微生物ノート一覧へ

Microbe Atlas · 細菌

Ureaplasma urealyticum

分類
細胞壁なし / No cell wallUreaplasma
性状
細胞壁なし No cell wall
科目
Medical Microbiology
トピック
2/37: Mycoplasma and Ureaplasma genus5/26: Normal flora of the genital tract. Pathogens of sexually transmitted diseases (list)
自然耐性薬
アンピシリンアモキシシリンセフトリアキソンセフォタキシムバンコマイシンメロペネム
原因となる疾患
早産陣痛・早産

🧠 全体像:Ureaplasmaは属名がそのまま病原性理解の鍵を表す菌——ウレアーゼ(urease、)を持つことが属名の由来であり、この酵素依存性が同定・培養条件・そして新生児での病原性の理解すべてに直結する。M. hominisと同じ女性性器の常在菌だが、早産・新生児肺疾患との関連という独自の重みを持つ点が異なる。

微生物学的な特徴

Mycoplasma・Ureaplasma属に共通する性質(細胞壁を欠く、コレステロールを膜に組み込む、グラム染色不可)はMycoplasma pneumoniaeのノートを参照。

  • ウレアーゼ陽性——尿素を加水分解してアンモニアとを産生する。属名Ureaplasma(尿素+原形質)の由来そのもの
  • で培養し、ウレアーゼ活性による培地のpH変化を指標に同定する
  • U. urealyticumとU. parvumの2菌種()がの大半を占め、実務では両者をまとめて扱うことが多い

感染経路と疫学

  • 健常女性の腟内に高頻度(成人女性の約40〜80%)に常在する——保菌そのものは病気ではない
  • 性行為感染に加え、・産道を介したがの主要経路
  • 早産児では出生前から羊水・にしていることがある

起こす疾患

疾患 特徴
(NGU) ⚠️ 意義は症例ごとに判断する。 ドイツ学会ほかの2025年の陰茎尿道炎ガイドラインは、の層別化の仕方によって研究結果が一致しないとし、本菌については高い菌量・若年・性交渉相手の少なさが症候性尿道炎と関連するとしたうえで、意義は症例ごとに評価すべきと位置づけている(U. parvumとM. hominisは通常は常在菌として扱う)1。検出だけでは原因の証明にならない
・・早産 によりへ達し、を介して・早産の一因となる
・した早産児で(BPD)のリスク因子として近年重視される。菌血症・髄膜炎もまれに起こる
腎盂腎炎 まれ

💡 のとUreaplasmaの関連はではない。 子宮内で下気道にした菌体成分が胎児の炎症反応を持続的に刺激し、肺の正常な発達を障害することがBPD発症の一因と考えられている——早産児の原因不明の呼吸窮迫・慢性肺症状ではUreaplasmaのを鑑別に入れる。

診断

生殖器由来検体・新生児のからの培養()またはで検出する。

治療

  • 第一選択:アジスロマイシン(新生児・妊婦でも比較的使いやすい)
  • 代替:ドキシサイクリンなどのテトラサイクリン系。はtet(M)遺伝子の獲得による後天的耐性で、菌種の固有性質ではない——フランスで2020〜21年に集めたではU. urealyticum 68株の11.8%が耐性で、U. parvum 248株の1.2%より有意に高かった(P<0.001)が、同国全体では限定的にとどまる2。地域の耐性率を踏まえて選択する
  • 同じ調査ではは認められなかった一方、耐性がU. urealyticum 2.9%・U. parvum 5.2%にみられ、Ureaplasma属のは2010〜2015年にかけて有意に増加したとして監視が必要とされている2
  • βラクタム系・は他のMycoplasma・Ureaplasma属と同様に細胞壁が無いため無効

まとめ

  • 属名の由来であるウレアーゼを持ち、での培養・pH変化が同定の鍵。
  • 女性性器の常在菌で保菌自体は病的意義を持たないが、で・早産、新生児ではのリスク因子となる。
  • での意義は症例ごとに判断する——検出だけでは原因と決まらない1。
  • 治療の第一選択はアジスロマイシン。は*tet(M)*獲得による後天的耐性で、フランスでは11.8%と限定的だが地域差がある2。
  • M. hominisと異なりマクロライドは有効——両者の薬剤感受性の違いは属内の重要な鑑別点。

出典

  1. 1.German evidence- and consensus-based guideline on the management of penile urethritis(Journal der Deutschen Dermatologischen Gesellschaft(ドイツ皮膚科学会ほかによる合同ガイドライン)・2025)Europe PMC(PMC11803366)の全文で確認した。Ureaplasma urealyticumについては交絡因子の層別化の仕方によって研究結果が一致せず、高い菌量・若年・性交渉相手の少なさが症候性尿道炎と関連するとし、ガイドライングループの評価として意義は症例ごとに判断するとしている。一方Ureaplasma parvumとMycoplasma hominisは症例対照研究の大多数が尿道炎症状との関連を見いださなかったため通常は常在菌として扱うべきとし、Mycoplasma genitaliumだけは複数の疫学研究で関連が示されているとする。尿道での検出と尿道炎の因果は確立していないと明記している。閲覧 2026-09-28
  2. 2.Evaluation of commercial, customized microdilution plates for Ureaplasma parvum, Ureaplasma urealyticum, and Mycoplasma hominis antimicrobial susceptibility testing and determination of antimicrobial resistance prevalence in France(Journal of Clinical Microbiology・2024)Europe PMCの抄録で確認した(全文は未取得)。フランスの22の診断検査室が2020年と2021年に各1か月ずつ収集した臨床検体で、Ureaplasma urealyticum 68株のテトラサイクリン耐性が11.8%、Ureaplasma parvum 248株では1.2%でその差は有意(P<0.001)だった。レボフロキサシン・モキシフロキサシン耐性はU. urealyticumで2.9%・1.5%、U. parvumで5.2%・0.8%、Mycoplasma hominis 90株ではテトラサイクリン11.1%・レボフロキサシン2.2%・モキシフロキサシン2.2%でクリンダマイシン耐性は0%だった。マクロライド耐性は認められず、テトラサイクリンとフルオロキノロンの耐性はフランスでは限定的にとどまると結論しているが、Ureaplasma属のレボフロキサシン・モキシフロキサシン耐性は2010〜2015年にかけて有意に増加しており監視を要するとしている。閲覧 2026-09-28