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Disease Atlas · 腎・泌尿器 · 外傷

泌尿生殖器外傷

Genitourinary trauma

臓器系
腎・泌尿器
科目
Urology
トピック
泌尿器科学 U-04:腎・尿管・膀胱の損傷泌尿器科学 U-05:尿道・外性器損傷とその早期・晩期合併症
鑑別疾患
精巣捻転・卵巣捻転
合併症
循環性ショック急性腎障害
続発疾患
壊死性軟部組織感染症破傷風尿道狭窄
関連疾患
狂犬病
治療薬
ピペラシリン
症状
悪心血尿紅斑腫脹出血出血性ショック肉眼的血尿発熱浮腫疼痛

🧠 全体像は「①どの臓器か(腎・尿管・膀胱・尿道・)」「②鈍的・穿・医原性のどれか」「③血行動態が安定しているか」という3軸で評価する。AAST(American Association for the Surgery of Trauma)分類などの解剖学的を決める唯一の基準ではなく、あくまで性を最優先に置いたうえでの補助情報という位置づけが現行ガイドラインの立場である。腎損傷が最多、尿管損傷は最も稀(多くは医原性)、膀胱損傷は満尿時にリスクが上がり、尿道損傷は前部(医原性・跨座位損傷)と後部(骨盤骨折)に分かれる。血尿の程度は損傷の重症度と相関しないため、画像検査の適応はと身体所見で判断し、外傷は・不妊などの晩期合併症を左右する。

概要

  • 定義:腎・尿管・膀胱・尿道・(陰茎・陰嚢・精巣)にわたる外傷の総称。、穿外傷、医原性損傷に大別される。
  • 疫学:泌尿生殖器の中では腎損傷が最多で全身外傷の数%、腹部の中でも頻度の高い臓器損傷である。膀胱損傷、尿道損傷がこれに続き、尿管損傷は最も稀で医原性(手術操作)が主因を占める。外傷は若年男性に多く、スポーツ・交通事故・暴行が主な機転となる。
  • の基本軸
    • :交通事故、高所、スポーツ、暴行が主体。
    • 穿外傷
    • 医原性損傷:手術操作(手術、操作、内視鏡的結石治療など)、カテーテル・などの器具操作。
  • 危険因子、骨盤骨輪骨折(尿道・膀胱損傷と強く関連)、満尿状態での下腹部(膀胱破裂)、既存の腎病変(水腎症・腫瘍・嚢胞など、軽微な外力でも破裂しやすくなる)。
  • 重要な原則:血尿(顕微鏡的・肉眼的)の有無・程度は損傷の重症度と相関しない。の完全など高度な損傷でも血尿がごく軽微・欠如することがあるため、画像検査の適応は血尿の量だけでなく・身体所見で判断する。

病態

は、まず解剖学的部位で分岐し、それぞれの部位で鈍的・穿・医原性の機転を考える。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genitourinary trauma'>泌尿生殖器外傷</span>"] --> B["腎損傷(最多)"]
    A --> C["尿管損傷(最も稀、多くは医原性)"]
    A --> D["膀胱損傷(満尿時にリスク増)"]
    A --> E["尿道損傷(前部/後部)"]
    A --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vulva'>外陰部</span>外傷(陰茎・陰嚢・精巣)"]
    B --> B1["鈍的:交通事故・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flying-falling'>転落</span>・暴行"]
    B --> B2["穿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facultative'>通性</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gunshot wound'>銃創</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stab wound'>刺創</span>"]
    C --> C1["医原性:手術操作(最多)"]
    C --> C2["鈍的:急<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deceleration'>減速</span>による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperextension'>過伸展</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>"]
    C --> C3["穿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facultative'>通性</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gunshot wound'>銃創</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stab wound'>刺創</span>"]
    C --> C4["内視鏡的結石治療による穿孔・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='avulsion'>裂離</span>"]
    D --> D1["鈍的:骨盤骨折・満尿時の下腹部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blow'>打撃</span>"]
    D --> D2["穿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facultative'>通性</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gunshot wound'>銃創</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stab wound'>刺創</span>"]
    D --> D3["医原性:泌尿器科・婦人科・一般外科手術"]
    E --> E1["前部尿道:医原性(器具操作)・跨座位損傷"]
    E --> E2["後部尿道:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='PFUI'>骨盤骨折関連</span>"]
    F --> F1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penile fracture'>陰茎折症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penetrating penile injury'>穿通性陰茎損傷</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penile amputation'>陰茎切断</span>・絞扼症"]
    F --> F2["精巣損傷・陰嚢<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aplasia cutis congenita'>皮膚欠損</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fournier gangrene'>Fournier壊疽</span>)"]

