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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

上咽頭癌

Nasopharyngeal carcinoma

別名
NPC
臓器系
腫瘍耳鼻咽喉科
科目
ENTPathologyOncologyInternal Medicine
トピック
耳鼻咽喉科 38:上咽頭疾患とアデノイド増殖症の症状病理学 C/29:鼻腔・上咽頭・喉頭の腫瘍病理学 B/14:ウイルス・微生物による発がん(腫瘍形成)腫瘍学 II-01:頭頸部癌の疫学・病因・組織・病期・症状・診断腫瘍学 II-02:頭頸部癌の放射線・外科・薬物療法内科学 S-53:EBV・CMV感染症
上位概念
頭頸部癌
鑑別疾患
リンパ腫
続発疾患
中耳炎
関連疾患
伝染性単核球症頭蓋底腫瘍
治療薬
シスプラチン5-フルオロウラシル
原因微生物
Epstein-Barr virus
症状
頸部リンパ節腫脹出血鼻汁伝音難聴頭痛脳神経麻痺
画像所見
中耳貯留液
スコア
TNM分類

🧠 全体像は他のと違い、喫煙・飲酒よりもEBV感染と地域集積・が主因になる腫瘍である。は上咽頭で、そこがのすぐ後方にあるため、腫瘍がまず耳管を塞いで片側のを起こし、次いでを進展して頭蓋底の脳神経を巻き込む——という解剖学的な位置取りが臨床像のほぼすべてを説明する。が小さいうちから頸部リンパ節転移で発見される点、そして解剖学的な到達しにくさと高いから手術ではなく放射線治療(±化学療法)が治療の主体になる点が、他のとの最大の違いである。

概要

は、上咽頭(鼻腔後方から頭蓋底に至る領域)に生じる上皮性悪性腫瘍で、のなかでも組織型・疫学・が独立した一群として扱われる。好発部位は上咽頭(咽頭陥凹)で、その直下にが開口するという解剖学的位置関係が、臨床像の理解の出発点になる。

疫学と病因

は単一の原因ではなく、EBV感染・環境因子・が重なって発症するの腫瘍である。

因子 内容
地域集積 中国南部(広東省)・東南アジア・北アフリカで高頻度、欧米では稀
ウイルス EBV感染。非角化型、特に未分化型でほぼ全例に検出される
環境因子 幼少期からの塩蔵魚摂取(の曝露)、喫煙
HLA領域の特定アレルとの関連が地域集積を部分的に説明する

💡 EBVはB/14 ウイルス・微生物による発がんで扱う「乗っ取り型」発癌の代表例で、LMP-1がB細胞のCD40シグナルを模倣してNF-κB/JAK-STAT経路を恒常的に活性化する。ではこの経路の標的が上皮細胞になり、通常は免疫応答で排除されるはずのEBV感染上皮細胞の一部が形質転換してすると考えられている。ただしEBV感染単独では不十分で、環境因子・による追加の変異が発症に必要である。

組織型(WHO分類)

現行のWHO分類では、を次の3群に分ける。

組織型 特徴 EBVとの関連
高分化、角化を伴う古典的な扁平上皮癌像 他の2型より弱く、喫煙との関連が相対的に強い
(分化型・未分化型) に増殖する腫瘍胞巣。未分化型は境界不明瞭な大型腫瘍細胞が反応性リンパ球に富む間質中に増殖し、好酸性核小体が目立つ(旧称 強い(未分化型で最も強い)。流行地ではほぼ全例で検出
頻度の低い亜型 症例により異なる

⭐ 中国南部・東南アジアなど流行地で圧倒的多数を占めるのは非角化型、特に未分化型であり、これがEBVとの関連が最も強い組織型でもある。

臨床像

⭐ 他のの多くが口腔・の局所症状で先に見つかるのに対し、が直接観察しにくい部位にあるため、早期から生じる頸部リンパ節転移——多くは上深頸部(頭蓋底に近いレベル)の無痛性腫瘤——で気づかれることが診断契機として最も多い。

症状 機序
片側性の 腫瘍がを閉塞し、片側の中耳炎を起こす
血性・鼻閉 上咽頭腔内での腫瘍増大
早期からの頸部リンパ節転移。多くは無痛性
によるなど) 頭蓋底(破裂孔)への直接進展
頭痛 頭蓋底浸潤・

