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Microbe Atlas · 細菌

Mycoplasma genitalium

分類
細胞壁なし / No cell wallMycoplasma
性状
細胞壁なし No cell wall
科目
Medical Microbiology
トピック
2/37: Mycoplasma and Ureaplasma genus
自然耐性薬
アンピシリンアモキシシリンセフトリアキソンセフォタキシムバンコマイシンメロペネム
原因となる疾患
クラミジア性器感染症骨盤内炎症性疾患卵管卵巣膿瘍

🧠 全体像:M. genitaliumはM. pneumoniaeと同じ「細胞壁を持たない」属の泌尿生殖器版だが、臨床上の最大の論点は病原性そのものよりの急速な拡大にある。培養がほぼ不可能なため長らく見過ごされてきたが、の普及で淋菌・クラミジア陰性のの重要な原因であることが分かってきた菌であり、初回治療の失敗がそのまま耐性拡大に直結するという臨床判断が問われる。

微生物学的な特徴

Mycoplasma属に共通する性質(細胞壁を欠く、コレステロールを膜に組み込む、グラム染色不可)はM. pneumoniaeのノートを参照。本種に固有の特徴は発育が極めて緩徐な点で、標準培地での分離培養は数か月を要し実務的には不可能に近い——このため診断はが実質的な唯一の手段になる。

病原性の仕組み

先端のを介して尿道・頸管上皮に接着し、上皮細胞への侵入・細胞内寄生も可能とされる。慢性・を起こしやすく、無症候性のまま保菌が続くことも多い。

感染経路と疫学

  • として伝播する
  • 淋菌・クラミジアとすることがあり、単独の検査では見逃されやすい
  • は集団によって大きく異なる。した一般集団では開発度の高い国で1.3%、開発度の低い国で3.9%、妊婦0.9%、地域在住の3.2%、地域在住の女性性風俗従事者15.9%と推定されている1
  • 一般集団・妊婦・無症候の受診者でのは低く、これらの層へ検査を広げることは支持されていない1——検査は症状のある尿道炎・や例に絞るという考え方になる。米国の指針も無症候者のスクリーニングと性器外検体の検査を推奨せず、反復性の尿道炎の男性・反復性のの女性に検査を行い、では検査を考慮するとしている2

起こす疾患

疾患 特徴
に次ぐ、あるいは地域によってはそれを上回る頻度の起因体
女性のが多い
により・を起こしうる

診断

  • が実用的な診断法。米国では尿・尿道・・・膣の検体を対象に承認されている2。培養は時間がかかりすぎるため実施しない
  • 耐性検査が可能な施設では、治療前に23S の変異を検査し、これに基づいて薬剤を選ぶ「」が推奨される
  • ⚠️ ただし耐性マーカーの検査はどこでも使えるわけではない。米国では耐性マーカーの検査が商業的に利用できないとされており2、実務では「耐性検査ができない前提」のを組む必要がある

治療

⚠️ が広く拡大しており、単純なアジスロマイシン単回投与はもはや標準治療ではない。 耐性の広がりには地域差が大きい——2018〜21年に採取された検体を統合したでは世界全体のが33.3%(95% CI 27.2〜39.7)、が13.3%、両クラス耐性が6.5%で、西太平洋・米州では緩やかに低下した一方で欧州では上昇していた3。一方、米国はとよく相関する耐性のの保有率を米国・カナダ・西欧・オーストラリアで44〜90%としている2——「世界平均」と「高所得国の性感染症診療の現場」では見える数字が違う点に注意する。

米国の推奨レジメン2:

状況 レジメン
耐性検査が可能・マクロライド感受性 ドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間 → アジスロマイシン1 g単回のあと500 mg 1日1回3日間(計2.5 g)
耐性検査が可能・ ドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間 → 400 mg 1日1回7日間
耐性検査ができない ドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間 → 400 mg 1日1回7日間

💡 どのレジメンもドキシサイクリンから始まるのが要点。 ドキシサイクリンは初期のとして菌量を減らし、続く薬による菌の排除を容易にするために置かれている2——2剤を順に使う形は「効かない薬を足す」のではなく、前段で菌を減らしてから本命を当てる組み方である。このは治癒率90%超を示しており、検査が使えるなら常に優先する2。

⚠️ アジスロマイシン1 g単回が退けられた理由は「効かない」だけではない。 マクロライド感受性の感染をこの用法で治療すると、10〜12%の症例で耐性株集団が選択されてしまう——治療そのものが耐性を作る2。

