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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)

Giant cell (temporal) arteritis

別名
GCA側頭動脈炎
臓器系
免疫・膠原病循環器
科目
PathologyInternal Medicine
トピック
病理学 B/40:動脈炎・静脈炎(血管炎)内科学 R-08:中血管炎・大血管炎内科学 S-47:血管炎
上位概念
血管炎
鑑別疾患
高安動脈炎不明熱片頭痛・一次性頭痛症候群
関連疾患
リウマチ性多発筋痛症
治療薬
プレドニゾロンメチルプレドニゾロントシリズマブメトトレキサート
症状
圧痛顎跛行倦怠感視力低下腫脹寝汗体重減少頭痛発熱複視跛行一過性黒内障
検査値
C反応性蛋白(CRP)赤沈血算血小板増多
画像所見
超音波エコー輝度
スコア
ACR/EULAR分類基準
組織像
巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎、HE染色)
適応薬
トシリズマブ

🧠 全体像は、50歳以上の高齢者に起こるで、大動脈とその頭蓋外分枝(特に)をに侵す。最大の臨床的緊急性は視力にある――の虚血による失明は一度起これば回復が難しいため、生検や画像の結果を待たずに疑った時点で高用量ステロイドを開始するのが鉄則である。同じであるとは「高齢者の頭蓋分枝=GCA」対「若年アジア人女性の=高安」という年齢・血管分布の対比で覚える。

概要・病態

  • 好発:50歳以上(平均70歳前後)、女性にやや多い。北欧系の家系・高緯度地域で頻度が高い。
  • 侵される血管:大動脈とその主要分枝、特に頭蓋外の)。を含む大血管病変(large-vessel GCA)もできない頻度で存在する。
  • 病理:血管壁の慢性腫性・炎症。T細胞・を伴い、を特徴とする。炎症により内膜が肥厚し内腔が狭窄・閉塞するため、症状の多くは虚血に起因する。治癒期には線維化を残す。
  • との関連:GCA患者の約40〜60%にPMR症状(頸部・と痛み)を合併し、逆にPMR患者の一部にGCAが潜在する。同じ炎症性血管病態のスペクトラムと考えられている。
flowchart TD
    A["高齢者(50歳以上)の血管壁に対するT細胞・マクロファージ主体の免疫反応"] --> B["大動脈・頭蓋<span class='jp-term jp-term-diagram' title='external carotid artery'>外頸動脈</span>分枝の中膜〜外膜に<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='granulation'>肉芽</span>腫性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='segmental'>分節性</span>炎症"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multinucleated giant cell formation'>多核巨細胞形成</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal elastic lamina'>内弾性板</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fragmentation'>断片化</span>"]
    C --> D["反応性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intimal thickening'>内膜肥厚</span>"]
    D --> E["罹患血管の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='luminal narrowing'>内腔狭窄</span>・閉塞"]
    E --> F["新規頭痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scalp tenderness'>頭皮圧痛</span>"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='jaw claudication'>顎跛行</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscles of mastication'>咀嚼筋</span>の虚血)"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ophthalmic artery'>眼動脈</span>・後毛様動脈の虚血<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='amaurosis fugax'>一過性黒内障</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>"]
    E --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aortitis'>大動脈炎</span> → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='aortic aneurysm'>大動脈瘤</span>・解離のリスク"]
    H -->|"治療が遅れると"| J["不可逆的な失明"]

💡 症状の分布は「炎症がどの枝に強く及んだか」でほぼ説明できる。頭痛・後毛様動脈=視覚症状、というように罹患血管と症状が対応している。

臨床像

  • 全身症状発熱体重減少など非特異的な炎症性全身症状を伴うことが多い。
  • 頭部症状新規発症の側頭部頭痛が最も頻度が高い。腫脹・圧痛、拍動の減弱、頭皮の圧痛で髪をとかす、枕に頭をつけると痛む)を認めることがある。
  • を続けると顎の筋肉が虚血性の痛みで疲労し、休むと軽快する。特異度が高い所見。
  • 視覚症状(一時的な視力消失)、、急激なによる永続的な失明に至りうる、GCAで最も恐れるべき合併症である。
  • その他:頭皮壊死、舌の虚血・壊死、四肢(大血管病変)などまれだが特徴的な所見もある。
  • の合併:頸部・肩・の対称性のこわばり・痛みを伴う場合、GCAの併存を積極的に疑う。

⚠️ ・急激ななどの視覚切迫症状があれば、検査結果を待たず直ちにを開始する。失明後の視力回復はきわめて困難である。

診断

2022年ACR/EULAR分類基準

2022年に発表された(classification criteria)は、超音波などの血管画像所見を正式に組み込んだ点が旧基準からの最大の変更点である。50歳以上であることをな前提条件とした上で、・画像所見・生検所見にそれぞれ重みづけされた点数を与える加点方式を採用し、合計点が一定の閾値(6点以上)でGCAに分類する。

