疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 感染症 · 疾患

水痘・帯状疱疹

Varicella-zoster virus infection (chickenpox and shingles)

別名
ChickenpoxShinglesHerpes zoster水痘帯状疱疹
臓器系
感染症皮膚
科目
Medical MicrobiologyDermatologyPediatrics
トピック
微生物学 3/13:ヘルペスウイルス:水痘・帯状疱疹ウイルス皮膚科 1-14:単純ヘルペスと帯状疱疹小児科 22:ヘルペスウイルス感染症小児科 3-48:小児の発熱と発疹
鑑別疾患
Eczema coxsackiumエムポックスカポジ水痘様発疹症ベル麻痺(末梢性顔面神経麻痺)外耳炎急性苔癬状痘瘡状粃糠疹細菌性皮膚感染症(伝染性膿痂疹・毛包炎・せつ・よう)単純ヘルペスウイルス感染症風疹(先天性風疹症候群含む)麻疹猩紅熱頸椎・腰椎椎間板ヘルニアによる神経根症
合併症
眼部帯状疱疹
続発疾患
ウイルス性脳炎ライ症候群
関連疾患
先天性TORCH感染症
治療薬
(バル)アシクロビルファムシクロビルアメナメビル水痘生ワクチン組換え帯状疱疹ワクチン
原因薬剤
ボルテゾミブフィンゴリモドトファシチニブ
原因微生物
Varicella zoster virus
症状
顔面神経麻痺小水疱水疱掻痒神経栄養性角膜症嚥下障害嗄声
検査値
ウイルス培養
下位分類
先天性水痘症候群
適応薬
(バル)アシクロビルアメナメビルジメチンデンファムシクロビル水痘生ワクチン組換え帯状疱疹ワクチン
禁忌薬
ダクチノマイシン

🧠 全体像:は1つのウイルスが生涯で2回、全く違う顔の病気を起こす。初感染は気道から侵入し2回のウイルス血症を経て全身へ散布する水痘として発症し、その後はに数十年潜んで、免疫が落ちた瞬間に1つのだけを侵す帯状疱疹として再来する。水痘はの全身発疹、帯状疱疹は片側1限局という分布パターンが診断の決め手になる。

病態

は飛沫感染・水疱内容との接触で伝播し、気道から侵入して局所リンパ節で増殖したのち、第1回ウイルス血症で肝臓・脾臓へ、約2週間後の第2回ウイルス血症で皮膚へ散布されて水痘を発症する。皮疹から感覚神経を逆行性にされ、・に潜伏する。加齢や免疫低下で再活性化すると、軸索をに皮膚へ移動して片側1の帯状疱疹をつくる。

flowchart TD
  A["気道からの吸入(飛沫感染)"] --> B["局所リンパ節で増殖"]
  B --> C["第1回ウイルス血症→肝臓・脾臓へ散布"]
  C --> D["第2回ウイルス血症(約2週間後)→皮膚へ散布"]
  D --> E["水痘(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='asynchronous'>非同期性</span>の発疹)"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsal root ganglion (DRG)'>後根神経節</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cranial nerve ganglion'>脳神経節</span>に潜伏"]
  F -->|"加齢・免疫抑制"| G["帯状疱疹(片側1<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermatome'>皮節</span>の疼痛性水疱)"]

臨床像

水痘(初感染)

紅斑→丘疹→水疱→痂皮という異なる発育段階の病変が体幹優位に同時に混在し、掻痒を伴う。発熱、頭痛、倦怠感を伴い、成人・免疫不全者では肺炎・脳炎を合併し得る。

⭐ 水痘とは発疹の同期性で鑑別する。は全病変が同じ発育段階で四肢優位・を伴うのに対し、水痘は病変の発育段階がバラで体幹優位という古典的な鑑別点がある。

帯状疱疹(再活性化)

加齢に伴って細胞性免疫が落ちるにつれ発症率が上がり、多くは50歳以降に発症する。免疫抑制状態では年齢を問わず起こりうる。片側1に限局する有痛性の小水疱で、を越えない(免疫不全患者で播種性になった場合を除く)。

合併症 ・対応
高齢、強い・広い発疹でリスク上昇。として管理
(V1)領域、・。失明のリスクがあり即日眼科評価
耳介・外耳道の小水疱、、・めまい
咽頭・喉頭の帯状疱疹(障害) (IX)・迷走神経(X)領域の再活性化。片側のと嚥下障害、X神経障害による喉頭麻痺()と嗄声。皮疹を欠く例が3割あり、血清学が診断の鍵になる
複数を越える多数病変・臓器病変。免疫不全で多く、入院・静注治療
中枢神経・内臓合併症 髄膜炎、脳炎、、肺炎など。緊急入院

