疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 疾患

微小変化型ネフローゼ症候群

Minimal change disease

別名
MCD微小変化型リポイドネフローゼminimal change nephrotic syndrome
臓器系
腎・泌尿器小児
科目
PathologyInternal MedicinePediatrics
トピック
病理学 C/60:ネフローゼ症候群内科学 N-01:糸球体疾患内科学 S-20:ネフローゼ症候群と蛋白尿性疾患小児科 45:小児糸球体疾患小児科 46:小児ネフローゼ症候群と腎炎症候群小児科 3-24:小児糸球体疾患
上位概念
ネフローゼ症候群
鑑別疾患
C1q腎症巣状分節性糸球体硬化症
続発疾患
慢性腎臓病
治療薬
プレドニゾロンタクロリムスシクロスポリンシクロホスファミドリツキシマブミコフェノール酸モフェチルレバミゾール
原因薬剤
ペニシラミンリチウムスニチニブ
症状
浮腫眼瞼浮腫圧痕性浮腫
検査値
アルブミンアルブミン尿クレアチニン
原因となる疾患
ホジキンリンパ腫
適応薬
レバミゾール

🧠 全体像:(MCD)は、光顕・がほぼ正常なのにでがびまん性に消失しているという形態と臨床像の乖離を特徴とする、の中で最もステロイドに反応しやすい病型である。小児ネフローゼの70〜90%、成人の特発性ネフローゼの10〜15%を占め1、免疫抑制ではなく「まずステロイドを試す」という診療アプローチそのものが、この病型の存在によって成り立っている。

病理形態

検査 所見
光顕(LM) ほぼ正常
(IF) 陰性(をほぼ欠く)
(EM) のびまん性消失、剥離

かつて「」と呼ばれたのは、細胞が濾液から再吸収したリポ蛋白を細胞質に充満させ、した外観を呈することに由来する。

疫学

小児のの70〜90%(1歳以上)、成人のの10〜15%を占める。⭐ 思春期前後からこの割合は大きく下がり、など他の糸球体疾患の比重が増える。小児での発症率は小児10万人あたり年間2〜7例で、は正確には分かっていないが発症年齢と経過から10万人あたり10〜50例と推定されている。アジアでやや多い。若年小児では男児にやや多い性差(およそ2:1)がみられるが、思春期以降・成人ではこの性差は消失する1。

病態生理:ポドサイトを傷害する「循環因子」仮説

免疫複合体の沈着をほぼ欠くにもかかわらずが有効であることから、古くから液性の「」がを直接傷害するという仮説(Shalhoub仮説)が提唱されてきた。にはTh2優位のT細胞サブセットの偏りがみられ、のがでと蛋白尿を誘導することが示されている。のの発現変化、・FSGS双方で上昇するc-mip(の細胞骨格制御に干渉する)、なども候補分子として報告されている。近年はリツキシマブが有効であること、B細胞後のが再発を予測することから、T細胞だけでなくB細胞の関与も注目されている1。

flowchart TD
    A["Th2優位のT細胞機能異常・B細胞関与"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='circulating'>循環性</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Humoral factors'>液性因子</span>(未確立)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='podocyte'>ポドサイト</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pedicel'>足突起</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytoskeletal injury'>細胞骨格障害</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pedicel'>足突起</span>のびまん性消失"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anionic charge barrier'>陰イオン電荷バリア</span>の喪失"]
    E --> F["高度に選択的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='albuminuria'>アルブミン尿</span>"]

一次性(特発性)と二次性

大半は原因を特定できない一次性(特発性)である。二次性の原因として、をはじめとする悪性腫瘍(、白血病、、)、・・金製剤・・(など)といった薬剤、ウイルス・やMycoplasma pneumoniae感染、花粉・・・への曝露が報告されている1。を持つ患者で頻度が高いことも、Th2偏位という機序仮説と整合する。二次性が疑われる病歴(悪性腫瘍の随伴症状、新規薬剤、アレルゲン曝露との時間関係)があれば、それぞれの原因検索・除去を優先する。

