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Disease Atlas · 神経 · 先天性疾患

多小脳回

Polymicrogyria

別名
PMG多小脳回症
臓器系
神経小児
科目
Pathology
トピック
病理学 C/105:中枢神経系の先天奇形
合併症
てんかん知的発達症
関連疾患
裂脳症
原因微生物
サイトメガロウイルス
症状
発作

🧠 全体像:(PMG)は、正常より小さく過剰な数のが大脳皮質を覆う形成異常で、・からまでが同じスペクトラム上の重症度の違いとして連続している。原因は一様ではなく、遺伝性(GPR56/ADGRG1などの遺伝子変異による両側前頭頭頂型)と後天性(妊娠早期の子宮内〈〉感染や血管性の破壊)の両方があり、⭐ 「どちらが原因か」より「病変がどれだけ広いか」が重症度を決める——片側は無症状に近いこともある一方、両側はと重度の発達障害を伴う。⚠️ 見た目が似ていてもとは別の病態である——は皮質を貫く「裂」そのものが本体でその壁がしばしばで裏打ちされるのに対し、は皮質の層構造そのものが正常な6層ではなく異常に融合・重層化する形成異常である。

病態と分類:スペクトラムとして理解する

は、正常なの後、皮質板の層形成が破綻して生じる形成異常で、過剰な数の小さいと浅いが特徴的な脳表面パターンを作る。(が全く形成されない)・(が少なく幅広い)・(が多数かつ小さい)は、いずれもという同じ大枠の中で、障害の程度が異なる表現型として連続的に理解される1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuronal migration'>神経細胞移動</span>後の皮質板層形成が破綻"] --> B{"障害の範囲・重症度"}
    B -->|"最小"| C["片側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='limited (localized) form'>限局型</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='polymicrogyria'>多小脳回</span><br>(症状に乏しく<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Antiepileptics'>抗てんかん薬</span>で管理可能なことが多い)"]
    B -->|"最大"| D["両側前頭頭頂型<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polymicrogyria'>多小脳回</span><br>(高度な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neurological'>神経学的</span>異常)"]
    B --> E["両側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sylvian fissure'>シルビウス裂</span>周囲型・<br>両側<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffuse type'>びまん型</span>など中間の表現型"]

⭐ 範囲による重症度の勾配が臨床像を決める。 片側は最も軽症で症状に乏しく、多くはで管理でき成人になって発見されることもある。対して両側前頭頭頂型は最も重症で高度な異常を呈し、16q12-21染色体領域に関連する形式をとる1。両側周囲型が全の中で最も頻度の高い分布であり、両側・両側後方型など他の分布パターンも報告される。

病因:遺伝性と後天性

⭐ は単一の原因を持たない。 大きく遺伝性の関連遺伝子変異と、妊娠早期の後天的な脳損傷の2群に分かれる。

分類 代表例 特徴
遺伝性 GPR56(ADGRG1)変異による両側前頭頭頂型 。優位の分布、白質信号異常・脳幹小脳低形成を伴う
遺伝性 3-経路の遺伝子変異 皮質形成の主要なの異常として関与
後天性 子宮内感染 妊娠第1・のがを来す2
後天性 ・血管性破壊 と共通する機序。はの裂の壁を裏打ちする皮質としても生じうる

💡 cobblestone(の一亜型)はとしばしば合併する1。は単一の機序で割り切れず、複数の異常が重なって現れることを念頭に置く。

随伴する症候群

は、、Delleman症候群、DiGeorge 、Sturge-、Warburg Micro症候群など、複数の症候群の一部分症として報告される1。これらの症候群を疑う所見(欠損、皮膚病変、心大血管異常、顔面血管腫、眼所見など)があれば、の局在・範囲だけでなく背景症候群の検索を進める。

臨床像:てんかんとの強い関連

⭐ 主要なは発作であり、その重症度は脳のと強く相関する1。この関連は、子宮内感染児を対象とした最近ので明確な数値として示されている。

出生時に症候性であった先天性感染児72例のうち18例(25%)にを認め、を有する群ではその後6/18例(33.3%)がてんかんを発症したのに対し、を有さない群でのてんかん発症は1/72例(1.4%)にとどまった。の有無とてんかん発症のは35(95%CI 3.9〜317.1)であった2。

