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Lab values · Published

抗CCP抗体

Anti-CCP antibody

別名
抗環状シトルリン化ペプチド抗体ACPA抗シトルリン化蛋白抗体
臓器系
免疫・膠原病
科目
Internal MedicinePathophysiologyImmunology
トピック
内科学 L-68:関節リウマチ病態生理学 1-32:自己免疫性関節疾患:関節リウマチと強直性脊椎炎免疫学 8.3:自己抗体のスクリーニング法
関連疾患
ウイルス性関節炎関節リウマチ
スコア
ACR/EULAR分類基準

🧠 全体像)は、(RF)感度がほぼ同等でありながら特異度が明確に高い自己抗体で、関節リウマチの診断ではRFより判断を動かす。加えての発症より何年も前から陽性になりうる——「今のRAを診断するマーカー」であると同時に「将来のRA発症を予測するマーカー」でもあるという二重の性格を持つ。この検査を読むときは、RFの回で扱った内容(由来・偽陽性の広さ・2010年分類基準の骨格)を前提に、抗原側の話()とでしか言えないこと(特異度・予後・発症前予測)に絞って押さえるとよい。

何を測っているか

という酵素が、蛋白中の残基をシトルリンへすると、蛋白の・電荷が変化しの対象外だった新しいエピトープが生まれる1。このに対する自己抗体群の総称が)である。測定系では天然のの代わりに合成したを抗原として用いる——現在主流なのは抗原の設計を改良した第2世代(CCP2)で、第3世代(CCP3)も存在するが施設ごとに採用する世代が異なる。つまり」は測定系(アッセイ)の名前であり、実体はという抗体群を指す

産生にはと環境因子が抗原修飾を介してつながる。喫煙とを併せ持つ症例で陽性との関連が強く、CD4 T細胞を介した機序が示唆されている——喫煙は肺でのPAD発現を増やしを促す1。歯周病菌Porphyromonas gingivalisは原核生物として珍しく自前のPADを持ち、独特のパターンで蛋白をすることから発症関与が議論されているが、この菌のペプチドをヒトの免疫系がどう認識するかはまだ研究が不十分で確証には至っていない1

検出されるの免疫グロブリンクラスもと対照的である。RFの主体はIgM型だが、はIgG(特にIgG1)とIgAが主体で、発症早期からIgG1サブクラスの頻度・濃度が優位に増える1

基準値と単位

RFと同様、上限()は測定系・施設ごとに異なる。CCP2とCCP3では値が直接比較できず、施設を跨いで力価を並べるときは測定系の版を確認する。「高力価」は各アッセイの上限に対する相対値で決まる点もRFと共通する。

陽性の意味

陽性の意味は、機序で以下のように整理できる。

内容
関節リウマチの診断 感度はRFとほぼ同等(67% vs 69%)だが特異度が明確に高い(95% vs 85%)ため、RFより判断を動かす2
の一部を拾う RF陰性でも抗CCP陽性ならRAを強く支持する。 RFとは偽陽性を起こす母集団が異なるため、片方が陰性でももう片方が診断を支える
予後 陽性のRAは骨びらんの進行が速く、より破壊的な関節破壊と関連する1
発症前の予測 状のない陽性者は「発症前RA」として扱われうるが、全例が発症するわけではない

💡 は診断であるだけでなく、関節破壊に直接関与すると考えられている。 を介して破骨細胞・に結合し破骨細胞への分化を促進するほか、Ⅱ型コラーゲンとして軟骨のを傷害する経路が報告されている1。RFが「炎症の結果として作られる免疫複合体の部品」であるのに対し、それ自体が組織破壊の実行役になりうるという違いがあり、これが上記の予後との関連を裏づける機序になっている。

2010年では、RFとは「血清学」という同じ領域に置かれ、いずれも陰性なら0点・いずれかがなら2点・いずれかがなら3点を加点する(配点構造そのものはで扱った)3。この・高力価の境界は、RF・ともの3倍で区切られている——ULN以下は陰性、ULN超〜ULNの3倍以下は、ULNの3倍を超えるものがである4

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arthropathy'>関節症</span>状があり<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical synovitis'>臨床的滑膜炎</span>を疑う"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-cyclic citrullinated peptide antibody'>抗CCP抗体</span>は陽性か"}
    B -->|"陽性"| C{"RFも陽性か"}
    C -->|"陽性"| D["特異度が高く関節リウマチを強く支持<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-citrullinated protein antibody'>ACPA</span>陽性は骨びらんの進行が速い"]
    C -->|"陰性"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='seronegative rheumatoid arthritis'>血清反応陰性RA</span>の可能性を含め<br>抗CCP陽性だけでRAを支持"]
    B -->|"陰性"| F["RAを除外しない<br>臨床像・RF・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Acute phase reaction, APR'>急性期反応</span>・画像で総合判断"]

陰性の意味

陰性は関節リウマチを除外しない——感度は67%にとどまり、約3分の1のRA患者は陰性となる2。臨床的な所見があるのに抗CCP陰性だけを理由にRAを否定してはならない点はRFと同じで、診断は血清学単独ではなく臨床像・・画像を統合して行う(全体の位置づけはで扱った)。