FSGSとの関係——「進行型」ではなく別の見え方をする病態

MCDとFSGSはいずれもでのを共有し、光顕正常の生検がFSGSの病変(から始まる)を採り損ねるでMCDとされることがある。しかしステロイド反応性は明確に異なり、MCDの大半が良好に反応するのに対し一次性FSGSは反応不良〜遅延しやすい(詳しい鑑別の要点はの「との鑑別」を参照)。成人では16週の治療に反応しない一次性ステロイド抵抗例が10〜20%存在し、小児より高頻度である。この一部ではでFSGSが判明することがあり、そうした例の予後は悪い21。と判定された成人MCDの治療は、 2021でもFSGSの章に委ねられている2。これは「MCDがFSGSへ進行する」という単純な経過ではなく、初回生検のであった可能性と、両者が共有する傷害機序のの両方が関与しうるという理解にとどめる。

臨床像

大量蛋白尿・・浮腫・という共通の臨床像を呈する(血栓症・易感染性などの合併症の機序はを参照)。MCDに特徴的なのは、の選択的な喪失により高度に選択的な蛋白尿(主にアルブミン)を呈しやすい点である。血尿・高血圧・腎機能低下を伴うことは少なく、これらを伴う場合は非典型例として他病型を疑う。

診断

小児の典型例(発症年齢1歳超、非典型所見がない)では、腎生検を行わずに経験的なステロイド治療を開始する3。乳児発症や、・持続する高血圧・・非低灌流性のAKI・皮疹関節炎などの非典型所見があれば、診断時から腎生検を検討する3。初回のステロイド治療(4週間の連日投与)に反応しない場合は、腎生検・遺伝学的検査を検討する4。

⚠️ 年長児の扱いは資料で線引きが違う。 IPNA 2023は「12歳を超える年長児では症例ごとに腎生検の可否を判断する」(grade C、弱い推奨)とする3のに対し、 2025小児ガイドラインのFigure 5は「12歳以上での発症」を腎生検の適応の筆頭に挙げる5。12歳ちょうどの扱いと、適応か個別判断かの両方が違うので、どちらの資料の枠で述べているかを明示する。💡 思春期以降はMCD以外の病型(など)の比率が上がるので、年齢が上がるほど「生検せずステロイドで試す」戦略の前提が崩れていく。

成人では事情が逆で、MCDは腎生検でしか診断できない——光顕・・の組み合わせに特徴があり、臨床データだけから推定することはできない2。したがって成人の原因不明ネフローゼでは、二次性原因の検索と病型確定のために腎生検を行う(一般的な評価項目はを参照)。⚠️ ただし検体が小さいと早期のFSGS病変を採り損ねるため、光顕正常という所見だけでFSGSを完全には否定できない2。

長期予後

⭐ ステロイド反応性が保たれている限り、に至ることは例外的である。 長期の主な問題は腎機能そのものではなく、・を繰り返す例で積み上がるステロイドとの曝露(糖尿病・高血圧・肥満・骨粗鬆症・、長期免疫抑制による腫瘍)のほうである1。

初発の寛解後の経過は小児と成人で分かれる1。

集団 経過
小児(初発の寛解後) 約30%は18〜24か月再発せず、以後の再発リスクはごく小さい。20〜30%は稀な再発にとどまり、生涯で3〜4回を超えることはまれで単独で管理できる。残る40〜50%(5歳未満に多い)は型・型の経過をとり、のを要する
成人 再発が多く、約56〜76%に起こる
  • 小児発症例を成人期まで追ったコホートでは、約3%が(原文は chronic renal failure。1〜2を含むより狭い)へ進行し、16〜42%が成人期に再発している。成人期再発の主な危険因子は小児期のである1。⚠️ この3%は「小児発症例を成人期まで追ったコホート」の値であって、全年齢のMCDの進行率ではない。
  • 全治療を中止して2年以上再発が無ければ通常は永続寛解とみなす。ただし治癒と判断された数年後に再発することもある1。