⚠️ 範囲がそのままリスクに反映される。 てんかんを発症した6例中4例は両側大脳半球全体に及ぶびまん性の分布を示しており、・片側性の症例より広範な分布がてんかん発症と結びつく2。運動障害・発達遅滞の程度も同様にに応じて幅広く、片側の軽度なから両側の重度の・重度まで及ぶ。

鑑別:裂脳症との関係

とは、しばしば同じ画像の中に併存する——の裂の壁を裏打ちするの実体がであることが多い。この共存が両者を混同させやすい理由になっているが、病変の本体が違う。

病変の本体 皮質の層構造そのものの異常(過剰な小脳回) から面まで貫く「裂」
脳室との関係 脳室まで達するとは限らない 定義上、脳室まで達する
との関係 の裂の壁を裏打ちする皮質として合併しうる を随伴所見として伴うことがある

治療と予後

治療は対症療法が中心で、発作管理にはを用いる。運動障害・に対しては・などのリハビリテーションを行う。水頭症などの合併がある場合は個別に対応する。

⭐ 予後はでおおむね予測できる。 片側は軽症で成人期まで診断されないこともあるが、両側は・重度の発達障害を伴う。背景に子宮内感染がある場合は、の有無自体がてんかん発症の強い予測因子になるため、画像でを認めた児は特に注意深いてんかんのを要する2。

まとめ

  • は、・と連続するのスペクトラムに位置し、が広いほど重症になる。
  • 原因は遺伝性(GPR56/ADGRG1変異による両側前頭頭頂型など)と後天性(子宮内感染、血管性破壊)に分かれ、単一の機序では説明できない。
  • ・Delleman症候群・DiGeorge ・Sturge-・Warburg Micro症候群など複数の症候群の部分症として現れる。
  • 主要症状は発作で重症度はと相関し、症候性先天性感染児のコホートではの有無がてんかん発症の35という強い予測因子であった。
  • としばしば併存する(裂の壁を裏打ちする皮質として)が、病変の本体は異なり、は「裂」そのもの、は皮質の層構造の異常である。
  • 治療はとリハビリテーションによる対症療法が中心で、予後はに依存する。

出典

  1. 1.Embryology, Central Nervous System, Malformations(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)2023年3月6日最終更新版で、多小脳回が異常に多数の小さい脳回を持つ大脳皮質の形成異常であり無脳回症(agyria)・厚脳回症(pachygyria)から多小脳回までが皮質形成異常の連続的なスペクトラムをなすこと、片側限局型が最も軽症で症状が乏しく多くは抗てんかん薬で管理できる一方、両側前頭頭頂型多小脳回が最も重症で高度な神経学的異常を呈し16q12-21染色体領域に関連する常染色体潜性遺伝形式をとること、原因遺伝子としてホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K/AKT)経路を制御する遺伝子群の変異が関与すること、cobblestone(無脳回症の一亜型)が多小脳回としばしば合併すること、随伴する症候群としてAicardi症候群・Delleman症候群・DiGeorge 22q11.2欠失症候群・Sturge-Weber症候群・Warburg Micro症候群が挙げられること、主要な臨床症状が発作でありその重症度が脳の罹患範囲と強く相関することを確認した。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Polymicrogyria in infants with symptomatic congenital cytomegalovirus at birth is associated with epilepsy: A retrospective, descriptive cohort study(Developmental Medicine & Child Neurology・2025)先天性サイトメガロウイルス(cCMV)感染が確定した児90例(女児46・男児44)を対象とした後方視的コホート研究で、出生時に症候性であった72例のうち18例(25%)に多小脳回を認めたこと、多小脳回を有する18例中6例(33.3%)がてんかんを発症したのに対し多小脳回を有さない72例中てんかんを発症したのは1例(1.4%)にとどまり、多小脳回の有無とてんかん発症のオッズ比が35(95%CI 3.9〜317.1、p<0.001)であったこと、多小脳回の分布パターンが両側シルビウス裂周囲型・両側びまん型・限局型に及び、てんかんを発症した6例中4例が両側大脳半球全体に及ぶびまん性分布を示したこと、早期(妊娠第1・第2三半期)のCMV経胎盤感染が神経細胞移動障害を来し多小脳回を含む皮質形成異常を引き起こすと考察していることを確認した。閲覧 2026-09-05