症状ノート一覧へ

Symptoms · Published

排尿痛

Dysuria

別名
排尿時痛
臓器系
腎・泌尿器感染症
科目
UrologyInternal MedicineDermatology
トピック
泌尿器科学 U-10:排尿時痛と排尿困難泌尿器科学 U-15:膀胱炎と尿道炎内科学 L-39:尿路感染症・無症候性細菌尿皮膚科 2-01:尿道分泌物の診断と管理皮膚科 2-02:腟分泌物の診断と管理
関連疾患
クラミジア性器感染症トリコモナス症骨盤内炎症性疾患産褥敗血症・産褥感染子宮内膜症・子宮腺筋症出血性膀胱炎精巣上体炎・精巣炎前立腺炎前立腺癌単純ヘルペスウイルス感染症尿道狭窄尿道口狭窄尿路感染症淋菌感染症
起因薬
メテナミン

🧠 全体像は「膀胱炎だろう」で終わらせやすい訴えだが、実際には尿道・膀胱・前立腺・腟・外陰のどこが痛んでいるかで原因も治療も別物になる。局在を絞る手がかりは2つ——排尿のどの時点で痛むかと、痛みが尿の通り道の内側か、尿がかかる外側かである。そのうえで、若年では性感染症、高齢者ではの原因と「症状のない細菌尿」の扱いが分かれ目になる。培養陽性はの原因の証明ではない、という一点がこの症状の最大の落とし穴である。

痛むタイミングで局在を絞る

痛むタイミング 示唆する部位 典型的な背景
排尿の開始時・排尿中ずっと 尿道 尿道炎、外尿道口・外陰の病変
排尿の終末時・排尿直後 膀胱、前立腺 膀胱炎、前立腺炎、
排尿とに持続 膀胱、骨盤 、骨盤内病変

⭐ さらに有用なのが内側か外側かの区別である。尿道の中がしみるように痛むのが内因性で、尿がの皮膚・粘膜にかかったときだけ痛むのが外因性。後者は膀胱の病気ではなく、外陰・腟の病変(カンジダ症、、皮膚炎、萎縮)を意味する。「尿が当たると痛い」と言われたら、尿検査よりが先である。

💡 タイミングだけで確定はできないが、初診でどこを診るか(尿道口を見るのか、前立腺を触るのか、外陰を診るのか)を決められる。

感染性の切り分け

膀胱炎 尿道炎 前立腺炎
痛みの質 終末時痛、 排尿中ずっと、尿道の灼熱感 会陰部・の痛み 尿が当たるときだけ痛む
随伴症状 頻尿、血尿 、尿道口の発赤 発熱、尿閉 の変化、
発症 急激(数時間〜1日) 曝露から数日〜数週 急性は急激、慢性は反復 緩徐
決め手 尿検査・尿培養 (淋菌・クラミジア) 前立腺の圧痛、尿培養 ・鏡検・

で必ず取る3点——性交歴とパートナーの症状、や外陰症状の有無、既往の尿路感染とその治療反応。この3点で尿道炎・を膀胱炎から引き剥がせる。

⚠️ 急性前立腺炎を疑ったときに強いを行わない。菌血症を誘発しうる。腫大して圧痛のある前立腺を確認するだけにとどめる。

⚠️ 男性で発熱とが揃えば、膀胱に限局した感染ではない。前立腺・精巣上体・上部尿路を必ず評価する。

年齢と性で狙いが変わる

若年女性・若年男性では性感染症を外さない。 が唯一の症状のこともあり、尿検査が「のみ・培養陰性」なら尿道炎・を強く疑う。分泌物の色や量から病原体は決められないので、で淋菌・クラミジアを調べ、曝露部位(咽頭・直腸)も検体に含める。パートナー治療と再検査まで行って初めて治療が完結する。

⚠️ の初発では、潰瘍の痛みで排尿できなくなる(強いと尿閉)ことがある。で外陰を診なければ診断できない。

高齢者ではの原因の比重が上がる。 閉経後の・尿道炎、放射線治療後の膀胱炎、、そして。抗菌薬を繰り返しても改善しないでは、まず感染以外を疑い直す。

💡 年齢によらず、薬剤と化学的刺激は落としやすい原因である。による乱用による膀胱障害、・石けん・洗浄剤による外陰刺激。培養陰性のでは曝露歴を必ず聞く。

⚠️ 症状のない細菌尿を治療しない

⚠️ 細菌尿・・尿の臭いは、の原因の証明ではない。 症状のない細菌尿を治療しても利益はなく、有害事象・Clostridioides difficile 感染・耐性化を増やす。

治療する 原則として治療しない
妊娠(スクリーニングして治療) 健康な非妊娠女性、閉経後女性
尿路粘膜を損傷する内視鏡的泌尿器処置の前 高齢者、糖尿病、

⚠️ 高齢者でせん妄や転倒だけを根拠に細菌尿を治療しない。局所の尿路症状も発熱も循環不全もなければ、他の原因を探しながら経過を見る。これは「見逃し」ではなく、証拠のある不作為である。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysuria'>排尿痛</span>"] --> B{"発熱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lumbar region (flank)'>側腹部</span>痛・<br>全身状態の悪化があるか"}
    B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='upper urinary tract infection'>上部尿路感染</span>・前立腺炎として<br>培養を採り全身治療へ"]
    B -->|"なし"| D{"尿が外陰に当たるときだけ痛むか"}
    D -->|"はい"| E["外陰・腟を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inspection'>視診</span><br>カンジダ・ヘルペス・萎縮・皮膚炎"]
    D -->|"いいえ"| F["尿検査・必要なら尿培養"]
    F --> G{"性交歴・分泌物・<br>パートナーの症状があるか"}
    G -->|"あり"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='first-void urine'>初尿</span>NAAT:淋菌・クラミジア<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='vaginal discharge'>腟分泌物</span>も評価"]
    G -->|"なし"| I{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyuria'>膿尿</span>・細菌尿があるか"}
    I -->|"あり"| J["膀胱炎として治療<br>妊娠・男性・再発なら培養"]
    I -->|"なし"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-infectious'>非感染性</span>を検討<br>萎縮・結石・腫瘍・薬剤・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bladder pain syndrome'>膀胱痛症候群</span>"]

まとめ

  • は膀胱炎の同義語ではない。尿道・膀胱・前立腺・腟のどこかを、まず局在で絞る。
  • 開始時の痛みは尿道、終末時の痛みは膀胱・前立腺を示唆する。
  • 「尿が当たると痛い」は外陰・腟の病変であり、尿検査よりが先。
  • 性交歴、・外陰症状、既往の治療反応の3点で尿道炎・を引き剥がす。
  • 若年では性感染症を外さない。のみで培養陰性は尿道炎・を示唆する。
  • 高齢者では萎縮、結石、放射線、カテーテル、腫瘍などの比重が上がる。
  • 症状のない細菌尿は治療しない。治療するのは妊娠と、粘膜を損傷する泌尿器処置の前だけ。
  • せん妄や転倒だけを理由に高齢者の細菌尿を治療しない。