腎損傷とAAST分類

腎損傷は鈍的(裂傷はに生じやすく、肋骨・椎骨骨折が実質を直接することがある)と穿に分かれ、現行のAAST腎損傷分類(2018年改訂)で重症度を評価する。

Grade 所見
I 、または非拡大性の被膜腫。裂傷なし
II 深さ1cm以下の皮質裂傷で出なし。血腫は後腹膜に限局し非拡大性
III 深さ1cmを超える裂傷で、の破綻・出を伴わないもの
IV に達し出を伴う裂傷、腎盂裂傷/腎盂尿管完全、区域動静脈損傷、を超える活動性出血、区域~全体の梗塞
V 腎茎(動静脈)の裂傷・、実質構築が判別不能な

💡 Grade分類は「深さ1cm」「の関与」「血管損傷の有無」という3つのを押さえれば再現できる。Grade IVとVの違いは腎盂尿管の完全が含まれるかどうかではなく(IVに含まれる)、血管の管化・という「腎全体の破壊」に達しているかである。

尿管・膀胱損傷

尿管損傷は稀だが、医原性(外科手術操作)が最多を占め、では急による尿管の、穿外傷や内視鏡的結石治療でも生じうる。膀胱は骨盤深部で保護されるため単独損傷は比較的稀だが、充満するほどより上に挙上するため満尿状態の方が空虚時より損傷しやすいというな特徴を持つ。

部位 特徴
膀胱 膀胱 粘膜または筋層のみの損傷
膀胱 腹膜外膀胱破裂 骨盤骨折に典型的。尿が後まで進展しうる
膀胱 腹膜内膀胱破裂 満尿時の下腹部・シートベルト圧迫による膀胱内圧の急激な上昇

尿道・外陰部外傷

男性尿道損傷は前部(球部尿道、多くは医原性・跨座位損傷、)と後部(尿道、骨盤骨折関連=pelvic fracture urethral injury:PFUI、性別を問わず生じうるが女性は極めて稀)に分けて考える。外傷は、陰茎(折症・穿損傷・切断・絞扼症)と陰嚢(精巣損傷・)に分けられる。

病態 機序 特徴
性交渉中の過度の屈曲力 。時に・尿道損傷を合併
動物・ヒト咬傷、 創閉鎖は行わずとして管理
多くは精神疾患による 適切な断端保存が再接着の成否を左右する
精巣損傷 鈍的(スポーツ・暴行・交通事故)、穿・爆発) の有無がを左右する
陰嚢 の一亜型。免疫抑制・尿路や糞便の転向・不衛生が誘因 生命を脅かす緊急疾患

臨床像

  • 血尿:顕微鏡的・肉眼的いずれも生じうるが、程度は損傷重症度と相関しない・腎盂尿管完全など高度損傷でも血尿がごく軽微なことがある一方、軽症の膀胱粘膜損傷でもを呈することがある。
  • 腎損傷痛・腹部全体の痛み、大きな後腹膜血腫による腹部腫瘤触知・腹部膨満・イレウス、高度損傷では低血圧・)が初期兆候となりうる。
  • 尿管損傷:受傷直後は無症状〜血尿のみのことが多く、数日〜数週間後に高熱・痛・・腹膜炎として顕在化する(診断の遅れやすさが特徴)。
  • 膀胱損傷:下腹部痛、腹部膨満、尿閉、血尿。では腸雑音の消失を伴うことがある。
  • 尿道損傷:尿道外尿道口からの出血、排尿不能、膀胱のな充満、後部尿道損傷に特徴的な「」会陰部血腫やでの「浮動性」前立腺。
  • 時の「バキッ」という音とともに疼痛、急激な勃起消退、陰茎の・腫脹。血腫のにより側と反対方向へ陰茎が偏位することが多い(茄子様変形、いわゆる eggplant sign)。
  • 精巣損傷:高度の陰嚢痛・悪心、ほぼ全例に陰嚢出血・血陰嚢、腫脹・皮下出血。急性発症の陰嚢痛ではとの鑑別が重要で、明確な外傷歴の有無が手がかりになる。
  • :陰嚢・会陰部の浮腫・紅斑・皮膚虚血に加え、特徴的な悪臭を伴うの感染徴候。

