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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

クラミジア性器感染症

Chlamydia trachomatis genital infection

別名
Genital chlamydiaNongonococcal urethritis非淋菌性尿道炎
臓器系
感染症生殖・産婦人科
科目
Medical MicrobiologyDermatology
トピック
微生物学 2/36:クラミジア・トラコマチスとクラミジアによる呼吸器感染症皮膚科 2-07-08:クラミジア性子宮頸管炎・尿道炎と合併症皮膚科 2-09:クラミジア陰性非淋菌性尿道炎
鑑別疾患
トリコモナス症女性性器住血吸虫症淋菌感染症
続発疾患
骨盤内炎症性疾患結膜炎
関連疾患
軟性下疳・鼠径リンパ肉芽腫症・鼠径肉芽腫梅毒
治療薬
ドキシサイクリンアジスロマイシンレボフロキサシンアモキシシリンモキシフロキサシン
原因微生物
Chlamydia trachomatis D-KMycoplasma genitalium
症状
スタッカート様咳嗽出血排尿痛分泌物慢性骨盤痛疼痛直腸炎
検査値
核酸増幅検査

🧠 全体像:は先進国で最も報告数の多い細菌性で、無症候が多いため症状の有無では除外できない。Chlamydia trachomatisは典型的な細胞壁を作らないで、βラクタム系が殺菌の主力にならないことが治療薬選択(ドキシサイクリン・マクロライド系)を決める。無治療のまま上行すると男性は、女性は(PID)・・に至る。淋菌陰性の(NGU)ではMycoplasma genitaliumが主要な次点鑑別として重要になる。

病態と血清型

C. trachomatisは(EB、細胞外・感染型)と網様体(RB、細胞内・増殖型)を行き来するを持つである。ペプチドグリカンは増殖中の網様体の分裂面に輪状にわずかにあるだけで、菌体を包む典型的な細胞壁を作らない(かつては「ペプチドグリカンを欠く」とされていた)1。そのためは菌を殺しきれず異常形態の型を誘導しうるので治療の主役にはならず、βラクタム系で使うのは妊娠中の代替薬としてのアモキシシリンに限られる2。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elementary body, EB'>基本小体</span>(EB)<br>細胞外・感染性"] --> B["宿主細胞へ侵入"]
  B --> C["網様体(RB)に変換<br>細胞内・増殖型"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='binary fission'>二分裂</span>で増殖"]
  D --> E["EBとして細胞外へ放出"]
  E --> A
血清型 疾患
A・B・Ba・C (世界的な失明原因の第1位、性感染ではない)
D〜K 本ノートが扱う(尿道炎・)
L1・L2・L3 ():無痛性潰瘍→鼠径リンパ節腫脹→晩期は瘻孔・

臨床像

感染部位 症状 主な合併症
男性尿道 、透明〜の(淋菌のと対照的)。無症候も多い 、
粘、接触出血、性交後・。多くは無症候 、、PID、、、
直腸 無症候または、疼痛、分泌物、出血 では侵襲性・狭窄
新生児 分娩時感染 結膜炎、を伴う無熱性肺炎(結膜炎発症は感染後約1週間、淋菌の2-4日より遅い)
flowchart TD
  A["無症候または局所の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chlamydial infection'>クラミジア感染</span>"] --> B["治療されず持続"]
  B --> C["男性:精巣上体へ上行"]
  B --> D["女性:子宮内膜・卵管へ上行"]
  D --> E["PID"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scarring'>瘢痕化</span>"]
  F --> G["不妊・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ectopic pregnancy'>異所性妊娠</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic pelvic pain'>慢性骨盤痛</span>"]

⚠️ (旧称:):を契機とした免疫反応により、として関節炎(多くは膝)・尿道炎・結膜炎の古典的3徴を呈することがある3。3徴が揃うのは一部で、はのこともある。

診断

  • 男性尿道感染は、女性は腟が最適(女性のも有効)。曝露部位に応じ頸管・直腸・咽頭も提出する。自己採取腟は医療者採取と同等の精度を持つ。
  • PIDを疑う下腹部痛、、子宮・があれば単純として扱わない。

クラミジア陰性NGU

でクラミジア・淋菌がいずれも陰性の症候性NGUでは、Mycoplasma genitalium(NGU・持続再発NGUの主要病原体、が多い)、Trichomonas vaginalis、・を鑑別する。症状だけではの根拠にならず、炎症の確認(塗抹・)と再曝露・服薬状況の再評価が先行する。