⚠️ 測定上の注意

  • ⚠️ 特異度が高いといっても偽陽性は起こる。 95%は、RA以外でも約5%が陽性になることを意味する2。RAの臨床像を欠く陽性は、他の自己免疫疾患・症などの背景を確認してから解釈する。
  • 測定系(CCP2・CCP3)と施設ごとの差により、値を施設間・世代間で直接比較できない。 推移を追うときは同一施設・同一測定系での値を用いる。
  • ⚠️ 治療で力価は下がりうるが、疾患活動性のモニタリングには使わない。 は病初期からほぼ一定で推移し疾患活動性と相関しないため、活動性はなどので測る。

経時変化とモニタリング

は、RFと同様に臨床的な関節炎発症より何年も前から陽性化しうることが報告されている1。ただし陽性だけで将来の関節リウマチ発症を確定するものではなく、状のない陽性者は経過観察の対象にとどまる。

は診断・に優れる一方、疾患活動性とはほとんど相関しないため、治療効果判定には用いない。活動性のモニタリングはCRPで行う——RFが「活動性と相関するが特異度が低い」指標であるのに対し、は「診断・予後には優れるが活動性は映さない」指標という対比になる。

まとめ

  • )は、PADによる残基ので生じる新規エピトープに対する自己抗体群で、測定系には合成CCP(主に第2世代CCP2)を用いる。
  • 喫煙との併存が産生と強く関連し、歯周病菌P. gingivalisのPADとの関連も議論されている。
  • 感度はRFとほぼ同等(67% vs 69%)だが特異度が明確に高く(95% vs 85%)、2010年ではRF・を「血清学」領域として合算し、(ULN超〜ULNの3倍以下)2点・(ULNの3倍超)3点を加点する。
  • RF陰性でも抗CCP陽性ならRAを強く支持し、の一部を拾う。陽性は骨びらんが速く進む予後不良のマーカーでもある。
  • 症状発症の何年も前から陽性になりうる発症前予測マーカーだが、陽性者全例が発症するわけではない。
  • 特異度95%は裏を返せばRA以外の約5%が陽性になることを意味し、臨床像を欠く陽性は背景を確認してから解釈する。測定系・施設差で値を直接比較できず、疾患活動性のモニタリングにはなどを用いる。

出典

  1. 1.Meta-analysis: diagnostic accuracy of anti-cyclic citrullinated peptide antibody and rheumatoid factor for rheumatoid arthritis(Centre for Reviews and Dissemination (DARE)・2007)Nishimuraらのメタ解析で、関節リウマチに対する抗CCP抗体の統合感度が67%(95%CI 62-72)・統合特異度が95%(95%CI 94-97)であり、IgM型リウマトイド因子の感度69%・特異度85%と比べて感度はほぼ同等・特異度が明確に高いことを確認した閲覧 2026-08-04
  2. 2.Performance of the 2010 Classification Criteria for Rheumatoid Arthritis: A Systematic Literature Review and a Meta-Analysis(PLoS ONE・2013)2010年ACR/EULAR関節リウマチ分類基準の血清学領域で、リウマトイド因子・抗CCP抗体(ACPA)とも陰性を0点、いずれかの低力価陽性を2点、いずれかの高力価陽性を3点として配点し、関節・血清学・急性期反応・症状持続期間の4領域合計6点以上で分類することを確認した閲覧 2026-08-04
  3. 3.The 2010 American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism Classification Criteria for Rheumatoid Arthritis: Phase 2 Methodological Report(American College of Rheumatology / European League Against Rheumatism・2010)「Post–consensus meeting modifications」のSerology小節で、血清学領域の力価区分が基準値上限(ULN)を基準に「normal=ULN以下」「low-level positive=ULN超〜ULNの3倍以下」「high-level positive=ULNの3倍超」と定義されていることを確認した。この区分は系統的文献レビューと測定系メーカーからの意見に基づいて定められ、標準化単位が普及すれば見直しうると但し書きされている閲覧 2026-08-04
  4. 4.Anti-Citrullinated Protein Antibodies in Patients with Rheumatoid Arthritis: Biological Effects and Mechanisms of Immunopathogenesis(International Journal of Molecular Sciences・2020)ペプチジルアルギニンデイミナーゼ(PAD)によるアルギニン残基のシトルリンへの翻訳後修飾が新規エピトープを生むこと、ACPAはIgG(特にIgG1)とIgAが主体でRFの主体であるIgMとは異なること、ACPA陽性が臨床症状発症に何年も先行しうること、ACPAが破骨細胞分化を促進しII型コラーゲンと交差反応して軟骨を傷害するなど診断バイオマーカーにとどまらない直接的な病原性を持つこと、ACPA陽性がより破壊的・急速な放射線学的関節破壊と関連すること、喫煙とHLA-DRB1共有エピトープ保有がACPA産生と強く関連しCD4 T細胞の関与が示唆されること、Porphyromonas gingivalisが独自のPADを発現しシトルリン化ペプチドを産生することが議論されているが認識機序の確証はまだ不十分であることを確認した閲覧 2026-08-04