へ進行した例の一部は、FSGSへの再分類(の是正または病態の)を反映している可能性がある。

治療

小児

典型的な初発例は腎生検を行わず経口グルココルチコイドで治療を開始する。 2025小児ガイドラインは初期治療を8週(連日4週+隔日4週)または12週(連日6週+隔日6週)とすることを推奨し(推奨1.3.1.1、1B)、標準用量を連日(または)60 mg/m²/日もしくは2 mg/kg/日(最大60 mg/日)、続いて隔日40 mg/m²もしくは1.5 mg/kg(最大40 mg)としている5。

⚠️ 成人の「最低4週・最長16週」と混同しない。 小児では初期治療そのものが8〜12週の定型レジメンで、⭐ の判定は連日投与4週の時点で行う。4週でにとどまる例にはという枠が置かれ、4〜6週にさらなるやパルス・RAS阻害薬への反応を見極める。6週ですれば型、6週でもしなければとする5。

再発予防では、重篤なステロイド関連有害事象を生じた型と型の全例に、無治療やステロイド単独の継続ではなくを用いることが推奨される(推奨1.3.3.1、1B)5。⚠️ 型でステロイド毒性が出ていない段階では、低用量隔日(0.5 mg/kg/回以下が望ましい)で再発を抑える選択肢も残されている5。

資料 の並べ方
2025(小児) 経口・・・・リツキシマブの5剤を優劣を付けない順序で並べ、資源・・有害事象・患者の希望で選ぶとする。型では経口と、型では・リツキシマブ・が望ましいことがある5
IPNA 2023 ・・・をまず個別化し、少なくとも1剤を十分量で用いても制御できない場合にリツキシマブを検討する(grade B)3

💡 この2つはしていない。 2025が5剤を並列に置いているのは選択の順序を決める根拠が無いという意味であって、リツキシマブを初回のへ格上げしたわけではない——同ガイドラインのFigure 3のリツキシマブの欄自身が「と経口のの最適な組み合わせでもが続く例、または治療の重篤な有害事象を生じた例」に用いうると書いており、IPNAの位置づけと整合する5。

⚠️ を始める前に、まずグルココルチコイドで寛解に入れておくのが望ましく、開始後2週以上はグルココルチコイドを併用する5。

の小児では、の初回選択としてまたはが推奨される(推奨1.4.1.1、1C)5。⚠️ 成人MCDのステロイド抵抗例がFSGSの章に委ねられる(前述)のと違い、小児側は独立した推奨を持つ。

(詳細な用量・期間は小児科 46:小児とを参照)

成人

初期治療は高用量の経口グルココルチコイドで、 2021糸球体疾患ガイドラインはこれを推奨5.3.1(1C)として掲げる2。のグレードは数字が推奨の強さ(1=強い推奨「We recommend」、2=弱い推奨「We suggest」)、英字が根拠の質(A 高〜D 非常に低)を表すので、1Cは「根拠の質は低いが、強く推奨する」という意味である。

項目 成人MCDの初期治療( 2021)
薬剤・用量 (または)連日1 mg/kg/日(最大80 mg/日)、あるいは隔日2 mg/kg(最大120 mg隔日)
期間 できる範囲で最低4週・最長16週
の開始 の2週後から
寛解率 +で80〜90%

⚠️ 16週は「必ず続ける期間」ではなく、高用量を続けてよい上限である。 4週の時点で反応するのは約50%にとどまり、そこからさらに10〜25%が16週までに反応するため、4週で無効でも直ちにとは判定しない2。寛解までの期間が小児(日〜週単位)より長く中央値2か月を超えうることが、この「待つ」設計の理由である1。

