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Microbe Atlas · 細菌

Mycoplasma hominis

分類
細胞壁なし / No cell wallMycoplasma
性状
細胞壁なし No cell wall
科目
Medical Microbiology
トピック
2/37: Mycoplasma and Ureaplasma genus
自然耐性薬
アンピシリンアモキシシリンセフトリアキソンセフォタキシムバンコマイシンメロペネムエリスロマイシンクラリスロマイシンアジスロマイシン
原因となる疾患
産褥敗血症・産褥感染

🧠 全体像:M. hominisはM. genitaliumと同じ泌尿生殖器のだが、臨床上の位置づけは対照的——女性の一員として低頻度に存在し、局所の防御バリアが破れたとき(分娩・流産・手術・免疫不全)に的に病原性を発揮する。同属でありながら14員環・15員環マクロライドにという薬剤感受性パターンの違いが、他のMycoplasma・Ureaplasma属との重要な鑑別点になる。

微生物学的な特徴

Mycoplasma属に共通する性質(細胞壁を欠く、コレステロールを膜に組み込む、グラム染色不可)はM. pneumoniaeのノートを参照。本種はを分解してエネルギーを得る(尿素を分解するUreaplasmaとは代謝経路が異なる)点が生化学的な鑑別点で、培養は比較的容易(1〜4日)。

感染経路と疫学

  • 健常女性の腟内に低頻度で常在する——保菌そのものは病気ではない
  • 性行為で伝播もするが常在菌としての側面が強く、「検出=発症」ではない
  • 分娩・流産・・婦人科手術など局所の防御バリアが破れる状況を契機に上行・侵襲性感染へ転じる

起こす疾患

疾患 背景
尿道炎 ⚠️ 原因として確立していない。ドイツ学会ほかの2025年の陰茎尿道炎ガイドラインは、M. genitaliumでは複数の疫学研究で尿道炎症状との関連が示されている一方、M. hominisについてはの大多数が関連を見いださなかったとし、Ureaplasma parvumとともに通常は常在菌として扱うべきと評価している1。検出されても尿道炎の原因と決めつけない
・ 分娩後のから発熱。・の原因体の一つ
・術後感染 婦人科手術後の創部・
免疫不全患者の全身感染 臓器移植後(特に)などで菌血症・関節炎・
症候群 免疫不全者・移植後に痙攣・意識障害と著明なを来す症候群。主たる原因として同定されているのは尿素分解能を持つUreaplasma属で、M. hominisは菌または原因の可能性がある菌として報告される位置づけ。報告の多くは後だが、腎移植後・でも起きる2

診断

生殖器由来検体の培養(1〜4日で発育)またはで検出する。血液・・創部滲出液など通常の細菌培養プロトコルでは見逃されやすく、原因不明の術後感染・移植後感染では臨床的に本種を疑って専用の培地・をオーダーする必要がある。

治療

⚠️ 他のMycoplasma・Ureaplasma属と異なり、14員環・15員環マクロライド(・・アジスロマイシン)にを持つ。 機序は能動的な排出による菌体内への取り込み低下と、23S rRNAのG2057A変異によるリボソームへの親和性の著しい低下で、種そのものの性質であってではない3。

💡 「マクロライドが一律に効かない」わけではない。 (ジョサマイシンなど)はの対象ではなく、これに対する耐性はが23S rRNAのA2059G・C2611U変異で別に獲得するものである。2611位の変異はマクロライド・・に及ぶ耐性として報告されており、も「必ず効く」とは言えない3。

  • 薬剤選択の中心はクリンダマイシン——ドイツで20年間に分離された290株でM. hominisに対して最も強い薬剤であり4、フランスで2020〜21年に集めた90株ではクリンダマイシン耐性が0%だった5
  • テトラサイクリン系は1割前後が耐性——フランスの90株で11.1%5、ドイツの集計で約10〜13%4。これはtet(M)遺伝子の獲得による耐性なので、と違い地域と時期で動く
  • も選択肢になる。フランスの90株で耐性・耐性はいずれも2.2%5
  • βラクタム系・は他のMycoplasma属と同様に細胞壁が無いため無効
  • 免疫不全者の症候群では、Ureaplasma属との区別が培養前には付かないため、血清・尿のを提出しつつドキシサイクリンとによるが行われている2

