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Symptoms · Published

視神経炎

Optic neuritis

別名
球後視神経炎視神経乳頭炎
臓器系
神経眼科
科目
PathologyNeurologyPharmacology
トピック
病理学 C/110:髄鞘疾患(脱髄性疾患)神経内科 G1-23:多発性硬化症の症候と診断薬理学 C2:抗抗酸菌薬(抗結核薬)
関連疾患
MOG抗体関連疾患視神経脊髄炎スペクトラム障害多発性硬化症

🧠 全体像:は単一の疾患名ではなく、視神経という共通の最終経路が炎症で機能を落とすときに使う症候名である。典型像(若年女性・亜急性の片眼・・・・)を基準線として持ち、そこから外れる所見――両眼同時発症、痛みの乏しさ、高度の視力障害、乳頭の著明な腫脹や出血、改善しない経過、小児・高齢者――が出た瞬間に「ではなく別の病態」と読み替える。が腫れているかどうかは診断の必須条件ではなく、炎症が乳頭より後方にとどまるではが正常のまま視力だけが落ちる。全体の鑑別枠組みはに譲り、このノートはという機序に絞る。

定義と用語の整理

視神経の障害は炎症性()と非炎症性に大別され、「」という語は本来前者を指す。など薬剤性のを慣用として「」と呼ぶ資料もあるが、機序は炎症ではなくであり本ノートでは区別して扱う。

病態 主座・見た目 特徴
炎症がに及ぶ 眼底でが見える。小児のADEM関連で頻度が高い
炎症が乳頭より後方 眼底は正常。所見がないまま視力だけが落ちる
視神経への血流障害 高齢・突然・無痛性。乳頭を含むと乳頭より後方のに分かれる。は
腫瘍・血管による圧迫 緩徐進行、痛みを伴わないことが多い
・性 両眼対称性・無痛性・緩徐進行。・・ビタミンB12欠乏など

によるは、頭蓋内圧亢進による両側性のと見た目が似ることがあるが、機序もも別である。は原則両側性で頭蓋内圧亢進を反映し、初期は視力が保たれやすい。のは片側性でが早期から前景に立つ点で区別し、そのものの原因検索はのノートに譲る。

💡 のは、視神経を包む硬膜性の鞘がでの起始()に近接するため、眼球運動が鞘へ牽引として伝わって生じる。を来すとは異なり、眼球運動そのものの制限はない点で区別する。

病態生理

flowchart TD
    A["視神経の機能障害"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune-mediated'>免疫介在性</span>(炎症性)"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='toxic'>中毒性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malnutrition'>栄養障害</span>性"]
    B --> B1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple sclerosis'>多発性硬化症</span>関連<br>CD4+ T細胞(Th1・Th17)が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myelin antigen'>髄鞘抗原</span>を攻撃"]
    B --> B2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuromyelitis optica spectrum disorder, NMOSD'>視神経脊髄炎スペクトラム障害</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-AQP4 antibody'>抗AQP4抗体</span>がアストロサイトを攻撃→続発性に脱髄"]
    B --> B3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='MOG antibody-associated disease (MOGAD)'>MOG抗体関連疾患</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-MOG antibody'>抗MOG抗体</span>、両眼性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic disc swelling'>乳頭腫脹</span>が目立ちやすい"]
    C --> C1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mitochondrial dysfunction'>ミトコンドリア機能障害</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ethambutol, E'>エタンブトール</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methanol'>メタノール</span>・ビタミンB12欠乏"]
    C1 --> C2["両眼対称性・無痛性・緩徐進行"]

もっとも頻度が高いのは関連ので、へのが破綻し、CD4陽性T細胞が視神経の髄鞘を攻撃する。💡 は標的が髄鞘ではなくアストロサイトのであり、脱髄はその結果として生じる続発性の変化にすぎない――この標的の違いが、後述する重症度・両眼性・ステロイドへの反応性の差として現れる。・性は免疫を介さず、視神経のミトコンドリア機能そのものが障害される点で炎症性のとは根本的に別の病態である。