💡 の速さを定めた対照試験は成人に無く、緩徐なはステロイド量を増やし、急速なは再発を招くという二律背反が残っている。は症例集積に基づき週5〜10 mgずつの減量を挙げ、グルココルチコイド曝露の総期間をおよそ24週としている2(同ガイドラインのFigure 45は同じ内容を「寛解後、少なくとも24週かけて」と書いており、本文の「およそ24週」とは読み方が割れる)。総説も「寛解後に週5〜10 mgずつ8週かけて減量し、曝露を通算24週とする」を妥協案として挙げている1。

高度の高血糖、既存の骨粗鬆症・、などでグルココルチコイドがとなる患者では、初回治療から・・系のいずれかを検討する2。

成人での寛解・再発・抵抗性の定義

⚠️ 小児の定義とは数値が違う。 成人の症例に小児の定義を当てない。

用語 成人MCDでの定義( 2021)
蛋白尿 <0.3 g/日( <300 mg/g)+安定+ >3.5 g/dL
蛋白尿 0.3〜3.5 g/日(同 300〜3500 mg/g)かつベースラインから50%を超える減少
再発 が得られた後の蛋白尿 >3.5 g/日(同 >3500 mg/g)
6か月に2回以上、または12か月に4回以上の再発
グルココルチコイド治療中、または終了後2週以内に起こる再発
連日1 mg/kgまたは隔日2 mg/kgを16週を超えて投与しても蛋白尿 >3.5 g/日 が持続し、ベースラインからの減少が50%未満

(出典:Figure 462)

同じ用語で数値が違う——成人と小児の対比

小児側の定義は、 2025小児ガイドラインとIPNA 2023で閾値も窓も一致している53。⚠️ ただし下表の小児欄で括弧に入れた2つの限定——「その後の」( は in any subsequent 12-month period、IPNA は in any 12 months)と「全量投与中でも中でも」( の either at full-dose or during tapering)——は 2025 にしかない文言である。実質は変わらないが、逐語で引くときはどちらの版かを示す。

用語 成人( 2021) 小児( 2025・IPNA 2023)
6か月に2回以上、または12か月に4回以上 初回寛解後の最初の6か月に2回以上、またはその後の任意の12か月間に3回以上
グルココルチコイド治療中、または終了後2週以内の再発 初発・再発に対する推奨されたステロイド治療中(全量投与中でも中でも)、または中止後14日以内に起こる連続2回の再発
連日1 mg/kgまたは隔日2 mg/kgを16週を超えて投与しても蛋白尿 >3.5 g/日 が持続し、ベースラインからの減少が50%未満 標準用量の連日投与で4週以内にが得られないこと(4週でなら6週まで確認期間を置く)

⚠️ 小児のは「連続2回」の再発を要件とする。 成人の定義には回数の要件が無く、1回の再発でタイミングが合えば該当する。

⚠️ どちらのも「2つの窓のいずれか」で足りる。 12か月の窓だけを見ると、初回寛解直後の6か月に集中する再発を取り落とす。

⚠️ 日本の基準はさらに別の数値を用いる(を参照)。

再発と、頻回再発・ステロイド依存

頻回でない再発(年3回未満)はグルココルチコイドで治療する。・では、単独や無治療ではなく・リツキシマブ・(、)・系(、ナトリウム)のいずれかを用いることが推奨される(推奨5.3.1.1、1C)2。

⚠️ 最適な二次選択薬は定まっていない。 4クラスはいずれもの有効率が70〜90%と報告される一方、成人MCDの・でやリツキシマブを検討したは存在せず、直接比較の根拠を欠く。選択は有効性・副作用・治療期間・費用と患者の希望で決める2。実務上は、グルココルチコイドの副作用が問題になる例で従来が第二選択とされてきた一方、のある患者では不妊のリスクからやリツキシマブが選ばれる2。

・例を対象とした小児・成人混合の(75例、うちMCD 31例)では、がより2年後の率で優れていた(63%対25%)1。この種の成績からを第二選択に置く書き方が長く使われてきたが、 2021は上の4クラスを並列に置き、優劣を付けていない2。

