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Disease Atlas · 生殖・産婦人科 · 外傷

陰茎折症

Penile fracture

臓器系
生殖・産婦人科腎・泌尿器
科目
Urology
トピック
泌尿器科学 U-05:尿道・外性器損傷とその早期・晩期合併症
上位概念
泌尿生殖器外傷
合併症
尿道狭窄
症状
疼痛腫脹肉眼的血尿排尿困難勃起障害

🧠 全体像:は「勃起した陰茎のがする」という一点に尽きる外傷であり、性交渉中の急な屈曲がもっとも典型的な機序である。診断は特別な検査を要さず、「ポキッという音・即座の勃起消退・急速な腫脹と」という病歴と身体所見だけでほぼ確定できる。臨床上のは2つ——①を合併していないか、②保存的治療ではなく緊急手術に進めるか——であり、いずれも先送りにするほど不可逆的な(、、)につながる。のうちに分類される代表的な疾患である。

病態:勃起によって初めて成立する外傷

陰茎ののなかでも、は勃起している陰茎にしか起こらないという特徴を持つ。平常時のはが弛緩し外力に対してある程度たわむが、勃起時には海綿体内圧が著明に上昇しが伸展・菲薄化するため、強いが加わるとがに至る1。

flowchart TD
    A["勃起中の陰茎に急な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flexion strength'>屈曲力</span>が加わる<br>(性交渉中が最多)"] --> B["海綿体内圧の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surge'>急上昇</span>により<br>伸展・菲薄化した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tunica albuginea'>白膜</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>部からの急速な出血"]
    C --> D["「ポキッ」という音"]
    C --> E["即座の勃起消退"]
    C --> F["腫脹・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subcutaneous hematoma'>皮下血腫</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eggplant deformity'>茄子様変形</span>)"]
    B --> G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corpus spongiosum'>尿道海綿体</span>・尿道も<br>同時に損傷しているか"}
    G -->|"あり"| H["尿道口出血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gross (macroscopic) hematuria'>肉眼的血尿</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voiding difficulty'>排尿困難</span>"]

⭐ 破裂部位はのどこにでも生じうるが、多くは屈曲の支点となりやすい〜中央部に集中する。両側の海綿体が同時にした症例ではの合併率も上がる2。

臨床像:病歴だけでほぼ診断がつく

⚠️ 「ポキッという音・即座の勃起消退・急速な腫脹と」という病歴が診断的である1。

所見 内容
時の音 「ポキッ」「バキッ」という(本人がはっきり聞き取ることが多い)
勃起の変化 直後に急速な疼痛とともに勃起が消退する
腫脹・血腫 血腫が皮下(が破れていれば陰嚢・恥骨部まで)に広がり、暗紫色に腫大した陰茎=を呈する
陰茎の偏位 血腫のにより、側と反対方向へ陰茎が偏位することが多い

💡 (の外側を包む筋膜)が保たれていれば血腫は陰茎に限局し、破れていれば陰嚢・会陰・まで血腫が及ぶ「」の広がりを示すことがある。

⚠️ 尿道損傷の合併を必ず評価する

では尿道(を含む)の同時損傷を必ず評価する1。見逃すと後述の通りというに直結するため、初診時のスクリーニングを省略しない。

これらのいずれかがあればの合併を疑い、後述のとおり尿道評価(など)を追加する。合併率は報告によって幅があり、例をまとめた総説では5.9〜16.1%2、成書では約20%(まで含めれば最大30%)とされる1。いずれの報告でも、両側例でより高頻度になる。

診断:まず臨床診断、迷えば画像

の診断は病歴と身体所見だけで成立する臨床診断であり、画像検査は必須ではない31。

flowchart TD
    A["「ポキッという音」+即座の勃起消退+<br>腫脹・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eggplant deformity'>茄子様変形</span>の病歴"] --> B{"所見は典型的か"}
    B -->|"典型的"| C["臨床診断で確定、画像検査は不要"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-conventional'>非典型的</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>部位が不明瞭"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>または超音波で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tunica albuginea'>白膜</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='rupture (tear)'>断裂</span>部位を確認"]
    A --> E{"尿道口出血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='gross (macroscopic) hematuria'>肉眼的血尿</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='voiding difficulty'>排尿困難</span>があるか"}
    E -->|"あり"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retrograde urethrography'>逆行性尿道造影</span>で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='urethral injury'>尿道損傷</span>を除外・評価"]
  • 所見が、あるいは部位の特定が手術計画に必要な場合は、が超音波より精度が高い補助検査となる3。
  • が疑われる場合は、前に尿道の評価(など)を行う。

治療:緊急手術が原則

⭐ は緊急手術(の縫合修復)が原則であり、保存的治療は選択されるべきではない。

治療 の の
早期の 6.5〜16.5% 3.2〜8.3%(12時間以内の群)
保存的治療() 45.5〜52.9% 31.0〜35.3%

2

⚠️ 保存的治療は・屈曲変形のが緊急手術に比べて明らかに高く、治療の遅延そのものが長期のにつながる12。手術では血腫を除去したうえで部を露出し、でを縫合修復する。を合併している場合は同時にを行う。

まとめ

  • は勃起した陰茎のであり、性交渉中の急な屈曲が典型的な機序である。
  • 「ポキッという音・即座の勃起消退・急速な腫脹と()」という病歴が診断的で、多くは画像検査なしに臨床診断できる。
  • 尿道口出血・・があればの合併(報告により5.9〜16.1%、成書では約20%)を必ず評価する。
  • 治療は緊急手術(縫合)が原則で、保存的治療は・屈曲変形のが明らかに高い。

出典

  1. 1.Penile Fracture(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)陰茎折症が勃起した陰茎の白膜断裂であり、性交渉中の急な屈曲力による海綿体内圧の急上昇が機序であること、「ポキッ」という音・即座の勃起消退・腫脹と皮下血腫(ナス様変形)・断裂側と反対方向への陰茎偏位という古典的三徴を呈すること、尿道口出血・肉眼的血尿・排尿困難があれば尿道損傷(合併率は概ね2割程度とされる)を評価すべきこと、診断は臨床所見が基本で画像検査は非典型例の補助に用いること、治療の遅延が長期にわたる性機能障害につながることを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Erectile Dysfunction Following Surgical Repair of Penile Fracture: A Literature Review of Incidence, Risk Factors, and Outcomes(Cureus・2025)保存的治療後の勃起障害発生率が45.5〜52.9%、陰茎屈曲変形が31.0〜35.3%に達する一方、早期の緊急手術(白膜縫合)では勃起障害が6.5〜16.5%、屈曲変形が12時間以内の群で3.2〜8.3%にとどまり、48時間を超えると23.8〜25.7%へ上昇すること、尿道損傷合併率が報告間で5.9〜16.1%であり保存的治療群には尿道損傷例が含まれていなかったこと、尿道損傷の合併が勃起障害リスクを大きく高めることを確認した。閲覧 2026-08-19
  3. 3.Current Management of Penile Fracture: An Up-to-Date Systematic Review(Sexual Medicine Reviews・2018)陰茎折症の診断が病歴・身体所見を中心とした臨床診断であり、画像検査(超音波・MRI)は所見が非典型的な場合の補助的位置づけにとどまること、早期外科的修復が標準治療であることを確認した。閲覧 2026-08-19