⚠️ 見逃してはいけない病態

典型的 非典型(別疾患を疑う)
若年女性 小児・高齢者
片眼 両眼同時発症
亜急性(数日〜2週間の進行) 突然、または2週間を超えて進行し続ける
を伴う 痛みがない、または非常に強い
、中等度の 以下に及ぶ高度の視力障害
眼底正常、または軽度の 乳頭の高度腫脹・出血
発症後2〜3週間から自然に回復し始める 回復の兆しがないまま進行する

⚠️ な所見があれば、ではなく別疾患を疑う。 両眼同時発症、の欠如、以下におよぶ高度の視力障害、の高度腫脹や出血、2〜3週間で改善し始めない経過、小児や高齢者での発症はいずれも非典型であり、、、圧迫性・、感染性・傍腫瘍性をする。

⚠️ 高齢者の突然の無痛性は、より先に・を除外する。 対側眼も数日以内に侵されうるため、生検や画像の結果を待たずを開始する判断が優先される。

⚠️ をとくに示唆するの所見は4つある。 2015年の国際コンセンサスは、①両眼、②視交叉への波及、③型の、④高度の視力障害が残る(視力20/200すなわち小数視力0.1以下)を挙げている1。陽性例は単独でも重症化しやすく、初回発作から永続的な高度視力障害を残しうるため、典型的より早期からの積極的な抗体検索と治療強化が必要になる。への反応が乏しいことは治療経過からの手がかりであって、この4つの列挙には含まれない——反応を見てから疑うのでは抗体検索が遅れる。

💡 ただし同じ基準は、この4つを挙げた直後に「no characteristic is pathognomonic」と断っている。型のはでも生じ、両眼のはでも起こりうる1。所見はいずれもを上げるだけで、診断を決めるのは抗体とである。

⚠️ 改善せず進行し続ける経過は、の診断そのものを再考する。 典型的はでも数週間以内に回復へ向かう。回復の兆しがないまま進行する場合はを見落としていないか、造影MRIを見直す。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["急性〜亜急性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>"] --> B{"典型的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='optic neuritis'>視神経炎</span>の特徴が揃うか"}
    B -->|"揃う"| C["眼科診察で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relative afferent pupillary defect'>RAPD</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='color vision'>色覚</span>・視野を確認<br>造影MRI(眼窩+脳、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fat suppression'>脂肪抑制</span>)"]
    B -->|"揃わない"| D["非典型所見あり<br>両眼同時・痛みなし・高度視力障害・小児/高齢"]
    D --> E{"高齢で無痛性か"}
    E -->|"はい"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='giant cell arteritis, GCA'>巨細胞性動脈炎</span>を最優先で除外<br>結果を待たず高用量ステロイド"]
    E -->|"いいえ"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-AQP4 antibody'>抗AQP4抗体</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-MOG antibody'>抗MOG抗体</span>を優先的に測定"]
    C --> H{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain MRI'>脳MRI</span>に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='white matter lesion'>白質病変</span>があるか"}
    H -->|"あり"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple sclerosis'>多発性硬化症</span>への移行リスクが高いと説明"]
    H -->|"なし"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CSF oligoclonal bands'>髄液オリゴクローナルバンド</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual evoked potential'>視覚誘発電位</span>を追加評価"]
検査 目的
眼底・瞳孔診察 の確認、・出血など非典型所見の検出
造影MRI(眼窩・脳、) 視神経の炎症所見の確認、の除外、の検索。視神経はまたは強調画像の水平断・で見る2
・ ・の鑑別。いずれも細胞を用いたアッセイ(CBA法)が推奨される13
を支持する所見(に特異的ではない)
亜急性期以降の視神経の評価
急性期のの客観化と、亜急性期以降の・の菲薄化の定量。2022年の国際基準では補助検査の1つに数えられる4
限界フリッカ値 では35 Hz未満、重症例では20 Hz未満など顕著な低下を示すことが多い。に先んじて下がり回復に遅れて上がるため、治療効果の判定に使える2

診断基準——2022年の国際コンセンサス

そのもののは長く定まっていなかった。2022年、多国籍のパネルが Lancet Neurology の見解表明として、の分類に合意が無く精確なも存在しないという認識を冒頭に置いたうえで、臨床基準と補助検査を組み合わせる基準を示した4。