まとめ

  • 女性の一員で、保菌自体は病的意義を持たず、局所バリアの破綻を契機に日和見感染を起こす。
  • 、婦人科術後感染、免疫不全患者(特に後)の全身感染が臨床的に重要。尿道炎の原因としては確立しておらず、現行のガイドラインは通常は常在菌として扱う。
  • 通常の培養プロトコルでは見逃されやすく、原因不明の術後・移植後感染で専用検査を疑う。
  • 14員環・15員環マクロライドに——・・アジスロマイシンは無効で、薬剤選択の中心はクリンダマイシン。テトラサイクリン系は1割前後がtet(M)によるを示す。

出典

  1. 1.German evidence- and consensus-based guideline on the management of penile urethritis(Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft(ドイツ皮膚科学会ほかによる合同ガイドライン)・2025)Europe PMC(PMC11803366)の全文で確認した。尿道炎症状との関連について、Mycoplasma genitaliumは複数の疫学研究で関連が示されている一方、症例対照研究の大多数はUreaplasma parvumとMycoplasma hominisに尿道炎症状との関連を見いださなかったとし、ガイドライングループの評価としてこの2菌種は通常は常在菌として扱うべきで、Ureaplasma urealyticumの意義は症例ごとに判断するとしていることを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Two Cases of Fatal Hyperammonemia Syndrome due to Mycoplasma hominis and Ureaplasma urealyticum in Immunocompromised Patients Outside Lung Transplant Recipients(Open Forum Infectious Diseases・2019)Europe PMC(PMC6405933)の全文で確認した。免疫不全患者の高アンモニア血症症候群が1985年に肝疾患のない急性白血病3例として記述され、のちにUreaplasma属が原因として示されたこと、M. hominisは共感染病原体または原因の可能性がある病原体として報告されてきたこと、報告の多くが肺移植後であることを確認した。本報告の第2例は腎移植後6日目に痙攣で発症し、アンモニア511 µmol/L、血清と尿のPCRがM. hominis陽性で、ドキシサイクリンとレボフロキサシンによる経験的治療が行われた。閲覧 2026-09-27
  3. 3.Mutations in 23S rRNA account for intrinsic resistance to macrolides in Mycoplasma hominis and Mycoplasma fermentans and for acquired resistance to macrolides in M. hominis(Antimicrobial Agents and Chemotherapy・2002)Europe PMCの抄録で確認した(全文は未取得)。自然耐性の対象が14員環・15員環マクロライドであること、機序が能動的な排出による取り込み低下とリボソームへの親和性の著しい低下であり、23S rRNAのG2057A変異(加えてC2610U変異)を伴うこと、16員環マクロライドへの耐性はこれとは別に臨床分離株がA2059G・C2611U変異で獲得しうるものであることを確認した。DOIの著者・題名・誌名はCrossrefで照合した。閲覧 2026-09-27
  4. 4.In-Vitro activities of tetracyclines, macrolides, fluoroquinolones and clindamycin against Mycoplasma hominis and Ureaplasma ssp. isolated in Germany over 20 years(Clinical Microbiology and Infection・2010)Europe PMCの抄録で確認した(全文は未取得)。ドイツで1983年および1989〜2004年に分離されたMycoplasma hominis 290株とUreaplasma 179株の寒天平板希釈法で、クリンダマイシンがM. hominisに対して最も強い薬剤であったこと、テトラサイクリン耐性がM. hominisで約10〜13%、Ureaplasmaで約1〜3%とM. hominisで有意に多かったこと、オフロキサシンが両菌種に95%超の感受性を示したこと、M. hominisのテトラサイクリン耐性とフルオロキノロン耐性が1989〜2004年に上昇したことを確認した。なお抄録が「第一選択」と述べているのはUreaplasma感染症に対するドキシサイクリンであって、M. hominis単独感染の第一選択ではない。⚠️ Europe PMCはこの論文のDOIを10.1111/j.1469-0691.2009.03155.xと記録しているが、Crossrefで解決するのは10.1111/j.1469-0691.2010.03155.x(2010年・16巻1649-1655頁)なので、urlには後者を書いた。閲覧 2026-09-27
  5. 5.Evaluation of commercial, customized microdilution plates for Ureaplasma parvum, Ureaplasma urealyticum, and Mycoplasma hominis antimicrobial susceptibility testing and determination of antimicrobial resistance prevalence in France(Journal of Clinical Microbiology・2024)Europe PMCの抄録で確認した(全文は未取得)。フランスの22の診断検査室が2020年と2021年に各1か月ずつ収集した臨床検体のうち、Mycoplasma hominis 90株のテトラサイクリン耐性が11.1%、レボフロキサシン耐性が2.2%、モキシフロキサシン耐性が2.2%で、クリンダマイシン耐性は認められなかったことを確認した。テトラサイクリン耐性の機序としてtet(M)遺伝子をPCRで検索している。閲覧 2026-09-27