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ACR/EULAR分類基準

ACR/EULAR classification criteria

別名
EULAR/ACR
臓器系
免疫・膠原病
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 R-02:全身性エリテマトーデスの診断と治療内科学 R-04:関節リウマチの診断と治療
構成:症状
腫脹圧痛
構成:検査値
抗核抗体リウマトイド因子抗CCP抗体抗体価C反応性蛋白(CRP)赤沈
適用疾患
ANCA関連血管炎IgG4関連疾患シェーグレン症候群関節リウマチ巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)抗リン脂質抗体症候群高安動脈炎全身性エリテマトーデス全身性強皮症皮膚筋炎・多発筋炎

🧠 全体像:「」は単一のスコアではなく、が合同ワーキンググループで作成する・血管炎の分類基準群の総称である。関節リウマチの2010年基準、の2019年基準、の2022年基準など、ごとに項目も配点も閾値も全く異なる別個の基準が存在する。共通するのは名称と、「研究対象をするための分類基準であり、個々の患者のではない」というである。本ノートは9疾患分の点数表を網羅せず、共通する設計と代表例だけを扱う——各疾患の詳細な項目・配点は各疾患ノートの「診断」節を参照する。

目的と適用場面

内容
目的 臨床研究・治験のするための分類基準。診断そのものを行うツールではない
対象 すでに臨床的にその疾患が疑われ、・他疾患による説明を除外した患者
使う場面 研究登録の適格性判定、教育目的での疾患概念の整理。日常臨床では診断の補助にとどめる
評価しないもの 重症度・活動性・予後。例えば関節リウマチの疾患活動性はなど別の指標で評価する

対象疾患と基準の一覧

疾患 基準年 (絶対条件) 点数化方式 閾値
関節リウマチ 2010 ACR/EULAR 他疾患で説明できないが1関節以上 4領域のを単純加算 6/10点以上
2019 EULAR/ACR ANA 1:80以上を最低1回確認 10領域のうち領域ごとに最高点のみ加算 10点以上
2022 ACR/EULAR 年齢50歳以上 臨床・検査・画像・病理のを加算 6点以上
2022 ACR/EULAR 年齢60歳以下 血管病変所見のを加算 5点以上
ANCA関連血管炎(GPA/MPA/EGPA) 2022 ACR/EULAR 血管炎の診断がすでに確立していること 病型ごとに別個のアルゴリズムで加減点 病型ごとに個別(後述)
2023 ACR/EULAR 陽性が対応する臨床事象から3年以内 臨床6領域・検査2領域を別々に加算 臨床・検査それぞれ3点以上
症候群 2016 ACR/EULAR 等)を除外 5項目のを単純加算 4点以上
2013 ACR/EULAR なし(皮膚硬化単独で充足可) を加算、または単独充足項目 9点以上
2017 EULAR/ACR なし から確率を算出(単純ではない) 確率帯で判定(後述)

共通する設計思想

flowchart TD
    A["臨床的にその疾患を疑う患者を選ぶ"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mimic (differential diagnosis)'>模倣疾患</span>・他疾患で説明できる所見を除外"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='entry criterion'>参入条件</span>(絶対条件)を満たすか"}
    C -->|"満たさない"| D["分類基準を満たさない"]
    C -->|"満たす"| E["各領域の所見に重みづけされた点数を加算"]
    E --> F{"疾患固有の閾値以上か"}
    F -->|"はい"| G["分類基準を満たす(=研究対象として均質)"]
    F -->|"いいえ"| H["満たさないが臨床診断は別途総合判断"]
  • (絶対条件)を先に設ける設計が近年の改訂で主流になった。年齢(GCA 50歳以上・60歳以下)、価(SLEの1:80以上)、時間的関係(APSの陽性と臨床事象が3年以内)など、これを満たさなければ以降どれだけ加点しても分類されない。
  • 旧来の単純項目数カウント式(例:1997年ACR SLE基準の「11項目中4項目」、RAの1987年ACR基準)から、重みづけされた方式への移行が2010年代以降の改訂の主眼である。疾患特異性が高い所見ほど高い点数を与える。
  • 各基準は研究用の感度・特異度のを検証したうえで閾値を設定しており、多くは特異度を優先する設計になっている。そのため閾値未満でも臨床的にその疾患を否定しない、という注記がどの疾患ノートにも共通して置かれている。