⭐ だけで届くのは「疑い」までで、「確定」には補助検査の裏づけが要る。 これがこの基準の骨格である。

臨床基準 内容
A 片眼性・亜急性のに、眼球運動で増悪する眼窩部痛・の低下・の低下・を伴う
B 痛みが無く、ほかは A と同じ
C 両眼性ので、A または B の特徴をすべて備える

補助検査は3つのに分かれる4。

満たすべき所見
急性期に対応するがあること、または発症3か月以内に黄斑部の両眼差が4%もしくは4 μmを超える、乳頭周囲の両眼差が5%もしくは5 μmを超えること
造影MRI 急性期に症候側の視神経とその鞘が造影増強されること、または3か月以内に視神経内部の信号が上昇すること
・・抗CRMP5抗体のいずれかが、または髄液の鞘内IgG産生()
判定 必要な組み合わせ
確定 A+補助検査1つ/B+の異なる補助検査2つ/C+異なる補助検査2つ(うち1つは)
疑い 急性期に A・B・C のいずれかを満たすが補助検査が無く、がとして典型的で追跡中の経過とも矛盾しない場合/補助検査が陽性で、病歴がを示唆する場合

💡 非典型さが増すほど、確定に要する検査の数と種類が増える設計になっている。 痛みが無ければ(B)補助検査は2つ要り、両眼性ならば(C)そのうち1つはでなければならない。前節の「非典型が出たら別疾患を疑う」という読み方を、必要な証拠の量として基準の形にしたものと理解するとよい。⚠️ ただしこれはという症候のであって、・・のどれなのかは、それぞれので別に判定する。

抗体はいつ・誰に測るか

⭐ 抗体は治療で下がる。だから測るのは治療の前である。 は再発で上昇し免疫抑制療法で低下するため、国際基準はやの開始前の再検を考慮するとしている1。の(2023年)も、副腎皮質ステロイド・免疫グロブリン・アフェレシスはいずれも血清IgGを下げるので測定はその投与前が理想だとしている3。日本のガイドラインもは治療により低下するとして急性期の検体を勧める2。💡 を先に始めてしまうと、後から測った陰性が「本当に陰性」なのか「治療で消えた」のか区別できなくなる。

は全例に測る検査ではない。日本のガイドラインは対象を次のように整理している2。

集団 陽性率 スクリーニングの扱い
小児(とくに11歳以下)の・ 50%近く 推奨される
成人の(全体) 5%未満 全例のスクリーニングは推奨されない
重度のを伴う成人の 約40%との報告 推奨される。両眼性・・長大なでも躊躇しない
0.3〜2.5% 推奨されない(が相対的に高い)

⚠️ 日本では、が推奨するCBA法に保険適用がない。 で保険適用があるのは法だけで、法はCBA法より感度が10〜20%低く特異度も若干低い2。国際基準の側も、細胞を用いた血清アッセイの平均感度76.7%(外来コホートでの0.1%)に対し、とは平均感度63〜64%・の偽陽性0.5〜1.3%(しばしば)と数字で差を示している1。法の陰性は除外の根拠として弱いので、臨床像が合うなら再検を考える。

💡 のが抗体の「力価」で条件を変えるのも同じ理由である。明確な陽性(生細胞アッセイで超え、または固定細胞アッセイで1:100以上)なら中核的臨床事象とだけで診断できるが、(固定細胞アッセイで1:10以上1:100未満)・力価の報告がない陽性・で髄液陽性の場合は、が陰性であることに加えて支持所見を1つ以上満たすことが要る3。の支持所見は、両眼同時発症・視神経全長の50%を超える長大な病変・の造影増強・腫脹の4つである。

対応の考え方

⭐ 静注(パルス)は視力の回復を早めるが、最終的な視力そのものは変えない——Optic Neuritis Treatment Trial(ONTT)のであり、症状そのものを抑える治療と長期予後を分けて考える必要性を最もよく示す例である。同試験の静注群はの回復がとくに速く(P=0.0001)、6か月時点でも視野・・がわずかに優れていたが、視力には差がなかった(P=0.66)5。日本のガイドラインはONTTの5年報告を引いて、視機能もへの移行率も5年後には有意差がなくなったと述べている2。