診断

画像検査の適応と選択

、低血圧を伴う、急機転、穿外傷、身体所見での損傷徴候があれば画像検査の適応となる。

部位 第一選択 補助・確定検査
造影CT(・実質相・を含む多相CT) 動脈損傷が疑われれば損傷が疑われればCT urography(
尿管 造影CT+ が最も精度の高い診断法
膀胱 またはCT300~350mL以上の逆行性注入が必須) →造影剤が線より下方に分布、→造影剤が線より上方に分布
尿道 留置前に尿道口出血があれば必須) (侵襲的)
精巣 必須):で血流を評価 が断たれ輪郭が消失した不整な=精巣破裂
病歴・身体所見が基本 診断が不確実な場合はMRIが超音波より優れる。で尿道損傷を除外する

⚠️ 尿道口からの出血や後部尿道損傷が疑われる患者に、で尿道損傷を除外する前に盲目的にを留置してはならない(損傷の悪化・完全への進展のリスク)。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genitourinary trauma'>泌尿生殖器外傷</span>を疑う"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cABCDE'>初期蘇生</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemodynamic evaluation'>血行動態評価</span>"]
    B --> C{"血行動態は安定か"}
    C -->|"不安定・持続する出血"| D["蘇生を継続しつつ緊急止血(手術・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular treatment'>血管内治療</span>)を優先"]
    C -->|"安定・蘇生に反応"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='causation'>受傷機転</span>と身体所見で損傷部位を推定"]
    E -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lumbar region (flank)'>側腹部</span>痛・血尿・急<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deceleration'>減速</span>"| F["多相造影CT(腎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excretion phase'>排泄相</span>を含む)"]
    E -->|"尿道口出血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-riding prostate'>高位浮動性前立腺</span>"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retrograde urethrography'>逆行性尿道造影</span>を先行、その後カテーテル可否を判断"]
    E -->|"下腹部痛・尿閉・骨盤骨折"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystography'>膀胱造影</span>/CT<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cystography'>膀胱造影</span>(逆行性300〜350mL充満)"]
    E -->|"陰嚢痛・腫脹"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ultrasound (US)'>超音波検査</span>で精巣の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='continuous'>連続性</span>と血流を評価"]
    F --> J["AAST Gradeと血管損傷の有無を確認"]
    G --> K["部分損傷か完全<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>かを判定"]
    H --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extraperitoneal rupture'>腹膜外破裂</span>か<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraperitoneal rupture'>腹膜内破裂</span>かを判定"]
    I --> M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tunica albuginea'>白膜</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>の有無を判定"]

治療

を決める最優先の基準は、部位別のAAST Grade等の解剖学的重症度ではなく血行動態が安定しているかである。

腎損傷

  • 血行動態が安定していれば保存的治療(非管理)が第一選択で、Grade I〜IIIはほぼ全例、Grade IVも多くが対応可能、Grade Vでも適切に選別すれば半数超が非に管理できる。安静・輸液、血圧・・血腫サイズのモニタリングを行う。
  • な創部探索を要する他の適応がない活動性出血に対しては、まず選択的血管塞栓術を検討する。「活動性出血=ただちに手術」という旧来の考え方は現行のEAU Urological Trauma Guidelinesでは支持されない。
  • 手術は、血行動態が不安定で蘇生に反応しない場合、または高度な出・区域動脈損傷などが併存する場合に検討する(腎再建術、広範な損傷では腎全摘除術)。
  • 高Grade損傷・穿損傷・発熱、疼痛増悪、低下がある場合は追跡の造影CTを再検討する。

