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Drug Atlas · C2 Antimycobacterials / 抗結核薬 · 必修

パラアミノサリチル酸

para-aminosalicylic acid

分類
Antimycobacterials / 抗結核薬
商品名(日本)
ニッパスカルシウム
商品名(EU)
Paser
科目
Pharmacology
トピック
C2: Antimycobacterial drugs
承認適応
結核
標的微生物
Mycobacterium tuberculosis
副作用
食欲不振悪心嘔吐下痢黄疸
影響検査値
TSHアミノトランスフェラーゼ
相互作用
プロベネシド

🧠 全体像は、1940年代にとほぼ同時期に登場した最初期のの一つでありながら、今日ではもっぱらの後方選択肢として生き残っている薬である。1日10g超という大量のを要し、消化器症状の頻度が高くに劣るため、より有効で飲みやすい薬(リネゾリドなど)が使える限り優先されない——WHOの結核治療指針でも「他の優先度の高い薬が使えない場合に限って」組み込まれるGroup C(最後方列)の薬に位置づけられている。もう一つの顔は、の適応にも名を連ねるの被競合薬という側面で、と併用すると排泄が遅れ血中濃度・が延びる——歴史的にはこの性質を逆手にとって、貴重だったPASの節約に使われたこともある。

薬効群の中での位置づけ

を「」「第二選択・用」で整理すると、PASは後者の中でもさらに優先度が低い層に位置づけられる。

分類 代表薬 WHOのグループ分け 特徴
第一選択(薬剤感受性結核) リファンピシン RIPEの標準治療
MDR/の優先薬 リネゾリド Group A の中核
MDR/の追加薬 サイクロセリン Group B Group Aに追加して組み立てる
MDR/の後方選択肢 //プロPAS Group C Group A・Bの薬が使えない、またはより良い組み合わせが組めない場合に限り採用1

PASはGroup Cの中でも代表的な「最後の一手」の薬である。 大量投与・消化器の低さ・1日複数回投与という実務上の負担が大きく、・リネゾリドなど新しいが使える限りレジメンには組み込まれない。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='para-aminosalicylic acid (PAS)'>パラアミノサリチル酸</span>を投与"] --> B["構造が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='para-aminobenzoic acid, PABA'>PABA</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='para-aminobenzoic acid (PABA)'>パラアミノ安息香酸</span>)に類似"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mycobacterium tuberculosis'>結核菌</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='folate synthesis pathway'>葉酸合成経路</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='para-aminobenzoic acid, PABA'>PABA</span>と競合"]
    C --> D["ジヒドロプテロイン酸合成が阻害される"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='folate synthesis'>葉酸合成</span>が障害される"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nucleic acid synthesis'>核酸合成</span>に必要な葉酸が不足"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacteriostatic'>静菌的</span>に増殖を抑制"]
    A --> H["ミコバクチン(鉄輸送に関わる菌体成分)の<br>合成阻害への関与も想定されている"]
    H --> G

💡 という機序はと共通する発想だが、標的菌種がに限られる点が異なる。 競合という古典的な説明に加え、ミコバクチン(が鉄を取り込むために使う成分)の合成阻害説も提唱されており、正確な機序は完全には確立していない2。単剤ではな効果にとどまるため、必ず他のと併用する

適応

日本の添付文書上の適応は「肺結核及びその他の結核症」(PAS感性のが対象)である3。ただし今日の臨床的な主な出番は、でGroup A・Bの薬が使えない、またはより良いレジメンが組めない場合に限られたGroup Cとしての追加薬である1。単独で用いることはなく、必ず他のする2

の適応にも登場する「腎を受ける薬」の代表格である。 のOAT1・OAT3を阻害してPASのを遅らせ、血中濃度・を延ばす。第二次大戦期にPASやペニシリンが貴重だった頃、この性質を利用して薬剤の「節約」が図られた歴史があり、の添付文書に今も残る適応の一つになっている。

用法・用量

日本:通常成人にはカルシウムとして1日10〜15gを2〜3回に分割する(年齢・症状により適宜増減)3:成人は1回4g(1包)を1日3回、酸性の食品・飲料に混ぜて服用し、1日総量は12gになる2。いずれも1日量が10gを超える大量投与になる点が、他のと比べた実務上の負担になる。冷所保存が必要な製剤があり、必ず他のと併用する。実際の用量・投与方法は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤への過敏症の既往。製剤(ニッパスカルシウムなど)ではの患者にも禁忌(カルシウム負荷により病態を悪化させるため)3
  • ⚠️ 投与開始後3か月間は慎重に観察し、発疹・発熱など不耐の初期徴候が現れた時点で直ちに中止する。2 薬剤性肝炎の頻度0.5%(7492例中38例)は急速吸収型の旧製剤での後ろ向き研究の数字であり、にそのまま当てはまる値ではない点に注意する2
  • ⚠️ 甲状腺機能への影響。 よく引用される「甲状腺ホルモン合成を約40%抑制」という数字は、1954年の研究で、PASERの顆粒剤ではなくナトリウム塩を投与の1時間前に与えたという限定的な条件下のもので、しかも低下したのは合成のみでヨウ素取り込みは低下していない——PAS一般の性質としてこの数字を持ち出さない2。添付文書が実務的に述べているのは、時折生じる甲状腺腫は投与で予防できるがでは予防できない、という点である2
  • ⚠️ 臨床的に重要なのは併用時の症である。 患者30研究・6241例ので治療中の症の統合は17.0%(95% CI 13.0–20.0)に達し、関連薬として最も多く報告されたのがとPASだった4プロと併用するレジメンではを定期的にモニタリングする
  • 併用でPASのが遅れ、血中濃度・が延長しうる
  • 消化器が低いため、率()を下げる主因になりやすい。酸性の食品・飲料と混ぜて服用するなど工夫が必要
  • は無い——にも日本の添付文書(ニッパスカルシウム)にもに相当するセクションは存在しない23