用法は、日本では1 g/日を3日間連続で静注し、これを1クールとして必要に応じて計2〜3クール行うのが一般的である2。同じガイドラインが引く国内の多施設共同登録調査では、IVMPの96%で1日1 gが選ばれ、1日500 mgより有効性が高かった。💡 ただしこの調査では、初回IVMPの有効性は(NMO)に比較してで高く、では2クール目以降の有効性は明らかでなかった——反応しない症例で漫然と回数を重ねるより、後述の血漿浄化へ切り替える判断が要る。

⚠️ 単独は、ONTTの用法では有害だった。 経口1 mg/kg/日を14日間だけ投与した群は視機能の転帰がと変わらず、いずれかの眼に新たなが生じる率はより高かった(相対危険1.79、95%信頼区間1.08〜2.95)5。ただし原著はこれを「本試験で処方した用法では」と限定している。 そのものが劣るという意味ではなく、同じ高用量のであれば経口と静注で有効性に差がないことが複数のRCT・で示されている2。問題なのは剤形ではなく、パルスに満たない用量を単独で使うことである。2022年の国際コンセンサスも、急性発作には静注・経口のいずれでも高用量を用いるとしたうえで、静注なら1 g相当、経口なら1.25 g/日相当という等価量を挙げている4。💡 ONTTの経口群が投与されたのは1 mg/kg/日(体重60 kgなら60 mg)で、この等価量とは桁が違う——「経口でもよい」が成り立つのはパルス相当量を出したときだけである。なおONTTが用いたのはで、とは別の化合物である(は肝で11位のケトンが還元されてになるで、換算量は1対1として扱う)。

⚠️ 「誰にステロイドを使うか」には国際的な合意が無い。 2022年の国際コンセンサスは、文献でもパネル参加者の経験でもに対する副腎皮質ステロイドの使用に合意が無いと明記し、小児での長期投与は一般に推奨されない、長期の投与は個々に利益と危険を量る必要がある、と述べている。静注の用量もパネル参加施設のあいだで0.5〜1.0 gに分かれていた4。💡 パネルは、高度に活動性の病態への対処にはとても自信があり、の経過にもほぼ同程度に確信があったが、それほど極端でない臨床像——原文は「実地ではおそらく最も多い」とする——については不確かさが残ったと自己分析している4。日本のガイドラインが示す1 g×3日という用法は、この幅の中で国内の実態として選ばれている書き方だと読む。

血漿浄化療法

に反応が乏しい重症例では血漿浄化療法を追加する。単純(PE)・二重濾過血漿分離交換・血漿の3法があるが、RCTで有効性が証明されているのは単純だけである2。では、ガイドラインが引くYuらの(24研究528人)でPEがIVMP不応例の75%に有効だった。でもは低いものの、IVMPの効果が不十分ならとして検討すべきとされる。

⚠️ 重症のほど早く導入する。 ガイドラインは「がみられたら可及的速やかにPPを行うべきであり、特に重度の症例に対しては発症早期のPP導入が望まれる」と結んでいる。ただし同じ段落は、その直前に発症後7日までに開始した群より発症8〜23日に開始した群のほうがEDSSの改善度が高かったとするもあると書いており、開始時期の最適解が決着しているわけではない2。

多発性硬化症への移行リスク

への移行リスクは、発症時点の頭部MRIでの有無によって層別化される。ONTTの389例を15年追跡した最終報告では、を発症する確率は全体で50%(95%信頼区間44〜56%)だが、ベースラインの頭部MRIに病変が無ければ25%、1つ以上あれば72%だった6。10年を過ぎると病変の無い群のリスクは非常に低くなる一方、病変のある群では相当なリスクが残る。病変の無い群のなかでリスクがとくに低いことと関連したのは、男性・腫脹・の一部の特徴であった。この層別化は、原因治療(の開始時期)の判断材料として、症状自体への対応と切り離して評価する。

