薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · A13 Antigout drugs / 痛風治療薬

プロベネシド

probenecid

分類
Antigout drugs / 痛風治療薬
商品名(日本)
ベネシッド
科目
PharmacologyPathologyInternal Medicine
トピック
Core30: Pharmacokinetic drug interactions - at the level of eliminationCore17: Excretion of drugsCore51: Drug-induced adverse reaction: sulfonamide allergy and its characterization病理学 C/94:変性性・炎症性関節疾患内科学 S-17:痛風内科学 R-06:痛風
承認適応
痛風
禁忌疾患
尿路結石症慢性腎臓病
副作用
頭痛悪心皮疹腎仙痛
監視検査値
尿酸クレアチニン
相互作用
アセチルサリチル酸シドフォビルパラアミノサリチル酸ペニシリンGメトトレキサート
原因となる疾患
ネフローゼ症候群再生不良性貧血

🧠 全体像は、するという単一の機序から、正反対に見える二つの薬効を発揮する薬である。管腔側のURAT1を阻害すれば尿酸の再吸収が減りが増える(としての顔)。血管側のOAT1・OAT3を阻害すればペニシリンやメトトレキサートなど性薬物のが遅れ、血中濃度・が延びる(薬物相互作用の古典例としての顔)。第二次大戦期には希少なペニシリンを「節約」する目的でに併用され、現在もの腎毒性軽減など同じ機序が転用される。風のとしては、に次ぐ代替という位置づけにとどまる。

薬効群の中での位置づけ

は「産生を止める」「分解を進める」「排泄を促す」「炎症だけを抑える」の4系統に分かれ、は排泄促進側に属する数少ないである。

分類 代表薬 機序 位置づけ
産生抑制(XO阻害) →尿酸の酸化を阻害 第一選択。CKD例にも使える
産生抑制(XO阻害) 同様の酸化を構造非依存的に強力に阻害 不耐・無効時の代替
排泄促進( のURAT1を阻害しを抑制 腎機能正常でXO阻害薬が使えない場合の代替。1日複数回投与で、腎機能低下・既往には不向き
分解促進( 尿酸を酸化しへ分解 など急速な低下が必要な場面限定
抗炎症(急性発作) ・NSAIDs 尿酸値を変えず炎症のみ抑制 の開始・増量時のにも併用

ACR2020・EULARともXO阻害薬を第一選択として強く推奨し、は「腎機能が保たれXO阻害薬が使えない・効かない」場合の代替にとどまる12

機序

の管腔側と血管側で、同じ阻害作用が逆方向の結果を生むしくみを整理する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='probenecid'>プロベネシド</span>を内服"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proximal tubule'>近位尿細管</span>上皮細胞に到達"]
    B --> C["管腔側:URAT1<br>(尿酸を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular lumen'>尿細管腔</span>から細胞内へ再吸収する輸送体)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='probenecid'>プロベネシド</span>がURAT1を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive inhibition'>競合阻害</span>"]
    D --> E["尿酸の再吸収が減少"]
    E --> F["尿中への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='uric acid excretion'>尿酸排泄</span>が増加<br>(尿酸降下作用)"]
    B --> G["血管側:OAT1・OAT3<br>(血液中の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='weak acid'>弱酸</span>性薬物を細胞内へ取り込む輸送体)"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='probenecid'>プロベネシド</span>がOAT1・OAT3を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='competitive inhibition'>競合阻害</span>"]
    H --> I["ペニシリン・セファロスポリン・<br>メトトレキサート・NSAIDsなどの取り込みが減少"]
    I --> J["⚠️ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubular secretion'>尿細管分泌</span>が遅れ、血中濃度・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='duration'>作用時間</span>が延長"]

💡 「同じする」という一つの化学的性質が、方向の違う二つの結果を生む。 尿酸は普段URAT1によって管腔側で積極的に再吸収される物質なので、そこを阻害すれば体外へ「捨てられる」。一方ペニシリンなどは普段OAT1・OAT3によって血管側から積極的に「分泌される」物質なので、そこを阻害すれば体内に「留め置かれる」。その物質が生理的にどちら向きに運ばれているかで、同じ阻害の結果が逆になる。

