〜1 mg/kg/日(最大60 mg/日)で、上限が異なる。・・では(など)やをとして用いる。
  • 一次性FSGS:を第一選択とし、ではを用いる。二次性・遺伝性FSGSは免疫抑制をルーチン使用せず、原因治療と阻害薬などの支持療法を行う。
  • :蛋白尿の程度・の推移・価でリスクを層別化する。低リスクは阻害薬・での経過観察でよいが、中〜高リスクや腎機能低下が急速な例ではリツキシマブ、+ステロイド(改変)、(±リツキシマブ併用)などをリスクに応じて選ぶ。ステロイド単独は無効であり標準ではない。
  • :活動性のIII/IV(±V)型は副腎皮質ステロイドにまたは低用量静注を組み合わせ、患者背景に応じ併用や併用を選ぶ。全例禁忌がなければを併用する。

蛋白尿・腎保護と支持療法

  • 阻害薬またはを最大量(最大許容量)まで増量して蛋白尿と血圧を下げ、あわせてを指導する。⚠️ ただし発熱・下痢などの併発疾患でが減りうる状況では、RAS阻害薬と利尿薬をいったん中止するようあらかじめ患者に指導しておく4。
  • 病型・に応じて阻害薬を追加する。糖尿病の有無にかかわらず、蛋白尿を伴うにおける腎保護・心血管保護のエビデンスが蓄積しており、と同様の適応基準(など)に沿って導入する。
  • とで浮腫をゆっくり是正する。急激なはやを招くため避ける。
  • 糸球体疾患に伴う持続する脂質異常に対しては、スタチンを第一選択のとして検討する。その際は・アポB・・・年齢・リスク増強因子からリスクを評価し、スタチンの強度をリスクに合わせる。⚠️ 小児ではの改善が第一選択である4。
  • 極端な高蛋白食はかえって蛋白尿を増やすため避け、栄養不良を来さない適正な蛋白摂取量を保つ。

血栓予防

の経過中に血栓塞栓イベントが起きた患者には完全の適応がある。一方、予防的抗凝固は「血栓塞栓症のリスクが、抗凝固による重篤な出血イベントの患者ごとのリスクを上回るとき」に行うものとされ、特に高リスクの状況としてを伴うが挙げられ、この状況については値と出血リスクを組み合わせた判断アルゴリズムが示されている。予防的完全抗凝固を考慮する条件は「20〜25 g/L未満であり、かつ蛋白尿10 g/日超・ 35 kg/m²超・血栓塞栓症の・ III〜IVの心不全・整形外科/腹部手術後・のいずれかを伴う」場合である4。

⚠️ アルブミン閾値だけでは足りない——上の追加因子のいずれかを併せて判断する。ヘパリンやがに用いられてきたが、()の使用も広がりつつあり、選択は施設のプロトコルと個別リスク評価に従う。

⚠️ アルゴリズムに付された注意点として、アスピリンではの予防に不十分であること、高用量ワルファリンは開始直後にかえってを上げるため低用量を併用して開始することを考慮すること、そしてグルココルチコイド自体がを上げるため、を開始する患者で抗凝固を省略してはならないことが明記されている4。

感染予防

免疫グロブリン喪失と免疫抑制療法により感染リスクが高まるため、免疫能が低下した糸球体腎炎患者にはを接種すべきとされており4、も毎年検討する。高用量免疫抑制中は生ワクチンを避け、免疫抑制開始前に水痘など生ワクチンの接種歴・免疫状態を確認しておく。

まとめ

  • は障壁の透過性亢進により、大量蛋白尿・・浮腫・・・易感染性を同時に来す。
  • ⚠️ は国内外で別建てである。日本の成人の基準は尿蛋白3.5 g/日以上かつ3.0 g/dL以下で、この2つが不可欠の前提条件、浮腫は必須ではない1。小児は閾値そのものが違う(日本の小児はアルブミン2.5 g/dL以下、 2025は3 g/dL未満)ため、成人の数値をそのまま当てはめない2。
  • 一次性(、FSGS、、MPGN/)と二次性(糖尿病、、、感染、薬剤、悪性腫瘍随伴)を区別し、二次性・遺伝性の病型に免疫抑制をルーチン使用しない。
  • 小児は典型例なら生検なしに経験的ステロイドから開始し、・抵抗性・型・型で治療を個別化する。成人は原因不明例で腎生検が診断の中心となる。
  • 蛋白尿・腎保護にはRAS阻害薬と阻害薬を組み合わせ、浮腫には、脂質異常にはスタチンを用いる。
  • は単一のアルブミン閾値ではなく、病型・追加リスク・出血リスクを統合したアルゴリズムで個別化し、感染予防としてワクチン接種を計画する。