まとめ

  • は炎症性・のを指す症候名で、典型像は若年女性・亜急性の片眼・・・・である。
  • 乳頭が腫れているかは必須所見ではなく、では眼底が正常のまま視力だけが落ちる(造影MRIでは視神経の炎症所見を捉えうる)。
  • 両眼同時発症、痛みの欠如、高度視力障害、乳頭の高度腫脹・出血、改善しない経過、小児・高齢者はいずれも非典型で、・・圧迫性/をする。
  • をとくに示唆するの所見は、両眼・視交叉への波及・型・視力20/200以下の高度視力障害の4つ。ただしどれも病態を確定させる所見ではない。
  • 高齢者の突然の無痛性は、より先にを除外する。
  • ・性(、、ビタミンB12欠乏など)はが主体で、のとは機序が異なる。
  • 2022年のでは、(A=片眼・有痛性/B=無痛性/C=両眼性)だけで届くのは「疑い」までで、「確定」には補助検査(・造影MRI・抗体もしくは)の裏づけが要る。非典型さが増すほど必要な検査の数と種類が増える。
  • 抗体は治療で下がる。・はステロイド・免疫グロブリン・を始める前に、細胞を用いたアッセイ(CBA法)で測る。日本ではCBA法に保険適用がなく、法はCBA法より感度が10〜20%低い。
  • は全例に測る検査ではない。小児の・(陽性率50%近く)と、重度のを伴う成人の(約40%との報告)では推奨されるが、成人の全体では陽性率5%未満で全例スクリーニングは推奨されない。
  • 高用量ステロイド静注(日本では1 g/日を3日間)は回復を早めるが最終視力は変えない。ONTTの用法での経口単独(1 mg/kg/日14日間)はと同等で、新たなを増やした(相対危険1.79)。同じ高用量のなら経口と静注で差はなく、2022年の国際コンセンサスは等価量を静注1 g相当・経口1.25 g/日相当としている。ただし誰に使うかについての国際的な合意は無い。
  • ステロイド不応の重症例には血漿浄化療法。RCTで有効性が示されているのは単純のみで、ではIVMP不応例の75%に有効。重度のほど早期導入が望まれる。
  • への移行リスクは頭部MRIのの有無で層別化される。ONTTの15年追跡では、病変なしで25%、1つ以上で72%(全体50%)。

