検査値ノート一覧へ

Lab values · Published

視覚誘発電位

Visual evoked potential

別名
VEP
臓器系
神経眼科
科目
Neurology
トピック
神経内科 G2-23:臨床神経生理検査:EEG・EMG・ENG・TMS・誘発電位
関連疾患
圧迫性視神経症

🧠 全体像:(VEP)は「視神経は生きて情報を伝えているか」を電気的に確かめる検査である。眼底・視力検査だけでは分からないの伝導の遅れ(脱髄)や信号の減弱()を、患者のな訴えに頼らずな波形として捉える。ただし異常は非特異的で、どこが悪いかを場所まで特定する検査ではない。

何を測っているか

刺激(市松模様を反転させる)や刺激で網膜を刺激し、の活動を頭皮上の電極(後頭部正中:Oz)で記録する。標準のVEPはN75・P100・N135という3つの陽性・陰性の峰からなる波形を示し、P100(刺激からおよそ100ミリ秒後の陽性頂点)の頂点と、直前のN75からの振幅を主な指標とする1。単チャンネルの標準記録が評価できるのは視交叉より前方(眼・視神経)の機能にとどまり、・視交叉後の病変を調べるには多チャンネル記録が必要になる1。

検査条件と正常値

  • 刺激が臨床的に最も広く用いられ、波形・のばらつきが他の刺激様式より小さい
  • パターンオンオフ刺激は不良・眼球運動・な焦点ぼかしの影響を受けにくく、の検出・確認や眼振患者の評価に向く1
  • フラッシュVEPは光学的な・協力不良・視力不良でパターン刺激が使えないときに用いる。が大きいが左右眼の比較には使える
  • 正常値は年齢(成人の値をそのまま小児・高齢者へ適用できない)と眼間差を考慮し、各検査室が自施設の刺激・記録条件で確立する必要がある1
  • パターン刺激では、・の影響を受けていない瞳孔で検査する(フラッシュVEPでは必須でない)1

異常所見の意味

所見 示唆する病態 代表疾患
P100の延長(振幅は比較的保たれる) 髄鞘の(脱髄) に伴う——急性期をこえても遅延が永続することが多い2
P100振幅の著明な低下(の変化は軽度) 軸索そのものの障害・脱落 (など)2
延長かつ振幅低下 慢性の圧迫による〜 (・グリオーマなどによる)2
著明な延長 遺伝性 など2

VEPの異常は視神経・のどこに病変があっても起こりうる非特異的所見であり、・・・画像検査と組み合わせて初めて診断的な意味を持つ。では、・・VEPを組み合わせることでに先行する機能低下を拾える。

測定上の注意

⚠️ ・不良・極端ながP100を偽って延長させる。 これらは病的要因ではないため、パターン刺激の前に視力を記録し、検査距離に応じて最適なを行う必要がある1。

  • 網膜の病変はの障害よりVEPへの影響が大きい。が保たれていても欠損だけでは異常が出にくい2
  • 再現性の確認のため、各条件で最低2回の記録を取り波形を比較する
  • 小児・非協力的な患者ではの維持が難しく、パターン刺激より変動の少ないフラッシュVEPに切り替えることがある
  • や機能性が疑われる場合は、の影響を受けにくいパターンオンオフ刺激が鑑別に有用である1

経時変化とモニタリング

急性ではP100の遅延が永続的に残ることが多く、視力やが回復したあとも既往のを示す所見として残存しうる2。では、原因の除去(腫瘍摘出・など)後に・振幅の改善を経過観察の指標として用いることがあるが、が既に確立した後では改善が乏しく、早期の減圧ほど良い転帰が期待できる。

まとめ

  • VEPは網膜からまでの電気的な伝導を、頭皮電極で記録する非侵襲的検査である
  • 標準はP100の頂点と振幅で評価し、単チャンネル記録は視交叉より前方の機能を反映する
  • 延長は脱髄(のなど)、振幅低下は(など)を示唆するが、いずれも非特異的である
  • ・不良・・年齢はP100に影響するため、検査条件を整えたうえで自施設の正常値と比較する
  • の検出にはパターンオンオフ刺激、協力不良・光学的にはフラッシュVEPが向く

出典

  1. 1.ISCEV standard for clinical visual evoked potentials: (2016 update)(International Society for Clinical Electrophysiology of Vision(Odom JV et al., Documenta Ophthalmologica)・2016)パターン反転VEPの標準波形がN75・P100・N135の3峰からなり振幅はP100と直前のN75の高さで測ること、P100の頂点潜時(peak time)はパターンサイズ・コントラスト・平均輝度・フィルタ設定・年齢・屈折異常・固視不良・極端な瞳孔径といった非病的要因の影響を受けること、パターンオンオフ刺激は固視不良・眼球運動・意図的な焦点ぼかしといった交絡因子の影響を受けにくいため詐病の検出・確認や眼振患者の評価に有効であること、フラッシュVEPは光学的異常・協力不良・視力不良でパターン刺激が使えない場合に有用であること、単眼刺激が標準であり眼間の振幅・潜時比較が単眼性病変の検出感度を高めること、標準の単チャンネル記録は視交叉より前方(眼・視神経)の機能評価を目的とし視交叉部・視交叉後病変の評価には多チャンネル記録を要すること、パターン刺激時は瞳孔が散瞳薬・縮瞳薬の影響を受けていない状態で行うべきであること(フラッシュVEPでは散瞳は必須でない)、正常値は年齢・眼間差を考慮して各検査室が自施設の刺激・記録条件で確立する必要があり成人の正常値を小児・高齢者にそのまま適用できないことを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Visual Evoked Potential(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)VEPが視神経から視覚皮質までの視覚経路の電気活動を頭皮電極で記録する非侵襲的検査であること、多発性硬化症の視神経炎・圧迫性視神経症(髄膜腫・グリオーマによる圧迫)・虚血性視神経症・Leber遺伝性視神経症などの視神経疾患でP100潜時延長や振幅低下を来すこと、急性視神経炎ではP100の遅延が永続的に残ることが多く既往の視神経炎の診断に有用であること、網膜中心窩の障害が周辺視野の障害よりVEPへの影響が大きいことを確認した閲覧 2026-09-05