出典

  1. 1.Evidence-Based Clinical Practice Guidelines for Nephrotic Syndrome 2014(日本腎臓学会(Japanese Society of Nephrology)・2014)学会が公開している英語版PDFを確認した。成人ネフローゼ症候群の日本の臨床的定義(Table 1)は「①尿蛋白 3.5 g/日以上が持続(随時尿の尿蛋白/クレアチニン比 3.5 g/gCr以上に相当)、②低アルブミン血症=血清アルブミン 3.0 g/dL以下(血清総蛋白 6.0 g/dL以下も参考になる)、③浮腫、④脂質異常(高LDLコレステロール血症)」で、注記に「①の尿蛋白と②の低アルブミン血症は臨床診断に不可欠の前提条件」「浮腫は不可欠の前提条件ではないが重要な所見」「脂質異常は不可欠の前提条件ではない」「卵円形脂肪体は診断の助けになる」と明記されている。治療反応による分類(Table 3)はステロイド抵抗性=十分量のステロイド治療で治療開始1か月後に完全寛解も不完全寛解Iも得られない、難治性=ステロイドと免疫抑制薬を含む各種治療で6か月後に完全寛解も不完全寛解Iも得られない、ステロイド依存性=減量・中止後に再発を繰り返しステロイドを中止できない。小児の定義(Table 4)は高度蛋白尿(40 mg/h/m²以上)+低アルブミン血症(血清アルブミン 2.5 g/dL以下)で、成人と閾値が異なる。⚠️ 本ノートで参照したのは2014年版の英語版であり、2020年版(日本語)の本文は未取得。閲覧 2026-09-05
  2. 2.KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Nephrotic Syndrome in Children(KDIGO・2025)全文PDF(Kidney International 2025;107(Suppl 5S):S241–S289)を確認した。Figure 1の定義は、ネフローゼ症候群=ネフローゼ域蛋白尿(尿蛋白/クレアチニン比 200 mg/mmol(2 g/g)以上、または24時間尿で 1000 mg/m²/日以上)に低アルブミン血症(血清アルブミン 30 g/L(3 g/dL)未満)または(アルブミン値が得られなければ)浮腫を伴うもの、ステロイド感受性(SSNS)=標準用量のプレドニゾン/プレドニゾロンで4週以内の完全寛解、ステロイド抵抗性(SRNS)=標準用量の連日投与で4週以内に完全寛解が得られないこと、確認期間(confirmation period)=4週時点で部分寛解にとどまる例について4〜6週に反応を見極める期間で、6週で完全寛解すれば遅延反応型(late responder)、6週で完全寛解しなければSRNS、頻回再発型=初回寛解後6か月以内に2回以上またはその後の任意の12か月間に3回以上の再発、ステロイド依存型=推奨されたステロイド治療中(全量投与中または漸減中)またはステロイド中止後14日以内の連続2回の再発。Recommendation 1.3.1.1は初発例への経口グルココルチコイドを8週(連日4週+隔日4週)または12週(連日6週+隔日6週)とすることを推奨(1B)し、Practice Point 1.3.1.1の標準用量はプレドニゾン/プレドニゾロン 60 mg/m²/日または 2 mg/kg/日(最大60 mg/日)で連日、続いて隔日 40 mg/m²または 1.5 mg/kg(最大40 mg)。本文は、8〜12週から6か月へ延長しても頻回再発への移行や以後の経過は変わらず(初回再発を遅らせうるという低確実性のエビデンスはある)、12週を超える投与は有害事象を増やすだけで再発リスクを下げないとし、8週と12週のいずれを選ぶかを決める根拠は不十分としている。また初発時の腎生検は非典型例(肉眼的血尿、低C3、循環血漿量減少によらないAKI、持続する高血圧、関節炎、皮疹など)に限るとしている。閲覧 2026-09-05
  3. 3.Minimal Change Disease(Clinical Journal of the American Society of Nephrology・2017)全文を確認した。1歳を超える小児ではネフローゼ症候群の原因として微小変化型が最も多く70〜90%を占め、思春期前後になると膜性腎症など他の糸球体疾患が増えてこの割合は有意に下がる。成人の特発性ネフローゼ症候群では微小変化型は約10〜15%である。小児では典型的な臨床像で標準用量の経口プレドニゾンに反応すれば通常は腎生検を行わないため、この状況ではステロイド感受性ネフローゼ症候群は微小変化型とほぼ同義とみなせる。閲覧 2026-09-05
  4. 4.Executive summary of the KDIGO 2021 Guideline for the Management of Glomerular Diseases(KDIGO・2021)全文PDF(Kidney International 2021;100:753–779)を確認した。糸球体腎炎で蛋白尿を伴う患者にはACE阻害薬またはARBを最大耐容量/最大許容量まで増量し食塩制限を指導すること、ただし併発疾患などで循環血漿量減少のおそれがあるときはRAS阻害薬と利尿薬を中止するよう患者に指導すること、糸球体疾患に伴う持続する脂質異常にはスタチンを第一選択として検討することを述べる。血栓塞栓症については、ネフローゼ症候群の経過中に血栓塞栓イベントが起きた患者には完全抗凝固療法の適応があるとし、予防的抗凝固は「血栓塞栓症のリスクが、抗凝固による重篤な出血イベントの患者個別のリスクを上回るとき」に行うと述べる。特に高リスクの状況としてネフローゼ症候群を伴う膜性腎症を挙げ、この状況の判断アルゴリズム(Figure 7、Hofstra & Wetzels 2016を改変)を示している。同図の注記は、アスピリンでは静脈血栓塞栓症の予防に不十分であること、高用量ワルファリンの開始直後は血栓リスクがかえって上がるため低用量低分子量ヘパリンを併用して開始することを考慮すること、グルココルチコイドが血栓リスクを上げるためプレドニゾンを開始する患者で抗凝固を省略してはならないことを含む。感染予防としては、免疫能が低下した糸球体腎炎患者に肺炎球菌ワクチンを接種すべきとしている。閲覧 2026-09-05