出典

  1. 1.International consensus diagnostic criteria for neuromyelitis optica spectrum disorders(International Panel for NMO Diagnosis (IPND) / Neurology・2015)全文を取得し、視神経脊髄炎スペクトラム障害をとくに示唆する視神経炎の所見として「両眼同時性」「視交叉への波及」「水平半盲型の視野欠損」「高度の視力障害が残る(視力20/200すなわち小数視力0.1以下)」の4つが挙げられていること、ただし直後に「no characteristic is pathognomonic」として、水平半盲型の視野欠損は虚血性視神経症でも生じ、両眼同時性の視神経炎は多発性硬化症でも起こりうると明記されていることを確認した。抗AQP4抗体の測定については、パネルが可能な限り細胞を用いた血清アッセイ(顕微鏡またはフローサイトメトリーによる検出)で検査することを推奨し、統合解析での平均感度76.7%・多発性硬化症外来コホートでの偽陽性率0.1%を根拠に挙げる一方、間接蛍光抗体法とELISAはいずれも平均感度63〜64%で偽陽性(ELISAで0.5〜1.3%、しばしば低力価)が生じうるとしていることを確認した。抗体価は再発で上昇し免疫抑制療法で低下するため、血漿交換や免疫抑制薬の開始前に再検を考慮するとも述べている。閲覧 2026-09-16
  2. 2.多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害診療ガイドライン2023(日本神経学会・2023)全323頁のPDFを取得し該当節を逐語で確認した。急性増悪期のステロイドは「本邦では、MPを1日1g、3日間連続静脈内投与する方法が一般的で、これを1クールとして必要に応じて計2、3クール行われることがある」で、国内の多施設共同登録調査でもIVMPの96%で1日1g投与が選択され1日500mg投与より有効性が高かった。ただし初回IVMPの有効性はNMOに比較してMSで高く、NMOでは2クール目以降の有効性は明らかでない。高用量メチルプレドニゾロンの経口投与と静脈内投与で有効性に差がないことも複数のRCT・メタ解析で示されている。血漿浄化療法には単純血漿交換・二重濾過血漿分離交換・血漿免疫吸着の3法があるがRCTで有効性が証明されているのは単純血漿交換のみで、NMOSDではYuらの24研究528人のメタ解析について「PE は IVMP 不応例の 75% に有効であった」と記す。早期開始については「メタ解析ではPPを発症後7日までに開始した群よりも発症8〜23日に開始した群のほうがEDSSの改善度が高かったとの報告もあるが」としたうえで「急性増悪がみられたら可及的速やかにPPを行うべきであり、特に重度の視神経炎症例に対しては発症早期のPP導入が望まれる」と結んでいる。MOGADでも急性期にIVMPの効果が不十分な場合はPPを検討すべきだがエビデンスレベルは低いとする。抗AQP4抗体は保険適用があるのはELISA法のみで、国際診断基準・厚生労働省診断基準が推奨するCBA法には保険適用がなく、ELISA法はCBA法より感度が10〜20%低く特異度も若干低い。抗MOG抗体は小児(特に11歳以下)の視神経炎・ADEMでは陽性頻度が50%近くでスクリーニングが推奨されるが、成人の視神経炎全体では陽性率が5%に満たず全例スクリーニングは推奨されない一方、重度の視神経乳頭浮腫を伴う成人の視神経炎では約40%との報告があり検査が推奨される。抗体価は治療により低下するため急性期の検体が勧められる。限界フリッカ値の低下は視神経炎では35Hz未満、重症例では20Hz未満で、視力低下に先んじて低下し視力回復に遅れて上昇するため治療効果判定に有用。日本神経眼科学会の全国調査では視神経乳頭腫脹は抗MOG抗体陽性視神経炎54例の76%、抗AQP4抗体陽性視神経炎66例の34%にみられた。閲覧 2026-09-16
  3. 3.Diagnosis of myelin oligodendrocyte glycoprotein antibody-associated disease: International MOGAD Panel proposed criteria(Lancet Neurology(International MOGAD Panel)・2023)誌上版(Lancet Neurol 2023;22:268-82、頁付きのPDF。表紙に「Publisher's PDF, also known as Version of record」と記されたエラスムス大学ロッテルダムのリポジトリ版)を取得し、Figure 3 の診断基準がA(脱髄の中核的臨床事象6項目=視神経炎・脊髄炎・急性散在性脳脊髄炎・単巣性ないし多巣性の大脳症状・脳幹ないし小脳症状・しばしば痙攣を伴う大脳皮質性脳炎)、B(細胞を用いた血清アッセイでの抗MOG抗体陽性)、C(多発性硬化症を含むより妥当な診断の除外)の3つをすべて満たすことを要求する構造であることを確認した。Bが明確な陽性(生細胞アッセイで各アッセイのカットオフを超える、または固定細胞アッセイで力価1対100以上)なら支持所見は不要だが、低力価陽性(固定細胞アッセイで1対10以上1対100未満)・力価の報告がない陽性・血清陰性で髄液陽性の場合は「抗AQP4抗体陰性であること」と「支持的な臨床所見またはMRI所見を1つ以上もつこと」の両方を要する。視神経炎の支持所見は両眼同時発症・視神経全長の50%を超える長大な病変・視神経鞘の造影増強・視神経乳頭腫脹の4つ。血清の測定は全例に推奨されるが、血清と髄液の両方を日常的に測ることは推奨されない。⚠️ 測定は副腎皮質ステロイド・免疫グロブリン・アフェレシスの投与前が理想とされる(原文は、これらの治療が血清中の抗MOG抗体の検出を低下させるため〔these therapies can reduce serum MOG-IgG detection〕と述べる)。初回の血清検査が陰性でも急性期治療の後に採られた検体であれば、少なくとも3か月後の再検が勧められる。閲覧 2026-09-16
