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Microbe Atlas · ウイルス

Cytomegalovirus

サイトメガロウイルス

分類
ヘルペスウイルス / Herpesviruses
性状
エンベロープあり EnvelopeddsDNA
科目
Medical Microbiology
トピック
5/24: Microbes causing pre- and perinatal infections (list) in the fetus / new-born baby5/26: Normal flora of the genital tract. Pathogens of sexually transmitted diseases (list)5/27: Screening and verification of HIV-infections. Microbes causing opportunistic infections related to AIDS (list)
原因となる疾患
Bickerstaff脳幹脳炎HIV感染症・AIDSMiller Fisher症候群Posner-Schlossman症候群サイトメガロウイルス網膜炎ジアノッティ・クロスティ症候群メネトリエ病感音難聴急性・慢性尿細管間質性腎炎胸膜炎血球貪食性リンパ組織球症原発性副腎不全原発性免疫不全症候群(重症複合免疫不全症・ディジョージ症候群・X連鎖無ガンマグロブリン血症・慢性肉芽腫症・選択的IgA欠損症)小頭症消化性潰瘍進行性外層網膜壊死先天性TORCH感染症多小脳回胎児水腫聴覚ニューロパチースペクトラム障害脳穿通症裂脳症
作用する薬剤
(バル)ガンシクロビルシドフォビルフォスカルネットレテルモビル

🧠 全体像:は「生まれた時は何もなくても、後から静かに障害が現れる」先天感染ウイルスとして読む。先天性感染児の80〜90%は出生時無症状だが、ウイルスは内耳・脳・網膜など分化の進む組織にのダメージを与え続け、数年後に進行性・遅発性の感音難聴として顕在化することがある。「今、症状がないこと」は「将来も安全」を意味しない、というのがの最大の教訓であり、免疫不全者(移植後・)での再活性化という第二の顔も持つ。

微生物学的な特徴

に共通する構造(線状dsDNA、由来のエンベロープ、、核、生涯潜伏感染)はHSV-1のノートを参照。はHHV-5とも呼ばれ、骨髄の()と単球などの細胞に潜伏感染を確立する点が他のと異なる。単球がマクロファージ・へ分化すると再活性化が起こり、リンパ球にはウイルスゲノムが保持されない1(B細胞に潜伏するEBVとの対比になる)。

病原性の仕組み

を介して唾液腺上皮細胞に感染し、線維芽細胞・上皮細胞・マクロファージなどでを確立する。・単球に潜伏し、免疫抑制下で分化したマクロファージから再活性化する。

flowchart TD
  A["体液・臓器移植・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vertical transmission'>垂直感染</span>による曝露"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='integrin receptor'>インテグリン受容体</span>を介し唾液腺上皮などに感染"]
  B --> C["線維芽細胞・上皮細胞・マクロファージで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='persistent infection'>持続感染</span>"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hematopoietic progenitor cell'>造血前駆細胞</span>・単球に潜伏"]
  D -->|"免疫抑制・移植・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acquired immunodeficiency syndrome'>AIDS</span><br>(単球がマクロファージへ分化)"| E["再活性化"]
  E --> F["網膜炎・食道炎・大腸炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interstitial pneumonia'>間質性肺炎</span>"]
  C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='in utero'>経胎盤</span>・産道・母乳"| G["先天性・周産期<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytomegalovirus'>CMV</span>感染症"]
  G --> H["出生時無症状が80〜90%"]
  H --> I["数年かけて進行性感音難聴が顕在化しうる"]

感染経路と疫学

  • 直接接触・性的接触(唾液・尿・涙・精液・母乳などの体液を介する)、臓器移植、(子宮内・周産期・産後)——の一角
  • CMVは初感染だけでなく再活性化・でも胎児感染は起こりうるが、初感染の方が重症化しやすい
  • ・性感染症の文脈でも扱われ、性行為も伝播経路の一つになる

