病態生理学

病態生理学 · 1-32

自己免疫性関節疾患:関節リウマチと強直性脊椎炎

Autoimmune joint diseases: rheumatoid arthritis & ankylosing spondylitis

応用トピック
関節リウマチ関節リウマチの臨床像血清反応陰性脊椎関節炎痛風関節炎の鑑別診断血清反応陰性脊椎関節炎若年性特発性関節炎
疾患
関節リウマチ強直性脊椎炎腸骨骨硬化症
症状
亀背急性前部ぶどう膜炎
検査値
HLA-B27リウマトイド因子抗CCP抗体
画像所見
仙腸関節炎竹様脊椎

🧠 RA は「滑膜の慢性炎症が軟骨・骨を食う」病気。 無治療では → ・ → 骨びらん・変形へ進み得るが、診断後ただちにを開始し、寛解を目標に定期評価するtreat-to-targetでこのを変えられる。AS を含むは・脊椎の炎症で、安静でなく運動で軽快するが特徴。X線でが写る前の段階もで捉えられる。

関節リウマチ(RA)

  • 関節リウマチは全身性・慢性炎症。MCP、PIP、手関節、MTPなどのを好むが、発症・進展が必ずからへの一方向とは限らない。
    • : -DRB1など
    • 環境・粘膜因子: 喫煙、歯周・気道などの症。特定の病原体感染をRAの確立した単一誘因とは断定しない

病態機序

flowchart TD
  T["CD4⁺ T細胞が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arthritogenic'>関節炎誘発性</span>抗原に反応"] --> AB["B細胞+マクロファージを活性化"]
  AB --> CY["サイトカイン/自己抗体 → <span class='jp-term jp-term-diagram' title='synovitis'>滑膜炎</span>症"]
  CY --> TNF["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumor necrosis factor-alpha'>TNF-α</span>:白血球動員・マクロファージ活性化"]
  CY --> IL1["IL-1:滑膜/線維芽細胞増殖"]
  CY --> RANKL["RANKL:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteoclast differentiation'>破骨細胞分化</span> → 骨びらん"]

自己抗体

分類基準(2010 ACR/EULAR)

領域 所見 点数
関節 1個 / 2〜10個 0 / 1
関節 1〜3個 / 4〜10個 2 / 3
関節 10関節超でを1個以上含む 5
血清 RF・とも陰性 / 低値陽性 / 高値陽性 0 / 2 / 3
・とも正常 / いずれか異常 0 / 1
持続期間 6週未満 / 6週以上 0 / 1

6点未満・でも臨床的RAを否定しない。分類基準は臨床研究のをするためのものであり、個々の患者の確定診断そのものではない。

臨床と構造障害

💡 無治療では → → 骨びらん・ → ・変形へ進み得るが、全例がへ一本道に進むわけではない。

  1. () 
  2. 慢性(破骨細胞↑→骨びらん) 
  3. (・) 
  4. 構造障害(骨びらん、、腱・障害、・変形) 
  5. (主に皮下圧迫部位、肺など) 
  6. 長期・高活動性の血清反応陽性例では、によるやを来し得る。

治療

⚠️ 診断後に・ステロイドだけで経過を見ない。 疼痛は和らぐがは防がず、の代わりにはならない。速やかにメトトレキサート+葉酸を中心とするを開始するのが原則で、ステロイドを使う場合も 開始・変更時の短期の橋渡しにとどめ速やかに減量・中止する2。

強直性脊椎炎(AS)

体軸性脊椎関節炎という枠組み

  • 現行は(axSpA)という概念で捉える。骨盤単純X線で明瞭なを示す病型が、示さない病型が()で、両者は別疾患ではなく同一病態の連続体である。
  • 💡 X線は骨びらん・硬化・という「過去の損傷の蓄積」しか写さず変化まで年単位を要するが、はという「今の活動性炎症」を直接描出できるため、X線でが写る前の段階でもで活動性を確認できる3。

炎症性腰痛(機械的腰痛との鑑別)

💡 がを疑う入口となる。次の5項目のうち4項目以上を満たせば、よりらしいと判断する根拠になる4。

特徴 内容
発症年齢 40歳未満での発症
緩徐
運動での改善 あり
安静での改善 なし(安静でむしろ悪化する)
あり(睡眠後半に増悪して覚醒するが、起きて体を動かすとむしろ軽快する)

が3か月以上持続し45歳未満で発症していることは、この5項目とは別に、(全体の)で求められる要件である——年齢の(の5項目は40歳未満、分類基準のは45歳未満)と持続期間の扱いが異なる点を混同しない。

診断

  • 骨盤単純X線でを評価し、HLA-B27、/を組み合わせる。・が正常でも活動性を否定しない。
  • を伴う場合はでを調べる。を確定するためではなく、や(痛風・)を除外するために行う。
  • X線で明瞭ながなければでを評価する。は、(X線基準を満たす、またはで典型的な+所見1項目以上)と基準群(陽性+所見2項目以上)のいずれかで、X線変化が出る前の患者も含めて分類する。
  • ⚠️ も、単純X線所見を必須とする1984年のも、いずれも「分類基準」であってではない。 に確立したは存在せず、診断は症状・身体所見・画像・検査・治療反応を総合した臨床判断である。とくにを確定診断の要件にしてしまうと、X線変化が出る前のを原理的に診断できなくなる——上の連続体の考え方と矛盾する。