💡 成人で片側性・遷延性のをみたら、まず上咽頭を内視鏡で確認しを除外する——これは 38でも強調される定石である。両側性で急性の経過をとる小児のありふれたとは前提が異なる。

flowchart TD
    A["Rosenmuller窩に発生"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pharyngeal opening of auditory tube'>耳管咽頭口</span>を閉塞"]
    A --> C["上咽頭腔内で増大"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='submucosal'>粘膜下</span>を頭蓋底へ進展"]
    B --> E["片側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='otitis media with effusion, OME'>滲出性中耳炎</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='conductive hearing loss'>伝音難聴</span>"]
    C --> F["鼻閉・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bloody rhinorrhea'>血性鼻漏</span>"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cranial nerve palsy'>脳神経麻痺</span>・頭痛"]
    A --> H["早期からの頸部リンパ節転移"]
    H --> I["上深頸部の無痛性腫瘤"]

診断

flowchart TD
    A["症状・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neck mass'>頸部腫瘤</span>を契機に疑う"] --> B["内視鏡下に上咽頭を観察"]
    B --> C["内視鏡下生検で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='histology'>組織診</span>断"]
    C --> D["造影MRIで局所・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='skull base extension'>頭蓋底進展</span>を評価"]
    D --> E["頸部リンパ節を評価"]
    E --> F["血漿EBV DNAを測定"]
    F --> G["PET/CTで遠隔転移を評価"]
    G --> H["病期を決定し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='treatment strategy'>治療方針</span>を選択"]

内視鏡下生検が確定診断の基本である。病期評価では造影MRIが骨・軟部組織のに優れ、進展・頭蓋底浸潤・の評価で中心的な役割を担う。CTはの評価を補う。

血漿EBV DNA(腫瘍細胞由来の遊離EBV DNA)は、非角化型・特に未分化型で診断時にほぼ全例陽性となり、とおおむね相関する。治療前後の推移は治療効果判定・再発モニタリングに有用で、治療後も高値が持続・する例は予後不良・再発のリスクが高い。ただし単独では偽陽性・偽陰性があり、非流行地での一般集団としての位置づけは確立していない——流行地の高リスク集団を対象とした早期発見の試みで用いられる段階にとどまる。

治療

は解剖学的に頭蓋底に近く周囲に頸動脈・脳神経・脳幹が近接するためな到達性に乏しく、一方で組織学的にはが高い。この2点から、他の多くのと異なり手術ではなく放射線治療が治療の主体になる。

病期 主な治療
早期(頸部リンパ節転移が乏しい IMRT)単独
局所(頸部リンパ節転移を伴う進行例など) シスプラチンを中心としたを放射線と併用)。や術後補助化学療法を組み合わせることもある
再発・遠隔転移例 シスプラチンなど)を中心に、を含む治療を検討する

IMRTは唾液腺・脳幹・視神経・視交叉などの周囲重要構造を温存しながら上咽頭・頸部へ線量を集中できる点で、の複雑な解剖に適した照射法である。頸部への進展様式から、だけでなく両も含めて照射計画を立てる。

⚠️ 早期発見が難しく診断時に既に局所であることが多いため、の対象となる症例が実地では多数を占める。治療後は、嚥下障害、下垂体機能低下、聴力障害などの晩期合併症を長期に管理する。

鑑別

上咽頭に腫瘤・非対称性を認めたときの鑑別として、以下を念頭に置く。

疾患 特徴
中高年、EBV関連、頸部リンパ節転移で発見されやすい
リンパ腫 上咽頭のリンパ組織()由来。生検でしか鑑別できないことが多い
思春期男性、進行性の+反復大量。血管に富み生検を避ける
小児に多い良性の肥大。年齢と経過で鑑別する

まとめ

  • を好発部位とし、EBV感染を中心に地域集積(中国南部・東南アジア・北アフリカ)、塩蔵魚などの環境因子、HLAを介したが重なって生じるの腫瘍である。
  • WHO分類は/非角化型(分化型・未分化型)/に分け、流行地で多い非角化型、特に未分化型がEBVとの関連が最も強い。
  • 早期から頸部リンパ節転移で発見されやすく、耳管閉塞による片側性のによる・頭痛が特徴的な臨床像を作る。
  • 診断は内視鏡下生検と造影MRIによる局所・評価を軸とし、血漿EBV DNAを治療効果判定・再発モニタリングに用いる。
  • 到達性の乏しさと高いから、IMRTを中心とする放射線治療)が治療の主体で、他ののように手術を第一選択としない。