起こす疾患

詳細な臨床像・診断・治療はに譲り、ここではと免疫不全者での再活性化という2つの顔を対比する。

場面 疾患・所見 特記事項
先天性感染症 感音難聴(難聴の最多原因)、、、血小板減少と点状出血・紫斑(「」)、肝脾腫、黄疸、 米国最多の先天性ウイルス感染症。出生時無症状が80〜90%
免疫不全者(移植後・) 網膜炎(CD4<50/µLで多い、「」)、食道炎・大腸炎()、 指標疾患の一つ
単核球症様症候群 発熱・咽頭炎・脾腫などEBVによると類似 陰性(との鑑別点)
免疫不全() 直接感染による原因の一つ

診断

  • 組織診断:核内好塩基性「」(の病理所見)
  • PCR:ウイルスの検出・増幅。は生後3週以内に採取した尿・唾液などので確定する(それ以降は産道・母乳によるとの区別ができなくなる。生後3週を過ぎて疑われた場合は、出生直後に採取されたのでに診断できる)2
  • ⚠️ 妊婦の血清スクリーニングは一律の答えが無い。 IgM単独は偽陽性が多く胎児感染も予測できないため、IgM・IgGがともに陽性ならIgG avidity(抗体の)で最近の初感染(90日未満)かを判定する。欧州のECCI 2024は、大半の欧州諸国が一律の血清検査を行っていないことを踏まえつつ、地域の疫学に応じて妊娠初期の一律スクリーニングを考慮するとしている(推奨の強さは最も低いGrade D)。後〜妊娠初期の初感染と判定されれば、まで8 g/日のを勧めており、根拠としてが約70%減ったことを挙げる2

治療と予防

  • 健常者:対症療法のみ
  • 免疫不全者(網膜炎など):(バル)——として固有のにより活性化されを阻害する。UL97遺伝子変異による耐性化が問題になる
  • 耐性時:(、キナーゼ非依存)。UL97変異は・の感受性に影響しないが、ポリメラーゼ(UL54)の変異は複数薬に同時に耐性を与えうる。移植後で耐性が疑われ、全身状態が悪くの例にはで治療を始めることが提案されている3
  • 他の抗ウイルス薬で治療抵抗性の移植後感染には、そのものを阻害するが使え、米国では12歳以上・体重35 kg以上で承認されている。・耐性時の主な代替薬と位置づけられるが、網膜炎・中枢神経病変はから除外されており効果は分かっていない3
  • 移植後の発症予防:(阻害)は、の成人で移植後14週までの予防投与が臨床的に問題となる感染を減らし(時に が検出されなかった患者で、中止・欠測も発生とみなした24週時点の割合が37.5%対60.6%)、・腎毒性はと同程度だった4。では、ドナー陽性・陰性の腎移植のと、に耐えられない例の予防に加わった3
  • 先天性:を伴う児と、単独の感音難聴の児にはで治療すべきとされ、できるだけ早く生後1か月以内に始める(感音難聴児では生後1〜3か月の開始でも有益でありうる)。根拠となった2つのはいずれも生後1か月以内に治療を開始しており、6週より6か月投与の効果が大きいことが示唆された。単独の感音難聴児では生後13週までに6週間の治療を始めた非無作為化試験で聴力の保持が改善したが、開始が遅れた場合の効果は不確かである2
  • 予防:安全な性行為、輸血・臓器提供者のスクリーニング、幼児の唾液・尿に触れた後の手洗い

まとめ

  • (HHV-5)はの一員で、と単球(細胞)に潜伏し、マクロファージへの分化で再活性化する。体液・臓器移植・で広がる。
  • 先天性感染症は感音難聴の最多原因で、多くは出生時無症状のまま数年かけて難聴が顕在化する——「今症状がない」は「将来も安全」を意味しない。
  • 免疫不全者では網膜炎()、、食道炎・大腸炎が問題になる。はと異なり陰性。
  • 診断は核内「」と。の確定には生後3週以内の検体でのが要る。
  • 治療は(バル)(UL97変異で耐性化)、耐性時は、治療抵抗性の移植後感染には。移植後予防にはが加わった。