尿管損傷

  • 部分的・損傷には、無効ならを選ぶ。
  • 完全には開腹または再建(、下1/3損傷では膀胱への尿管新、尿管が短い場合の、遠位尿管損傷でのPsoas hitch)を行う。

膀胱損傷

  • :軽症・単純例は太径の留置で保存的に管理する。の関与、骨片の、他の骨盤内損傷の合併があれば手術修復に切り替える。
  • :腹膜炎・敗血症のリスクがあるため常に開腹による手術修復を行う(小さく単純な内視鏡的損傷に限りが許容される場合がある)。
  • 穿膀胱損傷は開腹による探索・修復が原則で、隣接する損傷臓器(腟、直腸)も同時に修復する。

尿道損傷

  • 前部尿道の部分または留置で対応する。に合併する尿道損傷は原則どおり即時修復する。
  • 後部尿道損傷(骨盤骨折関連尿道損傷:PFUI、男性)
    • 急性期はまずまたはで尿路を確保する。
    • 受傷後48時間未満のは行わない。 かつては完全に対する早期の術が推奨されたが、現行ガイドラインではこの積極的アプローチは支持されない。
    • 可能であれば早期のを検討するが、整復に失敗した場合に内視鏡的操作を繰り返し試みることは避ける。
    • 早期整復がしない・実施できない完全は、によるを行い、3か月以上待ってからを行う。
  • 女性の骨盤骨折関連尿道損傷はきわめて稀だが、生じた場合は7日以内の早期修復が最も合併症率が低い。修復や整復術は避ける。

⚠️ 「後部尿道完全→早期に術」という旧来の積極的アプローチは、現行ガイドラインでは推奨されない。急性期は尿路確保にとどめ、根治は早期整復または3か月以上待ったに委ねる。

外陰部外傷

病態 治療
遅延なき緊急手術(部露出・結節縫合)、、最低4〜6週間の性交渉禁止
(動物・ヒト咬傷) 即時の創部探索、大量洗浄、必要に応じ完全切除、破傷風予防。創閉鎖は行わずとして管理
断端をで洗浄しガーゼで包みバッグへ、さらに氷を入れた別バッグで二重に保護して搬送。尿道・海綿体・血管・神経の完全な再吻合を目指す
緊急疾患。絞扼器具の除去、必要な、再建・組織増大術
精巣損傷( 早期の陰嚢切開・探索ほど精巣温存・妊孕性温存の可能性が高まる。の再建、または止血・血管管理を行う。単純な陰嚢・血陰嚢は保存的経過観察でよい
即時かつ徹底的な・ドレナージ・など)、尿路感染波及を避けるための恥骨上ドレナージ検討。感染制圧後にで創閉鎖

まとめ

  • は部位(腎・尿管・膀胱・尿道・)、(鈍的・穿・医原性)、性の3軸で評価し、AAST分類などのの後に位置づけられる補助情報である。
  • 血尿の程度は損傷の重症度と相関しないため、画像検査の適応は・身体所見で判断する。腎は多相造影CT、尿管はCT urography+、膀胱は逆行性300〜350mL充満での、尿道口出血があれば前に、精巣はが中心となる。
  • 腎損傷は血行動態が安定していれば保存的治療が第一選択で、活動性出血にはまず選択的血管塞栓術を検討する。膀胱損傷はが保存的、という原則で分ける。
  • 後部尿道の完全は、旧来の早期術ではなく、急性期の尿路確保(カテーテル)+早期整復または3か月以上待ったへ方針が転換している。女性のPFUIは早期(7日以内)修復が推奨される点で男性と対照的である。
  • 外傷は・切断・絞扼症、精巣損傷、のいずれもが予後(精巣温存、妊孕性、性機能、生命予後)を左右する。