治療

痛風

  • 痛風は赤く熱く腫れた関節の反復発作(>60歳)。最多原因:(血清尿酸 >400 µmol/L、およそ6.7 mg/dL)。
機序 原発性 続発性
尿酸産生↑ 大半は原因不明。として欠損(など、稀) 悪性腫瘍の細胞傷害性治療 → 腫瘍細胞の崩壊でプリン放出
排泄↓ 原発性の大半はこちら(腎からのが相対的に低い) 腎不全、脱水、利尿薬、高血圧、アルコール
  • 💡 急性発作の正体: 関節内にした尿酸ナトリウム結晶を好中球・マクロファージが貪食 → が活性化してIL-1βが放出され、好中球がさらに呼び込まれる → 結晶が細胞を傷害して崩壊し、炎症メディエーターが放出される。突然・有痛性の非対称性単/()、発熱。診断:ので、針状・を示すを確認する。
  • 増悪:
    • 肥満
    • アルコール
    • プリン豊富食(肝、赤身肉)

まとめ

項目 関節リウマチ(RA) (AS)/
→ → 骨びらん・変形(MCP・PIP・手関節・MTPなど) ・脊椎の炎症、 → ・
遺伝因子 -DRB1(class II) (class I)
自己抗体・検査 RF(特異度低)、(特異度高・予後不良マーカー) 、/(正常でも活動性を否定しない)
分類基準 2010 ACR/:1関節以上、4領域の合計6/10点以上 ASAS:3か月以上・45歳未満発症で、または基準群
特徴的症状 対称性の炎、 (5項目中4項目以上。安静で改善せず運動で軽快)
画像 骨びらん X線の(AS)、X線変化前はの()
第一選択 診断後ただちに(+)でtreat-to-target 運動療法+(純粋なには無効)
次の一手 で目標未達なら(阻害薬はリスク評価後) ASDAS 2.1以上・ 2剤以上無効で、上昇・の炎症・X線ののいずれかを伴えば・阻害薬の適応。阻害薬またはIL-17阻害薬から開始
共通の注意 生物学的製剤・阻害薬の前にとB型肝炎をスクリーニング 同左
  • 分類基準(RAの2010 ACR/、axSpAのASAS・modified New York)はではない。
  • 痛風:(原発性の大半は排泄低下型)→ の沈着と貪食による。診断はの結晶。

出典

  1. 1.2010 Rheumatoid arthritis classification criteria: an American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism collaborative initiative(Arthritis and Rheumatism・2010)1987年ACR基準が早期例の感度に欠けることを踏まえ、他疾患で説明できない臨床的滑膜炎1関節以上を対象に、関節・血清・急性期反応・持続期間の4領域(合計10点)を合算し6点以上でRAに分類する現行基準であることを確認した。閲覧 2026-08-14
  2. 2.EULAR recommendations for the management of rheumatoid arthritis with synthetic and biologic disease-modifying antirheumatic drugs: 2025 update(European Alliance of Associations for Rheumatology (EULAR)・2026)全文(Ann Rheum Dis 2026;85(6):991-1009。コペンハーゲン大学リポジトリの誌上版PDF)で確認した。推奨1〜6で、診断後ただちにDMARDを開始し、持続的寛解または低疾患活動性を目標とし、活動期は1〜3か月ごとに評価して開始後3か月以内に改善がなければ、または6か月で目標に達しなければ治療を調整すること、MTXを最初の治療戦略に含め、MTX禁忌・早期不耐ではレフルノミドまたはスルファサラジンを検討すること(ヒドロキシクロロキンは推奨文に挙がらず、3剤併用がMTX+グルココルチコイドを上回る根拠は不十分とされる)、短期グルココルチコイドはcsDMARDの開始・変更時に考慮し臨床的に可能な限り速やかに減量・中止すること、csDMARD戦略で目標未達ならbDMARDを追加し、JAK阻害薬は関連する危険因子(MACE・悪性腫瘍・血栓塞栓症)を考慮したうえで検討しうることを確認した閲覧 2026-08-14
  3. 3.Defining active sacroiliitis on MRI for classification of axial spondyloarthritis: update by the ASAS MRI working group(ASAS / OMERACT MRI working group・2016)軟骨下骨の骨髄浮腫という活動性仙腸関節炎の所見はMRIでX線変化が出る前の段階から検出でき、これがX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎(nr-axSpA)の分類を可能にすることを確認した。閲覧 2026-08-14
  4. 4.New criteria for inflammatory back pain in patients with chronic back pain: a real patient exercise by experts from the Assessment of SpondyloArthritis international Society (ASAS)(Assessment of SpondyloArthritis international Society (ASAS)・2009)炎症性腰痛を機械的腰痛と区別する5基準(運動で改善、夜間痛、緩徐発症、40歳未満での発症、安静では改善しない)のうち4項目以上を満たすことが、専門家判断を基準に感度77.0%・特異度91.7%(検証コホートでは感度79.6%・特異度72.4%)で成立することを確認した。閲覧 2026-08-14
  5. 5.ASAS-EULAR recommendations for the management of axial spondyloarthritis: 2022 update(ASAS / EULAR・2022)抄録で確認した(PMID 36270658、全文は未取得)。NSAIDsが第一選択の薬物治療であること、純粋な体軸病変には長期のグルココルチコイドと従来型合成DMARDを推奨しないこと、推奨9としてASDAS 2.1以上でNSAIDs 2剤以上が無効かつCRP上昇・仙腸関節のMRI炎症・X線仙腸関節炎のいずれかを伴う患者にbDMARD(TNF阻害薬・IL-17阻害薬)とtsDMARD(JAK阻害薬)が適応となり、現在の実践ではTNF阻害薬またはIL-17阻害薬から開始すること、推奨10として反復性ぶどう膜炎・炎症性腸疾患ではTNFモノクローナル抗体、明らかな乾癬ではIL-17阻害薬を優先することを確認した閲覧 2026-08-14