まとめ

  • MCDは光顕・IFがほぼ正常ででのみのびまん性消失を認める、の中で最もステロイド反応性が良好な病型である。
  • 小児ネフローゼの70〜90%、成人の特発性ネフローゼの10〜15%を占め、Th2優位のT細胞機能異常を中心とする因子仮説で病態が説明されている。
  • 大半は一次性だが、などの悪性腫瘍、・・などの薬剤、感染、アレルゲンによる二次性もある。
  • FSGSとはを共有し、でされうるが、ステロイド反応性の違いで区別する。
  • 小児は生検なしにステロイドを開始するのに対し、成人は腎生検で確定してから治療し、は最低4週・最長16週で打ち切る(16週は続ける義務ではなく上限)。
  • ⚠️ 成人と小児で同じ用語の数値が違う。 の判定は成人が16週超、小児が4週(4週でなら6週まで確認期間)。の12か月の窓も成人4回以上・小児3回以上で、小児のは「連続2回」の再発を要件とする。
  • 小児の初期治療は 2025で8週(連日4+隔日4)または12週(連日6+隔日6)の定型レジメン(1B)。型でステロイド毒性がある例と型の全例にを用いる(1B)。の小児のの初回選択はまたは(1C)。
  • 成人の・には、・リツキシマブ・・系の4クラスが並列に推奨されており、最適な二次選択薬は定まっていない。小児側も 2025は5剤を優劣を付けない順序で並べるが、リツキシマブ自体の位置づけは「の最適な組み合わせでもが続く例」で変わっていない。
  • ⭐ ステロイド反応性が保たれる限りは例外的で、長期の主な問題はステロイド・の曝露のほうである。小児発症例を成人期まで追ったコホートでのは約3%(全年齢の値ではない)。