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心嘔吐下痢・腹痛などの消化器症状2
注意 (TSH上昇)。治療中の症の統合は17.0%で、エとPASが最も多く関連薬として報告された4。時折の甲状腺腫はで予防可能2
重篤・まれ 薬剤性肝炎・黄疸(急速吸収型旧製剤の後ろ向き研究で0.5%)、、溶血性貧血、過敏症状(発疹・発熱)23

まとめ

  • は1940年代からの最初期ので、と競合してを阻害する薬剤(ミコバクチン合成阻害説もある)。単剤では使わず必ずする。
  • 今日の臨床的な位置づけはのGroup C=後方選択肢・リネゾリドなど優先度の高い薬が使えない場合に限って組み込まれる1
  • 用量は1日10g超と大量で(日本10〜15g/日、米国12g/日)、消化器の低さがの主な障壁になる。
  • でのPAS分泌を遅らせ血中濃度を延長させる——の適応欄に今も残る歴史的な組み合わせ。
  • 発疹・発熱など不耐の初期徴候では直ちに中止する(特に開始後3か月間)。薬剤性肝炎0.5%は急速吸収型旧製剤の数字である点に注意2
  • ⚠️ 症は治療中の17.0%に及び、エとPASが最多の関連薬——「約40%抑制」という古い数字(1954年・ナトリウム塩・前投与という限定条件)ではなく、この併用時のリスクの方を覚える4
  • 日本の製剤(ニッパスカルシウム)ではが禁忌になる点は、他のにはない特有の注意点。

出典

  1. 1.PASER (aminosalicylic acid) delayed-release granules — Prescribing Information(Jacobus Pharmaceutical Company, Inc. / DailyMed (U.S. FDA)・2022)多剤耐性結核(MDR-TB)を中心に他の抗結核薬と併用して用いること、成人用量が1回4g(1包)を1日3回(1日12g)であること、機序として葉酸合成阻害・ミコバクチン(mycobactin)合成阻害による鉄取り込み低下の関与が想定されていること、ストレプトマイシン・イソニアジドへの耐性出現を遅らせる作用があること、消化器症状(悪心・嘔吐・下痢・腹痛)が高頻度に生じること、**急速吸収型製剤**を投与された7492例の後ろ向き研究で薬剤性肝炎が38例(0.5%)に生じたこと、**1954年の研究で、PASERの顆粒剤ではなくナトリウム塩を放射性ヨウ素投与の1時間前に与えた条件で**チロキシン合成のみが約40%低下しヨウ素取り込みは低下しなかったと報告されていること、時折生じる甲状腺腫はチロキシン投与で予防できるがヨウ化物では予防できないこと、投与開始後3か月間は慎重に観察し発疹・発熱等の不耐徴候が最初に現れた時点で直ちに中止すべきとされていること、枠組み警告に相当するセクションが存在しないことを確認した。**エチオナミド併用・HIV合併での甲状腺機能低下症の頻度上昇についてはこの添付文書に記載が無い**ことも確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Is hypothyroidism rare in multidrug resistance tuberculosis patients on treatment? A systematic review and meta-analysis(PLoS One(Tola HH, et al.)・2019)30研究・6241例のMDR-TB患者を統合した解析で、治療中の甲状腺機能低下症の統合有病率が17.0%(95% CI 13.0–20.0)であったこと、その発生に関連する薬剤として最も多く報告されたのがエチオナミドとパラアミノサリチル酸(PAS)であったことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 4: Treatment — drug-resistant tuberculosis treatment, 2022 update (supplementary table)(World Health Organization・2022)多剤耐性・リファンピシン耐性結核(MDR/RR-TB)の治療薬の再分類(Group A・B・C)において、パラアミノサリチル酸がGroup C(エタンブトール・デラマニド・ピラジナミド・カルバペネム系・アミカシン/ストレプトマイシン・エチオナミド/プロチオナミドと並ぶ、優先度の低い後方選択肢群)に位置づけられていることを確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.ニッパスカルシウム顆粒100% 添付文書(田辺ファーマ株式会社 / KEGG MEDICUS(日本医薬情報センター添付文書データ)・2025)日本での効能・効果が「肺結核及びその他の結核症」(パラアミノサリチル酸に感性の結核菌が対象)であること、用法・用量が通常成人1日10〜15gを2〜3回に分割経口投与であること、禁忌が高カルシウム血症の患者(カルシウム塩のため)であること、重大な副作用に無顆粒球症・溶血性貧血・肝炎・黄疸が挙げられること、警告に相当するセクションが存在しないことを確認した閲覧 2026-08-10