💡 帯状疱疹のは顔面神経だけではない。 咽頭・喉頭に生じた帯状疱疹34例(日本の、2007〜2025年)の後ろ向き解析では、(IX)と迷走神経(X)がそれぞれ59%で最も多く侵され、顔面神経は24%にとどまった。嚥下障害は22例(65%)に生じ、5例が栄養補助を要し2例がを来した。のあった25例のうち完全回復は14例(56%)で、X神経障害による喉頭麻痺の回復率は50%と最も不良だった。34例中11例(32%)は皮疹を伴わないで、血清学的確認が診断に不可欠である1。原因不明の片側・嚥下障害の鑑別として、皮疹が無くても帯状疱疹を外さない。

⚠️ 妊娠中の初感染は(性の、、、中枢神経障害を四徴とする)という不可逆的な胎児障害を残し得る。

診断

典型的な水痘・帯状疱疹は臨床診断できる。診断が不確実な場合や決定に病変()を優先し、(の確認)は感度が低くとの鑑別もできないため補助的位置づけにとどまる。小児の発熱+発疹では、麻疹・風疹・・との鑑別が重要になる。

疾患 鑑別点
水痘 紅斑→丘疹→水疱→痂皮が同時に混在、体幹優位
麻疹 3C(咳・・結膜炎)と、・顔から下降する
GAS咽頭炎、、体幹から広がる
HHV-6/7。と同時に体幹から出現する淡い発疹

治療

水痘(初感染)と帯状疱疹(再活性化)では治療の組み立てが違う。以下は主語がどちらの病態かに注意して読む。

  • 水痘:健常な小児では通常支持療法で足り、皮膚をかき壊さないよう爪を短く保つ。重症化リスクのある群(成人、免疫不全、新生児曝露、肺炎・脳炎合併)では抗ウイルス薬を用い、重症例には静注アシクロビルを用いる。
  • 帯状疱疹:アシクロビル/、を用い、発疹出現72時間以内の開始が最も有効である。72時間を超えても新生水疱、眼・、免疫不全があれば治療を開始する。
  • 帯状疱疹:日本ではではなく・阻害薬のアメナメビル(アメナリーフ)も帯状疱疹に承認されており、電子添文の用法は「1回400mgを1日1回食後に」、皮疹出現後5日以内の開始が望ましく、原則7日間使用する。空腹時では吸収が低下して効果が減弱するため食後服用を指導する。⚠️ はリファンピシン(相互のCYP3A誘導で双方の作用が減弱する)で、悪性腫瘍・自己免疫疾患などの低下を伴う患者での有効性・安全性は確立していない(小児でのも未実施)2。
  • 副腎皮質ステロイド単独や局所抗ウイルス薬は帯状疱疹治療に用いない。

⚠️ アシクロビル系(アシクロビル・・)はである。 腎機能低下例で用量・を調整しないと、意識障害・・といった神経毒性(アシクロビル脳症)を来す。帯状疱疹の患者層は高齢者に偏るので、処方の前に必ず腎機能を確認する。

⚠️ 水痘罹患後の小児にアスピリンを投与しない。のリスクがあるため、にはなどを用いる。

予防

対象
小児(予防) を生後12〜15か月と4〜6歳の2回接種する3
帯状疱疹予防(米国):50歳以上の免疫正常者、19歳以上の免疫不全者 (非生ワクチン)を2回接種する(通常2〜6か月間隔、迅速に免疫が必要な場合は1〜2か月間隔まで短縮可)4
帯状疱疹予防(日本の):その年度に65歳となる者、および60〜64歳でによる免疫の機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な者 生ワクチンを皮下に1回、または組換えワクチンを2か月以上の間隔をあけて2回に接種する5
非免疫者の曝露後予防(発症前) 曝露後3〜5日以内なら接種、ワクチンが使えない免疫不全者・妊婦・新生児などの高リスク者にはVariZIGを可能な限り早期、遅くとも曝露後10日以内に投与する36

⚠️ 「帯状疱疹予防はもう組換えワクチンだけ」は米国の話である。 旧来の帯状疱疹生ワクチンは2020年に米国で販売中止となり、米国では組換え非生ワクチンが唯一の選択肢になった。一方日本では2025年度からが法に基づくとなり、生ワクチンと組換えワクチンのいずれも使える5。「生ワクチンは過去のもの」と覚えると国内の運用と食い違う。ただし生ワクチンは弱毒生であるため、免疫不全者には組換えワクチンを選ぶ必要がある——生ワクチンが打てない人にも使えることが組換えワクチンの決定的な利点である。