出典

  1. 1.Minimal Change Disease(Clinical Journal of the American Society of Nephrology・2017)小児の特発性ネフローゼ症候群の70〜90%、成人の特発性ネフローゼ症候群の10〜15%が微小変化型であること、小児では寛解までの期間は日〜週単位だが成人では中央値2か月を超えること、若年小児では男児にやや多い性差が思春期・成人では消失すること、病因としてTh2優位のT細胞機能異常という仮説(Shalhoubの循環性メディエーター仮説)とIL-13・アンジオポエチン様蛋白4・c-mip・ヘモペキシンなどポドサイトに作用する分子候補が提唱されていること、リツキシマブの有効性からB細胞関与も示唆されること、二次性の原因としてホジキンリンパ腫を含む悪性腫瘍・NSAIDs/ペニシラミン/金製剤/リチウム/チロシンキナーゼ阻害薬などの薬剤・特定の感染症・アレルゲンが表として整理されていること、成人のステロイド反応判定は16週を要する点が小児と異なること、頻回再発・ステロイド依存例を対象とした小児・成人混合の無作為化比較試験(75例、うちMCD 31例)ではシクロホスファミドがシクロスポリン(CsA)より2年後の寛解維持率で優れていたこと(63%対25%)、成人では16週の治療に反応しない一次性ステロイド抵抗例が10〜20%存在し小児より高頻度であることを確認した。閲覧 2026-09-02
  2. 2.KDIGO 2021 Clinical Practice Guideline for the Management of Glomerular Diseases(KDIGO・2021)全文PDF(Kidney International 2021;100:S1–S276)のChapter 5「Minimal change disease (MCD) in adults」を確認した。Practice Point 5.1.1は成人MCDが腎生検でしか診断できないとし、検体が小さいと早期のFSGS病変を採り損ねうると注記する。5.2は成人MCDの10〜20%がステロイド抵抗性であるとし、そうした患者の再生検では相当数にFSGS病変が見られ予後が悪いこと、ステロイド抵抗性の治療はFSGSの章(Chapter 6)で扱うことを述べる。推奨5.3.1は初期治療として高用量の経口グルココルチコイドを1Cで推奨する(Methodsの表で、数字が推奨の強さ〈1=strong「We recommend」/2=weak「We suggest」〉、英字が根拠の質〈A高〜D非常に低〉と定義されている)。Figure 45はプレドニゾンまたはプレドニゾロンを連日1 mg/kg(最大80 mg/日)もしくは隔日2 mg/kg(最大120 mg隔日)で、忍容できる範囲で最低4週・最長16週投与するとし、寛解率を完全+部分で80〜90%と示す。Practice Point 5.3.2は高用量グルココルチコイドを16週を超えて続けないこととし、4週で反応するのは50%にとどまりさらに10〜25%が16週までに反応すると述べる。Practice Point 5.3.3は完全寛解の2週後に漸減を開始するとし、本文は症例集積に基づき週5〜10 mgずつ減量してステロイド曝露の総期間をおよそ24週とする(同じ内容をFigure 45は「寛解後、少なくとも24週かけて漸減」と書いており、本文の「総曝露およそ24週」と読み方が割れている)。Practice Point 5.3.5はグルココルチコイドが相対的禁忌(高度の高血糖、既存の骨粗鬆症・骨減少症、ステロイド精神病)の患者で初回からシクロホスファミド・カルシニューリン阻害薬・MMFを検討するとする。Figure 46は成人MCDの完全寛解・部分寛解・再発・頻回再発(6か月に2回以上、または12か月に4回以上)・ステロイド依存(グルココルチコイド治療中または終了後2週以内の再発)・ステロイド抵抗性(1 mg/kg/日または隔日2 mg/kgを16週を超えて投与しても蛋白尿3.5 g/日超が持続しベースラインからの減少が50%未満)を定義する。推奨5.3.1.1は頻回再発/ステロイド依存MCDにシクロホスファミド・リツキシマブ・カルシニューリン阻害薬・ミコフェノール酸系のいずれかをプレドニゾン単独や無治療よりも推奨(1C)し、最適な二次選択薬は定まっておらず有効性・副作用・治療期間・費用と患者の希望で選ぶと明記する。成人MCDで頻回再発/ステロイド依存を対象にシクロホスファミドまたはリツキシマブを検討した無作為化比較試験は存在しないとも述べる。閲覧 2026-09-06
  3. 3.IPNA clinical practice recommendations for the diagnosis and management of children with steroid-sensitive nephrotic syndrome(International Pediatric Nephrology Association (IPNA) / Pediatric Nephrology・2023)PMC9589698で全文を確認した。