小児科学

小児科学 · 22

ヘルペスウイルス感染症

Herpes virus infections

前提:病態
ヘルペスウイルス:単純ヘルペスウイルス1・2型ヘルペスウイルス:水痘・帯状疱疹ウイルス
疾患
水痘・帯状疱疹突発性発疹

🧠 全体像:は8亜型に分かれ、初感染後は宿主体内に潜伏するという共通の性質を持つウイルス群である。番号(HHV 1〜8)を「どの疾患に対応するか」の索引として覚えると整理しやすく、HHV1/2は、HHV3は水痘/帯状疱疹、HHV4は、HHV5は先天性/日和見感染、HHV6・7は、HHV8はという対応になる。

ヒトヘルペスウイルス総論

は大きなウイルス群で、初感染後は宿主に潜伏する。8亜型がそれぞれ異なる疾患を引き起こす。

型 ウイルス名 主な疾患 感染経路 治療
HHV 1 、 唾液・病変との直接接触 支持療法が中心。重症・摂取困難・発症早期などではアシクロビルを検討
HHV 2 、新生児、 性的接触・病変との直接接触。新生児では主に分娩時の産道曝露 抗ウイルス薬(アシクロビル)
HHV 3 初感染=水痘、=帯状疱疹 空気・・水疱内容への接触 ワクチンは予防。典型的な健康小児は支持療法が中心で、高リスク例などでは抗ウイルス薬を検討
HHV 4 (“kissing disease”) 唾液、物 対症療法
HHV 5 先天性、単核球症様疾患、日和見感染 先天性、唾液、尿など 免疫正常者は通常治療不要。症候性先天性などで/を検討
HHV 6・7 — 唾液 自然軽快
HHV 8 関連ヘルペスウイルス 唾液 の治療

HHV 1:単純ヘルペスウイルス1型

、を引き起こす。濃厚接触(唾液、病変との接触)で伝播する。多くは支持療法で軽快するが、重症、免疫不全、摂取困難、発症早期などではアシクロビルを検討する。小児のでは、発症早期に開始した経口アシクロビルが症状と摂食・飲水障害の期間を短縮した。1

のポイント:口唇縁にする小水疱・びらんは再発性を示唆する。初感染のでは口腔内に広い疼痛性病変が出現し、乳幼児では脱水に注意する。

HHV 2:単純ヘルペスウイルス2型

、新生児、を引き起こす。成人・年長児では病変や性器分泌物との直接接触、新生児では分娩時の産道曝露が重要な感染経路で、アシクロビルで治療する。

⚠️ は皮膚・眼・、CNS型、に分かれ、水疱がなくても敗血症様症状やけいれんで発症しうる。疑えば検体採取と並行して静注アシクロビルを開始し、小児感染症専門医へ緊急相談する。2 急性期治療後は病型に応じて経口アシクロビルを行い、神経発達・聴覚・眼科所見と再発を追跡する。3

HHV 3:水痘帯状疱疹ウイルス

初感染は水痘、再活性化は帯状疱疹として発症する。物で伝播する。予防はワクチン接種による。

のポイント:水痘は体幹優位に、紅斑・丘疹・小水疱・痂皮という異なる段階の皮疹が同時に存在する。ワクチンは治療ではなく予防であり、典型的な健康小児では支持療法が中心となる。発疹出現後早期の経口アシクロビルには症状短縮効果があるが、重篤合併症を減らす根拠は確立していないため、重症化リスク、合併症、宿主背景を踏まえて適応を判断する。4

HHV 4:EBウイルス

(“kissing disease”)の原因。リンパ球増殖を伴う伝染性の高い急性疾患で、発熱・倦怠感・疲労感から始まり、、扁桃炎、リンパ節腫脹、脾腫へと進展する。唾液・物で伝播する。

⚠️ 治療は対症療法が中心だが、脾腫によるのリスクがあるため、急性期はコンタクトスポーツなど脾臓に負荷のかかるを避ける。復帰時期は一律ではなく、症状、発症からの期間、脾腫、競技特性を踏まえて個別に判断する。5

HHV 5:サイトメガロウイルス

免疫正常者では通常無症候性だが、単核球症様症状を来すこともある。免疫不全患者では網膜炎、大腸炎、脳炎、肺炎などの臓器病変や重篤なを来しうる。感染経路は先天性、唾液、尿。健康な免疫正常者には通常抗ウイルス治療を行わない。症候性先天性では、6か月のが6週間投与と比べて長期の聴覚・神経発達転帰を中等度改善しうる一方、好中球減少などを監視する。無症候性先天性へ同じ利益を外挿せず、小児感染症専門医と適応を判断する。6

HHV 6・7:突発性発疹

主に乳幼児に発症するウイルス性発疹性疾患。高熱が先行し、とともに体幹にが突然出現、顔面・四肢に広がることもあり、2日以内に消退する。唾液で伝播し、自然軽快する。

のポイント:後に体幹から淡い斑状丘疹が現れる時間関係が重要で、発熱中から発疹が進む麻疹などとの鑑別に役立つ。

HHV 8:Kaposi肉腫関連ヘルペスウイルス

血管内皮系の増殖を特徴とするの原因で、主に免疫不全患者に発症する。皮膚・口腔粘膜などに孤立性または多発性の紫色/青紫色/赤褐色の斑、局面、結節を来す。治療はの是正(例:患者への)と病変範囲に応じた腫瘍治療による。

まとめ

  • HHVは8亜型に分かれ、初感染後は宿主体内に潜伏するという共通の性質を持つ。
  • HHV1/2は(口唇/性器)、HHV3は水痘・帯状疱疹、HHV4は、HHV5は先天性/感染、HHV6・7は、HHV8はに対応する。
  • 感染症ではリスクのため接触スポーツを避けること、は免疫不全者で重症化しうることが臨床上重要である。

出典

  1. 1.Treatment of herpes simplex gingivostomatitis with aciclovir in children: a randomised double blind placebo controlled study(1997)発症早期の小児ヘルペス性歯肉口内炎では経口アシクロビルが口腔病変、発熱、摂食・飲水障害の期間を短縮することを確認した。閲覧 2026-08-13
  2. 2.Safety and efficacy of high-dose intravenous acyclovir in the management of neonatal herpes simplex virus infections(2001)新生児HSVのCNS型・播種型に対する高用量静注アシクロビルで生存転帰が改善したことを確認した。閲覧 2026-08-13
  3. 3.Oral acyclovir suppression and neurodevelopment after neonatal herpes(2011)新生児HSVの静注治療後6か月間の経口アシクロビル抑制療法は、CNS病変例の神経発達転帰と皮膚病変再発を改善することを確認した。閲覧 2026-08-13
  4. 4.A controlled trial of acyclovir for chickenpox in normal children(1991)健康小児の水痘で発疹出現後早期に開始した経口アシクロビルは発熱や皮疹などを短縮したが、重篤合併症を減らす根拠は確立しなかったことを確認した。閲覧 2026-08-13
  5. 5.American Medical Society of Sports Medicine Position Statement: Mononucleosis and Athletic Participation(2023)伝染性単核球症後の運動復帰は脾破裂リスクを考慮し、症状、発症からの期間、競技特性を踏まえて個別判断する必要があることを確認した。閲覧 2026-08-13
  6. 6.Valganciclovir for symptomatic congenital cytomegalovirus disease(2015)症候性先天性CMVに対する6か月のバルガンシクロビルは6週間投与と比べ、短期聴覚の主要評価項目では差がなかったが、長期の聴覚・神経発達転帰を中等度改善し、好中球減少の監視を要することを確認した。閲覧 2026-08-13