疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 感染症 · 疾患

軟性下疳・鼠径リンパ肉芽腫症・鼠径肉芽腫

Chancroid, lymphogranuloma venereum, and granuloma inguinale

別名
Donovanosisドノバン症
臓器系
感染症生殖・産婦人科
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 2-10:鼠径リンパ肉芽腫症・鼠径肉芽腫・軟性下疳
鑑別疾患
単純ヘルペスウイルス感染症梅毒
関連疾患
HIV感染症・AIDSクラミジア性器感染症淋菌感染症
治療薬
ドキシサイクリンアジスロマイシンセフトリアキソン
原因微生物
Haemophilus ducreyiChlamydia trachomatis L1–3Klebsiella granulomatis
症状
外陰部潰瘍リンパ節腫脹直腸炎テネスムス

🧠 全体像)、はいずれも性器潰瘍を来す稀なSTIだが、「潰瘍の痛み」「鼠径リンパ節の性状」「の見た目」の3点で読み分ける。いずれも外観だけで確定せず、まず梅毒を除外するところから始める。

3疾患の比較

疾患 病原体 原発病変 リンパ節・進展 診断
Chlamydia trachomatis L1〜L3 一過性の小さな無痛性丘疹・潰瘍で、受診時には消失していることが多い 片側性で疼痛性の鼠径・大腿リンパ節腫脹()。直腸曝露では出血・を伴う侵襲性 病変部位のと臨床像。可能ならLGV特異的遺伝子型検査
Klebsiella granulomatis 無痛性で牛肉様に赤く、性潰瘍 真のリンパ節腫脹は乏しく、皮下腫による 組織・圧挫標本でを確認
Haemophilus ducreyi 強い疼痛、壊死性で汚い底、軟らかく不整な辺縁、 疼痛性・化膿性の鼠径リンパ節炎と 特殊培養または利用可能な検証済みNAAT。梅毒・HSV陰性を確認

病態の流れ

flowchart TD
  A["性器・肛門周囲の潰瘍"] --> B["梅毒血清・病変検査"]
  A --> C["HSV病変NAAT"]
  A --> D["HIV検査"]
  B --> E["無痛性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='small lesion'>小病変</span>後に疼痛性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bubo'>横痃</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proctitis'>直腸炎</span>"]
  E --> F["LGVを推定し治療"]
  B --> G["牛肉様の無痛性易出血潰瘍"]
  G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='donovanosis'>ドノバン症</span>を確認"]
  B --> I["疼痛性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='necrotizing ulcer'>壊死性潰瘍</span>+化膿性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bubo'>横痃</span>"]
  I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chancroid'>軟性下疳</span>を推定"]

⭐ 「潰瘍が痛いか無痛か」「リンパ節が真の腫脹かか」の2軸で3疾患を素早く仕分けられる。は痛い、LGVとは原発病変が無痛という共通点があるため、リンパ節・の性状で最終的に区別する。

治療

疾患 推奨治療
LGV ドキシサイクリン100 mgを1日2回、21日間(治癒率98.5%超)1。妊娠中はドキシサイクリンを避け、アジスロマイシン1 gを週1回、3週間などを用いる1は健常皮膚からまたはを検討
アジスロマイシン1 gを週1回、または500 mgを毎日、少なくとも3週間かつ全病変治癒まで2。妊娠中・HIV陽性者とも同じレジメンを用いる2
アジスロマイシン1 g内服1回、またはセフトリアキソン250 mg筋注1回(のセフトリアキソン500 mgと混同しない)3。代替薬は500 mgを1日3回7日間、または500 mgを1日2回3日間(キノロン系は妊娠・授乳中を避ける)34

⚠️ LGVに似るが、治療遅延で瘻孔・狭窄を残す。血性分泌物、陽性があれば、遺伝子型結果を待たず推定治療する。

パートナー管理

  • HIV、梅毒、淋菌、クラミジアなどを同時に検査する。
  • は発症前10日以内、LGV・は発症前60日以内に遡ってを評価・治療する。LGVの無症状パートナーにはドキシサイクリン100 mgを1日2回7日間投与する41
  • 病変が治癒し本人・パートナーの治療が完了するまで性交を避ける。
  • HIV陽性者・非(包皮を切除していない)男性はの治療反応が乏しく治癒が遅れやすいため、慎重に追跡する4

まとめ

  • LGVは小さな原発病変の後に生じる疼痛性または侵襲性が特徴である。
  • は無痛性牛肉様潰瘍、は疼痛性を形成する。
  • 性器潰瘍では梅毒・HSV・HIV評価を必ず組み込む。
  • LGVはドキシサイクリン21日、は治癒まで長期、は単回治療が基本である。

出典

  1. 1.Chancroid - STI Treatment Guidelines(Centers for Disease Control and Prevention (CDC)・2021)アジスロマイシン・セフトリアキソンが単回投与で治療を完結できる利点を持つこと、性的パートナーは発症前10日以内に遡って評価・治療すること、無包茎男性・HIV陽性者は治療反応が乏しいことを確認した。閲覧 2026-08-03
  2. 2.Chancroid - StatPearls(StatPearls / NCBI Bookshelf・2023)CDC推奨レジメンの具体的な用量(アジスロマイシン1 g単回、セフトリアキソン250 mg筋注単回、代替のエリスロマイシン500 mg 1日3回7日間・シプロフロキサシン500 mg 1日2回3日間)を確認した。淋菌感染症のセフトリアキソン500 mgと混同していないことの裏付けとなる。閲覧 2026-08-03
  3. 3.Granuloma Inguinale (Donovanosis) - STI Treatment Guidelines(Centers for Disease Control and Prevention (CDC)・2021)原因菌の現行学名が*Klebsiella granulomatis*(旧*Calymmatobacterium granulomatis*)であること、推奨治療がアジスロマイシン1 g週1回または500 mg毎日を3週間超かつ全病変治癒まで継続することを確認した。閲覧 2026-08-03
  4. 4.Lymphogranuloma Venereum (LGV) - STI Treatment Guidelines(Centers for Disease Control and Prevention (CDC)・2021)推奨治療がドキシサイクリン100 mg 1日2回21日間(治癒率98.5%超)であること、性的パートナーは発症前60日以内に遡って評価し無症状パートナーにはドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間を投与することを確認した。閲覧 2026-08-03