治療

状況 推奨レジメン
非妊娠成人・合併症のない感染 ドキシサイクリン100 mgを1日2回、7日間(第一選択)
代替 アジスロマイシン1 g単回(が難しいとき。直腸感染では有効性が劣る)、または500 mgを1日1回、7日間
妊娠中 アジスロマイシン1 g単回(推奨)。代替はアモキシシリン500 mgを1日3回、7日間
Mycoplasma genitalium ドキシサイクリン7日間で菌量を減らした後、マクロライド感受性ならアジスロマイシン高用量、耐性なら400 mg 1日1回7日間

💡 妊娠中はドキシサイクリンを避ける(第2・で歯の着色のおそれ)。アモキシシリンが「代替」にとどまるのは、に曝露したあと菌が型として残ることが動物・で示されているためである。は消化器症状によるが多いため、もう推奨されていない2。

⚠️ M. genitaliumにアジスロマイシン1 g単回を単独で用いない。耐性を選択しを増やす。

PID、、、はそれぞれ異なる複数薬・治療期間を要する。治療後4週未満のは死菌核酸を検出し偽陽性となりうるため、非妊娠で適切に治療された合併症のない感染にルーチンの早期治癒判定は不要である。一方、妊婦は母子への影響が大きいため例外的に、治療完了後4週でによる(TOC)を行う2。

パートナー管理と再検査

  • 直近60日間のを評価し、検査結果を待たず治療する場合がある。
  • 7日間治療の完了まで、または単回治療後7日間経過しパートナー治療も完了するまで性交を避ける。
  • が多いため、治療約3か月後に再検査する。
  • 淋菌、梅毒、を検査する。過去12か月にバクテリア性の既往がある・トランスジェンダー女性では、も選択肢となる(2024年指針)。

まとめ

  • 性器感染は血清型D〜Kが起こし、無症候でもと伝播が続く。
  • 男性は、女性は腟を中心に曝露部位ごとので診断する。
  • 非妊娠成人の第一選択はドキシサイクリン7日間、クラミジア陰性NGUではMycoplasma genitaliumを耐性を意識したで対応する。
  • PID・不妊を防ぐには、パートナー治療と3か月後再検査までする。

出典

  1. 1.A new metabolic cell-wall labelling method reveals peptidoglycan in Chlamydia trachomatis(Nature(Liechti GW, Kuru E, Hall E, et al.)・2014)抄録とPMC全文(PMC3997218)で確認した。C. trachomatis血清型L2(434/Bu株)で、Dアミノ酸ジペプチドの標識プローブにより増殖中の網様体のペプチドグリカンが標識され、分布は網様体を二分する輪状または線状で分裂面に一致した。アンピシリン存在下の腫大した異常形態の網様体でも、標識は本来分裂面ができる赤道部に集まっていた閲覧 2026-09-27
  2. 2.Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021(Centers for Disease Control and Prevention(MMWR Recommendations and Reports)・2021)PMC全文(PMC8344968)の「Chlamydial Infections」の節で、妊婦は母子への影響を踏まえた例外として、治療完了後4週でNAATによる治癒確認検査(test of cure)を行うこと、クラミジア陽性と判定され治療を受けた患者は全員、治療後3か月で再検査(rescreening)することを確認した。2026-09-27に同じPMC全文で追加確認した——成人・青年の推奨はドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間、代替はアジスロマイシン1 g単回またはレボフロキサシン500 mg 1日1回7日間。妊娠中の推奨はアジスロマイシン1 g単回、代替はアモキシシリン500 mg 1日3回7日間で、ペニシリン系曝露後の持続感染が動物・試験管内で示されている懸念から代替の扱いであること、ドキシサイクリンは第2・第3三半期に歯の着色のおそれから禁忌、エリスロマイシンは消化器症状による服薬中断が多く推奨されなくなったこと閲覧 2026-08-04
  3. 3.Reactive Arthritis(StatPearls Publishing(NCBI Bookshelf)・2026)Europe PMC 収載の抄録(PMID 29763006)で確認した。Reiter症候群は、誘因となる感染後の関節炎・尿道炎・結膜炎の3徴を指して歴史的に用いられた呼称である("Reiter syndrome, historically used to describe the triad of arthritis, urethritis, and conjunctivitis after an inciting infection")閲覧 2026-09-27