  • 症状が続く尿道炎・・でM. genitaliumが検出された場合はで治療する2
  • 推奨レジメンで治療した無症候の人には推奨されない2
  • ⚠️ パートナーへの対応は「必須」ではない。症状のある感染者のパートナーは検査し陽性なら治療してよいが、パートナー治療でが減るかを確かめた研究はないとされている2

まとめ

  • 細胞壁を持たないためβラクタム系は無効。培養がほぼ不可能でが診断の中心。
  • 淋菌・クラミジア陰性のの重要な原因菌で、にも関与する。
  • 一般集団のは開発度の高い国で1.3%・低い国で3.9%だが、地域在住の女性性風俗従事者では15.9%と集団差が大きく、無症候者への検査拡大は支持されていない1。
  • が広く拡大しており、(ドキシサイクリン7日間→感受性ならアジスロマイシン計2.5 g、耐性なら7日間)が現行の標準アプローチ2。
  • 耐性率は世界平均で33.3%3、高所得国の性感染症診療では44〜90%2と、どの集団の数字かで大きく変わる。
  • 単純な単回アジスロマイシン投与は耐性選択のリスクがあり、もはや標準治療ではない。

出典

  1. 1.Prevalence of Mycoplasma genitalium in different population groups: systematic review and meta-analysis(Sexually Transmitted Infections・2018)抄録で、無作為抽出された一般集団での統合有病率が開発度の高い国で1.3%(95% CI 1.0〜1.8、3研究9,091人)、開発度の低い国で3.9%(2.2〜6.7、3研究3,809人)であり、男女差がないこと、妊婦0.9%、地域在住の男性同性間性交渉者3.2%、地域在住の女性性風俗従事者15.9%、診療所の無症候受診者0.8%であること、一般集団・妊婦・無症候受診者での有病率の低さは検査対象の拡大を支持しないと結論していることを確認した。全文は未取得で、確認範囲は抄録に限る。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021 — Mycoplasma genitalium(Centers for Disease Control and Prevention (CDC)・2021)米国の推奨が、耐性検査が可能な場合はマクロライド感受性ならドキシサイクリン100 mg 1日2回7日間に続いてアジスロマイシン1 g単回+500 mg 1日1回3日間(計2.5 g)、マクロライド耐性ならドキシサイクリン7日間に続いてモキシフロキサシン400 mg 1日1回7日間であり、耐性検査ができない場合は後者を用いることを確認した。マクロライド耐性の分子マーカーの保有率を「米国・カナダ・西欧・オーストラリアで44〜90%」とし、耐性マーカーの検査は米国では商業的に利用できないと記載していることも確認した。取得はWebFetch経由(素のcurlは403)。ページの最終レビュー日は2021年7月22日で、新版の告知は出ていない。2026-09-28の横断監査でWayback(2026年9月22日保存版)から本文を取り直し、上記を逐語で再確認したうえで、耐性ガイド治療が治癒率90%超を示すこと、マクロライド感受性の感染をアジスロマイシン1 g単回で治療すると10〜12%で耐性株集団が選択されること、培養は最長6か月を要し研究用途に限られること、核酸増幅検査が尿・尿道・外尿道口・子宮頸管・膣検体でFDAクリアされていること、無症候者のスクリーニングと性器外検体の検査は推奨されず反復性尿道炎の男性・反復性頸管炎の女性に検査を行い骨盤内炎症性疾患では考慮すること、持続する尿道炎・頸管炎・骨盤内炎症性疾患でM. genitaliumが検出されたらモキシフロキサシンで治療すること、推奨レジメンで治療した無症候者には治癒確認検査を推奨しないこと、パートナー治療で再感染が減るかを確かめた研究は無いこと、HIV感染者にも同じレジメンを用いることも確認した。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Evolving patterns of macrolide and fluoroquinolone resistance in Mycoplasma genitalium: an updated systematic review and meta-analysis(The Lancet Microbe・2025)抄録で、2018〜21年に採取された検体でのマクロライド耐性の統合有病率が33.3%(95% CI 27.2〜39.7)、フルオロキノロン耐性が13.3%(10.0〜17.0)、両クラス耐性が6.5%(4.0〜9.4)であること、西太平洋・米州ではマクロライド耐性が緩やかに低下(有意ではない)した一方で欧州地域では上昇したこと、フルオロキノロン耐性は西太平洋で最も高いことを確認した。対象はマクロライド耐性157研究41か国22,974検体、フルオロキノロン耐性89研究35か国14,165検体。全文は未取得で、確認範囲は抄録に限る。閲覧 2026-09-27