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Microbe Atlas · 細菌

Klebsiella granulomatis

分類
腸内細菌科 / EnterobacteriaceaeKlebsiella
性状
Gram陰性 (G−)球桿菌 Coccobacilli通性嫌気性 Facultative
科目
Dermatology
トピック
2-10: Lymphogranuloma Venereum, Granuloma Inguinale and Chancroid
原因となる疾患
軟性下疳・鼠径リンパ肉芽腫症・鼠径肉芽腫

🧠 全体像Klebsiella granulomatisは、同じKlebsiella属のKlebsiella pneumoniaeとは対照的な性質を持つ——K. pneumoniaeが院内感染で問題になる多剤耐性の常連であるのに対し、K. granulomatis標準培地では培養できずどころか通常の培養同定自体が成立しない菌である。診断の拠り所は培養ではなく、組織中のDonovan小体(マクロファージ内に深く染まる細胞内小体で、安全ピン状の形態を示す)を顕微鏡で直接確認することにある——)というこの菌が起こすただ1つの疾患は、「培養できない菌の代表例」として記憶する価値がある。

微生物学的な特徴

もとはCalymmatobacterium granulomatisとして独立属に分類されていたが、16S rRNA遺伝子配列の解析によりKlebsiella属に近縁であることが判明し、現在の学名に改められた。

項目 内容
形態・染色性 被膜を持つ
酸素要求性
生息・感染様式 に近く、マクロファージ内で増殖する
培養 標準的な細菌培養培地では発育しない。研究レベルでは株を用いた特殊培養で分離された報告があるのみで、室で行える手技ではない1

⚠️ 同じ属名でも「培養できるKlebsiella」と混同しない。 Klebsiella pneumoniaeで容易に発育し、莢膜の厚さとβラクタマーゼによる耐性の広がりが臨床上の焦点になる腸内細菌科の代表格である。一方K. granulomatisは属としての近縁性がある以外、臨床的な性格は共有しない。

病原性の仕組み

マクロファージ内で増殖し、局所に血管に富んだ性炎症反応を引き起こす。このが、無痛性でありながら容易に出血する「牛肉様」の潰瘍性病変という特徴的な外観を作る。

真の所属リンパ節腫脹はまれで、代わりに皮下組織に腫が形成され、あたかもリンパ節が腫れているかのように見えるを来す——の疼痛性・化膿性の真のリンパ節炎とはこの点で明確に異なる。

感染経路と疫学

  • 性感染症として直接接触で伝播するが、伝染力は比較的低く、発症には反復した曝露を要するとされる
  • 熱帯・亜熱帯地域に地域的な流行がみられ、ニューギニア、南インド、東南アジア、ブラジル、インドネシア、アルゼンチン、カリブ海地域などが典型的な流行地とされる1
  • 先進国ではまれで、米国での報告は年間約100例程度にとどまる1
  • 他の性感染症(梅毒HIV感染症など)との合併がみられ、を介したHIV伝播リスクの上昇が指摘される

起こす疾患

疾患 特徴
無痛性で牛肉様に赤く、性潰瘍が緩徐に進行・拡大する。真のリンパ節腫脹は乏しく、皮下腫によるを来す

未治療のまま進行すると、まれに器や骨など性器外への波及や、二次的な細菌感染を合併しうる。

診断

  • 培養では診断できない。 診断の中心は、病変部の圧挫標本または生検組織のGiemsa染色・によるDonovan小体(マクロファージ内の深染色性の細胞内小体で、安全ピン状の形態を示す)の直接同定である1
  • PCRによるは存在するが広く利用可能ではなく、血清学的検査も個々の症例診断には十分な精度を持たない
  • 梅毒など他の性器潰瘍疾患との鑑別を並行して進める

治療と予防

まとめ

  • Klebsiella granulomatis(旧Calymmatobacterium granulomatis)は)唯一の起因菌で、被膜を持つである。
  • 同属のKlebsiella pneumoniaeと異なり標準培地では培養できず、診断は組織中のDonovan小体の直接同定による。
  • マクロファージ内増殖による血管に富む性炎症が、無痛性・牛肉様・の潰瘍と、真のリンパ節腫脹に乏しいという特徴的な臨床像を作る。
  • 熱帯・亜熱帯地域に地域的な流行があり、先進国ではまれ。他のSTIとの合併・HIV伝播リスク上昇に注意する。
  • 治療はアジスロマイシンを3週間超かつ全病変治癒まで継続する点が、他の性器潰瘍性STIの短期・単回治療と対照的である。

出典

  1. 1.Granuloma Inguinale (Donovanosis) - STI Treatment Guidelines(Centers for Disease Control and Prevention (CDC)・2021)原因菌の現行学名が*Klebsiella granulomatis*(旧*Calymmatobacterium granulomatis*)であること、推奨治療がアジスロマイシン1 g週1回または500 mg毎日を3週間超かつ全病変治癒まで継続することを確認した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.Granuloma Inguinale - StatPearls(StatPearls / NCBI Bookshelf・2023)*K. granulomatis*が標準的な細菌培養培地では発育しない被膜を持つグラム陰性球桿菌であること、診断が組織塗抹標本中のDonovan小体(マクロファージ内の深染色小体で、安全ピン状の形態を示す)の同定によること、流行地域(ニューギニア・南インド・東南アジア・ブラジル・インドネシア・アルゼンチン・カリブ海地域)と米国での年間報告数(約100例)を確認した。閲覧 2026-08-10