薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B29 Immunosuppressants / 免疫抑制薬 · 必修

トファシチニブ

tofacitinib

分類
Immunosuppressants / 免疫抑制薬
商品名(日本)
ゼルヤンツ
商品名(EU)
Xeljanz
科目
Pharmacology
トピック
B29: Immunopharmacology II (Inhibitors of cytokine gene expression, 5-ASA derivatives)
禁忌疾患
肺血栓塞栓症深部静脈血栓症結核
副作用
血栓塞栓症
監視検査値
血算
対象疾患
乾癬性関節炎関節リウマチ強直性脊椎炎潰瘍性大腸炎反応性関節炎
原因となる疾患
水痘・帯状疱疹

🧠 全体像経口の低分子でJAK1/JAK3を阻害し、サイトカインシグナルを広く止める薬である。生物学的製剤(など)が単一のサイトカインを外側から中和するのに対し、JAK阻害薬は細胞内でIL-2・IL-6・IL-15・など複数のからのシグナルをまとめて遮断する。この「広さ」が効果の強さでもあり、ORAL Surveillance試験を受けた心・悪性腫瘍・血栓症のという弱点の理由でもある。

薬効群の中での位置づけ

JAK阻害薬( 生物学的製剤(TNF阻害薬など)
剤形 経口/静注 経口 経口低分子 注射(皮下/静注)
標的 IL-2産生 IL-2への反応 JAK-STAT経路全般 単一サイトカイン/受容体
T細胞選択的 T細胞選択的 多系統のに作用 標的サイトカインに依存
特有の懸念 腎毒性 創傷治癒遅延 心血管・悪性腫瘍・血栓( 結核、注射部位反応

⭐ 全体の位置づけはの「薬効群の中での位置づけ」表(①〜⑤の全体図)も参照。は③「サイトカインシグナルを止める」に属し、同じ③には機序の異なる(PDE4阻害)がある。

機序

flowchart TD
    A["IL-2・IL-6・IL-15などの<br>サイトカインが受容体に結合"] --> B["受容体に会合したJAKが<br>本来は活性化される"]
    B -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tofacitinib'>トファシチニブ</span>がJAK1/JAK3を阻害"| C["JAKの活性化が起こらない"]
    C --> D["STATがリン酸化されない"]
    D --> E["STATが二量体を形成できず核内へ移行できない"]
    E --> F["サイトカイン誘導遺伝子の転写が起こらない"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>のシグナル伝達が広く遮断される"]

💡 がIL-2の「産生」を止めるのに対し、JAK阻害薬はIL-2を含む複数サイトカインの「受け取り」を止める。 対象が単一のIL-2遺伝子ではなく多数のにまたがるため、効果も副作用の幅も広くなる。

薬物動態

項目 値・特徴
約74%
代謝 CYP3A4が主(一部CYP2C19)
排泄 代謝物として腎・糞便排泄
半減期 約3時間と短い(は1日2回投与、は1日1回)

適応

用法・用量

関節リウマチ・:1回5 mgを1日2回。:導入期は1回10 mgを1日2回とし、その後1回5 mgを1日2回へ減量する。腎機能・肝機能低下例、強いCYP3A4阻害薬併用時は減量する。実際の用量は適応・年齢・腎肝機能・併用薬で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌の既往、結核を含む
  • ⚠️ ORAL Surveillance試験(2022年)を受けた:TNF阻害薬と比較して、・悪性腫瘍・のリスクが高い。 特に50歳以上かつを1つ以上持つ患者で該当し、他の肢を検討したうえで使用する
  • 帯状疱疹(水痘・帯状疱疹)の再活性化リスクが他のDMARDより高い
  • 開始前に結核・肝炎ウイルスのスクリーニングを行う
  • 生ワクチンは接種を避ける
  • 脂質異常(LDLコレステロール上昇)が起こりうるため治療開始後に脂質検査を行う

副作用

頻度 内容
高頻度 、頭痛、脂質異常(LDLコレステロール上昇)
注意 帯状疱疹などの感染症、、血球減少(血算でモニタリング)
重篤・まれ 、悪性腫瘍、消化管穿孔(RAでのIL-6経路関与時と同様のリスクが指摘される)

まとめ

  • 経口の低分子JAK1/JAK3阻害薬。細胞内でJAK-STAT経路を阻害し、複数のサイトカインシグナルをまとめて遮断する。
  • が「IL-2を作らせない」のに対し、は「複数サイトカインを受け取らせない」。
  • 生物学的製剤と異なりでき、単一標的ではなく広い範囲のサイトカインシグナルを止められる。
  • ORAL Surveillance試験を受けた:TNF阻害薬に比べ心・悪性腫瘍・血栓症・死亡のリスクが高く、特に50歳以上かつを持つ患者で問題になる。
  • の既往、を含む感染症は禁忌。
  • 関節リウマチ・に適応を持つ。
  • 帯状疱疹の再活性化リスクが他のDMARDより高く、開始前のが必要。