項目カテゴリー 主な構成要素(例)
前提条件 年齢50歳以上
痛、突然の視力消失、、頭皮の新規圧痛異常 など
ESR 50 mm/時以上またはCRP 10 mg/L以上(+3点)。は反応性所見としてみられるが分類基準の加点項目ではない
画像所見 超音波・MRI・CT・PETでのまたは大動脈の血管壁病変
病理所見 での血管炎・

⭐ 分類基準は臨床研究での症例のを目的としたものであり、個々の患者を診断する際は臨床像・検査・画像・生検を総合した臨床診断が優先される点に注意する。

血液検査

  • ESR・:ほぼ全例で陽性となるが、非特異的。正常値がGCAを完全には除外しない点に注意。
  • を伴うことが多い。

画像検査と生検

EULARの画像検査に関する推奨(2023年更新)では、専門性のある施設において超音波(頸動脈・に加えも含めて評価)を第一選択の画像検査とすることが明記された。超音波でのは血管壁の性の肥厚である「」で、プローブで圧迫しても消失しない()。MRI・CT・FDG-PETは大血管病変の評価や超音波で判定困難な場合の代替・補助として用いる。

  • は依然として重要な確定診断手段であり、超音波などの画像評価が普及した現在でも治療開始の判断を遅らせてはならない。病変のため生検陰性でも臨床的にGCAを否定できない(により偽陰性がありうる)。
  • 画像・生検いずれも、治療(ステロイド)開始を待たせてはならない——特に視覚症状がある場合は治療を先行させる。ステロイド開始後1〜2週間以内であれば生検・画像所見が保たれることが多い。
flowchart TD
    A["50歳以上の新規頭痛・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='jaw claudication'>顎跛行</span>・視覚症状"] --> B["視覚切迫症状の有無を確認"]
    B -->|"あり"| C["結果を待たず直ちに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-dose glucocorticoid'>高用量グルココルチコイド</span>開始"]
    B -->|"なし"| D["ESR・CRP・血算を測定"]
    C --> E["超音波(側頭・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='axillary artery'>腋窩動脈</span>)を速やかに実施"]
    D --> E
    E --> F{"画像所見でGCAが支持されるか"}
    F -->|"はい"| G["GCAとして治療継続"]
    F -->|"不明・アクセス困難"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='temporal artery biopsy'>側頭動脈生検</span>またはMRI/CT/PETを追加"]
    H --> G

治療

急速な視力保護:グルココルチコイド

  • 視覚症状のない例(1 mg/kg/日、上限60 mg/日程度)で寛解導入する。
  • ⚠️ 視覚症状を伴う例・視覚切迫例:診断確定を待たず、500〜1000 mg/日を3日間静注するで開始し、その後経口へ切り替える1
  • (タパリング):寛解導入後は数週〜数か月かけて段階的に減量する。急速な減量はのリスクを高めるが、長期の高用量投与は症・糖尿病・易感染性などのステロイド毒性を蓄積させるため、両者のバランスを取りながら個別に調整する。

ステロイド節減薬:トシリズマブ

  • )は、GiACTA試験で確立されたステロイド節減効果に基づき、予防・グルココルチコイド減量を目的として広く用いられる。新規診断例でのグルココルチコイドとの併用、例への追加のいずれの局面でも条件付きで推奨される選択肢となる1
  • メトトレキサートは、が使用できない、または効果不十分な場合の代替的なとして用いられることがある。
  • 時は、症状のタイプ(虚血性の頭蓋症状か、全身炎症症状のみか)に応じてグルココルチコイドの増量との追加を組み合わせる。

大血管病変のフォローアップ

大動脈・大血管の炎症は、という長期合併症につながりうるため、診断時に大血管病変の有無を評価し、その後も定期的な画像(超音波、CT/MRA、必要に応じPET)で瘤形成の進行を監視する。

まとめ

  • GCAは50歳以上に好発するで、頭蓋分枝(など)と大動脈を腫性・に侵す。
  • 頭痛、、視覚症状(など)が三大手掛かりで、⭐ 視覚切迫症状があれば検査結果を待たずを開始する——失明は不可逆になりやすい。
  • 診断は2022年(50歳以上を前提とした臨床・検査・画像・病理の加点方式)に沿って組み立てるが、実臨床診断はこれに拘泥せず総合判断する。画像はEULAR 2023年更新で超音波(を含む)が第一選択に位置づけられたが、も依然重要で治療開始を遅らせない。
  • 治療の柱はグルココルチコイドによる寛解導入と予防・ステロイド節減のための(メトトレキサートは代替)で、大血管病変は瘤形成のリスクとして長期的な画像フォローが必要である。
  • とは「高齢者・=GCA」対「若年女性・=高安」という年齢・血管分布の対比で整理する。

出典

  1. 1.2021 American College of Rheumatology/Vasculitis Foundation Guideline for the Management of Giant Cell Arteritis and Takayasu Arteritis(American College of Rheumatology / Vasculitis Foundation・2021)視覚症状・視覚切迫例ではメチルプレドニゾロン500〜1000mg/日を3日間静注し、トシリズマブは新規診断例・再燃例のいずれにも条件付きで推奨される閲覧 2026-08-03