薬物動態

項目 値・特徴
吸収 経口で速やかかつほぼ完全に吸収される
蛋白結合 高い(主にアルブミンに約75〜95%結合)。域では大部分が結合型でを免れる
代謝 主に肝でとアルキル側鎖の酸化を受ける(芳香環自体は酸化されない)
排泄 代謝物として尿中へ排泄される。未変化体の排泄はわずかで尿pHに依存する
半減期 (健常成人で0.5 g投与時は約4時間、2 g投与時は約8.5時間)

適応

領域 使いどころ
XO阻害薬が使えない・効果不十分で、腎機能が保たれの既往がない例の代替32
抗菌薬の血中濃度維持 などを遅らせ、延長や高い血中濃度の維持に利用する。第二次大戦期のペニシリン節約が起源3
腎毒性の軽減 OAT1を介した細胞内への取り込みを妨げ、とあわせてに併用する

用法・用量

痛風のでは低用量から開始し、血清尿酸値を確認しながら漸増する。1日複数回のが必要な点は、1日1回で足りるに比べた実務上の弱点になる。開始時から大量飲水とナトリウムやクエン酸カリウムなど)を並行し、の形成を防ぐ。 実際の用量は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤への過敏症、2歳未満の小児、既知の血液異常症の既往
  • ⚠️ (特に)の既往や高度腎機能低下(目安としてGFR 30 mL/分以下)では効果不十分・不向き。 尿中尿酸の増加がかえって新たな結石形成のリスクになる。日本の添付文書もEULARも同じ目安を挙げている32
  • ⚠️ 添付文書上は急性発作中の新規開始を避け、発作消退後に開始するとされる。 ACR2020は薬剤を問わずの開始を発作中でも条件付きで許容する方針だが、を対象とした発作中開始のデータは乏しく、この保守的な記載が実務上引き継がれている
  • ⚠️ 低用量・高用量を問わず)は促進効果を減弱させる。 添付文書上も併用は避け、鎮痛が必要な場合はを優先する
  • メトトレキサートなど腎の能動的分泌に依存する薬物は、血中濃度上昇・作用延長・毒性増強に注意する
  • 化学構造上を持つが、抗菌薬とのは低いと考えられている

副作用

頻度 内容
高頻度 頭痛悪心、投与開始時の誘発
注意 皮疹・蕁麻疹などの過敏症、
重篤・まれ アナフィラキシー、、肝壊死、

まとめ

  • の管腔側でURAT1を阻害してを抑え、を増やす
  • 同時に血管側のOAT1・OAT3を阻害し、ペニシリン・セファロスポリン・メトトレキサート・NSAIDsなど性薬物の分泌を遅らせる、一つの機序が二つの顔を持つ薬。
  • ACR2020・EULARともXO阻害薬()を第一選択とし、は腎機能正常でXO阻害薬が使えない場合の代替にとどまる。
  • の既往や高度腎機能低下(目安GFR 30 mL/分以下)では効果不十分・不向き。
  • 添付文書上は急性発作中の新規開始を避けるとされ、開始時は大量飲水とを行う。
  • でも促進効果は減弱するため併用を避ける。
  • 歴史的にはペニシリンの節約に、現在は腎毒性の軽減などにOATに利用する場面がある。

出典

  1. 1.ベネシッド錠250mg 添付文書(科研製薬株式会社(PMDA掲載の添付文書)・2023)効能・効果が「痛風」および「ペニシリン、パラアミノサリチル酸の血中濃度維持」であること、禁忌に腎臓結石症・高度の腎障害・血液障害・2歳未満の乳幼児が含まれること、糸球体濾過値30mL/分以下の慢性腎不全患者には本剤が無効とされていること閲覧 2026-08-04
  2. 2.2016 updated EULAR evidence-based recommendations for the management of gout(European League Against Rheumatism (EULAR)・2016)腎機能正常例ではアロプリノールを第一選択とし、目標未達時はフェブキソスタットまたはuricosuric(プロベネシド・ベンズブロマロン)へ変更・併用するという位置づけであること、推定糸球体濾過量30 mL/分未満の患者ではuricosuricへの変更を避けるとする推奨があること閲覧 2026-08-04
  3. 3.ACR Releases Gout Management Guideline With Emphasis on Treat-to-Target Strategy for Urate-Lowering Therapy(American College of Rheumatology・2020)尿酸降下療法が必要な全ての痛風患者でアロプリノールを第一選択とすることを強く推奨(CKD患者を含む)していること、血清尿酸6 mg/dL未満を目標とするtreat-to-target戦略を強く推奨していること閲覧 2026-08-04