日本のには2025年度から2029年度までの5年間の経過措置があり、その年度内に70・75・80・85・90・95・100歳となる者も対象になる。100歳以上の者は2025年度に限り全員が対象である5。

まとめ

  • は気道感染→2回のウイルス血症→水痘→での潜伏→再活性化による帯状疱疹という一連の経過をたどる。
  • 水痘はの全身発疹、帯状疱疹は片側1限局の有痛性水疱で、やV1罹患時の失明リスクを伴う。
  • 帯状疱疹のは顔面神経()に限らない。咽頭・喉頭型では(IX)・迷走神経(X)が最も多く侵され、嚥下障害とを来す。3割は皮疹を欠くので、皮疹が無いことは除外の根拠にならない。
  • 治療はアシクロビル系抗ウイルス薬(。腎機能低下例では減量しないと神経毒性)で、帯状疱疹は発疹出現72時間以内の開始が最も有効である。日本ではアメナメビルも選択肢になる。
  • 水痘予防は生ワクチン、帯状疱疹予防は米国では組換え非生ワクチンのみ、日本では2025年度からので生ワクチンと組換えワクチンの両方が使える。水痘予防と帯状疱疹予防は目的が違うので区別する。

出典

  1. 1.Outcomes of cranial nerve disorders in pharyngo-laryngeal herpes zoster: A retrospective study of 34 cases at a single institution(Auris Nasus Larynx・2026)日本の三次医療機関で2007年7月〜2025年6月に咽頭・喉頭の帯状疱疹と診断された34例(男24・女10、平均61.7歳)の後ろ向き解析。舌咽神経(IX)と迷走神経(X)がそれぞれ59%で最も多く侵され顔面神経は24%、嚥下障害は22例(65%、うち5例が栄養補助・2例が誤嚥性肺炎)、脳神経麻痺25例中の完全回復は14例(56%)でX神経障害による喉頭麻痺の回復率は50%と最も不良、11例(32%)が皮疹を伴わないzoster sine herpeteであり血清学的確認が診断に不可欠であることを確認した(抄録のResultsに全数値が記載されている)。閲覧 2026-09-05
  2. 2.アメナリーフ錠200mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2023)2023年2月改訂(第2版)の電子添文で、効能・効果が帯状疱疹および再発性の単純疱疹であること、帯状疱疹の用法・用量が「1回400mgを1日1回食後に経口投与」であること、7.1が空腹時投与で吸収低下・効果減弱のおそれがあるため食後服用を指導すると定めること、7.2が「目安として皮疹出現後5日以内に投与を開始することが望ましい」、7.3が「原則として7日間使用する」と定めること、2.2でリファンピシン投与中の患者が禁忌(10.1 併用禁忌、相互のCYP3A誘導で双方の作用が減弱)であること、9.1.1で悪性腫瘍や自己免疫性疾患など免疫機能の低下を伴う患者への有効性・安全性が確立していないこと、9.7で小児等を対象とした臨床試験が実施されていないことを確認した。閲覧 2026-09-05
  3. 3.Varicella Vaccine Recommendations(CDC・2024)水痘生ワクチンの標準スケジュール(生後12〜15か月・4〜6歳)と、非免疫者への曝露後3〜5日以内のワクチン接種による発症予防の推奨を確認した。閲覧 2026-08-02
  4. 4.Use of Recombinant Zoster Vaccine in Immunocompromised Adults Aged ≥19 Years: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices — United States, 2022(CDC ACIP・2022)組換え帯状疱疹ワクチンが19歳以上の免疫不全者にも適応拡大され、通常2〜6か月間隔(迅速な免疫が必要な場合は1〜2か月間隔まで短縮可)で2回接種することを確認した。閲覧 2026-08-02
  5. 5.帯状疱疹ワクチン(厚生労働省・2025)2025年度から65歳の者などへの帯状疱疹ワクチンが予防接種法に基づく定期接種の対象になったこと、対象がその年度に65歳となる者と60〜64歳でHIVによる免疫の機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な者であること、2025年度から2029年度までの5年間の経過措置としてその年度内に70・75・80・85・90・95・100歳となる者も対象で100歳以上は2025年度に限り全員が対象であること、生ワクチン(皮下に1回)と組換えワクチン(2か月以上の間隔をあけて2回筋肉内)のいずれも使えることを確認した。予防接種法上のA類/B類の区分は本ページには記載が無い。閲覧 2026-09-05
  6. 6.Updated Recommendations for Use of VariZIG — United States, 2013(CDC・2013)曝露後予防に用いる水痘帯状疱疹免疫グロブリンの現行製剤名がVariZIGであり、曝露後可能な限り早期、遅くとも10日以内の投与が推奨されることを確認した。閲覧 2026-08-02