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Drug Atlas · C2 Antimycobacterials / 抗結核薬 · 必修

エチオナミド

ethionamide

分類
Antimycobacterials / 抗結核薬
商品名(日本)
ツベルミン
商品名(EU)
Trecator
科目
Pharmacology
トピック
C2: Antimycobacterial drugs
禁忌疾患
急性肝不全
標的微生物
Mycobacterium tuberculosis
副作用
悪心嘔吐食欲不振黄疸女性化乳房
影響検査値
TSHアミノトランスフェラーゼ
相互作用
サイクロセリン
対象疾患
結核

🧠 全体像:エを理解する軸は「と標的は同じだが、活性化の入口が違う」という一点に尽きる。両薬ともとして取り込まれ、最終的にはInhA(enoyl-ACP reductase)を阻害して合成を止めるという同じ標的にたどり着くが、のKatG酵素で活性化されるのに対し、エは別の酵素(EthAに相当する経路)で活性化される。この「標的は同じ、入口は別」という構造が、片方に耐性化しても大多数は他方に感性を保つという臨床的に重要な事実を生む——ただし完全にではなく、標的そのもの(InhA)に変異が入った場合は両方に影響しうるため、限られたデータではの存在も示唆されている。もう一つの理解軸は性の低さで、約半数の患者が1 gの単回投与に耐えられないほど消化器症状が強く、WHOの治療指針でも優先度の低いGroup C(後方選択肢)に位置づけられている。

薬効群の中での位置づけ

を「」「第二選択・用」で整理すると、エは後者の中でも優先度が低い層に位置づけられる。

分類 代表薬 WHOのグループ分け 特徴
第一選択(薬剤感受性結核) リファンピシン RIPEの標準治療
MDR/の優先薬 またはリネゾリド Group A の中核。原則3剤すべてを組み込む1
MDR/の追加薬 サイクロセリン(またはテリジドン) Group B Group Aに追加して組み立てる
MDR/の後方選択肢 (または)・プロPAS Group C Group A・Bの薬が使えない、またはより良い組み合わせが組めない場合に限り採用1

とプロは同じ系薬剤で、・活性化の仕組みがほぼ共通する。 WHOのGroup C分類でも「エ/プロ」と一括りに並べられており、片方に耐性を獲得した株はもう一方にも通常無効と考えられる。両剤の違いはプロのノートで扱う。

機序

flowchart TD
    A["エ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thionamide (antithyroid drugs)'>チオナミド</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodrugs'>プロドラッグ</span>)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Mycobacterium tuberculosis'>結核菌</span>がKatGとは別の酵素経路で活性化"]
    B --> C["反応性の高い代謝物を生成"]
    C --> D["InhA(enoyl-ACP reductase)を阻害"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mycolic acid'>ミコール酸</span>合成が止まる"]
    E --> F["細胞壁が作れず増殖を抑制"]

💡 との関係は「同じ標的・別の入口」という一言に集約できる。 両薬とも最終的にInhAを阻害して合成を止める点は共通するが、活性化するミコバクテリア側の酵素が異なるため両者のは乏しいとされる2。実際、多剤耐性株ではとエ双方に耐性を獲得した株もあるものの、一方に耐性を示す株の大多数はもう一方には感性を示す3。ただし完全に独立ではなく、限られたデータではおよびチオセミカルバゾン系(チアセタゾン)とのの存在も示唆されている3——共通標的であるInhA側の変異がこれを説明すると一般に考えられているが、上記2つの出典はその機序までは述べていない。PAS・・サイクロセリンとのを示す証拠は無い3

薬物動態

項目 値・特徴
吸収 経口でほぼ完全に吸収され、食事の影響は実質的に受けない
半減期 約1.92時間(健常成人40例、250 mg単回投与)3
排泄 未変化体としてのは1%未満(大部分は代謝を受ける)

適応

でGroup A・Bの薬が使えない、またはより良いレジメンが組めない場合に限られたGroup Cとしての追加薬である1。単剤投与では急速に耐性化するため、感受性が確認された、または強く疑われる他の少なくとも1剤、多くは2剤と必ず併用する3

用法・用量

成人は15〜20 mg/kg/日を1日1回、消化器が低い場合はとし、最大1 g/日とする。250 mg/日から開始し漸増するのが標準的な導入法である3(ビタミンB6)の併用が推奨される。 実際の用量・期間は年齢・体重・腎機能で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:重度など)、本剤への過敏症3
  • ⚠️ 肝障害のモニタリングが必須。 治療開始前と毎月、血清(SGOT・SGPT)を測定する。上昇時は他のとともに一時中止し、原因薬剤を同定するため順次再開して確認する3
  • ⚠️ 症に注意。 定期的なが推奨される(甲状腺腫の有無を問わず報告あり)3。特にPASとの併用では頻度が上がり、患者6241例ので治療中の症の統合は17.0%(95% CI 13.0–20.0)に達し、関連薬として最も多く報告されたのがエとPASだった4
  • ⚠️ サイクロセリンとの併用で痙攣が報告されている。 両剤を含むレジメンでは特別な注意を要する3
  • 末梢に注意。 の予防的併用が推奨され、治療前・治療中に定期的な眼科検査(を含む)を行う3
  • の血中濃度を一過性に上昇させる3
  • ⚠️ 妊娠中は原則として避ける。 正式な禁忌欄には無いが、ウサギ・で催奇形性が示されており、米国添付文書は妊婦・妊娠する可能性のある女性には治療上不可欠と判断される場合を除き投与を控えるよう求めている——プロでは妊娠・授乳が明示的な禁忌であり、両剤で記載の強さが異なる点に注意する3
  • 過度の飲酒は精神症状(精神病様反応)の報告があるため避ける3
  • 消化器が低く、約50%の患者が1 gの単回投与に耐えられない——率()を下げる主因になりやすい3
  • は無い——米国添付文書にに相当するセクションは存在しない3