  4. 4.Diagnosis and classification of optic neuritis(Lancet Neurology(多国籍の専門家パネルによる見解表明)・2022)誌上版(Lancet Neurol 2022;21:1120-34。頁と巻号が刷り込まれたPDFをルーヴァン・カトリック大学のリポジトリから取得)で Panel 1 を逐語で確認した。臨床基準は A(片眼性・亜急性の視力低下で、眼球運動で増悪する眼窩部痛、コントラスト感度と色覚の低下、相対的瞳孔求心路障害を伴う)、B(痛みが無くほかは A と同じ)、C(両眼性の視力低下で A または B の特徴をすべて備える)の3段。補助検査は OCT(急性期の対応する乳頭腫脹、または発症3か月以内の mGCIPL の両眼差が4%超もしくは4 μm超、pRNFL の両眼差が5%超もしくは5 μm超)、MRI(急性期に症候側の視神経と視神経鞘が造影増強される、または3か月以内に内部信号が上昇する)、バイオマーカー(抗AQP4抗体・抗MOG抗体・抗CRMP5抗体のいずれかが血清陽性、または髄液の鞘内IgG〔オリゴクローナルバンド〕)の3種。判定は definite が「A+補助検査1つ」「B+モダリティの異なる補助検査2つ」「C+うち1つがMRIである異なる補助検査2つ」、possible が「急性期に A・B・C のいずれかがあるが補助検査が無く、眼底所見が視神経炎として典型的で追跡中の経過とも矛盾しない場合」「補助検査が陽性で病歴が視神経炎を示唆する場合」。抄録は冒頭で、視神経炎の分類に合意が無く精確な診断基準も無いと述べている。治療については本文の「How to decide who to treat」に、文献でも執筆者らの経験でも視神経炎に対する副腎皮質ステロイドの使用に合意が無いこと、小児では長期投与が一般に推奨されないこと、急性発作には静注または経口で高用量を用い、静注メチルプレドニゾロン1 g相当または経口プレドニゾン1.25 g/日相当であること、パネル参加施設の静注量は0.5〜1.0 gに分かれていたことが逐語で書かれている。考察の末尾は、パネルが highly active disease への対処には very confident、単相性の経過には almost equally sure であった一方、less extreme clinical presentations では不確かさが残り、その極端でない症例が実地では probably most common であると述べている。閲覧 2026-09-16
  5. 5.A randomized, controlled trial of corticosteroids in the treatment of acute optic neuritis. The Optic Neuritis Study Group(The New England Journal of Medicine・1992)抄録で、急性視神経炎457例を①経口プレドニゾン1 mg/kg/日を14日間②メチルプレドニゾロン1 g/日を静注3日間、続けて経口プレドニゾン1 mg/kg/日を11日間③経口プラセボ14日間の3群へ無作為化し6か月追跡した試験であることを確認した。静注群はプラセボ群より視機能の回復が速く(視野欠損の回復でとくに顕著、P=0.0001)、6か月時点でも視野(P=0.054)・コントラスト感度(P=0.026)・色覚(P=0.033)がわずかに優れたが、視力には差がなかった(P=0.66)。経口プレドニゾン単独群の転帰はプラセボ群と変わらず、いずれかの眼に新たな視神経炎が生じる率はプラセボ群より高かった(相対危険1.79、95%信頼区間1.08〜2.95)。⚠️ 結論の原文は、経口プレドニゾン単独が無効であることを「本試験で処方した用法では(as prescribed in this study)」と限定して述べている。閲覧 2026-09-16
  6. 6.Multiple sclerosis risk after optic neuritis: final optic neuritis treatment trial follow-up(Optic Neuritis Study Group / Archives of Neurology・2008)抄録で、急性視神経炎389例を15年追跡し、多発性硬化症を発症する累積確率が15年で50%(95%信頼区間44〜56%)であること、これがベースラインの造影を行わない頭部MRIの病変の有無と強く関連し、病変の無い群では25%、1つ以上ある群では72%が追跡期間中に多発性硬化症を発症したことを確認した。10年を過ぎると病変の無い群の発症リスクは非常に低くなるが、病変のある群では相当なリスクが残る。病変の無い群でリスクがとくに低いことと関連したベースライン因子は、男性・視神経乳頭腫脹・視神経炎の一部の非典型的特徴であった。閲覧 2026-09-16