出典

  1. 1.Cytomegalovirus latency and reactivation: recent insights into an age old problem(Reviews in Medical Virology・2016)全文(PMC5458136)の図説明で、潜伏感染は骨髄の造血前駆細胞に成立し、ウイルスゲノムは単球・骨髄系の系列に保持され、再活性化は最終分化したマクロファージ・樹状細胞で起こること、リンパ球の集団にはウイルスゲノムが保持されないことを確認した。閲覧 2026-09-27
  2. 2.Consensus recommendation for prenatal, neonatal and postnatal management of congenital cytomegalovirus infection from the European congenital infection initiative (ECCI)(The Lancet Regional Health - Europe・2024)全文(PMC10999471)で次を確認した。先天性感染と出生後感染を区別するため生後3週以内に採取した検体でPCRを行うこと(それ以降は出生直後の乾燥ろ紙血で後方視的に診断できる)。妊婦の血清検査は大半の欧州諸国で一律には行われておらず、地域の疫学に応じて妊娠初期の一律スクリーニングを考慮するとしていること(Grade D)、IgM陽性・IgG陽性の場合はIgG avidityで最近の初感染(90日未満)を除外すること、受胎前後・妊娠初期の初感染には診断後できるだけ早く羊水穿刺までバラシクロビル8 g/日を経口投与するよう勧め、その根拠として垂直感染の約70%減少を挙げていること。中枢神経症状を伴う新生児と単独の感音難聴の新生児はバルガンシクロビルで治療すべきとし、できるだけ早く生後1か月以内に開始する(1〜3か月の開始も有益でありうる)とすること、2つの無作為化比較試験はいずれも生後1か月以内に治療を開始しており、6週より6か月投与の効果が大きいことが示唆されたこと、単独の感音難聴児に生後13週までに6週間の治療を始めた非無作為化試験で聴力の保持が改善したこと。閲覧 2026-09-27
  3. 3.The Fourth International Consensus Guidelines on the Management of Cytomegalovirus in Solid Organ Transplantation(The Transplantation Society・2025)全文(PMC12180710)で、レテルモビルがD+/R−の腎移植レシピエントの一次予防とバルガンシクロビル不耐例の新たな予防選択肢になったこと、ガンシクロビル耐性のUL97変異はフォスカルネット・シドフォビルの感受性に影響しない一方、UL54の薬剤耐性変異は複数薬への耐性を与えうること、ガンシクロビル耐性が疑われ全身状態が悪く高ウイルス量の例にはフォスカルネットを初期治療に提案すること、マリバビルが他の抗ウイルス薬に治療抵抗性の移植後CMV感染(12歳以上・体重35 kg以上)に承認されていること(本文はSOLSTICE試験がFDA承認につながったと記載)、ガンシクロビルまたはフォスカルネット耐性時の主な代替治療としてマリバビルを推奨すること(strong、high)、臨床試験はCMV網膜炎・中枢神経病変を除外しており効果は不明であることを確認した(2026-09-27に横断監査でPMC全文を取り直して照合)。閲覧 2026-09-27
  4. 4.Letermovir Prophylaxis for Cytomegalovirus in Hematopoietic-Cell Transplantation(The New England Journal of Medicine・2017)抄録で、CMV血清陽性の成人同種造血幹細胞移植レシピエントを対象とした第3相二重盲検試験で、移植後14週までのレテルモビル予防投与が24週までの臨床的に問題となるCMV感染(中止・欠測も発生とみなす)を、無作為化時にCMV DNAが検出されなかった495例で37.5%(325例中122例)とし、プラセボの60.6%(170例中103例)より少なかったこと(P<0.001)、骨髄毒性・腎毒性の頻度はプラセボと同等だったことを確認した。閲覧 2026-09-27