代表例:2010 ACR/EULAR関節リウマチ分類基準

他疾患で説明できない圧痛腫脹を伴う関節炎)が1関節以上ある患者に適用する、最も単純な「の単純加算」方式の例である。

領域 所見 点数
関節 大関節1個 / 大関節2〜10個 0 / 1
関節 小関節1〜3個 / 小関節4〜10個 2 / 3
関節 10関節超で小関節を1個以上含む 5
血清 RF・とも陰性 / 低値陽性 / 高値陽性 0 / 2 / 3
CRPESRとも正常 / いずれか異常 0 / 1
持続期間 6週未満 / 6週以上 0 / 1

4領域の合計が6/10点以上でRAに分類する。6点未満や血清陰性でも臨床的RAを否定しない。

代表例:2019 EULAR/ACR全身性エリテマトーデス分類基準

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antinuclear antibody, ANA'>抗核抗体</span>1:80以上を一度でも確認"] --> B["臨床7領域+免疫3領域を評価"]
    B --> C["同一領域は最高点のみ加算"]
    C --> D{"合計10点以上か"}
    D -->|"はい"| E["SLE分類基準を満たす"]
    D -->|"いいえ"| F["満たさない(経過観察・再評価)"]

1:80以上を必須のとする設計が最大の特徴で、これを満たさない限り以降のどのも加点対象にならない。臨床領域(発熱、皮膚、関節炎、腎、神経精神、、血液)と免疫領域(、補体、)のそれぞれで最も高い点数の項目だけを採用し、合計10点以上で分類する。感染、薬剤、腫瘍、他疾患でよりよく説明できる所見は加点しない。旧来の1997年ACR基準(11項目中4項目を満たせば分類、なし)と異なり、抗体陽性を先にゲートとして課したうえでを積む点が設計上の特徴である。

応用例:2022年ACR/EULAR ANCA関連血管炎分類基準

ANCA関連血管炎では、GPA・MPA・EGPAそれぞれに別個の重みづけアルゴリズムが定められている点が他の基準と異なる。血管炎の診断がすでに確立していることを前提に、疑っている病型ごとに臨床・検査・画像・病理所見へ加減点する。⭐ 同じ所見が病型によって加点にも減点にもなりうる点に注意する——陽性はGPAでは分類を支持する加点項目だが、EGPAは通常ANCA陰性か陽性のいずれかであり、陽性はEGPAとしてはなため、EGPAのアルゴリズムではむしろ減点方向に働く。(DVT用/PE用)と同様、同じ所見でも適用するアルゴリズムが違えば意味が逆転することを踏まえて読む必要がある。

解釈とカットオフ

閾値は疾患ごとに固有で、他疾患の基準へ流用できない(上表参照)。点数化のパターンにも幅がある。

パターン 特徴
の単純加算 RA 2010、GCA 2022、2022、2016 全項目の点数を合計し、単一の閾値と比較する
領域別最高点の加算 SLE 2019 同一領域内の重複所見は最高点のみ採用してから合計する
二領域それぞれに閾値 APS 2023 臨床領域・検査領域を独立に採点し、両方が閾値を超えて初めて分類される
単独充足項目つき加算 2013 特定の所見(MCPより近位の手指皮膚硬化)が単独で基準充足になり、他項目の加算を省略できる
2017 単純な点数合計ではなく、重みづけ項目から発症確率を算出し、生検の有無で異なる確率帯(確実/可能性が高い/可能性あり相当)に分類する

限界と使ってはいけない場面

⚠️ 分類基準でありではない。 個々の患者の確定診断は臨床像・検査・画像・病理を統合した臨床的総合判断で行う。閾値未満でも臨床的にその疾患を強く疑うなら、専門的評価・治療開始を遅らせない。

⚠️ の除外を求めるタイミングは基準ごとに異なる。 症候群の基準は歴、活動性C型肝炎、HIV感染、などの適用前に除外する。の基準は逆に、基準を満たした後も他疾患による血栓・産科合併症の可能性を検討し続けることを求める。

⚠️ 旧基準と現行のACR/EULAR合同基準を混同しない。 RAの1987年ACR基準、SLEの1997年ACR基準、GCA・の1990年ACR基準、は歴史的・価値を持つが、いずれも現在の標準的分類基準ではない。同じ疾患名で複数世代の基準が文献に併存するため、引用している基準の版を確認する。

まとめ

  • 」は単一のスコアではなく、疾患ごとに項目・配点・閾値が異なる分類基準群の総称である。
  • 目的は臨床研究のすることであり、個々の患者のではない。
  • 年齢・・時間的関係などの(絶対条件)を先に課し、満たした患者にのみを加算する設計が主流である。
  • RA 2010は単純加算、SLE 2019は領域別最高点の加算、APS 2023は二領域独立、2013は単独充足項目つき、2017はと、点数化のパターンにも幅がある。
  • 疾患活動性・重症度は別の指標(例:RAの)で評価し、分類基準と混同しない。