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Microbe Atlas · ウイルス

Epstein-Barr virus

EBウイルス

分類
ヘルペスウイルス / Herpesviruses
性状
エンベロープあり EnvelopeddsDNA
科目
Medical Microbiology
トピック
3/1: Principles of virus structures. Sub-viral agents: viroid, prion
原因となる疾患
HIV感染症・AIDSバーキットリンパ腫移植後リンパ増殖性疾患寒冷凝集素症急性扁桃炎・扁桃周囲膿瘍血球貪食性リンパ組織球症原発性中枢神経系リンパ腫上咽頭癌伝染性単核球症

🧠 全体像:EBVは「B細胞に住み着く」という一点から、良性のにも複数の悪性腫瘍にも姿を変えるウイルスとして読む。唾液を介して広がり(俗称「」)、CD21を受容体としてB細胞に感染して潜伏する——このBそのものが、という一見バラな腫瘍の共通項になっている。宿主の免疫状態(マラリア流行地、AIDS、健常)によってどのタイプの腫瘍が前景に出るかが変わる点が最大の学習ポイントであり、の症状そのもの(発熱・咽頭炎・脾腫)も、感染B細胞そのものではなくそれを叩くの反応性増殖が作っている。

微生物学的な特徴

に共通する構造(線状dsDNA、由来のエンベロープ、、核、生涯潜伏感染)はHSV-1のノートを参照。EBVはHHV-4とも呼ばれ、B細胞に潜伏感染を確立する点が他のと一線を画す。上咽頭上皮細胞・唾液腺・リンパ組織にも感染する。世界の成人の約90%が抗体陽性という、きわめてありふれたウイルスである。

病原性の仕組み

口腔咽頭上皮細胞で複製したのち、CD21を受容体としてB細胞に結合・感染し、B細胞内に生涯にわたる潜伏感染を確立する。感染B細胞の表面に提示されたウイルス抗原に対してが反応性に増殖し、この活性化T細胞が標本上のとして観察される。

flowchart TD
  A["唾液を介したEBV初感染"] --> B["口腔咽頭上皮で複製"]
  B --> C["CD21を介しB細胞へ感染・潜伏確立"]
  C --> D["感染B細胞の増殖"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CD8-positive T cell'>CD8陽性T細胞</span>が反応性に増殖"]
  E --> F["末梢血の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atypical lymphocyte'>異型リンパ球</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Downey cell'>Downey細胞</span>)"]
  E --> G["全身リンパ節腫脹・脾腫"]
  B --> H["咽頭炎・肝炎"]

💡 はEBVに感染した細胞そのものではない。 はEBV感染B細胞を攻撃する反応性であり、発熱・咽頭炎・脾腫というの症状の多くはウイルスの直接障害ではなくこの免疫応答の結果である。

感染経路と疫学

  • 唾液・呼吸器分泌物が主経路(俗称「」)。思春期・若年成人での初感染は症候性のとして顕在化しやすいが、幼児期の初感染は無症候〜軽微な咽頭炎にとどまることが多い
  • 潜伏期は通常4〜6週間
  • B細胞への生涯潜伏感染が成立するため、免疫抑制下での再活性化の背景になる

起こす疾患

詳細な臨床像・診断・鑑別はに譲り、ここではEBVが起こす病像の全体を俯瞰する。

病型 特徴
発熱・炎・の三徴。脾腫によるリスクでコンタクトスポーツを避ける
の非の過形成。AIDS患者の免疫低下の手がかりになる
c-mycの転座が強力なプロモーターとして働く。型(マラリア流行地・顎)、型(などの腹部)、に分かれる
アジア系成人に多い上皮由来腫瘍
(B細胞性) 」様のを認める。約半数がEBV関連
二次性HLHの代表的な誘因。B細胞感染型ではリツキシマブが補助治療になりうる

c-myc転座の型による疫学の違いは頻出ポイント。 型=マラリア流行地・顎、型=腹部()、免疫不全関連型=AIDS、という対応を押さえる。

診断

検査 解釈
標本 )——感染最早期の所見だが非特異的
迅速だが発症早期・幼児で偽陰性が多い。IgMがヒツジ/ウマ赤血球上のPaul-Bunnell抗原に凝集する現象を利用する
VCA-IgM 早期に出現し通常4〜6週で消失。陽性は急性初感染を支持
EBNA抗体 発症2〜4か月後に出現し生涯持続。急性初感染では通常陰性

VCA-IgM陽性かつEBNA陰性が急性初感染を支持する組み合わせである。陰性が続く場合はCMV、急性HIV感染、などの単核球症様症候群を鑑別に加える。

治療と予防

  • 対症療法のみ。抗ウイルス薬・抗菌薬はルーチンで不要
  • ⚠️ 誤ってアモキシシリンやアンピシリンを投与すると、の発疹を生じることがある。 EBV感染を疑わずに細菌性咽頭炎として処方した際の典型的な落とし穴で、持続的なペニシリンアレルギーを意味しない
  • のリスクからコンタクトスポーツは発症後少なくとも3週間避ける
  • ワクチンは実用化されていない

まとめ

  • EBV(HHV-4)はの一員で、CD21を介してB細胞に感染し生涯潜伏する。唾液感染で成人の約90%が抗体陽性となる。
  • の症状(発熱・・リンパ節腫脹・脾腫)は、感染B細胞そのものではなく、それを叩く反応性)の増殖が作っている。
  • のほか、(c-myc転座、型/型/免疫不全関連型)、)、という複数の重篤な病態と関連する。
  • 診断はVCA-IgM陽性・EBNA陰性を軸に、の偽陰性(発症早期・幼児)を補って評価する。
  • 治療は対症療法のみで、誤投与のアモキシシリン/アンピシリンによる発疹はむしろ診断的ヒントになる。リスクからコンタクトスポーツは3週間避ける。