小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群の典型的な初発例(発症年齢1歳超、非典型所見なし)では腎生検を行わず経験的な経口グルココルチコイドを開始すること、乳児発症や肉眼的血尿・持続する高血圧・低補体・非低灌流性のAKI・皮疹関節炎などの非典型所見があれば診断時から腎生検を検討すること、年長児(12歳を超える例)では腎生検の可否を症例ごとに判断するよう提案する(grade C、弱い推奨)としており、非MCDの病理が十分に疑わしくなる明確な年齢の線を引く根拠は無いと述べていること、定義の表が頻回再発型を「初回寛解後の最初の6か月に2回以上、または任意の12か月間に3回以上の再発」、ステロイド依存型を「初発または再発に対する推奨されたプレドニゾロン治療中、もしくはその中止後14日以内に起こる連続2回の再発」、ステロイド抵抗性を「標準用量のプレドニゾロンで4週以内に完全寛解が得られないこと」、確認期間を「4週時点で部分寛解にとどまる例について4〜6週に反応を見極める期間」と定めていること、頻回再発・ステロイド依存例ではまずレバミゾール・ミコフェノール酸モフェチル・カルシニューリン阻害薬・シクロホスファミドを個別化し、少なくとも1剤を十分量で用いても制御できない場合にリツキシマブ(grade B)を検討することを確認した閲覧 2026-09-02
  4. 4.IPNA clinical practice recommendations for the diagnosis and management of children with steroid-resistant nephrotic syndrome(International Pediatric Nephrology Association (IPNA) / Pediatric Nephrology・2020)初回のステロイド治療(4週間の連日投与)に反応しない場合をステロイド抵抗性ネフローゼ症候群と定義し、この場合に腎生検・遺伝学的検査を検討することを確認した閲覧 2026-09-02
  5. 5.KDIGO 2025 Clinical Practice Guideline for the Management of Nephrotic Syndrome in Children(KDIGO・2025)kdigo.orgの糸球体疾患ガイドライン頁から全文PDF(Kidney International 2025;107(Suppl 5S):S241–S289)を取得して確認した。同頁は、KDIGO 2021糸球体疾患ガイドラインを章ごとに継続的に改訂していると述べ、既刊の改訂としてループス腎炎2024・ANCA関連血管炎2024・小児ネフローゼ症候群2025・IgA腎症/IgA血管炎2025を挙げる(成人の微小変化型を扱うChapter 5は2021年版のままである)。本ガイドラインのFigure 1の定義は、ステロイド感受性=標準用量のプレドニゾン/プレドニゾロンで4週以内の完全寛解、ステロイド抵抗性=標準用量の連日投与で4週以内に完全寛解が得られないこと、確認期間=4週時点で部分寛解にとどまる例について4〜6週に反応を見極める期間で6週で完全寛解すれば遅延反応型・6週でも完全寛解しなければステロイド抵抗性、頻回再発型=初回寛解後の最初の6か月に2回以上またはその後の任意の12か月間に3回以上の再発、ステロイド依存型=初発または再発に対する推奨されたステロイド治療中(全量投与中でも漸減中でも)もしくは中止後14日以内に起こる連続2回の再発。Recommendation 1.3.1.1は初発例の経口グルココルチコイドを8週(連日4週+隔日4週)または12週(連日6週+隔日6週)とすることを推奨(1B)し、Practice Point 1.3.1.1の標準用量は連日プレドニゾン/プレドニゾロン60 mg/m²/日または2 mg/kg/日(最大60 mg/日)、続いて隔日40 mg/m²または1.5 mg/kg(最大40 mg)である。Recommendation 1.3.3.1は、重篤なステロイド関連有害事象を生じた頻回再発型と、ステロイド依存型の全例に、無治療やステロイド単独継続ではなくステロイド節約薬を用いることを推奨(1B)する。Practice Point 1.3.3.4は、重篤なステロイド関連有害事象の無い頻回再発型には低用量隔日の経口プレドニゾン/プレドニゾロン(1回あたり0.5 mg/kg以下が最適)を再発予防に処方しうるとする。Practice Point 1.3.3.5は、ステロイド節約薬を開始する前にグルココルチコイドで寛解に入れておくことが望ましく、開始後2週以上はグルココルチコイドを併用することを推奨するとしている。Practice Point 1.3.3.6とFigure 3は経口カルシニューリン阻害薬・シクロホスファミド・レバミゾール・ミコフェノール酸モフェチル・リツキシマブの5剤を優劣を付けない順序(listed here in an unbiased order)で並べ、資源・アドヒアランス・有害事象・患者の希望で選ぶとし、頻回再発型では経口シクロホスファミドとレバミゾールが、ステロイド依存型ではミコフェノール酸モフェチル・リツキシマブ・カルシニューリン阻害薬(およびそれに次いで経口シクロホスファミド)が望ましいことがあるとする。Figure 3のリツキシマブの欄は、プレドニゾンと経口のステロイド節約薬の最適な組み合わせでも頻回再発が続く例および治療の重篤な有害事象を生じた例に用いうるとし、投与量を375 mg/m²静注1〜4回、必要回数を定める根拠は不十分としている。Recommendation 1.4.1.1はステロイド抵抗性ネフローゼ症候群の二次治療の初回選択としてシクロスポリンまたはタクロリムスを推奨(1C)する。Figure 5は腎生検の適応の筆頭に12歳以上での発症を挙げる。KDIGOのグレードは数字が推奨の強さ・英字が根拠の質を表す。閲覧 2026-09-07