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心嘔吐・下痢・腹痛・などの消化器症状3
注意 (PAS併用でさらに頻度上昇)、、低血糖、精神症状(抑うつを含む)
重篤・まれ 肝炎(黄疸を伴う場合あり)、末梢)、痙攣(サイクロセリン併用時)、ペラグラ様症候群3

まとめ

  • と同じくとして活性化された後、InhA(enoyl-ACP reductase)を阻害して合成を止める2
  • とは「標的は同じ、活性化酵素は別」の関係。 片方に耐性化しても大多数はもう一方に感性を保つが、InhA自体の変異では両薬に影響しうるため限られたのデータがある3
  • は無い。 禁忌は重度と過敏症の2つのみ3
  • 消化器が低く、約50%が1 gの単回投与に耐えられないほどで、WHO Group C(後方選択肢)に位置づけられる31
  • 症・肝障害・末梢/が代表的な注意点で、定期モニタリング(甲状腺機能・肝機能・眼科検査)と併用が重要。PASとの併用では症の頻度がさらに上がる4
  • 同じ系のプロとは標的・がほぼ共通し、通常は相互にを示す。

出典

  1. 1.Trecator (ethionamide tablets, USP) — Full Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration・2016)枠組み警告に相当する記載が無いこと、禁忌が重度肝機能障害と本剤への過敏症の2つであること、用法・用量(成人15〜20 mg/kg/日を1日1回または忍容性が低ければ分割投与、最大1 g/日、250 mg/日から漸増開始)、単剤投与では急速に耐性化するため必ず他の抗結核薬(リファンピシン・エタンブトール・ピラジナミド・サイクロセリン・カナマイシン・ストレプトマイシン・イソニアジド等)と併用すること、健常成人40例における250 mg単回投与後の平均半減期が1.92時間であったこと、消化器有害事象は用量依存性で約50%の患者が1 gの単回投与に耐えられないこと、重大な副作用として肝炎(黄疸を伴う場合あり)・末梢神経炎・視神経炎・精神症状(うつ状態を含む精神病様症状)が報告されておりピリドキシン併用が神経毒性の予防・軽減に推奨されること、定期的な甲状腺機能検査が推奨されること(甲状腺腫の有無を問わず甲状腺機能低下症の報告があるため)、サイクロセリンとの併用で痙攣が報告されており併用時は特別な注意を要すること、イソニアジドの血中濃度を一過性に上昇させること、多剤耐性結核ではイソニアジドとエチオナミド双方に耐性を獲得した株もあるが、一方に耐性を示す株の大多数はもう一方に感性を示すこと、一方でチオセミカルバゾン系(チアセタゾン)およびイソニアジドとの間には交差耐性が存在しうるとする限られたデータがあること、PAS・ストレプトマイシン・サイクロセリンとの交差耐性を示す証拠は無いことを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Ethionamide — LiverTox: Clinical and Research Information on Drug-Induced Liver Injury(National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases (NIH)・2020)エチオナミドがイソニアジドと同様にプロドラッグであり、活性化を受けて初めてミコバクテリアの脂肪酸合成酵素(enoyl-ACP reductase=InhA)を阻害し細胞壁合成を止めるという機序であること、肝障害が最大5%程度に生じ無症候性のトランスアミナーゼ上昇が多い一方症候性の急性肝障害は比較的まれであること、エチオナミドとイソニアジドは活性化酵素が異なる(別の酵素で活性化される)ため両者の間の交差耐性は乏しいとされていること、エチオナミドによる肝障害の既往があってもその後イソニアジドは問題なく忍容できた例があることを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.WHO consolidated guidelines on tuberculosis. Module 4: Treatment — drug-resistant tuberculosis treatment, 2022 update (supplementary table)(World Health Organization・2022)多剤耐性・リファンピシン耐性結核(MDR/RR-TB)の治療薬の再分類(Group A・B・C)において、エチオナミド/プロチオナミドがGroup C(エタンブトール・デラマニド・ピラジナミド・カルバペネム系・アミカシン/ストレプトマイシン・PASと並ぶ、優先度の低い後方選択肢群)に位置づけられていることを確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.Is hypothyroidism rare in multidrug resistance tuberculosis patients on treatment? A systematic review and meta-analysis(PLoS One(Tola HH, et al.)・2019)30研究・6241例のMDR-TB患者を統合した解析で、治療中の甲状腺機能低下症の統合有病率が17.0%(95% CI 13.0–20.0)であったこと、その発生に関連する薬剤として最も多く報告されたのがエチオナミドとパラアミノサリチル酸(PAS)であったことを確認した閲覧 2026-08-10